ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

文字の大きさ
473 / 584
勇者と修行

第416話 鑑定魔法と水生成魔法

しおりを挟む

 ベル君は私の魔法を見て、自分もあれくらいできるようになりたいと男心に火がついたらしく、現在ルイスさんが補助についた状態で訓練中です。
 私とチアキさんと白雪さんは少し離れた階段部分で休憩中。

「鑑定魔法はないんですか?」

 空間魔法というかアイテムボックス魔法は諦めたけれど、もう一つのやりたかった魔法、鑑定魔法についても聞いてみた。

「それはチャーキも言うておったな。それも前世の記憶というやつなのか?」
「ははっ、そうだな。魔法がある世界に憧れていた奴らなら、大概それをまず思い浮かべる位には有名な魔法があったんだよ。
 ヴィオ、残念ながら鑑定魔法はないな。無いというか、魔道具で鑑定眼鏡があるのは知ってるか? ギルドでも使ってるんだが、あれが限界だな」

 ギルドの鑑定眼鏡なら持っている。残渣魔力、鑑定物の分類、素材名、成分詳細、採集地まで見えるかなり凄いものだ。
 だけど、生物には使えないし、RPGでは必須のHP体力MP魔力STRDEX器用AGI俊敏INT知力LUK幸運というパラメーターを見えるようにできたらと思っていたんだけど、どうやらそれは無いらしい。

「其方らが居った世界では、そんなものが可視化されるのか? 努力でどれも伸びるじゃろうが、幸運値などは低ければ誰も周りに近付かんのではないか? 
 貴族で知力が低いと要職には就けんじゃろうし、冒険者などゼロに近いんじゃないのか?
 残酷な奴じゃと体力が一桁になるまで痛めつけて回復してを繰り返す拷問もできるじゃろうし、恐ろしい世界じゃな」

 いえ、創作世界でのお話ですし、拷問に使うとか恐ろしいことを考えたことはありませんでしたよ。知力は賢いかどうかではなく、魔法の威力に関係がある数値だった気がします。

「あとは使える魔法一覧とか、スキルとか、加護とかも見えるんだよな」
「そんなものが見えたら対処され放題じゃな。悪い奴から見られたら、それこそ監禁されて生物兵器扱いされる事間違いなしじゃろうが」

 白雪さんが物騒です。だけど確かにそうだよね。
 こっちが使えるなら、あっちだって使えるだろうし、悪い奴っていうのは大概そういうのが得意なのはオヤクソクだもの。

「ははっ、そういう事だ。生物はそもそも他者の魔力を受け付けないという特性もあるからな、俺も使ってみたいと思ったことがあったが、それを目に見える形にしたのがギルドカードってところだな」

 ギルドカードは属性が確認できたけれど、あれは本人を傷付けて血液《魔力》を採集しているから見えるんだって。
 だから血液を採集すれば鑑定眼鏡で見れば出るのではないかとの事。
 だけどそれって、鑑定物の分類:ヒト、素材名:血液、成分詳細:ヒト族子供、などと出るくらいじゃない? 何も分からんのと同じな気がするけどパラメーターを見る方法がないと分かっただけで十分です。

「それはそうと、さっき言ってた、鑑定魔法の失敗だけど成功ってのはどういうことだ?」

 一人で納得していたらチアキさんから質問が。
 そこで無属性の身体のスキャン魔法【ボディピーク】と、私が使っている回復魔法について説明することになった。これはチアキさんが大興奮して、白雪さんもその理論を学びたいと言い出した。ルイスさんを回復した私の魔法を見て悔しかったんだって。

「あ、飲めるお水を作る魔法も出来たんです」
「は? 魔法で? 飲める水?」

 そういえばと思って水生成魔法の事を話せば、チアキさんが固まってしまった。

「俺、何故それを思いつかなかった……。それがあればダンジョンなんて住めたじゃないか。現代知識でチートすげぇって思ってた俺――」

 いやいや、チアキさんがダンジョンアタックをしていた時は、スタンピードで大変すぎた時代でしょう? まず目の前の脅威を取り除く、ダンジョン内を一掃する、ラスボスまで討伐するっていう大変な使命をクリアするのが第一だったんだもの。
 お皿を洗うのに失敗した魔法が始まりだったとか言い出せない……。

 ということで、チアキさんと白雪さんからは無属性魔法と光魔法を教えてもらい、私からは水生成魔法などの失敗から生まれた魔法を伝えることになった。
 ルイスさんとベル君も水竜人族という事で水魔法は得意だそうなので、水生成魔法は一緒に練習することになったよ。

 水生成魔法が出来るようになったら、近場のダンジョンに行ってみようと言われたんだ。私がどれくらい魔法を使えるのか分からなかったから心配だったけど、自分の実力ありきでの銀ランクだったら問題ないだろうとの事。ベル君はヒト族に比べれば頑丈らしいので(見た目は頑丈そうに見えないんだけどね)多少の怪我は問題ないとの事。
 うん、何となく気付いてたけど、チアキさんって結構大雑把だよね。


 こうして、朝イチはストレッチ後に砂浜ランニングを毎日するようになった。走り終わった後に小鹿になっちゃう間は武術訓練はしないという事なので、筋力回復を願うしかない。

 魔法訓練は一日おきに、魔法訓練じゃない日にはマジックバッグ作り……ではなく、錬成陣作り。
 九芒星の錬成陣は布も糸も両方自分の魔力で染める必要がある。チアキさんの錬成陣を私が使えたように、他の人の魔力で染まった錬成陣でも使用は出来るけど、前に説明されたように布だから劣化するし、自分で染めた錬成陣を使う方が魔力が少なくて済むんだって。

 まずは布と糸を染めないといけないので、初日はそれに費やした。
 二回目以降は錬成陣の為に刺繍の練習ですよ。貴族令嬢が刺繍を嗜むのはやっぱりこのためだったんだろうと思いつつ、エミリンさんならコレも上手にサクサク作れるんだろうなぁと思いつつ、ミケさんに応援してもらいながらハンカチで刺繍の練習を頑張るようになりました。
 マジックバッグを作れるようになるのは大分先になりそうですよ。
  
しおりを挟む
感想 109

あなたにおすすめの小説

私を裏切った夫が、後悔しているようですが知りません

藤原遊
恋愛
政略結婚として、公爵家に嫁いだ私は 愛のない夫婦関係を「仕事」だと思い、正妻の役目を果たしてきた。 夫が愛人を持つことも、 その子を屋敷に迎え入れることも、黙って受け入れてきた。 けれど―― 跡取りを、正妻の子ではなく愛人の子にする。 その言葉を、人前で軽く口にした瞬間。 私は悟ったのだ。 この家では、息子を守れないと。 元々、実家との間には 「嫡子以外の子は実家の跡取りにする」という取り決めがあった。 ならば話は簡単だ。 役目を終えた私は、離縁を選ぶ。 息子と共に、この家を去るだけ。 後悔しているようですが―― もう、私の知るところではありません。

【書籍化決定】アシュリーの願いごと

ましろ
恋愛
「まあ、本当に?」 もしかして。そう思うことはありました。 でも、まさか本当だっただなんて。 「…それならもう我慢する必要は無いわね?」 嫁いでから6年。まるで修道女が神に使えるが如くこの家に尽くしてきました。 すべては家の為であり、夫の為であり、義母の為でありました。 愛する息子すら後継者として育てるからと産まれてすぐにとりあげられてしまいました。 「でも、もう変わらなくてはね」 この事を知ったからにはもう何も我慢するつもりはありません。 だって。私には願いがあるのだから。 ✻基本ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。 ✻1/19、タグを2つ追加しました ✻1/27、短編から長編に変更しました ✻2/2、タグを変更しました

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~

ふわふわ
恋愛
「お姉様の婚約者、私がいただきますわ。だって“公爵令嬢”ですもの」 義理の妹コンキュはそう言って、王太子との婚約を奪いました。 父はそれを容認し、私は静かに受け入れます。 けれど―― 公爵令嬢とは“地位”ではなく、“責任”の継承者。 王宮で礼儀も実務も拒み、「未来の王太子妃」を名乗った義妹は、わずか三日で婚約破棄。 さらに王家への不敬と統治能力の欠如が問題視され、父の監督責任が問われます。 そして下されたのは――家ごとの褫奪。 一方で私は、領地を守り、帳簿を整え、静かに家を支え続ける。 欲しがったのは肩書。 継いだのは責任。 正統は叫びません。 ただ、残るだけ。 これは、婚約を奪われた公爵令嬢が “本当に継がれるべきもの”を証明する物語。

【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。

みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」 魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。 ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。 あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で一人の騎士と運命的な出会いをする。 【2024年3月16日完結、全58話】

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので

モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。 貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。 ──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。 ……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!? 公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。 (『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)

恋は、母をやめてから始まる――正体を隠したまま、仮の婚約者になりました

あい
恋愛
両親を失ったあの日、 赤子の弟を抱いて家を出た少女がいた。 それが、アリア。 世間からは「若い母」と呼ばれながらも、 彼女は否定しなかった。 十六年間、弟を守るためだけに生きてきたから。 恋も未来も、すべて後回し。 けれど弟は成長し、ついに巣立つ。 「今度は、自分の人生を生きて」 その一言が、 止まっていた時間を動かした。 役目を終えた夜。 アリアは初めて、自分のために扉を開く。 向かった先は、婚姻仲介所。 愛を求めたわけではない。 ただ、このまま立ち止まりたくなかった。 ――けれどその名前は、 結婚を急かされていた若き当主のもとへと届く。 これは、 十六年“母”だった女性が、 もう一度“ひとりの女”として歩き出す物語。

処理中です...