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素敵な素材と魔獣
第439話 野生のモフッコに会いに
しおりを挟む「ただいま~~~」
「おかえりなさいませ、昼食は召し上がられますか?」
「おお、そういえばそんな時間だな、ミケありがとう、いただくよ」
「良い匂いがしておる。ミケありがとうな」
今日も野営地の入り口で迎えてくれたミケさんに飛びつくけど、しっかり抱き止めてくれる。戦うヒトではないけれど、体幹も鍛えているし、トレーニングすれば直ぐにでも戦えると思うんだよね。
まあサマニア村でも戦わない事を選択している人はいるし、ミケさんはそれでいいと思う。
ソースの良い匂いが外まで漂ってきているけど、これは焼きそばだな?
チアキさんがヒスの森で作ってからはまっている焼きそば。醤油もウスターソースも炒めると攻撃的な匂いが一気に広まるよね。
キッチンスペースではダルスさんが、せっせと焼きそばパンを作ってくれていたらしく、作業中でした。
「おぉ、思ったより早いお帰りでしたな。移動中に食べられるようにと思って、挟みパンにしておりましたが……、残りは普通でいいですかな」
どれだけ大量に作ってくれていたのだろうか、大皿に山盛りになっている焼きそばパンが既にあるんだけど、マジックバッグからもうひとつ、山盛りの焼きそばを取り出してくれました。
ミケさんと私は少食(とはいえ普通の成人女性と同じくらい)なので、焼きそばパンを二個頂きましたが、他の三人は健啖家ですからね、焼きそばパンはおやつにするらしく、山盛りの焼きそばと塩むすびをガツガツ食べていました。
「みへほのはほはひい」
「チャーキ、急ぐ旅でもないし食べてからにせい」
私達が先に食べ終わっているのを気にしてか、チアキさんがこの先の予定を伝えようとしてくれるんだけど、うん、食べ終わってからで良いと思います。
ホテルバイキングとかで見たことのある大皿、あれと同じくらいの木皿に山盛りだった焼きそばは、たった三人によって食べ尽くされてしまいました。この世界では、日本の大食いチャンピオンも普通の人扱いされそうですよ。
「は~、やっぱり焼きそばは美味いな。肉はナイトか? まああれも豚肉っちゃ豚肉だしな。塩むすびでリセットされて何杯でも食えるな」
永久機関ですか? そういえばオークナイトが当り前にいたヒスの森で、すっかり私の舌もグルメになってしまったものですよ。
「この後だがな、野生のモフッコを少々捕獲して帰るつもりでな、この後森に入る。ミケはダルスの上にいてもいいし、ここで待っていてもいい。どうする?」
一緒に行くなら野営地は崩していくし、残るなら一度森に行ってから戻ってくることになる。その場合はダルスさんがドラって行くので、しばらく一人でお留守番をする事になる。
「モフッコの捕獲はチャーキとヴィオの二人でいけるじゃろう? 我もミケと待っておるぞ」
「白雪様……、でしたら私もご一緒させてくださいませ」
しばらく悩んでいたけれど、白雪さんが一緒にいてくれるならと同行してくれることになりました。竜人族と供に住んでいるとはいえ、ドラゴンを目の前にするとやっぱり恐怖に足がすくむらしい。空が怖かっただけかと思いきや、ドラも怖かったそうです。
やることが決まれば行動が早い。
昼食を終えて直ぐに野営地は元の地面に戻され、ダルスさんはドラ化し、私たちはダルスさんの背に飛び乗る。白雪さんのお願いというか提案で、今ミケさんは小さな猫たんになっております。
「にゃ~ん」
「か、かわいぃぃぃぃ」
「ふむ、これはかわゆいのぉ」
普段も三毛猫さんなんだけど、二足歩行の150センチほどあったミケさんが、30センチ程の三毛猫さんに。ベル君と同じで獣化すればお喋りできないのは、人化が上手くできないのと同じなのかな? いや、あの牧場にいた猫さん達もお喋りしていなかったから、竜人族だけが喋れるのかもしれないね。
胡坐をかいた白雪さんの足の間にクルンと丸まっている姿は、まさに家猫!
ダルスさんの「飛びますよ~」の声にも反応することなく、三人で囲んで見つめてしまうのもしょうがないと思う。
白雪さんが嬉しそうに首の下を擽れば、ゴロゴロと喉を鳴らしながら白雪さんの手首に顔を擦り付ける。
「ミケさん、お手手を触っても良いですか?」
「にゃっ」
猫たんだとしてもミケさんではあるので、こちらの言葉はちゃんと通じている。なので、普通の猫では触れない肉球を触らせてほしいとお願いしたら、片足をニュっと出してくれた。
普段のミケさんも肉球ハンドなんだけど、小さい猫たんのお手手! 二足歩行で歩いているからだろうか、手の肉球は成人しているとは思えない程柔らかく、プニプニだった。あぁ、いつまでも触っていられる。
「ヴィオ、そろそろ下りるぞ」
「えっ!? もう到着ですか?」
プニプニを堪能していたら、無慈悲な言葉が聞こえてくる。
なんという事でしょう。カッツェ村から一番近い山ではなく、その一つ向こうの山にしたのにドラゴンは早すぎます。もう到着してしまいました。
「にゃ~ん、にゃにゃ」
「ううっ、行ってきますね。また猫たんで待っててくださいね」
「くっくっく、はよう行って、はよう帰ってこればええ」
ウググとなっていれば、ミケさんがスリスリしてくれて尻尾でペシペシ行って来いと言ってくれる。白雪さんもクツクツ笑いながら早く帰って来いと言ってくれるので、さっさと捕まえてくることにしよう。
「あれ? まだ空ですよ?」
「そうだな、この後ダルスたちはあっちの平原で待ってもらうが、遠いだろう? さあ行くぞ」
「まじっすか!」
渋々モフッコ捕獲に行こうと思ったんだけど、未だダルスさんは山の上でホバリング中。森の木々が覆い茂る上にいるんだけど、下りるつもりは無いらしい。
どうするのかと思ったら、チアキさんに手を取られて、そのままダルスさんから飛び降りた。
「ま~じっすかぁぁぁぁぁ」
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