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素敵な素材と魔獣
第441話 モフッコの牧場
しおりを挟むモフッコ捕獲計画が無事終了し、夕方には村に帰ってきた私達。
森の中からどうやって帰ったか気になります?
ダルスさんの背中に飛び乗るのと同じです。ちょっとその距離が大分伸びてましたけど、勇者がやることですからね。常識を当て嵌めてはいけません。
【ウインドウォール】でモフッコたちの檻と、抱っこした私を包み込んでから、【ウエイト】で重力を軽減、そのまま風の球体を打ち上げるように下から風を当てて空へ飛ばすという、なんとも豪快な方法でした。まさか人生で自らが打ち上げ花火になる体験が出来るとは思っていませんでした。
「あ、打ち上げて空に上がることしか考えてなかった」
空の上でそう言われた時は、どうしてやろうかと思いましたが、上空で待機してくれていたダルスさんがモフッコの檻をキャッチしてくれたので、私とチアキさんはダルスさんの首に巻き付けた蔦をよじ登って背中に到着、無事に帰って来れたという訳です。
5歳の時にチアキさんに拾われていたら、確実に死んでいたなって思いました。
お父さん、サマニア村の人達よりも非常識な人がここにいましたよ。私、いつになったら常識的な大人に会えるのかな。
ダルスさんの背中に戻ってから、モフッコが種爆弾を吹き出す時に食べていた木の実がカカオじゃなかったのかという事になり、再びお一人で飛び降りて頂いたチアキさん。周辺の樹木を数本引っこ抜いて頂きました。生物じゃないからこっちはマジックバッグに入れることが出来たのは僥倖でしたね。
ミケさんを心配させてしまったかと思ったんだけど、白雪さんの胡坐の上でスヤスヤと眠っていらっしゃいました。にゃんと可愛らしいのでしょう。
村に到着した時もミケさんは眠っていたので、抱っこのまま帰宅。
帰宅後はモフッコたちの牧場を作る必要があったので、ミケさんは白雪さんにお願いしてチアキさんと二人で準備に取り掛かりました。既に連絡をしていたらしく、ルイスさんをはじめとした村の人たちも集まってくれて、牧場予定地に案内してもらいました。
「数匹かと思っていましたが、十匹ですか。もう少し広い方が良いでしょうか」
「そうだな、森に住んでいたから木々が多い方が落ち着くだろうが、この周辺の魔獣の方が強いだろうしな、あんまり森に近いのは危険だろうし、横に拡げるか」
大人たちで話し合いをしながら牧場が拡げられていく。魔法って便利ですねぇ。
「ヴィオ!」
「ベル君、こんな時間なのに来てくれたの?」
普段なら訓練も終えて帰宅する時間だ、私たちはモフッコの為にそのまま行動しているけど、家にいたベル君が出てくるには遅い時間なのに、おかえりを言う為に来てくれたらしい。可愛い奴め。
木魔法が得意な大人たちによって牧場の一部に、例のカカオの実がついているであろう木が植えられていく。というか、あれがカカオの実なんだったら、あのまま加工してもよくない?
そう思って一つ果実を採集したんだけど、皮は硬く、岩のようだった。【サンドカッター】で真っ二つにしたけど、中身もまったく匂いがせず、これを加工するのは非常に難しいと思った。
モフッコの口内にはこれを溶かす消化液があるのだろうか? 確保しておいたモフッコに飛ばされた種はやっぱり柔らかく、手で握っても形を変えるくらいなのだ。
「ヴィオ、それなんだ?」
「ヴィオちゃん、それは――」
「これは……、とっても美味しい甘味の元だよ」
「甘味!? 美味しいのか?」
「多分ね、まだ実験してないから分からないけど、明日からその実験をするつもりだよ」
私の手元を見てベル君が不思議顔、それを見たベルママは愕然とした顔をしていたけど、何かを言われる前に甘味の元という事にしておいた。
うん、知らずに食べて美味しいと思えば、事実を知っても嫌にならないだろう。大丈夫、生クリームも見つかったし、美味しいものになる筈だよ。
甘味、甘味と飛跳ねながら喜ぶ息子を見て、複雑な顔をしているベルママ。毒ではない事は鑑定眼鏡でも分かっているので大丈夫、【クリーン】はしっかりかけておりますから安心してください。
翌朝、ミケさんから真っ赤な顔で謝罪されたけど、唯々可愛かったので、私たちは誰も気にしていない。
猫たんになってしまうと、本能の方が強くなるらしく、安心感抜群の白雪さんに包まれて眠気に勝てなかったんだって。流石聖獣、その安心感は半端ないって事なんでしょう。
朝食後、モフッコたちの様子を見に行ったんだけど、昨日の好戦的な様子は鳴りを潜め、皆樹々の後ろに隠れようと集まっていました。
「あれ、こんなに広い牧場なのに、やっぱり森が好きなんですかね」
「いや、忘れていたが、この村にはほとんど竜人族しかいないからな。奴らにとっては捕食者しかいないという認識なんだろう。可哀想なことをしたかもしれんな」
顎をポリポリ掻きながらそんな事を言い出したけど、それって、最初から分かってた事では……?
そうか、猫の柔らかい感じが好きなのかと思っていたけれど、猫はモフッコからすれば弱い相手で、自分たちが護るべき相手だと思っていたのかもしれないね。
カカオ確保の為だけに採集してきた木では少なく、全員が隠れることは出来ていない。これは彼らにとって非常にストレスになるだろう。
という事で、急遽隠れる事が出来る樹木を増やすために、ダルスさんのドラ便でチアキさんが樹木を取りにお出かけなさいました。
「チャーキは大雑把なところがあるからなぁ」
チアキさんがお出かけしたことを告げれば、白雪さんからはそんな答えが返ってきた。ああ、珍しいことではなかったんですね。なんとなくチアキさんの事が分かり始めてきたような気がします。
「それより、あの持ち帰った種は甘味になるんじゃろう? いつ作るんじゃ?」
「まずは実験が必要なので、この後からでもいいかな。あ、でもチョコって猫には駄目なんですけど、ミケさんって食べても平気ですかね」
犬にチョコは厳禁だった事は知っているけど、多分猫も駄目だろう。ネギも香辛料も食べているから大丈夫な気はするけど、昨日の猫姿を見てしまうと心配になる。
「いや、獣人じゃからな。内臓は普通のヒト族よりも余程丈夫じゃと思うぞ。猫の姿になれるとはいえ、そこは心配いらぬよ」
聖獣さんがそういうのなら大丈夫なのでしょう。だったらミケさんにも手伝ってもらえるかな。
声を掛けたら是非と言ってくれたので、早速カカオの加工をしていきましょう。
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