ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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魔道具製作

第454話 新しいお守り作成

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 久しぶりに号泣して寝落ちした。
 ここに来た当時の事を思えば随分回復したんだけど、やっぱり時々感情のコントロールができなくなる。

「大人でも大切な人を亡くしたら立ち直るまでに時間がかかるんだ。ヴィオは頑張ってるぞ」
「そうじゃぞ。其方はしっかりしすぎて時々忘れるが、まだたった八年しか生きておらんのじゃ。八年など我はまだヨチヨチ歩きの子熊じゃったぞ? 竜の子らはまだ唯人《ただびと》で、翼も尻尾も出せんくらいじゃぞ」

 いつでもそうして慰めてくれる。
 白雪さんの例えは可愛すぎて是非見てみたいところだけど、よちよち歩きの子熊とは、絶対にヌイグルミじゃないですか? サマニア村の子供たちは8歳にもなればウルフを狩りに出かけているけど、そんなに成長速度に違いがあるのだろうか。
 竜人族はヒトとして生まれてくるって言ってたね。獣人は獣状態で生まれてくることを思えば逆なんだよね。卵で生まれる訳じゃないんだよね? 卵生の種族はヒトなお母さんから卵で生まれるのかな? それとも蛇な感じで出てくるのかな? 蛇だったら肩もないからスルンと出てこれそうだよね。

 あまりにセンシティブな内容だから聞ける時はなさそうだけど、私が獣人と結婚したとしたら卵で出産の方が痛くなさそうだなと思ったりする。いや、そう考えると、ヒトと獣人が結婚している場合って、女性が獣人で、男性が人な事が多い気がするね。獣人とのハーフは確実に獣人遺伝子が強く出るからなのかな。
 いや、ちょっと待って、確かプレーサマ辺境伯閣下の奥様は二代続けてヒト族だったね。ということはあの貴族な夫人が豹を生んだって事? ムムっ、謎が増えたね。気になるけど聞けない内容すぎる。

「どうした? さっきから百面相をして」
「あ、いや……、白雪さんの子熊時代ってヌイグルミみたいだったのかなって想像してました」
「む、どうじゃろうな。他の兄弟よりも成長が遅くて、両親や兄弟からも鈍臭いと言われておったしな。あの時も家族との移動中にはぐれたところで捕まってしもうたからな」

 そういえば白雪さんは子熊時代に攫われたって言ってたよね。それは非常に怖い思いをしたんだろう。私は魔法も使える状態だったけど、白雪さんは隷属の首輪に、魔封じも着けられて、両親もいなくて不安だったと思う。

「可愛かったぞ。フワフワの毛並みでな、あいつらは白雪を獣人だとは思っていなかったんだろうな。まだ人語も使えてなかったし、俺も動物か魔獣か迷ったくらいだ。あの頃は、ああ、今のヴィオと同じくらいだったんじゃないか?」
「そんなに小さかったかの?」

 白雪さんは愛玩動物として攫われたようだ。ただ、奴隷商人もどちらか分からなかったから魔獣だった時用に魔封じを付けたんだろう。

 聖獣は必ず白い毛や鱗を持つ。勿論白い毛を持つ普通の獣や獣人もいるけれど、ご利益がありそうという理由なのか貴族からは人気で、現在でも雪豹や白熊、白鼠などのフワフワした毛並みの動物や獣人の子供は誘拐の危険が高い。
 十数年に一度、〖グロンディール大陸〗に住んでいる竜人や魔人のヒトから連絡が来て、〖リルベルッティ大陸〗に保護される獣人がいると聞いて、チアキさんが魔王化した後でも、悪い人というのは根絶できない事を知った。

「それで? 兄達にはどんな守りを作るんじゃ?」

 そういえば、昨日はその話をしている途中で泣いてしまったんでしたね。
 改めてお守りをどうするか相談してみる。
 以前お兄ちゃんたちに渡したのは、それぞれに合いそうな神様のお名前を記したんだよね。それは無くしたくないけど、浄化の効果は絶対につけておきたい。

「そうだな、タグに付けるなら石が見える可能性は高いな」
「そうなんです。でも剣を握る人は指輪だと握るのに邪魔になりそうだし、腕輪は四六時中付けておくには邪魔かなって思って。便利なのはイヤーカフなんですけど、髪が短いから見えちゃうし、皆でお揃いって嫌かもしれないし悩んでるんです」
「全員耳飾りでよかろう? 揃いの意匠じゃと分かりやすくて良いのではないか? 手紙の心配ぶりからしても、其方の兄共が揃いを嫌がるとは思えんがな」

 白雪さんの一言に確かに納得。確かに、お兄ちゃんたちがお揃いを嫌がるとは思えない。テリューさんたちは照れ臭そうにするかもしれないけど、きっと喜んでくれるだろう。
 後はフィルさんの分はどうしようかな。一番毒とかを気にしてほしい人だし危険と隣り合わせな人だけど、果たして一国の王様に職人でもない私が作った装飾品を渡して良いのか。いや、そもそも渡せるのかって話だな。
 とりあえず作っておけばいいかな。いつか会える日が来たら、その時に必要か聞けばいいよね。

 そう思って必要な人と、お守りに刻む神様を書き出していく。
 〔土竜の盾〕メンバーとお兄ちゃんたちは前回作っているのと同じ神様で、新たに作る人たちの分をノートに書いた神様から選んでいく。

「そんなに神々がいるのか?」
「ほぉ、我も知らんな。あちらの大陸ではそんなに神々への信仰が深いんか?」
「いや、どうでしょうか。この神様は私とお父さんで潜った事のあるダンジョンで見つけた神様なんです。1階だけですけど、遺跡系のダンジョンには数体ずつ神様の石像があるんですよ。
 魔導学園の先生は聖書を見れば神様の事が書いてあるかもって言ってましたけど、神殿の人はそれを許可してくれなかったみたいですからよく分からないんですけどね」

 私のノートを見ながら、白雪さんとチアキさんが感心しながらアレコレ言ってるけど、白雪さんでも知らない神様がいるんだね。どうやら白雪さんたち聖獣さんに何か神託を下ろしてくるのは創造神だそうで、その他の神様の事は知らないんだってさ。
 創造神って神様のトップなのに、トップが直々にって凄いね。会社で社長が直々に指示を出すみたいな感じだよね。

 サブマスはお兄ちゃんたちと一緒に行動しているというし、私が帰ったら一緒に冒険することを楽しみにしてくれているというので、作るのは決定だね。
 エミリンさんたちも大事だけど、多分凄く遠慮されるだろうから、お屋敷代表としてドゥーア先生だけにしておいた。
 フィルさんには渡せるかは分からないけど、折角の機会だから作っておこうと思います。
 という事で、白雪さんも知らない神様を見ながらそれぞれに合いそうな神様を選んでいく。

 サブマスは、レスさんとお揃いの魔法の神様マジドミラルにしようと思ったんだけど、白雪さんから研究の神様でも面白そうだと言われたので、研究の神様ストゥーディオに決定。
 ドゥーア先生は、それこそ研究の神様かと思ったけど、先生が教えている授業の内容を伝えたことで、文字をこの世界に作り出した女神チャルーンタの方がふさわしいだろうという事で決定。

「う~ん、フィルさんはどうしようかな」
「それは守護の神様一択じゃないのか?」
「王様なんじゃろう? であれば光の女神が良くないか? 世界に光を齎せた神、国を導くのに格好良さそうじゃ」
「皆様、少しご休憩をなさった方がよろしいのではないでしょうか?」

 うーん、うーんと三人で誰が良いか悩んでいたら、ミケさんがお茶を淹れてくれた。今日のお茶菓子はチョコナッツクッキーでした。マムさんが滞在した期間で新しいチョコ菓子レシピがとても増えたんだよね。

「そうだ、ミケならこの中からどの神様が良いと思う? 贈る相手はヴィオの父親なんだ」

 クッキーをひと齧りしたところで、チアキさんがミケさんに質問をした。驚いたミケさんだったけど、私の父に贈る物の相談という事で、真剣にノートを捲って考えてくれた。

「白雪様が仰ったように、光の女神様も素敵ですし、旦那様が仰るように守護の神様も大切かと思います。ですが、私が選ぶなら、こちらの神様も素敵かと思いました。選択肢を増やしてしまってごめんなさい」

 そう言ってミケさんが指し示したのは家庭を守る神様イウスティシアだった。

「おお、なるほどな。確かにこれは良いのではないか? ミケお手柄じゃな」
「おぉ、正義と平和と真実を司る神か。嘘か誠かを見抜き裁きを行う神――うん、王としても重要な資質だな。良いんじゃないか?」
「そうですね、とってもいいと思います。ミケさん、ありがとうございます」
「あっ、いえ、私な……、いえ。ヴィオ様に喜んでいただけて嬉しいですわ」

 照れるにゃん様、は~、可愛いわぁ。
 最近は「なんか」を言いそうになっても言わないように気を付けているミケさん。チアキさんと白雪さんもそれに気付いてワシャワシャと頭を撫でている。
 成人まで家族に受けた仕打ちで自信を持てなかったミケさん。毒親から解放されてもすぐに自由になれるわけじゃないのは、仕方がない。
 だけど、ここではミケさんに自信を持たせる人しかいないからね。少しずつでも自分が必要とされていると自信を持てるようになってほしいね。

 一週間ほどの時間をかけて全員に作ったイヤーカフは、表から見えるところにはそれぞれの神様のお印を飾り文字でデザインし、内側に魔石をはめ込んだ。
 右耳用は浄化の魔道具に、左耳用は神様の権能に合った魔法陣を刻んだ。

「これは……」
「其方の周囲には規格外な奴しかおらんようになるかもしれんな」

 でき上がった物はお守りの域を超えた魔道具になったけど、元々規格外のヒトしかいないし問題ないと思います。安全第一、彼らを守れるなら多少のことには目をつぶってもらいましょう。
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