ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

文字の大きさ
5 / 584
プロローグ

第5話  朝食

しおりを挟む

うぅ~ん。何だか頭がぼーっとするし、目が開かない。
まだ眠いけど、仕事に行かないと。
天気がいいなら洗濯もしてから行きたいし、はぁ、起きるか……。
寝ぼけ眼でベッドから下りようとして……落ちた。

ドターン!



バタバタバタ   ガチャ‼

「どうしたんじゃ‼」

慌てた感じのアルクさんが入ってきて、しっかりと目が覚めた。

「おはようございましゅ。寝ぼけて落ちました。大丈夫です。」

昨日あのまま泣き疲れて眠ってしまったらしい。
アルクさんのベッドだろうか、かなり大きなベッドで眠っていたようだ。
寝惚けて自分の今の大きさを見誤っていた。というか日本だと思っていた。

床に寝転がったまま朝のご挨拶。
余計な力が入っていなかったからかとても上手に落ちたようで、ベッドからの転落は恥ずかしいだけで体の痛みは ほとんどない。
アルクさんに優しく抱きかかえられたまま リビングらしき部屋へ移動する。

「昨日あのまま眠ってしまったからのぅ。お前さんに合う大きさのベッドは今日用意するからな。
さて 朝はこんなものしかないが 足りんかったら言うてくれ。」

のんびりした話し方なのに、テキパキした動きで準備を進めてくれるアルクさん。
抱っこしてた私を 背の高い子供椅子に座らせ、顔を水の塊が包みこんだと思ったら すぐなくなって、アワアワしてるうちにテーブル上に パンとミルクと少し焦げたスクランブルエッグとソーセージが並べられた。
あまりの展開に口が開いたままポケーっとしてしまっていた。

山盛りのパンに、黄色い卵の山と お肉の山を 自分の前に置いてニコニコ笑顔で座るアルクさんは、口が開いたままの私を見て少し焦ったようだ。

「どうした?やっぱり頭を打ったりしたか?痛かったり気持ち悪かったりしたか?」

今の水のこととか、この椅子のこととか、アルクさんの食事の量とかに驚いていただけだけど、先ほどの転落による痛みを心配させてしまったようだ。

「うぅん。痛みはほんとにないから大丈夫だよ。ごはんが沢山でびっくりしただけです。
ふわぁ~、おいしそう。アルクさんありがとう。いただきま~す。」

心配させないように笑顔でいただきますのごあいさつ。
アルクさんは少し心配しながらもそれなら、と一緒に朝食をいただきました。


あれだけあった山盛りの卵も お肉もパンも ペロリと平らげたアルクさんに驚きつつも、私もしっかりいただきました。
ふぅ、おなかいっぱい。
ゆっくりミルクをいただきながらアルクさんを見ると、優しい眼差しで私を見ていた。

「元気になったようじゃな。よかったよかった。
さて ヴァイオレットちゃん じゃったな。

昨日言ったが、わしは アルクという熊獣人じゃ。
今はこの村で家財道具……そうじゃの、ベッドや机なんかを作っておる。
嫁さんは数年前に死んでしもうて、息子は二人とも成人して冒険者として色んな所に行っておるようでな、今は一人暮らしをしとる。
この家も一人じゃと広すぎるからな。ヴァイオレットちゃんがいてくれると寂しくなさそうじゃ。」

ニコニコしたアルクさんのお話に、あの子供への対応の慣れや、この子供椅子の存在も納得である。
ていうか もしかして昨日の夜とかでこの椅子作ってくれたの?凄くない?

「このイス、アルクさんが作ってくれたですか?とっても座りやすいです。」

背もたれのカーブとか、肘置きのすべすべ感とか椅子の安定感とか。本当に座りやすい。これがそんなにすぐにできちゃうの?

「おぉ、嬉しいの。ありがとう。わしは木魔法が得意じゃからな。小さい家具はすぐに作れるんじゃよ」

嬉しそうなアルクさんだが、なんと。キマホウとな?
マホウ? 魔法か!ということは ”木” 魔法か!?
そうだよ!昨日の滝のような情報の中にも魔法の情報あったよ!
朝の水は生活魔法か!

うわぁ~! 魔法少女☆じゃないですか!これぞ異世界転生‼
母からは魔法を使う前の魔力操作を教えてもらってて、実際に使うのは魔力操作が上手になってから。って言われてたから、実際に自分で魔法を使ったことはないんだよね。
この世界の人は 生活魔法は大体の人が使えて、それ以外の魔法も得意や不得意はあってもいろいろあるみたい。
ただ、聖属性と闇属性は使える人が少ないって言ってた。
母は聖属性が得意だったみたいで、冒険者をしていた時は回復役をメインでやってたみたい。あの可憐なイメージから冒険者とかって想像つかないけど、冒険者ってのも異世界あるあるだから、興味津々である。



~~~~~~~~~~~~~~~
お読みくださりありがとうございます。
面白い、ヴァイオレットの成長を見守ってあげたい、そう思って下さったら 是非♡の応援を頂けると飛び上がって喜びます( *´艸`)  
            
しおりを挟む
感想 109

あなたにおすすめの小説

私を裏切った夫が、後悔しているようですが知りません

藤原遊
恋愛
政略結婚として、公爵家に嫁いだ私は 愛のない夫婦関係を「仕事」だと思い、正妻の役目を果たしてきた。 夫が愛人を持つことも、 その子を屋敷に迎え入れることも、黙って受け入れてきた。 けれど―― 跡取りを、正妻の子ではなく愛人の子にする。 その言葉を、人前で軽く口にした瞬間。 私は悟ったのだ。 この家では、息子を守れないと。 元々、実家との間には 「嫡子以外の子は実家の跡取りにする」という取り決めがあった。 ならば話は簡単だ。 役目を終えた私は、離縁を選ぶ。 息子と共に、この家を去るだけ。 後悔しているようですが―― もう、私の知るところではありません。

【書籍化決定】アシュリーの願いごと

ましろ
恋愛
「まあ、本当に?」 もしかして。そう思うことはありました。 でも、まさか本当だっただなんて。 「…それならもう我慢する必要は無いわね?」 嫁いでから6年。まるで修道女が神に使えるが如くこの家に尽くしてきました。 すべては家の為であり、夫の為であり、義母の為でありました。 愛する息子すら後継者として育てるからと産まれてすぐにとりあげられてしまいました。 「でも、もう変わらなくてはね」 この事を知ったからにはもう何も我慢するつもりはありません。 だって。私には願いがあるのだから。 ✻基本ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。 ✻1/19、タグを2つ追加しました ✻1/27、短編から長編に変更しました ✻2/2、タグを変更しました

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~

ふわふわ
恋愛
「お姉様の婚約者、私がいただきますわ。だって“公爵令嬢”ですもの」 義理の妹コンキュはそう言って、王太子との婚約を奪いました。 父はそれを容認し、私は静かに受け入れます。 けれど―― 公爵令嬢とは“地位”ではなく、“責任”の継承者。 王宮で礼儀も実務も拒み、「未来の王太子妃」を名乗った義妹は、わずか三日で婚約破棄。 さらに王家への不敬と統治能力の欠如が問題視され、父の監督責任が問われます。 そして下されたのは――家ごとの褫奪。 一方で私は、領地を守り、帳簿を整え、静かに家を支え続ける。 欲しがったのは肩書。 継いだのは責任。 正統は叫びません。 ただ、残るだけ。 これは、婚約を奪われた公爵令嬢が “本当に継がれるべきもの”を証明する物語。

【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。

みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」 魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。 ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。 あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で一人の騎士と運命的な出会いをする。 【2024年3月16日完結、全58話】

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので

モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。 貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。 ──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。 ……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!? 公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。 (『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)

恋は、母をやめてから始まる――正体を隠したまま、仮の婚約者になりました

あい
恋愛
両親を失ったあの日、 赤子の弟を抱いて家を出た少女がいた。 それが、アリア。 世間からは「若い母」と呼ばれながらも、 彼女は否定しなかった。 十六年間、弟を守るためだけに生きてきたから。 恋も未来も、すべて後回し。 けれど弟は成長し、ついに巣立つ。 「今度は、自分の人生を生きて」 その一言が、 止まっていた時間を動かした。 役目を終えた夜。 アリアは初めて、自分のために扉を開く。 向かった先は、婚姻仲介所。 愛を求めたわけではない。 ただ、このまま立ち止まりたくなかった。 ――けれどその名前は、 結婚を急かされていた若き当主のもとへと届く。 これは、 十六年“母”だった女性が、 もう一度“ひとりの女”として歩き出す物語。

処理中です...