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新しい生活
第17話 お父さんと体力づくり
しおりを挟む昨日は この世界での休日といえる聖の日だったので、マジックバッグの中身の確認をして そのほとんどを 大人になるまでは死蔵しておくことになりそうな事を確認し、お父さんから生活魔法を教えてもらって過ごした。
お父さんと出会って1週間、やっと【クリーン】が使えるようになったのは 本当に嬉しい。
おトイレの後に お父さんを呼ぶのは、成人していたらしき私からすれば 非常に恥ずかしい事だったのだ。
物凄く、物凄くお願いをして、トイレの扉の前からクリーンをかけてもらっていたから、初日よりはマシだったけど、それでもトイレの度にお願いするのは精神的にガリガリ何かが削られていく感じだったんだよ。
生活魔法のクリーンは不思議魔法だ。
汚れを分解しているのかなんなのか、汚物が消えてなくなるのだ。
水の玉に包まれたと思えば、玉が弾ける時には何も残ってない。
だけど お皿洗いとか、野菜の土を落とすとかは、お皿も野菜も残っていて、汚れと土だけがなくなる。
洗顔もそう。顔は削れない。
お風呂のお湯は川の水か 水魔法で貯めた後に 湯沸かしの魔道具を使っている。
お風呂上りにクリーンをかければ、汚れたお湯はなくなり、浴槽も綺麗になる。
聖魔法の浄化というのを使えば、お湯はそのままで汚れだけを取り除くらしいけど、水魔法が使えなくて 川が近くに無い場所なら その方が良いかもね。
そんな便利魔法があるから、この村に生活排水というのが存在しない。なんなら家のあちこちに排水溝がない。
トイレも穴の開いた椅子に桶だ。
お父さんのサイズでは、私が完全に嵌るというか落ちるので、個室の中に小さなトイレポットを直ぐに作ってくれていた。
他の国や町がどうなのか知らないけど、生活魔法は洗礼式を受ける頃には大抵の国民が使えるらしく、その種類の多少はあれど、絶対的に必要とされている 洗浄魔法のクリーンと、竈に火をつける着火魔法のバーン、お部屋を明るくする 照明魔法のライト、この3つが初心者セットとなるらしい。
この他に 濡れたものを乾かす乾燥魔法のドライ、鍵の開け閉めが出来るロックとアンロック、1体1の会話で防音するときの沈黙魔法 サイレントなどが上級らしい。
後半二つは 冒険者なら必須の生活魔法らしい。
「まぁ全部 属性魔法で同じようなものがある。昨日サブマスが部屋全体に防音結界をしていたのもそうじゃな。サイレントは狭い場所で使うことが想定されとるから、魔獣討伐とかで声が出せん時に合図を出し合うのに使ったりする。
ダンジョンでは宝箱なんかもあって、アンロックはよく使う」
おぉ!ダンジョン!
「お父さん、ダンジョン行ってみたい!」
言った後に お父さん自身も「やべっ」って顔してるけど、ダンジョンって冒険者になるなら行くべき場所じゃんね。
「あぁ~、まず銅ランクにならんと村の外での依頼は出来ん。
街によっては薬草採取なんかが外壁の外ってことで、例外もあるんじゃが、うちの村は中で充分賄えるから、青銅までの依頼は十分熟せる。
ある程度の魔物が倒せるようになってからじゃないと遠出もさせられん。
銅ランクになって 魔法も使える種類が増えた時は、儂が一緒に行くからそれまで体力作りから頑張るんじゃ」
ワクワクさんでフンスしてたら お父さんが苦笑いしながら提案してくれた。
頭ごなしに駄目だと言わないのが嬉しい。
そりゃお父さんに全部お任せで行くんじゃ、おんぶ紐で行くのと一緒だもんね。
どうせなら自分で色々見たいし、採集したいし、討伐したい!
「うん、お父さん、私 銅ランク目指すね。薬草採取は得意なの。お母さんとよくやってたから。
ここの薬草の種類 昨日見忘れてたから、明日 学校終わったら見に行っていい?
その後採集してみたい!」
「ははっ、そうじゃな。学び舎が終わって資料を読んで、昼ご飯を食べに帰ってきたら、この周りで薬草採取してみるか」
「うんっ!学校楽しみ!」
◆◇◆◇◆◇
という休日を過ごして、今日は初めての学び舎だ!
遠足前にワクワクしすぎて眠れない。という感じの事はなく、魔法の練習と畑作業でしっかり疲れて爆睡出来ました。
いつもより少し早い朝。
正確な時計は この村にはないのか、皆 太陽が昇り始めたら働き始め、沈めば家に帰る。というサイクルで動いている。
完全に登りきってはいない太陽だけど、春の後半でもある今は温かさを齎せてくれる。
地球と同じように四季があるこの世界、今は1年の二つ目の季節、水の季節。日本では春と同じだね。
夏は火の季節で、秋は風の季節。冬は土の季節だ。
およそ3か月で季節は移り替わり、土の季節の初めに国民は1歳年をとる。
誕生日なんてものを祝っているのは 貴族くらいで、平民は年の初めに全員一緒におめでとう。となるのだそうだ。
ギルドカードも登録日や誕生日に関係なく、新年に年齢欄が書き換わるらしい。今から楽しみだ。
まぁ、そんな訳で 春の終わりという事で日が昇るのも早いのだ。
お父さんと朝食を一緒に食べて、1人でトイレに行ってクリーンをかける。
練習を沢山したいから、食器洗いも私がやる。
お父さんは洗い終わったお皿を片付けてくれる。食器棚はお父さんサイズで届かないからね。定在適所である。
「お父さん!早く‼」
「そんなに急がんでも大丈夫じゃがなぁ」
「だって、体力つけるのに歩くんだから。お父さんみたいに足長くないから時間がかかるんだよ」
銅ランクで魔獣討伐をするまでには、体力増強が急務なのだ。
別に体力が無いわけではない。母との生活でも薬草採取や 薬草栽培をしていたから畑の世話もしていたし、魔力操作の練習はしていたからね。
ただ、冒険者を目指すには足りないし、獣人の子供達の動きを見ていたら 全然追いつけそうにないからね。
冒険者ギルドのある場所は、お父さんの家から距離がある。
お父さんの家は村の東端、東門のすぐそばにあり、北には川が流れている。
川は村の中心より少し上を横断していて、村長さんたちは川の向こう側に家がある。
川の向こう側は、村長さんたちの親族が住む家が数軒ある以外は 畑になっている。
もちろんそれ以外にも畑はあるけど、大部分は村の柵の外側で、村を囲うように畑がある。
お父さんの畑は 家のすぐ裏で、木が沢山ある小さな森の中にある。
1人暮らしになって、家庭菜園レベルまで縮小していたらしいけど、私が来たから再開しようと ここ数日畑を耕してたんだよね。
で、冒険者ギルドは川沿いに歩いた西端、西門のすぐそばにあるから 私の短い足で歩いて行こうとなると随分時間がかかるのだ。
お父さんが玄関にロックをかけるのを見て、先に歩き出す。
一昨日通った道だから大丈夫。
「ヴィオ~、そこは右に曲がるぞ~」
自信満々にずんずん歩いてたら、交差点で後ろからお父さんの声が飛ぶ。
アレ?そうだっけ?
直進しようとしてたけど、右だったらしい。
「そこは左じゃぞ~」
むむ?こんなに曲がったっけね?
次の交差点でもお父さんから声がかかる。
お家は然程密集していないから、開けて見えてたはずなのに、目線が低い今は 巨大な家が沢山で違う道に見えてくる。
大きな木が見えてたはずの場所に来ても見えないから迷子になったのかと心配になる。
「どうした?疲れたか?」
こないだはお父さんの腕の中から見ていたから、とっても安心していた道なのに、知らない町みたいに見えて足が止まってしまっていた。
覗き込んだお父さんに ひょいと抱え上げられ、縦抱っこされる。
「はじめてにしては よう歩いたな。ほれ、あともう少しで休憩所じゃったな」
楽しそうなお父さんの視線を追えば、探してた大樹が見えた。
さっきまでは家で見えなかったのに、木はサワサワと風を受けて気持ちよさそうに立っている。
子供が何でそこで迷子になるんだ?って言うのが体感できた。
目線が違うだけで、こんなに不安になって、違う道に感じるなんて思わなかった。
お父さんが後ろにいなかったら、やみくもに別の道へ走ってたかもしれない。余計迷子のループにハマるのにね。
ギュッとお父さんの太い腕にしがみ付けば、左手でポンポンと頭を撫でられる。
そうか、怖かったんだ。
絶対的に安心な場所に戻れたことで、さっきまでの不安な気持ちが 恐怖だったんだと気付く。
推定成人だったはずなのに……。
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