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学び舎に参加
第23話 授業の終わり
しおりを挟む魔術の授業が終われば今日の授業は終了だ。羊の三姉妹は魔力の放出をしている訳ではないけれど、体内で魔力を動かすのって慣れるまでは結構大変だからね、ぐったりしているように見える。
それでも魔力が枯渇するほどに使った人はいないのか、はじめに暴走させかけたトニー君以外に回復薬を飲んでいる人はいなかったようだ。そのトニー君も「次はちゃんとしたのを打つ!」とか言ってたから、お薬と休憩のお陰ですっかり回復したようだね。
「魔法と武術、この訓練場での授業は座学の授業より少し長いの。はじめたばかりの時は、自分の体力や魔力を把握できなくて無理しがちだから、必ず休憩を取りながら受けるようにね。
先生たちはあちこち見て回るから気付いてもらえない事もあるし、勝手に休んでも怒られることはないから安心していいわ。そうね、マーレさん達は冒険者を目指していないし攻撃魔法とかの練習に参加していないから、何か困った時にはマーレさん達に聞いてみるのがいいわ」
「あらぁ、そうねぇ。私たち運動の授業も殆ど見学だもの。気にしておくわ」
「まぁ、そうよね。5歳の人族と獣人族では体力がきっと違うから、無理しないように見ておくわ」
「あらまぁ、分かったわ。ヴィオちゃん、いつでも私たちを頼って頂戴ね」
授業の後にケーテさんが訓練場での注意事項を教えてくれた。この広さの訓練場で先生が一人で見て回るのは、確かに結構大変だし目が届かないよね。どうしても危険性が高い6~7歳グループに比重は偏るだろうし、無理はしないようにしておこう。
「ヴィオ、今日はこの後どうするんだ? 走るんだったら付き合ってやってもいいぞ?」
帰る準備をしていたら、レン君が周りをウロウロしながら聞いてくる。すっかり懐かれたようだけど、猫ってもっと警戒心があるんじゃないんですか?
「お父さんが迎えに来てくれてるはずだから、資料室で薬草とかを調べるの。それでお昼から村の中で出来そうな採集とかするつもりなんだ」
「びお薬草のいらい受けるの~?」
「うん、薬草とかはいつも出てるってお父さんが言ってたから、勉強も兼ねて受けるつもりだよ」
そう答えれば、少し悲しそう、いや 拗ねている? いや、悔しそうなレン君の顔。
「レン君どうしたの?」
「おれまだ冒険者登録してないし……」
そうなの? 皆とっくにしているんだと思ってたけど、そうでもなかったりする?
「あぁ、村の子供は7歳の洗礼式の後に冒険者登録をすることが多いんだ。ヴィオは他所から来ただろ? 身分しょーめーにもなるから、村の外から来た人とかでギルドカードがない人は7歳になってなくても登録したりするんだぞ」
側で話を聞いていたトニー君が教えてくれた。へぇ、そういうことなんだ。
それにしても洗礼式とは何だろうね。お父さんに後で聞いてみよう。名前からして神殿が絡みそうだけど、この世界の神殿が良い物かが不明だよね。聖属性を持っている事が分かる様なら近づかない方が良い気がするし。
「それに弟がいるから、俺は弟の面倒見るんだ。兄ちゃんがその間に依頼するんだ」
あぁ、それでこないだ追いかけっこしてたんだね。
ロンくんは午前中一人でお留守番してたら退屈だろうし、かといってお母さんのリリウムさんはお店があるからかまえないだろうしね。
「そっかぁ、レン君えらいね。弟の面倒も見れて、お兄ちゃんもお家のこと心配しないで依頼が出来るんだもん。それに今から字の練習をしてるから、登録も自分で書けるね。私はお父さんに書いてもらっちゃったんだ」
「びお書けなかったんだね~。ぼく自分の名前が書けるようになったから、お父さんに自慢しよ~」
線を上手に書けた後、自分の名前だけは書けるようになったんだよね。私たちの名前や村の名前までは時間が無くてできなかったけど、次の時間の楽しみが出来た。
「おれ、えらい? そっか、えへへ、そっか~」
お兄ちゃんが冒険者登録を先にした事が羨ましいとかもあったのかな? だけど、えらいと褒めたことでとても嬉しそうだし、今日皿洗いを頑張ればきっとリリウムさんも褒めてくれるだろう。
「うん、えらいよ。あとは依頼としてじゃなくても、薬草の種類を覚えて、ロン君と薬草の上手な取り方とか練習しても良いんじゃない? 冒険者になった時には、薬草名人とかになってるかも!」
なんてちょっと適当な事を言ってしまっただろうか。と思ったけど、これには2人が思った以上に食いついた。
「そっか、ポイントにならないから意味がないって思ってた」
「めいじん! かっこいい」
「レン、帰るよ。って、どうしたの?」
「ハチも 帰るぞ。って、どうした?」
帰る準備が整った兄達が迎えに来たんだけど、薬草名人という言葉に想いを馳せている弟たちを見て驚いている。さっきの話を2人に伝えたら少し考え何やら相談し始めた。
そろそろ帰ってもいいかな? 羊三姉妹やケーテさん、トニー君が帰った事でお父さんが心配してそう。
「ルン君、ナチ君、レン君、ハチ君、お父さんが待ってるから帰るね」
「あー、そうだよね。ヴィオちゃんまた明日ね」
「そうだな。父さんにも聞いてみたいし、また明日だな」
4人に見送られて階段へ。うっ‼ そうだった、この階段という敵が待っていたんだった。下りるよりは怖くないからいけるか。
鞄を斜め掛けにし、普通に駆け上るなんてできない。一段の高さがそれなりにあるので、えっちらおっちらよじ登る。格好悪いけど両手も使いますよ。
邪魔にならないように階段の端っこで、次の段に手をついてよっこらしょと登る。両足が揃ったら次の段へ。これ、端だけはもう一段ずつ増やしてくれたら上りやすいのになぁ。なんて意味のないことを思いながら登っていれば、後ろから兄弟たちが追い付いてしまった。
「びお、あそんでるの~?」
「ヴィオ何してんだ? まだ帰ってなかったのか?」
遊んでないし、帰るところです。身体のサイズは然程変わらない筈なのに、ピョイピョイと軽やかに登っていくのは何なん?
「あ! そうだよね、普通の人族の子供にはこの段差は大きいよね」
「オレ父さん呼んでくる!」
兄二人組があちゃぁ! てなってるし、ナチくんはタキさんを呼んできてくれるらしい。多分お父さんがいるから、お父さんが良いんだけど……。
だけど大人が来てくれそうだから、ちょっと休憩しちゃいますよ。はぁ、よっこらしょ。
「ヴィオ!」
お父さんの声が上から聞こえたと思ったらすぐに駆け降りてきて、ひょいと抱え上げられた。おぉ、急に目線が高くなって びっくりですよ。
「ナチ、呼んでくれてありがとうな。ルンも、気付いてやってくれてありがとうな」
兄二人組は頭をワシャワシャ撫でられながら、とても嬉しそう。大きな手で耳の間をワシャワシャするの気持ちよさそう。そのままお父さんの抱っこで1階まで戻り、レン君たちともまた明日の挨拶をして別れた。
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