ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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学び舎に参加

第24話 資料室

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「1日で友達が出来たんじゃな」

 2階にある資料室に上がる階段でお父さんが嬉しそうに訪ねてくれる。優しかった三姉妹の事、先生たちの事、授業の事、同年の2人の事など、学び舎での事を話す。

「そうかそうか、心配はいらんかったようじゃな。楽しんでおったようで良かった。さぁ、今日は村の中で見つけられる薬草じゃったな」

 私の話を聞く為にゆっくり歩いてくれていたお父さん。だけど資料室に着いちゃったから、続きはまた後でだ。
 資料室には今日もミミーさんが居て、既にお願いしておいてくれたらしい植物辞典を用意してくれていた。辞典と言っても然程分厚い訳ではない。
 この世界には植物紙らしき紙があるけど、羊皮紙もある。ちょっとした書きつけなどは木の板だし、伝言などは黒板を使う。本に使われるのは植物紙が多いけど、資料室には羊皮紙で作られた本もある。羊皮紙の本は分厚く、表紙もゴテゴテと煌びやかな感じで、魔法の事が書いてあるような本は大体羊皮紙で作られているらしい。表紙のせいなのか高価だそうで、資料室でもその多くが持ち出し禁止の棚に収納されているんだって。

「こっちは村長が作ってくれた薬草辞典ね。こっちはこの村の周辺を含めたプレーサマ辺境伯周辺で採集できる植物一覧の辞典よ」

 薬草辞典は総20頁ほどの薄い本だけど、とても細かく描写されている。左の頁に植物の絵があり、表側、裏側の見た目なども書かれている。右の頁には草花の見た目、棘がある、根っこから採る、茎の二節目のところで切り取る、毒草と似ているから注意、などと細かい事が書いてある。

 一覧辞典は領地全体での物だからかかなりページ数が多いけど、中は薬草辞典に比べると少し寂しい。
〈直接食べても効果はないが中級回復薬の材料になる〉〈○○草に似ているが毒草。腹を下す〉〈トカゲ系の魔物への目くらましに使える〉〈苦い〉など、薬効というより感想が多い。

「あぁ、一覧辞典は冒険者たちの聞き取りで作っているから、村長が作るのに比べるとね……。だけど、基本的な効能は調べたうえで記載されているから確かよ。その本は新しい情報が入ったら、追記されていくようになっているのよ」

 あぁ、それでか。植物一種類につき1頁で作られた本は、頁の上1/3に植物の絵が書いてあり、下2/3に説明が書いてあるんだけど、空白が多い(感想しか書いていない)のと、効果効能などで埋まっている頁があるのだ。
 記載されている文字が同じに見えるという事は、書いているのは同じ人、多分ミミーさんなんだろう。

 用意してくれたミミーさんにお礼を言って、先日借りた部屋に入る。資料室の個室は予約もできるけど、空いていれば自由に使ってよいのだ。借りた本を横に置いて、学び舎では使わなかったノートと鉛筆を取り出す。

「お父さん、授業では小さい黒板を使ったからノート使わなかったんだ」
「そうなんか。まぁ子供らでは悪戯して書けんくなるかもしれんからなぁ。ノートはヴィオのもんじゃから、好きに使えばええぞ。無くなる前に買うから言うんじゃぞ」

 お父さんはそう言って私の頭を撫でる。甘やかされてるなぁ、とは思うものの嬉しいのが本音で、娘にして良かったと思ってもらえるように色々頑張ろうと改めて心に誓う。

 村長の薬草辞典を読みながら特徴を書き写す。流石にこの丁寧過ぎる絵を写すのは無理だけど、葉先の色とか茎の特徴とかは書いておく。お父さんは隣で一覧辞典を見ながら紙に何かを書いている。

「お父さんも植物採集に行くの?」
「ん? あぁ、これか? 儂が冒険者時代に採集したことのあったもので書いてない情報をこっちに書いておるんじゃ。これをミミーに渡せば確認して辞典に追記されることになっておるからな」

 現役冒険者時代に多くの情報を提供し、この辞典の半分くらいはお父さんが持ち帰った内容だと聞いて、相当やり手だったのではないかと思った。息子さん2人もこの村から通う冒険者ではなく、旅に出ることが出来るだけの実力があるってことだもんね。お父さんに鍛えてもらったら、私も凄い冒険者になれちゃうかもね!
 ちょっとワクワクしながら、お父さんに今日採集する予定の薬草を教えてもらい書き写していく。


「できた!」
「おぉ、上手いもんじゃ。その2つは薬を作る時に絶対使う薬草じゃからな。いくらあっても困らん。似ておる毒草もあるから、見分けが出来るようになるまでその二つの採集をするのがええ」

 確実に覚えるのが大切なのは母からもよく言われていた。毒草の中には、薬草と瓜二つなのに、口にすると吐気・嘔吐・めまいなどの酷い症状を出すものもある。
 草の裏側、根っこの状態、葉脈の流れ方などが微妙に違うから、それらをしっかり見るようにと何度も厳しく指導されたからね。これだけは慣れないと無理。
 レン君たちに言ったのもそれが理由だったけど、この辞典をよく読んでから行けば大丈夫な気はする。
 資料を写せたのでミミーさんに辞典を返し、お昼ご飯の為にギルドを出た。

「お父さん、私 歩きたい」
「学び舎で頑張り過ぎて疲れとるんじゃないか? 大丈夫か?」

 階段が多いギルドではお父さんの抱っこで移動してたけど、体力もつけたいからね。行きは学び舎の時間があるから制限時間があったけど、午後は薬草採取の予定しかない。帰宅に時間がかかっても大丈夫なのだ。お父さんも私のやる気が伝わったようで笑いながら下ろしてくれた。



  

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