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学び舎での日々
第38話 学び舎4日目 体育のリベンジ
しおりを挟む今日の最初は 算数の授業で、トランプがまだ出来上がっていないから 前回の続きで足し算を行った。
レン君もハチ君も 基本スペックは高めで、一度覚えたことは忘れない。
10までの数字はちゃんと言えるようになってたし、一桁の足し算は両手を使うことはあったけど、ちゃんと出来てた。
同じように引き算も ジャガイモの絵を書きながら教えたら、二人とも問題なくできたよ。
二人は計算が出来たことを殊更喜んでいたけれど、今日の私の本命はそれではない。
前回 走っただけでヘロヘロになり、最後の一周は生まれたての小鹿になっていた無様な自分を忘れていない。
そう、今日は体育の、イヤイヤ違った。武術訓練のリベンジなのだ。
今日の私には、身体強化という裏技があるのだ。
わーはっはっは、走り込み!恐るることなし!
という事で、今日はやる気でパンツスタイルなんですよ。
スカートに見えるように作られているけど、キュロットです。
リリウムさん素敵なお洋服をありがとうございます。
本当は 短パンとかで充分なんだけど、この世界というか村では 女の子はスカートってイメージがあるらしいんだよね。
勿論冒険者は女性でもズボンをはいているみたいだけど、私は見た目年齢5歳の女児だからね。普通は冒険者登録してない年齢だもん。
でも運動しやすい服が欲しいってお願いしたから、キュロットスカートと木綿とか麻のシャツを沢山作ってくれたんだ。靴のミリーナさんは、可愛いお出かけ靴と、走りやすい運動用の靴を作ってくれた。
これも両方に小さなリボンがついていて、ちゃんと可愛いのが凄い。
気合十分の私も、みんなと同じように身体を動かして ゆっくりストレッチ。
先生が入ってきたら、前回と同じように「走るぞ~」とランニングが始まった。
羊の三姉妹は、全く動じることなく 最初から歩いている。
「ヴィオ、今日は無理すんなよ?」
「びお、ゆっくりでいいんだからねぇ~」
そんな声をかけてくれた二人に微笑んで、ストレッチしながら足に纏わせる魔力に意識を集中する。
昨日はマ〇ンガーZの脚部装甲ばりに魔力を纏わせたけど、今日は薄く、均一になるように、血管と筋肉を薄い膜で覆うような気持で魔力を纏わせる。
……うん、いけそう。
とはいえ、獣人の運動能力とは差があるからね、無理はしないで自分なりのペースで走る。
うん、前回よりも足が軽いし 土を蹴るのも楽だ。2周目に入る時に先発組に追いつかれたけど、前回は1周目の半分で抜かされたことを思えば、凄い成長してる!
2周目まで同じペースで走りきったところで、一旦休憩。汗も良い感じにかいてるし、まだ疲れ果ててない。良いね。ベンチに腰をかけて水分補給をしながら自分の足を見る。
強化魔法をかけていても、見た目は変わらない。ムキッともしていない。
きっといま解除すればズゥンと来るんだろうけど、今のこの状態で回復魔法をかけたらどうなるかな。
筋肉の成長を思えば、回復魔法の多用は避けるべきとも言われているけど、思いついたからには 試したくて仕方がない。
先生たちは3周目を終えそうだし、三姉妹はゆっくり歩いて2周目に入るみたい。2周は運動するって言ってたから、やるなら今かな?
えっと、サブマスは【ヒール】の時に〈聖なる力で彼の者の回復を願う〉って言ってたよね。
あれは術者が相手を回復しようと思ってるよって事だよね。
詠唱は自由なんだろうけど、回復を願う。って言葉は誰かに『願ってるから治してやってね』って言ってるみたいだよね。
という事で、私は私の足の疲れを治したいだけなので誰かには願わない。
強いて言うなら自分の魔力に『そういう効果を出してね』って願うかな。
では具体的に今の私に必要な回復は、怪我をしている訳ではないので、疲れた筋肉をリラックスさせる効果が欲しいよね。
運動の後の疲労回復と言えば ストレッチ、入浴、マッサージが思い浮かぶ。
ストレッチを魔法でするのはちょっと想像が出来ないので、時々マッサージ屋さんでやってもらってた 袋みたいなのにつつまれて、ギュウギュウ押してもらえるアレを思い出す。
足湯をしてるみたいに気持ちよくなれるアレ、ホットリフレだっけ。
温かい=火 だと熱いよね。だったら足湯という事でお湯かな。
圧をかけるなら重力?でも圧し潰すか軽くするイメージしか湧かないから、風船みたいに空気圧かな。
空気圧を下から順に大きさを変えて並べる感じ。
いや、それなら水風船で良いかも。温かいお湯風船。うん、それでいこう。
自分の足の周りにヨーヨーサイズの水風船をいくつか想像して魔力を練る。
ネリネリ ネリネリ
風船を片足3個かな。ふくらはぎの裏側、挟むように2個と、表側から押さえるように大きいの1個。まずは片足でやってみよう。
ネリネリ ネリネリ
うんうん、良い感じの水風船が出来上がったね。風船って言っても水の玉だね、ビニールには包まれていない。
それを足の周りに配置して。
うんうん、良い感じのお風呂の温度になってるね。
風船を押し付けて……おぉ!温かくて気持ちいい。
それを下から上にギュッギュっと押し上げるように移動しよう。
お!お!お!これは、きもちが、よいよ!
膝まで到達したら、また足首に戻して 同じようにギュッギュッギュっと動かす。
温かさと リズミカルな動きがたまらん!
よし!反対側もやろう!
「ヴィオ、それなんだ?」
「かってに動いてる~?魔法?」
「‼⁉‼」
あまりの気持ちよさに集中しすぎており、まさかランニングが終わっているなんて気付いてなかった。
三姉妹は勿論、レン君とハチ君だけではなく、先生たちも覗き込んでいたことに驚いて、水風船がパシャンと割れた。
「はいはい、人の魔法は本人が教えてくれるならともかく、基本的には聞かないのがルールだ。
それにまだ授業中だぞ。さあ、自分たちの武器を選べ~」
パンパンと手を叩いて 生徒たちの気を散らしてくれたエデル先生。
私が焦ってたことにも気付いてくれたんだろう。ツンデレだけど優しい虎先生。イケメンっす。
皆も貸し出し武器のところに走って行って、其々の得意武器を選んでいる。
そう言えば、私の得意武器はまだ見つけてないんだよね。
将来の事を考えて暗器とか考えてたけど、それはまだまだ先の事。
「先生、私 まだ武器を使って戦ったことがないんですけど、はじめは何が良いとかありますか?」
分からなければプロに聞けってやつだよね。
先生はウーンと唸りながら、右、左と首を傾げている。
こんなちびっこ人族の扱える武器を探すのは大変かもだよね。
「まあ、長剣、大剣、ハンマー、斧はないな。武器に関しては まずは持てるかだろう。見てやるから全部触ってみろ」
消去法でした。
確かに私がそれらの武器を持てば、武器に圧し潰される未来しか見えません。
という事で、先生と一緒に武器保管場所へ。
色んな種類の鉄製の武器、木製の武器が置いてある。
まずは木製の武器で練習なんだろうね。鉄製のは冒険者用なのかな?生徒たちで鉄製のを使っている人はいない。
小さな短剣を先生から渡されるけど、私の手には随分余る。家で使っている薬草採収用のナイフは持ち手も調整されてるから 使いやすいんだけどね。
次に 木の弓矢を渡されたけど、弓が大きすぎて、引くことが出来なかった。
槍は長すぎて、私が棒に振り回される結果となった。
普通の長剣も腰に差した時点で、地面に擦っているし、鞘から抜くことが出来ないだろうとなった。
「あ~、まあ、あれだ。もう少し大きくなってから武器は選ぶべきだな。
今は体術を学べ。アルクは得意なはずだ。
あとは魔法を先に学べばいい。さっきのアレを見てたら、魔法は得意そうだ。
この授業では、走って基礎体力をつけることに集中すればいい」
私もそう思った。
先生、気を使わせてごめんね。でも一生懸命選んでくれて嬉しかったです。
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