ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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学び舎での日々

第39話 帰宅

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授業終了の鐘が鳴り、みんなが武器を元ある場所に戻して終了となる。
言われなくても ちゃんと元通りにするなんて偉いよね。
日本では 大人でも 貸し出しした物を借りパクしたり、返却日時が遅すぎて店から連絡して やっとだったり、戻しても元の位置に戻さないとかあったのに、小学校低学年以下の彼らは 汚れをクリーンで落としてから返却している。

「ヴィオちゃん、今日もアルクさん 来てるよね?呼んできてあげるね」

「あ、俺も昨日のお礼言いたいから一緒に行く!」

ルン君とナチ君が教室から駆け出して行ってしまった。
強化魔法をまだ解いてないから、階段上れそうな気がしてるんだけど、まぁいいか。

「私もね、昨日教えてもらって調べてきたの。
それに、銀の上級だったアルクさんが足止めの魔法をよく使ってたって聞いて、驚いたけど納得したの。木魔法なんて地味だって思ってたけど、護衛をするんだったら、全員で戦うよりも 補佐をする人も必要だなって思い直したの。
しばらく魔法の授業では 足止め魔法の練習をするつもりなの」

ケーテさんは帰る準備をしている私の隣で そんな話を教えてくれた。まだ若干8歳なのに、目立つ功績よりも サポートの大切さに気付けるって 凄いよね。
辺境伯の護衛騎士になるのが目標だって言ってるケーテさんが 敵の動きを阻害できる魔法を操れるようになれば、辺境伯サマも安心しそうだよね。
貴族の騎士団が出る様な時に来る相手は、大量の魔獣か、大量の盗賊とかだろうしね。
私にお礼を言われる理由は良く分からなかったけど、お父さんに言ったら喜んでくれると思うって言ったら「そうするわ」って嬉しそうに出て行った。

「おぉ、ヴィオ 終わったようじゃな」

入り口でケーテさんと一言二言交わしたお父さんが嬉しそうに教室に迎えに来てくれた。きっとさっきの話をしたんだね。

「あぁアルク、その子はまだここの武器をどれも使えなかったから、ここでは走り込みと体力をつけるようにだけ言ってある。体術をまずは教えてやってくれ」

「おぉ、エデルさん 助かる。そうか、そうじゃな。体術じゃったら教えやすいな。
ヴィオ、武器はまだ早かったようじゃな。まずは武器が無くても戦える技を教えてやろうな」

「えぇ~、いいなぁ、アルクのおっちゃん、おれもそれ教えて欲しい。だめか?」

「びおとレンがいっしょにするの~? それなら僕もやりたい」

お父さんを見たエデル先生が、武器を使えなかった話をしてくれた。
私だったら 伝え忘れてたかもしれなかったから助かります。
お父さんが体術を得意としてるのは本当なんだね。なんか嬉しそうだし。
そんな事を思ってたら、近くで私を待っていたらしいレン君たちが一緒にやりたいと言い出した。

「あ~~~、お前たちは今 自分に合った武器を見つけようとしている最中だろ?
ヴィオは持てる武器がないから体術をするんだ。それを邪魔することになるぞ?
お前たちは獣人らしく、運動能力は優れているんだから、人族の子供であるヴィオが同じようにはできん。アルクはその辺も調整しながらやることになるからな。体術をやりたいなら、この授業でも教えてやるからそれで満足しろ」


少し困った顔になったお父さんを見て、エデル先生が助言してくれたよ。
普段無口な先生なのに、今日だけで1週間分のお喋りしたんじゃない?ごめんね!
二人も邪魔をするつもりはなく、多分 他の授業と同じように 私と一緒にやりたかっただけなんだと思う。邪魔になるって聞いて ショックを受けている。

「レン君、ハチ君、私の体力がついて 二人と一緒にできるようになったら 一緒にやろうね」

「お、おう!そんときは おれが対戦相手になってやる」

「うん、そうだね。今日はびおも走れてたけど、こないだは駄目だったもんね。
あの不思議な魔法もいつか教えてね。じゃあ、ぼくお腹空いたから帰るね~」

「あ!俺も。って兄ちゃんまた先に帰ったし! ヴィオまたな」

一緒にやろうとお誘いすれば、二人のしょんぼり尻尾も ブンブン元気になりました。
大きく手を振って 帰って行った二人の姿を見送れば、お父さんが「不思議な魔法とは?」とエデル先生に聞いているけど、先生は魔法があまり得意ではないらしく「本人に見せてもらってくれ。よく分からん」だって。
とりあえず先生にはお別れのご挨拶をして1階に戻るよ。

「ヴィオ、今日は資料を調べるんじゃったな。一旦家に帰って昼ご飯を食べてから 戻ってくるんでええか?昼寝は後にするか?」

どうしよっかな。今はまだ強化魔法をかけてるけど、きっと昼寝したら解けちゃうよね。
1日に2回かけるのは負担になりそうだから、もうちょっと慣れるまでは1日1回にしたいんだよね。

「お父さん、この後お家まで歩いていい? さっきの授業でかけた強化魔法まだそのままだから、歩いて帰りたい。寝たら解けちゃうから、お昼過ぎは お父さんに抱っこしてもらうことになるけどいい?」

勿論OKという事で、一度お父さんの腕から下りる。
タキさんに伝言があるらしいお父さんが受付に行ったので、依頼ボードをぼんやりと眺める。

〈常時依頼:薬草採取 10本1束 50ラリ 1ポイント〉
〈村中依頼:肉屋 解体作業の手伝い ビッグピッグ1体50ラリ 1ポイント〉
〈討伐依頼:銅ランク 西の森 ホーンラビット〉
〈討伐依頼:銅ランク 西の森 ウルフ〉
〈討伐依頼:銀ランク 西の森 グレーウルフ、ブラックウルフ〉

私が普段受けているのは 常時依頼の薬草採取だね。
備考欄にカイフク草、マリキ草、ウルル草など、主に村の中で採集できる素材の名前と簡単な絵が書いてある。
特殊なものは別途買取してもらえるんだろうかね。
お肉屋さんが解体作業の依頼を出すって、かなり沢山狩れたってことなのかな?プロが依頼を出すって、余程だよね?

「待たせたな。ん?どれか気になるのがあったか? ヴィオには薬草採取以外 まだできんじゃろうが」

「うん、お肉屋さんの解体作業って、狩りかなんかで沢山ビッグピッグってのが手に入ったのかなって思ったの。
あとね、討伐依頼は 魔獣の名前はあるけど、値段とかポイントが書いてないのは何でかなって思ったの」

お父さんがギルドの扉を開けてくれて外に出る。
昨日と同じように お父さんには普通に歩いてもらう。強化してるから どれくらいなら無理せず歩けるかも試したいからね。

「あぁ、あの討伐もある意味常時依頼と同じじゃな。よく出る魔獣で、そのランクなら倒せるじゃろう相手じゃ。
ホーンラビットなら毛皮、角、肉、魔石が素材として買取できる。
ウルフの肉は固いから、毛皮と魔石が買取対象じゃな。
じゃが、倒し方によっては毛皮が使い物にならんこともある。そうなれば値段も変わるし、ポイントも少ない。そういう事で倒した数、買い取れる部分の量なんかで変わるから あれらには値段もポイントも書いてないんじゃ。
例えば何かが大量発生した時なんかは、何を何匹でいくら。というような依頼が出ることもあるぞ。」

ふむふむ、ラノベあるあるのゴブリンだと耳が討伐部位で、1体幾らみたいな書き方をよくされてたけど、そういう事ではないんだね。
いや、ゴブリンがこの辺にいたならそうなるのかな?
まぁ、まだ村から出られない私が知っても仕方がないか。追々覚えていこう。
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