ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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学び舎での日々

第44話 魔法の失敗と成功?

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布団の上に落ちていた木の葉は森に返却し、残った木の葉は今夜の練習用にマジックバッグに入れておく。朝の準備も慣れたもので、着替えをして【クリーン】で洗顔すればリビングへ。

「お父さん おはよう!」

「おはようヴィオ、よく眠れたか?」

お父さんは私より遅く寝て(たぶん夜中に一度は確認に来てくれているようだし)早く起きる。
一体どれくらい寝ているのだろうか。
いつもの 卵、ベーコン、パン、牛乳の朝ごはんを二人で揃っていただきます。

「今日は休みじゃから採集をするじゃろう?流石に1日中は飽きるじゃろうから、どっちか半日で体術をやってみようと思うんじゃが、どうじゃろうか?」

「んぐんぐ、ひょっとはってちょっと待って

急いで口の中にあるパンをかみ砕く。あぁ、牛乳も!

「おお、すまん、ゆっくり食べてからでええ」

「ん、やる!体術したい!どっちがいいかな。 
……午前に体術したら お昼寝で起きれなさそうだよね。
うん、午前に採集して、午後に体術の訓練おねがいします!」

自分の体力は過信しないことにしたからね。夕方に目覚めたら魔力操作の練習くらいしか出来なくなっちゃう。
そうと決まれば早く食べないと!
残りの卵とベーコンもパンに乗せて、一緒に食べる。
お父さんは「急がんでも十分時間はあるぞ」と言いながらも、ニコニコ笑顔だ。
私の5倍はある朝食なのに、全然急いで食べている感じはないのに、早送りをしているかのように お父さんの皿から食材が消えていくのは、毎朝の不思議現象だ。
結果、凄く急いだ私と、お父さんの食事終了時間は同じでした。


「あ!お父さん、今日は【クリーン】じゃなくて、水魔法でお皿洗いしてみてもいい?その方が練習になると思って」

お皿洗いをしようと思って思いついたことを相談してみる。
お父さんは不思議な顔をしたけど、直ぐに納得してくれたようで「やってみればええ」と許可してくれた。本当に私を信用してくれてるって思う。

さて、攻撃の必要はないから 水を出すだけで良いよね。
ラノベあるあるでは空気中から 結構簡単に水を出してたはず。
日本でもウォーターサーバーみたいなやつで 水を空気から作り出す!って凄いのが売り出されていた気がする。私は水道水を使っていた記憶しかないけどね。
まあとりあえずやってみよう!

空気を集めるとかは難しそうだけど、自分の魔力だと動かしやすいから、まずは空気に魔力を馴染ませよっかな。
フワフワ魔力を掌に集めて~、うん、なんか手汗かいてきたみたいな気分だけど 仕方がない。
集まった魔力を霧散させて~、うん、それを空気と一緒に集まれ~!
さっきの手の中にあった魔力よりも 大きな塊が集まってきたのが分かるので、この塊を……どうしよう。フィルターとかないから、絞ればいいかな?
うん、そうしよう。
塊を布みたく伸ばして~、タオルを絞るみたいに ギュ~!

ボタボタボタ

「ぎゃ~~~~!」

「ど、どうしたヴィオ‼ っと……これはどうしたんじゃ?」

思ってたより布幅が大きくて、お絞りして出てきた水が シンクを越えて溢れてしまった。
台所が水浸しです。
別室で他の用事をしていた筈のお父さんも、私の叫びを聞いて駆け付けたけど、台所の惨状を見て固まってしまった。

「【ドライ】」

お父さんが乾燥してくれたので、台所の水はたちどころに消えましたが、ひとまず【クリーン】でお皿洗いだけは終わらせました。

「それで、何があった?水魔法の練習じゃと言うておったと思ったが」

失敗したことを叱られることもなく、ただ心配したお父さんから質問を受けたので、素直に答える。
クリーンの水のように水玉を水魔法で出したかったけど、その水の作り方を考えてやってみたら 思ってた以上に大量の水が出てきて驚いたと。

「〈水をこの手に【ウォーター】〉これでええんじゃないのか?」

お父さんが短い詠唱で水玉を手の上に出す。クリーンで使うのと同じような水は、掌の上で少し揺ら揺らしながら存在している。
そうか、それだけでも良かったのか。
だけどその【ウォーター】の水は魔力だけ?それとも周囲の水蒸気を一瞬で集めたの?
私が不思議な顔をしている事に気付いたお父さんが、私がやろうとしていた【ウォーター】を見せて欲しいと言われたので、水浸しになっても良い様に裏の畑に移動することになった。
このまま採集もするので、移動前にお父さんと日課のストレッチをしてからね。



「じゃあ、やるね」

さっきと同じように魔力を掌に集めて霧散する。
やはり2回目だからとてもスムーズ。やりたいと思ったことが自動でスタートする感じ。掌で一度集めてっていうより、掌から直接霧吹きみたいに魔力が霧散してる。
『人間スプリンクラーや~』とか言いたい。

冗談はさておき、霧散した空気を集めるのは さっきより少なめにしておこう。
それらを集めて、布状にして、ギュ~ッと絞る。

ボタボタボタ

さっきと同じように何もない様に見える空間から、突然大粒の水が滝のように滴り落ちる。

「やっぱり受け止められないね。水を作るのと、水を使うのは違うのかな」

「……どう、いう、……は?魔力がヴィオから溢れたように感じた後、あの辺りに集まったのは分かったが、何故水が突然でたんじゃ?
いや、ヴィオは水魔法を使うつもりと言うておったから水が出たんじゃろうが、儂には分からんぞ?」

お父さんは水が出たあたりの空間を凝視しながらブツブツ言っているけど、サブマスだったら今のを見ても、何が行われているか分かってくれると思う。
それはともかく、多分この魔法じゃ水を作り出せるけど、貯めるとかは出来ても使い勝手が悪すぎるね。やっぱりさっきのお父さんがやったみたいな魔力でやる方が楽そうだね。
私は研究者でもないから、便利ならそっちでいいや。

ということで再び魔力を掌に集めて、魔力を水に変換させることだけを考える。
あぁ、この時に周辺の水蒸気も取り込めばいいのか。

「【ウォーター】」

水魔法のトリガーを唱えれば、お父さんが見せてくれたのと同じような水の玉が手の上でチャポチャポしている。
はぁ~、やっとこさ出来たよ。

生活魔法の【クリーン】は洗浄対象が綺麗になれば消えるし、水魔法の【ウォーター】は術者の魔力を変換して作られているから、純粋な水ではなくて魔力が水の形を作っているという事なんだね。
魔法を当り前に使っているこの村で、何故飲料水を川から汲んできているのか不思議だったんだけど理由が分かったね。
あれ?だけど自分で作った【ウォーター】なら自分の魔力を摂りこむ事にならない?だったら飲めそうだけど。そう思ってお父さんに聞いたけど 「水の形をしている魔力だから喉の渇きが癒されるわけではない」って事だった。
水魔法の攻撃をした後に 水浸しにならないのが証拠だそうだ。

ん?ということは私のお絞りウォーターはどうだろうか。
今もまだ地面は水溜りが出来ている。『水の形をした魔力』ではなくて、『魔力を使って空気中にある水蒸気から水を絞り出した』ものだから 実体があるんだろう。
という事は飲める水なんじゃない?

って事で、お父さんに伝えて実験!
お父さんとしても、ダンジョンに籠る冒険者にとっては飲料水が荷物の最重要アイテムであると同時に、圧迫の原因であり、深いダンジョンを踏破するときも、水切れで一旦地上に戻るなんてこともあったらしい。
一度 家に戻ってお風呂場で実験!
お絞りした水は受け皿である浴槽になみなみと注がれ、やっと成功した気分になる。

「あぁ、確かに水じゃが、これはヴィオの魔力が大分混ざっておるなぁ。魔力酔いになるかもしれんな」

お水を見ながらお父さんが言うから、混ざっている自分の魔力だけを引き寄せる。
霧散させたんだから、引き寄せるのも簡単である。
浴槽に残ったのは純粋な水だけ。何だったら空気中に含まれていた魔素さえ一緒に引き寄せちゃったから ≪純水≫ と言っても良いかもだね。

「お父さん、魔力抜いたからいけると思う」

「……本当じゃ。まったく魔力がない水になっとる」

ジッと水を見つめたお父さんが納得したようだけど、ちょっと放心しているよ?成功だと思ったけど失敗……?

「ヴィオ、これは凄い事なんじゃ。この魔法を皆が使えるようになれば、ダンジョンの攻略はうんと早く進むじゃろう。うちの国は川があちこちにあるから、他の国に比べたら恵まれとるが、他所の国では旅の途中に水を補給するのが大変なこともある。
村によっちゃあ日照りが続いて潰れるところもあったぐらいじゃ。この魔法があれば……、いや、いかんな」

「この魔法があったら 水不足で困ることが減りそうだね。
勿論、自然の魔素が含まれる川の水を使った方が 良い場所もあるだろうけど、水源が近くに無い場所だったらそんな事言ってられないもん。
サブマスさんに言ったら拡げてくれそうかな」

「ヴィオ……。しかしヴィオが考えた凄い魔法を他の人が作ったように思われるのは良くないじゃろ」

あぁ、それでお父さんは悩んだのかな?
いやいや、普通にこんなちびっこが考えたって言う方が下手な探りが来そうじゃない?洗礼式すら受けないつもりなんだから、目立つのはノーサンキューですよ。
そう言ったら少し笑ったお父さん、午前の採集をして、お昼ご飯を食べたら納品ついでにギルドでサブマスに相談しようっていうことになったよ。
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