ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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学び舎での日々

第54話  算術とトランプ

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翌朝の授業はエリア先生の算術の授業だ。
教室に入れば テーブルの並びが いつもとは違っていた。

3つずつの長テーブルがくっ付けられて 10人で一緒に座れるようになっている。他のテーブルは教室の端に避けられていて、完全にグループワークをする様相だ。
何処に座ればいいのかと悩んでいれば レン君たちが到着したようだ。

「えー!?いつもと違う! おれ どこに座ればいいんだ? 」

「わ~、なにこれ。 びお、レン、ルンおはよ~、ねぇ、なにこれ?」

ちびっこは まず驚く から始まるんだね。
しかし、私たち用の背の低いテーブルも避けられてるから 今日はこっちの席に座るしかないのかな?
椅子に座っちゃうと見えなくなっちゃいそうなんだけど。

「おや、早いねぇ。まだ準備中だが 勝手に座ってな。 
ああチビ共はそのままじゃ机の上が見えないだろうから座布団を持ってきてるから ちょっと待ってな」

両手に箱を抱えたエリア先生が 教室に入ってきた。
先生たちはいつも鐘が鳴ってから来るのに、今日は早いね。
このテーブルの並べ方と関係があるのは間違いないね。

ドカリと箱を教卓に置いたらまた出て行った。
座布団を持ってきてくれるという事だったので どこでもいいんだろう。
それでも いつもと同じ黒板側に座ってしまうのは癖なのかもしれない。

次々に到着する生徒たちも 教室の机を見て驚き、何があるのかとワクワクしている。
何度か先生が行き来して 鐘が鳴る時には座布団を3枚持ってきてくれた。

「ほれ、これを椅子の上に置いてから座りな。
さあ、皆もどこでも良いから座りな。今日はいつもとは違う授業にするよ」

パンパンと手を叩いて 皆を促す。
一度椅子から下りて、渡された座布団を椅子の上に置いたらちょっと高い。
ひょいと先生が持ち上げて椅子に座らせてくれた。

「今日はね、今度の授業で使えるだろうトランプを皆で作る授業をするよ」

「トランプってなんだ?」

「おお!算術じゃなくていいのか?ラッキー!」

エリア先生の発言に盛り上がる教室。
おお、昨日の今日で早速ですか。

「トランプってのは 貴族や冒険者の間でもやるやつが多いゲームだね。
ただ、そのゲームが勉強にもなるって事が分かったからね。うちの村では取り扱ってなかったけど、カルタを作るだろう?
だったら同じようにトランプも授業で使える分は作っても良いんじゃないかって事になったんだよ」

先生が教卓から箱を持ってきて中身をテーブルに広げる。
磨きまでは終わっている木の板が大量に出てきたけど、まさか昨日の話から準備をしてくれたのかな?
やる気満々じゃないですか。

「カルタ用に使うのと同じ処理をしてるんだけどね、明日の魔術の授業では この小さな板を皆で作ってもらう事になってるよ」

「え~!?攻撃魔法の練習は?」

「あらぁ、木魔法はあまり使ったことがないのだけれど、できるかしら」

「まぁ、枝から小さく切り分ける必要もあるのかしら」

「あらまぁ、かなり細かい作業が必要そうね」

生徒たちから色んな声が上がる。

「攻撃魔法や他の魔法を練習したいなら それをしてもいいさ。チビ共は生活魔法の練習が終わったんだろ?三姉妹は今魔力操作の練習中だろう?
丁度良い練習になるって言われてるからね。詳しい使い方は明日また教えてもらいな。
今日はカルタの板に トランプの印を入れるのをやってもらうよ」

トニー君は攻撃魔法の練習をしたかったみたいで、良かったと言っているけど、操作の練習にもなるから 板作りに参加した方が良いとは思うんだけどね。
6歳以上組は皆 通常魔法の練習を頑張る感じかな?

先生はハート、ダイヤ、スペード、クローバーの印を黒板に書き、1~10と数字を書いた。
そしてその隣に大きな四角を描き、ハートを7つ、隅に上下になるように数字の7 を描いた。トランプの1枚だね。

「トランプはこの4つの印があってね、1~13の数字が振られるんだ。11~13は絵になるから 大人たちで作るけど、あんた達にはこんな風に数字と同じ数の印を真ん中に、上から見ても 下から見ても数字が読めるように書いてほしいんだよ。隣同士で同じ印を書いておくれ。」

4辺には2~3人で座っているから、同じ並びの人で同じ印を作れば良いという事か。という事は 私はハチ君とトニー君だね。

「えへへ、びお一緒にやろ~ね」

「おお、ヴィオとハチか。大きい数字は任せとけ」

「うん、ハチ君、トニー君 よろしくね」

「レン残念だったね」

「なっ、兄ちゃん何言ってんだ?ばっかじゃねえの」

ザワザワと隣同士でご挨拶。先生は10枚ずつの板を其々の中央に置いてくれる。私たちと 三姉妹には赤いペンが渡されたのでハートかダイヤかな?

「じゃあ三姉妹はハート、ケーテとナチはクローバー、ルンとレンはスペード、トニーとハチとヴィオはダイヤだ。
分からなかったら質問しな。じゃあはじめ」

それだけ言ったら先生は避けているテーブルの一つに木札とペンを用意して、カリカリと書き始めている。という事は、先生が絵札を準備してくれるって事かな?

「じゃあ、俺が10から書いていくから、ヴィオとハチは小さい数字から頼むな」

「うん、じゃあ私 1 にするから、ハチ君2 をお願いしていい?」

「いいよ~」

其々1枚の木札を手元に寄せて 書き始める。
先に右上と左下に数字の1 を書いてから 中央にひし形を大きく描く。
何か物足りないけど、何だろう。
ちょっと思いつかないから 2枚目を手に取り、右上と左下に数字の3 を書いてから、カードの真ん中に3つのひし形を縦に並べて書く。

うん、やっぱり何かが足りない。
ふと隣を見れば、ハチ君はひし形を2個横並びに書いていた。斬新!
でもそう思うのは 縦並びを見慣れているからであって、彼らはこれがスタンダードになるのかもね。
トニー君は10個も書かないと駄目だから ちょっと大変そう。

「ハチ君 次は4をお願いね。」

そうお願いして 3枚目のカードを手元に。数字の5を書いて 5つのひし形をバランスよく並べる。
あぁ、そうか。数字の下か上にもマークがあった気がする。
足りないのはそれだと分かったけど、トニー君のカードを見て、多分それをすると10のカードは12個のひし形が並ぶことになるだろうから止めておこうと思った。

ケーテさんとナチ君は4つの印で一番書くのが面倒なクローバーだったけど、二人とも絵は得意らしく 全く困った様子もなくサラサラと書いている。
どうもレン君はスペードが書けないようで、ルン君がマークを書いて、レン君が数字を書くように担当を決めたみたい。兄弟仲良くて何よりだね。

7はバランスが必要だから、まだ3つめのひし形を慎重に書いているハチ君には 6をお願いしようと思い、7を書き始める。
上半分に5こ、下に2こ、他のマークだったら上下を考えないといけないけれど、ダイヤは上下変わらないから楽ちんである。

「ええっ?ヴィオもうそんなに書いてんの?速くねえ?」

10を書き終ったトニー君が私の手元に積まれたカードをみて驚いている。ハチ君2枚、トニー君1枚、私4枚。

「んー、数字が少ないと印も少ないからね。トニー君が一番大変な10を選んでくれたからだよ?」

「そうか、じゃあ俺次は9にするな」

そう言いながらもう一枚のカードを手に 取り掛かってくれる。
ハチ君は出来上がったカードを見せてくれて、上下に2こずつ並べたひし形に満足している。次にお願いした6は、縦に3つ並べたら綺麗に見えるよって言っておいた。
残りの1枚も直ぐに書き終ってしまったので、大変そうなルン君のお手伝いをすることにした。
スペードってハートを書いてから棒を足せばバランスがとりやすい。
自分の作業が終わったトニー君も ケーテさん達のクローバーを手伝ったりして、1~10までのトランプは算術の授業だけで無事に出来上がった。
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