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学び舎での日々
第55話 武術訓練と体力作り
しおりを挟む2つ目の授業は武術訓練だ。
前回の授業で武器はまだ早いという事が分かったからね。
今日は強化魔法の慣れと体力増加を目指して頑張るのだ。
「お~、じゃあ走るぞ~」
はじまりの鐘が鳴ったら いつも通りの感じで先生が走りだす。
私も強化魔法をしっかり両足にかけ終わってたからね。皆と一緒に走り出した。
「ヴィオ、そんなに飛ばして平気か?」
「わあ、びおと一緒に走るの初めてだね~」
同じグループで走るのは初なので、レン君とハチ君が並走しながら心配してくれる。
お喋りできるほどの余裕はないから、親指と人差し指で丸を作って 呼吸を乱さないように走る。
「もしかして身体強化魔法を使えるようになってる?」
「ああ、アルクさんに教えてもらえたのか?凄い効果なんだな~」
時々振り返りながら ルン君とナチ君が凄いねと褒めてくれる。お父さんに教えてもらった方法ではないけれど、そう思ってもらった方が良さそうなので軽く頷いておく。
トニー君は先生のすぐ後ろを走っているので 多少距離がある。
「ちょ、ちょっとペース落として2周目行くね」
「おお、無理すんな」
「うん、1周一緒に走れたの凄いよ~、頑張ってね」
2周目に入るところで 流石に これ以上このペースで走るのは無理っぽいから 離脱宣言をした。あの人たちは2周目、3周目と少しずつペースを上げてるからね。
私は2周目も1周目と同じペースになる様に呼吸を確認しながら走る。
強化魔法が良い感じに効いているから、呼吸と心音はドクドク ハァハァしているけど、足の疲れや重さは然程感じていない。
〈ヒッヒッフー……〉
ん?なんか違う気がする。
〈ヒッヒッフー〉
走りながら昔習った気がする呼吸法をしてみたけど、全然楽にならない。
〈スッスッ ハ~~〉
お?
〈スッスッ ハ~~〉
おお、これだった気がする。
さっきは口が乾いて苦しかったけど、鼻呼吸にしたことでちょっと楽になってきた。
「あらぁ、ヴィオちゃん凄いわぁ」
「まぁ、3周目に行くのねぇ」
「あらまぁ、無理はしちゃだめよ~、頑張ってね」
気付いたら2周目も終わりそうだったけど、やっと呼吸が上手にできるようになってきたから もう1周だけ走ろう。
更にペースアップした先生たちに 追い抜かれるけど 気にしない。
〈スッスッ ハ~~〉
「おお、大丈夫そうだな」
コクリ
「ヴィオ、やるじゃねぇか」
コクリ
呼吸が乱れそうだから会話は無理だけど、頷くくらいはできるよ。
先生とトニー君が抜き去る時に激励を送ってくれる。
ナチ君、ハチ君がその後に来て、更にルン君、レン君も抜き去って行く。
今日はケーテさんとまだすれ違ってない。尻尾が重いから あまり走るのは得意ではないケーテさんだけど、持久力はあるから ずっと同じペースで走ることは出来るんだよね。あともう少しで追いつけそうだけど、多分3周目では追いつけない。
なんとか3周を走ることが出来たところで 三姉妹の待つスタート地点に戻って来れた。
「は~~~~、しんどっ!」
「ヴィオ凄いじゃない。まさかあのペースで3周走り切るとは思わなかったわ。
身体強化魔法って凄いのね。私も父さんが帰ってきたら教えてもらおうかしら」
止まった途端 吹き出す汗が凄い。一先ず水分補給をしながら 先に2周を終えてゴールしたケーテさんから褒めてもらえた。
ケーテさんのお家はお父さんとお兄さんが現役の冒険者で、引退したお母さんも元冒険者だったらしいんだよね。
今はお兄さんのランクアップの為に お父さんと二人でダンジョンに行っちゃってるみたいだけど、ある意味冒険者の英才教育を受けることが出来る環境だよね。
白くなったジョーのように 水を飲んだまま座り込んでしまったけど、クリーンで汗を軽く落としたら やっと落ち着いてきた。
「じゃあ 私は武器訓練に行ってくるわね」
ケーテさんは全く疲れた様子もなく、自分の武器を選びに行ってしまった。
さて、私はどうしようかな。
男子は走り終わったら 休憩を挟むことなく武器訓練に行くようだ。マジであの体力どうなってんだ?
お父さんとの練習ではアスレチックで体幹バランスをつけながら 走ってたけど、ここにそんな場所はない。
なければ作ればいいじゃない?って事で地面に細い線を2本、小さな丸と大きな丸をいくつか書いていく。線の幅は太くなる場所と細くなる場所を作っていく。
うん、なんとなくいい気がする。
スタートラインにした場所で屈伸を何度か行い、足の疲れがたまっていない事を確認してから ゆっくり走り始める。
小さな丸は丸太に見立てて、片足で円の中心を捉えるように、2本引いた線は 吊り橋を想定して。細いところははみ出ないように、太い場所は 線のないところは 板がない場所と想定して飛ぶ。
一周目はルートの確認を兼ねてだったのでゆっくりと。
ルート確認が出来たので、2周目はさっきよりもペースを上げて走って行く。丸太に見立てた丸が多すぎたので、大きな円は踏まずに避けていく。
平面なので落ちる心配はないから、スピードを上げることが出来る。
ふっふっふ、結構面白い。
ゴールラインまで行ったら そのまま折り返してスタートラインへ逆走する。2周目を終えたところでスタートラインのところにエデル先生が立っていた。
「おお、これはどういう練習だ?」
「お父さんが訓練用に 森の中に丸太と吊り橋を作ってくれたんです。それに似たような練習が出来たらなって思って。
丸い印が丸太で、細い線が吊り橋ってことです」
先生が聞いてきたので答えたら、ほうほうと言いながら楽しそうに眺めてくる。
「距離が短すぎるのではないか? ここはもう少し離した方が訓練になるのでは?」
「私もそう思ったので、この大きな丸太は踏まないようにしているんです」
先生とルート確認をしながら、丸を消したり増やしたり、吊り橋の空白部分の距離が長くなったりと 少し改良されてしまった。
1人で書いてたから50mくらいの短距離だったんだけど、先生が参加したから倍以上の長さになった。そして そんなことしているから、レン君とハチ君も寄ってきて、それに釣られたお兄さん組も参加してしまった。
「じゃあ おれ走ってみる!」
一応丸太と吊り橋だけのシンプルなものだけど、結構な長さになった。
ワクワクのレン君がスタートラインまで走って行って 挑戦してくれる。流石の運動神経だから 全く問題なく 丸太トラップも跳ねるように駆けていく。
私は距離のあり過ぎる吊り橋と 丸太に引っ掛かったけど、ケーテさんは尻尾でバランスを取りながらうまく飛んでいた。
「これは楽しいわね。だけど平面だから簡単なのかもしれないわ」
「そうだな、失敗しても分かんねえし、ヴィオの森にあるやつ見てみてえ」
「う~ん、お父さんに聞かないと分からないけど、丸太とかは土魔法で出っ張りを作れないのかなぁ」
「「それだ‼」」
トニー君がアスレチックを見てみたいというけど、あれはお父さんの自作だし、見て良いと私が誘う訳にもいかないんだよね。
で、練習不足だから今回は絵にしただけで、本当は土魔法で作りたかったのだと提案してみたら、皆もそれだ!ってなったんだよね。
「あらぁ、それは面白そうね」
「まぁ、それなら私たちもお手伝いできそうじゃない?」
「あらまぁ、そうよね、私たち土魔法は得意だし、お手伝いするわぁ」
「おお、じゃあ この辺りに少し高めの壁とかあったら面白いんじゃね?」
何だか年上チームが盛り上がり始め、吊り橋以外のトラップを土魔法でどうにかしようとなってきた。
皆さん武器での訓練は良いのですか?
先生まで楽し気に参加しているけど……。
「大地よ 土よ、我が魔力にこたえ その地を動かせ【アースウォール】」
土魔法が得意なメンバーが それぞれの丸太の場所で地面に手をつき呪文を唱えている。
サブマスは【アースウォール】の呪文しか唱えてなかったけど、全文はそんな格好良い感じなんですね?大地と土の違いが分からないのですが、それは聞いちゃダメなやつなんでしょうかね。
そんでもって土壁の魔法で盛土をするんだね。まあ固そうだし、皆が踏み付けても大丈夫そうだもんね。
盛土にしたことで高低差もついて、さっきより難易度が上がった。
「おお~、これすげえ面白そう!」
「あらぁ、これは難しそうね」
「まぁ、私は無理だわぁ」
「あらまぁ、思ったよりも凄いのが出来たわね」
完成は私もびっくりです。線を引いて満足してたのに、訓練場の片隅が 完全アスレチック場になっております。
吊り橋は再現されなかったけど平均台のような細い棒になっている、丸太も盛土で十分だと思う。
さっきはヒョイヒョイ走ってたレン君たちも、丸太から何度か落下している。
私は 丸太は少し慎重に行けばクリアできるんだけど、土壁がね。
SAS〇KEですか?って感じの壁は先生が楽し気に造り出したモノ。
これを越えれたのはトニー君だけだった。流石は兎獣人、跳躍力が凄かった。
結局この日は 皆 武器訓練に戻ることはなく、丸太アスレチックを満喫しておりました。
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