ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

文字の大きさ
67 / 584
学び舎での日々

第61話 サマニア村 ちびっこ採集体験

しおりを挟む

さて、昨日の採集体験はタキさん的にもバッチリだったという事で、聖の日の今日、もふっ子……じゃなかった、ちびっ子たちとの採集体験が実施されることになった。
ただし、今日は最初にギルドでカイフク草の特徴について しっかり教えるという事になったんだけどね。

初参加組はカイフク草を、冒険者で既に採集を何度もしている組は それ以外の採集が推奨されている。
カイフク草ばっかりでも困っちゃうからね。
ということで、今日は村の大人たちも総出で子供達の採集体験に付き合うから、私もお父さんとゆっくり わっさり採集するつもりなんだ。

初参加の人たちは早めの集合だったけど、私は既に採集実績があるので 少し遅めにギルドに行くことになったんだ。
お父さんとギルドに入ったら まだ教室で説明中だったらしくて、資料室に行って魔獣辞典を読んで待つことにした。
貯金箱用のナイスな魔獣を探したかったからね。

「お父さん、ちょっと丸っこくて 冒険者に人気の魔獣って何?」

「人気……? 
そうじゃな、食料として人気なんじゃったらボア系かのう、素材として人気じゃったらキング……いや、あれは丸くないなぁ。丸くて人気……?」

プレーサマ辺境伯領でよく見る魔獣辞典を見ながらお父さんに聞けば、悩み始めた。
ボアといえば猪かな? やはりレッサーからキングまでレベルがあるのだろうか。
狼は色で分かれてるっぽかったもんね。

「ヴィオちゃん、どんな魔獣を探しているの?」

「あ!ミミーさん、おはようございます。
あのね、土魔法で貯金箱を作ろうと思ってて、お金が一杯になったら叩き割りたいから、丸い魔獣を探してるの。」

いつもの定位置にはいなかったからお休みだと思ったけど、別のお部屋にいたらしいミミーさんが声をかけてくれたので、探し物を伝えてみた。
お父さんは なるほどと言ってるけど、そう言えば お父さんには理由を説明してなかったね。

「そういう理由なのね。それならビッグタートルはどうかしら、え~っとね……、ああ、コレコレ。
甲羅がとっても硬くて物理攻撃は中々効かないんだけど、おなかの内側に1か所だけとっても柔らかいところがあるから、ひっくり返してそこを攻撃するか、口の中とかに魔法をぶち込んで攻撃するのよ。
甲羅も防具の素材として人気だし、魔石も大きいことが多いわ。」

ミミーさんがパラパラと別の辞典を捲って見せてくれたのは、巨大らしい亀。
この国ではダンジョンくらいにしか生息していないらしいけど、亀なら確かに 丸いし 半円だからどっしりしてて貯金箱には良さそう。

「ミミーさん、とっても良さそう!これで作ってみるね。
お父さんもありがとう!ビッグタートルで作ってみる!」

「そうか、決まってよかったの」

「ああ、素材の勉強会は 今終わったところよ、二人も参加するのでしょう?行ってらっしゃい」

ああ、ミミーさんはそれでいなかったのか。
お礼を言って1階に下りれば 小さいモフモフが溢れてた。
推定3歳と4歳かな? 流石に2歳以下はいないよね?

お店屋さんをやっている人たちとは顔を合わせるけど、普段畑のお仕事をしている人とかは会うことがないから初めましての人が一杯だ。
ワーキャー言いながら走り回っている子供たちが数名と、参加したそうだけど両親に俵抱きされて手足をばたつかせている子供達が数名。

「じゃあ、採集道具を渡すよ~。手袋と籠は各自用意しているよね?今日は必ず自分の子供と一緒に行動する事、親の数より子供が多いときは ギルド職員か 他の大人がつくから、言ってなかった人はこっちに来てね。
はさみは怪我する可能性も十分あるから、遊ぶようならしばらく参加禁止にするよ~。」

タキさんが大きな声で皆に呼び掛けている。
大人たちは 自分の子供を連れて 列を作り、ハサミを受け取っている。
既に手袋を外している子供もいれば、嬉しそうに着け外しをしている子も居る。兄姉がいるかいないかの違いかもね。
レン君たちみたいに 子供が3人いても、目を離せないのはロン君だけの場合は リリウムさんが参加するだけで大丈夫そう。まあ、今日もランダさんは参加しているから レン君も監視付きって事なんだろうけどね。
ハチ君の監視役はナチ君だね。タキさんは 今日は職員としての仕事に忙しいだろう。
ハチ君はレン君に比べれば 一点集中型の 大人しめだからね。動き回るって心配はいらないと思う。
私はマイナイフがあるからね、列に並ぶことはなく 入口の近くで待機だ。

「びおも村長の森に一緒に行くんだよね?」

「うん、そのつもりだよ。初めて行くから 楽しみなんだ」

村長の森は外壁に沿ってかなりぐるっと森が続いているからね。希少な薬草は畑で栽培しているらしいけど、結構な種類の素材が生えているらしいんだよね。
お父さんの森にない素材もあるかもしれないから要チェックだね。

「では 行くぞ、塀があるから村から飛び出す心配はないだろうが、迷子にはならんようにな。
それから畑を荒らす奴はお仕置きがあるからな。」

エリア先生が先導してくれるみたいだね。
よく見たらポール先生に、アリアナ先生、エデル先生まで引率としてついて来てくれるみたいだ。これは安心だね。
村中でこのイベントをやろうとしているのがよく分かる。

お父さんは後ろを歩き、私はハチ君とロン君、レン君と一緒に歩いている。
あっちにいるリスの少女とか、白いフワフワのわんこ幼女とかと仲良くしたいのに、年齢が近いもの同士で固まっているらしく、こっちも同級生に固められて動けぬ。
流石に今日はクンクンされないけど、ロン君はレン君とルン君に両手を繋いでもらって 超ご機嫌である。

浮気モフはいけないね。できればチビモフとも仲良くしたいけど、まだまだ時間はあるし、そのうち仲良くなれる筈だ。
ギルドを出たら直ぐに村長宅に繋がる橋があるから、先生たちが橋の近くで待機して 子供たちが川に落ちないように気を配っている。
4歳以下の子供たちは大人と手を繋ぐか 抱っこされているので 今のところ大丈夫そう。
村長宅の後ろの畑を越えれば 森が横長に連なっている。これは塀沿いに東門のある川べりまでつながっているから結構な距離がある。

「では、ここから赤いロープが張っているところまでが3~4歳組、赤いロープから 青いロープまでが5~7歳組、青いロープから緑のロープまでが学び舎に通っている組、緑のロープから川までがそれ以上じゃ」

「ロンは兄さん達と一緒に動けばいい。お前たちは5歳じゃが 学び舎組の青から緑の場所で採集しなさい」

ハロルド村長が森の入り口で 場所の説明をしてくれたんだけど、ロン君は学び舎組と一緒で良いらしい。
というか5歳以上は全員学び舎に来ていたと思ってたけど、そうじゃない子達もいるみたいだ。レン君もハチ君も、お兄ちゃんが居たからかなり早めの入学だったらしいけど、普通は6歳か洗礼後の7歳スタートなんだって。

お兄さん達も保護者役で来た人たちは 赤いロープの場所について行くみたいだけど、弟妹がいない冒険者組のお兄さんお姉さんは 川の方に向かって歩いて行った。
学び舎に通っている組は 流石に親子参加の人はいないので、ロン君の両親とお父さんくらいだ。タキさんはまだギルドにいる筈だしね。

「この葉っぱは見たことないぞ」

「カイフク草、びお これだよね?」

「ヴィオ~、見て、コレあってる?」

「レン君、それはマリキ草だよ。それも素材だけど、今日はカイフク草だけだから昨日の草を見つけようね。
ハチ君、それで合ってるよ。ロン君も、合ってるよ 凄いね。」

何故私に見せにくる?
マリキ草とウルル草を見つけて採集に励んでるんだけど、2人が其々気になった素材を見つける度に聞きに来たり 見せに来るから進まない。
ああ、レン君はルン君が見てくれてるから質問をぶつけてくるだけだけど。

ある程度ナチ君の採集が終わったところで、ハチ君の側に付いてくれるようになったから 質問は止んだけど、おや?ロン君のところには ランダさんがついてくれたみたい。
薬草採取は分からないって言ってなかったっけ?

「昨日の体験で 子供たちが頑張ってたでしょう?
あれを見て 子供達がやることを全く知らないのは駄目だって思ったらしくてね、今朝の素材のお勉強から参加したのよ。
私は やっぱり薬草系はからっきしだから 旦那に任せちゃうわ~」

ふと見上げた時にリリウムさんと目が合えば そんな事を教えてくれた。
冒険者としてのイロハはリリウムさんが教えられるんだもの、得手不得手で良いんじゃないかな。
お父さんと一緒に採集が出来てロン君も嬉しそうだし、仲良し家族で良いね。


ウルル草は5本1セットで良いと書いてあったから、5本だけ採集した。
生えてるときは常に潤っている草だけど、採集後にちゃんと保管しないと乾いちゃうからね。瓶の中に容れて密閉しておく。
他はマリキ草を30本採集した。
資料では簡単に読んだけど、採集方法までは未確認だった素材も沢山あった。次回以降は採集方法をしっかり調べて再挑戦したいところだ。

採集体験は2時間弱くらいで終了になった。子供達の集中力も限界だろう。
赤いロープの辺りでは、既に獣型になってしまっている子供達もチラホラみえる。
あちこちから「お腹が空いた」とか「足が痛い」なんて声が聞こえてくる。
そう言えば集合時間がゆっくりだったから お昼ご飯の時間も近いのかもね。

ちびっ子たちのハサミの返却、素材の買取でギルドは大混雑だったので、先にお昼ご飯を食べに帰宅した。リリウムさん達はハサミの返却があるから、ルン君とリリウムさんでギルドに行くことにしたらしい。レン君ロン君は、お父さんのランダさんと帰宅してランチの準備みたいだね。
午後にギルドへ顔出ししたら、グッタリ疲れ果てたタキさん達ギルド職員の皆さんが居た。

「準備と引率も結構大変だったんで、ここまで大規模なのは3週に1回が限界かな。
数人ずつなら問題ないけど、今回は村の人たち総出だったしね。素材の確認も大変すぎた~」

だそうです。まああの人数じゃ そうなるよね。
全員参加のお祭り騒ぎみたいだったけど、秋の漁の時は他所からくる冒険者と商人も来るから、こんな感じで大忙しになるらしい。
それが3か月も続くと聞いて驚いた。
ちびっこ採集体験の今回ほどの規模は月一くらいになるかもね。
ギルドの皆様 お疲れさまでした。
しおりを挟む
感想 109

あなたにおすすめの小説

私を裏切った夫が、後悔しているようですが知りません

藤原遊
恋愛
政略結婚として、公爵家に嫁いだ私は 愛のない夫婦関係を「仕事」だと思い、正妻の役目を果たしてきた。 夫が愛人を持つことも、 その子を屋敷に迎え入れることも、黙って受け入れてきた。 けれど―― 跡取りを、正妻の子ではなく愛人の子にする。 その言葉を、人前で軽く口にした瞬間。 私は悟ったのだ。 この家では、息子を守れないと。 元々、実家との間には 「嫡子以外の子は実家の跡取りにする」という取り決めがあった。 ならば話は簡単だ。 役目を終えた私は、離縁を選ぶ。 息子と共に、この家を去るだけ。 後悔しているようですが―― もう、私の知るところではありません。

【書籍化決定】アシュリーの願いごと

ましろ
恋愛
「まあ、本当に?」 もしかして。そう思うことはありました。 でも、まさか本当だっただなんて。 「…それならもう我慢する必要は無いわね?」 嫁いでから6年。まるで修道女が神に使えるが如くこの家に尽くしてきました。 すべては家の為であり、夫の為であり、義母の為でありました。 愛する息子すら後継者として育てるからと産まれてすぐにとりあげられてしまいました。 「でも、もう変わらなくてはね」 この事を知ったからにはもう何も我慢するつもりはありません。 だって。私には願いがあるのだから。 ✻基本ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。 ✻1/19、タグを2つ追加しました ✻1/27、短編から長編に変更しました ✻2/2、タグを変更しました

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~

ふわふわ
恋愛
「お姉様の婚約者、私がいただきますわ。だって“公爵令嬢”ですもの」 義理の妹コンキュはそう言って、王太子との婚約を奪いました。 父はそれを容認し、私は静かに受け入れます。 けれど―― 公爵令嬢とは“地位”ではなく、“責任”の継承者。 王宮で礼儀も実務も拒み、「未来の王太子妃」を名乗った義妹は、わずか三日で婚約破棄。 さらに王家への不敬と統治能力の欠如が問題視され、父の監督責任が問われます。 そして下されたのは――家ごとの褫奪。 一方で私は、領地を守り、帳簿を整え、静かに家を支え続ける。 欲しがったのは肩書。 継いだのは責任。 正統は叫びません。 ただ、残るだけ。 これは、婚約を奪われた公爵令嬢が “本当に継がれるべきもの”を証明する物語。

【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。

みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」 魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。 ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。 あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で一人の騎士と運命的な出会いをする。 【2024年3月16日完結、全58話】

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので

モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。 貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。 ──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。 ……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!? 公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。 (『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)

恋は、母をやめてから始まる――正体を隠したまま、仮の婚約者になりました

あい
恋愛
両親を失ったあの日、 赤子の弟を抱いて家を出た少女がいた。 それが、アリア。 世間からは「若い母」と呼ばれながらも、 彼女は否定しなかった。 十六年間、弟を守るためだけに生きてきたから。 恋も未来も、すべて後回し。 けれど弟は成長し、ついに巣立つ。 「今度は、自分の人生を生きて」 その一言が、 止まっていた時間を動かした。 役目を終えた夜。 アリアは初めて、自分のために扉を開く。 向かった先は、婚姻仲介所。 愛を求めたわけではない。 ただ、このまま立ち止まりたくなかった。 ――けれどその名前は、 結婚を急かされていた若き当主のもとへと届く。 これは、 十六年“母”だった女性が、 もう一度“ひとりの女”として歩き出す物語。

処理中です...