68 / 584
学び舎での日々
第62話 授業でカルタ
しおりを挟む週末のちびっこ体験は、村のお祭りのような盛り上がりとなり、週明けの学び舎でもその話題でいっぱいだった。
先生たちは休日返上での仕事のようなものだったし、ギルドの職員さんも 素材の鑑定が大変だったみたい。
初体験だから 握りつぶしちゃって素材にならないものも多く、付き添いで来ている両親からごねられるようなことは流石にないけど、頑張って採集したのが駄目だったと知って泣く子供をなだめるのが大変だったんだって。
「ロン君は大丈夫だったの?」
「1日目は帰りに寝ちゃったし、昨日は母ちゃんに任せて昼飯食べに先に帰ったから、ロンは結果を知らないんだ」
「ロンにしたら 普段できない体験をしに行く!って言うのが目的だったからね。結果は二の次かな。
ヴィオちゃん 2日も付き合ってくれて ありがとうね」
「おお、ヴィオ うちの父さんもありがとうって言ってたぞ。俺も父さんに話したことがこんなに祭りみたいになるとは思ってなかったけどな」
そう言えばロン君は2日とも終わってからギルドには寄ってなかったんだね。
ナチ君からもお礼を言われたけど、私もまさかこんな大規模なお祭りになるとは思ってませんでした。
そんな祭り明けの雰囲気を残しつつ、週明けの木の日と火の日は カルタ作りの続きと 木札の魔術練習、トランプの作成と アスレチック体験を行った。
そして、3回分の授業を内職 というかトランプとカルタのカード作りに励んだことで 4回目の今日、ついに授業でカルタを使うことが出来るようになった。
はじめは1枚ずつ読みながら 文字を覚える予定だったんだけど、作りながら それはやっていたし、皆も早くカルタを使ってみたいという雰囲気になっているのでね。
ポール先生もウキワクを隠さないでいるので、今日の授業はカルタ体験になるようです。
「さあ、皆が頑張って作ってくれたカルタが 遂に出来上がりました~、拍手~!」
「「「おおお~~~!」」」
男子チームが歓声を上げ、女子は拍手で盛り上げますよ。
一応カルタの使い方は先生たちに説明しているので、今日の進行も先生がやってくれることになっている。
トニー君、ナチ君、ルン君の3人が机と椅子を教室の端に避けてくれて、中央部分には 先生が持ってきた絨毯。少し厚みのあるそれを三姉妹とケーテさんが敷いてくれる。
私たち5歳児は 邪魔にならないように避けておくくらいしか出来ない。
「じゃあ、3人には カルタを並べてもらおうかな?絵が見えるように並べてね」
「「「は~い」」」
やることを見つけてくれたようだ。
三人でカルタを預かり、表向きになるように、重ならないように並べていく。向きは敢えてバラバラだ。
「さて、ではまずはカルタの場所を覚える時間にしようか。
皆自分の場所を決めたら そこに座って。読み札は先生が読むからね。」
靴は脱ぐように言われたので 皆靴を脱いで絨毯に上がり、好きな場所へ座る。
私も自分の場所から カルタをゆっくり眺め、どこに 何のカルタが置かれているかを記憶していく。
「あの黒い丸が二つ並んでるのなんだ?」
「“く” だから 黒い丸なの~?」
「ちげえよ、靴屋のミリーナさんだよ。黒い靴の横に 兎がいるだろ!」
絵は……、まあ 子供のクオリティですから、絵より文字で覚えるしかない。
トニー君が弁解しているけど、黒い楕円と丸に楕円が二つ付いただけのそれを見て 靴ともミリーナさんとも思えないです。
ナチ君は絵の勉強をしていただけあって 流石の腕前だったし、ケーテさんとルン君は、上手くはないけど 何が書いてあるかは十分分かるレベルだった。
トニー君は何故あんなに自信満々だったのだろうか。いや、今も解説しているから 下手だとは思っていないらしい。
「じゃあ そろそろいいかな?読むよ~」
先生の声で 皆の姿勢がピンとする。結構真剣な表情です。
『たまごは ココッコの こどもです』
「た、た……」
「たまごの絵、どれ?」
「あ!はい! って、白い丸だけって、これトニーだろ?」
「なんだよ、卵だろ?それ以外の何に見えるんだよ」
“た” を見つけたけど遠くて、見つけた時には ナチ君に取られてしまった。
そして黒い楕円二つを靴だと言い張るトニー君作の卵は白い楕円が一つだけというシンプルなモノ。
私たちは文字を入れただけで 出来上がりは今日初めて確認したからね。先生たちはツッコまなかったんだね。
「まあ、文字を覚えるのが本命だからね~。皆も絵に頼らないで文字で探そうね~。
じゃあ次いくよ~」
先生は言葉の先生だものね。中々シビアです。
『ダンダダは 冒険者の 武器防具店』
「はい!」
「あ~、狙ってたのに~」
「これすっげえ絵が上手い!これギレンさんだろ?超そっくり~。」
次のカードはミーレさんがゲットした。
カードにはトカゲ獣人さんが斧を片手に立っている絵が描いてあり、本当に上手い。
どうやらケーテさん作だったらしくて、嬉しそうに照れている姿が素敵です。
絵の上手い下手へのツッコミもあるものの、カルタ取りは順調に進んでおり、皆自分の手元にあるカードは死守することを徹底しているだけあって、均衡している。
開発者の私が断トツってなるのがテンプレじゃないの?と思いつつも、運動神経の優れた獣人たちには、たかが5歳の人族は 知っているという優位を持ってしてやっと並べるんだと分かったね。
残り5枚になってからは お手付きもあるし、とびかかり方が半端ないので、私も三姉妹も 見学っぽくなっております。
あの団子の中に入るのは無理。ケーテさん は全く負けることなくぶつかって行っております。格好良い姐さんです。
はじめてのカルタ大会は、ナチ君が優勝。
私は5枚、自分の近くにあるカードだけとなりました。
超絶悔しいので 練習したいところだけど、この独創性が高すぎるカルタは1組しかないから 慣れるしかないね。
ちなみに魔法の授業では 6歳以上組はいつもの攻撃魔法の練習に戻っているんだけど、カードの製作は続いているので、私たち5歳組と 三姉妹は カード作りを続けています。
先生的にも 魔力操作の練習になる事、5歳組に教える生活魔法がない事、3人の木魔法のプロが付きっきりになってくれることで安心な事、木魔法と風魔法が上手く使えるようになれば 来年には補助魔法を教えられるようになるかも。などの考えからお父さんたち3人が教えに来てくれています。
ハチ君とレン君も ウインドカッターが使えるようになっていて、リスマッチョ先生に褒められている。
4回目にもなれば 大分狙いも正確になってきているようで、遠くの的に攻撃魔法を打つよりも高度な事が出来てるんじゃないかな?と思ってたりする。
三姉妹は 研磨の作業から 細かく切り分ける作業に移動しているんだけど、あれだけ細かい魔力操作が必要な研磨をしていたからか、本人たちも驚くほど簡単にウインドカッターが使えるようになっていると喜んでいた。
小分けにするのにカッターが必要で、角を落とすのに研磨を使うようにしているらしく、この作業だけで三姉妹の魔力操作のレベルは上がっていると思う。
ハチ君たちも次は お父さんの研磨をすればいいかもね。誘ってみよう。
678
あなたにおすすめの小説
私を裏切った夫が、後悔しているようですが知りません
藤原遊
恋愛
政略結婚として、公爵家に嫁いだ私は
愛のない夫婦関係を「仕事」だと思い、正妻の役目を果たしてきた。
夫が愛人を持つことも、
その子を屋敷に迎え入れることも、黙って受け入れてきた。
けれど――
跡取りを、正妻の子ではなく愛人の子にする。
その言葉を、人前で軽く口にした瞬間。
私は悟ったのだ。
この家では、息子を守れないと。
元々、実家との間には
「嫡子以外の子は実家の跡取りにする」という取り決めがあった。
ならば話は簡単だ。
役目を終えた私は、離縁を選ぶ。
息子と共に、この家を去るだけ。
後悔しているようですが――
もう、私の知るところではありません。
【書籍化決定】アシュリーの願いごと
ましろ
恋愛
「まあ、本当に?」
もしかして。そう思うことはありました。
でも、まさか本当だっただなんて。
「…それならもう我慢する必要は無いわね?」
嫁いでから6年。まるで修道女が神に使えるが如くこの家に尽くしてきました。
すべては家の為であり、夫の為であり、義母の為でありました。
愛する息子すら後継者として育てるからと産まれてすぐにとりあげられてしまいました。
「でも、もう変わらなくてはね」
この事を知ったからにはもう何も我慢するつもりはありません。
だって。私には願いがあるのだから。
✻基本ゆるふわ設定です。
気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。
✻1/19、タグを2つ追加しました
✻1/27、短編から長編に変更しました
✻2/2、タグを変更しました
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~
ふわふわ
恋愛
「お姉様の婚約者、私がいただきますわ。だって“公爵令嬢”ですもの」
義理の妹コンキュはそう言って、王太子との婚約を奪いました。
父はそれを容認し、私は静かに受け入れます。
けれど――
公爵令嬢とは“地位”ではなく、“責任”の継承者。
王宮で礼儀も実務も拒み、「未来の王太子妃」を名乗った義妹は、わずか三日で婚約破棄。
さらに王家への不敬と統治能力の欠如が問題視され、父の監督責任が問われます。
そして下されたのは――家ごとの褫奪。
一方で私は、領地を守り、帳簿を整え、静かに家を支え続ける。
欲しがったのは肩書。
継いだのは責任。
正統は叫びません。
ただ、残るだけ。
これは、婚約を奪われた公爵令嬢が
“本当に継がれるべきもの”を証明する物語。
【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。
みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」
魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。
ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。
あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で一人の騎士と運命的な出会いをする。
【2024年3月16日完結、全58話】
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので
モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。
貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。
──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。
……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!?
公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。
(『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)
恋は、母をやめてから始まる――正体を隠したまま、仮の婚約者になりました
あい
恋愛
両親を失ったあの日、
赤子の弟を抱いて家を出た少女がいた。
それが、アリア。
世間からは「若い母」と呼ばれながらも、
彼女は否定しなかった。
十六年間、弟を守るためだけに生きてきたから。
恋も未来も、すべて後回し。
けれど弟は成長し、ついに巣立つ。
「今度は、自分の人生を生きて」
その一言が、
止まっていた時間を動かした。
役目を終えた夜。
アリアは初めて、自分のために扉を開く。
向かった先は、婚姻仲介所。
愛を求めたわけではない。
ただ、このまま立ち止まりたくなかった。
――けれどその名前は、
結婚を急かされていた若き当主のもとへと届く。
これは、
十六年“母”だった女性が、
もう一度“ひとりの女”として歩き出す物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる