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魔法の先生
第70話 身体強化魔法?
しおりを挟むエルフのドゥーア先生との魔法の練習は多岐にわたる。
魔術訓練と武術訓練で魔法を使っているところを見ているから、長々とした呪文は教えてもらっていない。
トリガーだけで使えるようにと、何度も同じ魔法を練習するのだ。
時にギルドの裏庭や、お父さんの森で練習をすることもあった。
木魔法や土魔法、水魔法は、やっぱり森や 土や水が沢山あるところでやった方が使いやすいからだって。
念願の蔦を使ったターザンロープが出来る魔法も覚えた。
これがあれば木の上の橋も全く怖くない。
「【アイビーグロウ】」
【グロウ】が木や葉、蔦などの植物を成長させる魔法で、【アイビー】は蔦を伸ばす魔法だ。
その二つを足せば、蔦が凄い勢いでミョーンと伸びてきて、ターザンロープが出来上がるのだ。
「あ~ああ~~~~~~」
蔦に手を絡ませて木の枝から、離れた木の枝まで移動する。
やってみたかったんだよね。
「何故叫ぶのでしょう?」
「怖いんじゃないのか?」
「いや、楽しんどるようじゃがな」
大人たちが下で何やら言っていますが、様式美というやつですよ。
とりあえずお父さんからは、外の森では声を出すことで魔獣が寄ってくる可能性もあるので声は出さないようにと言われました。ハイ。
◆◇◆◇◆◇
「さて、今日は一般的な身体強化についてお伝えしましょう」
「まあ既に自分でやっちまってるヴィオには、普通を知ってもらう為だと思えば良い」
「確かに 武術訓練の時に ヴィオ嬢は強化魔法を使っていましたね」
今日はフワフワをギューして使っている身体強化について教えてもらえるらしい。
ワクワク期待の表情を浮かべれば、ギルマスがテンションを下げる様な事を言う。
「ドゥーア先生とも考察しましたが、身体強化魔法は やはり属性魔法には当てはまりませんでした。
ですので無属性魔法という事になるでしょう。
やはりこの魔法は使えない者も多く、アリアナのような理屈が分からないと使えない。という人には不向きという事です」
そう言いながらサブマスが黒板に呪文を書いていく
〈我が身に宿る魔力よ 敵の攻撃を跳ね返す硬さをこの身に纏わせ給え〉
〈我が身に宿る魔力よ 誰よりも素早く動ける力をこの身に纏わせ給え〉
ほぼ同じだけど、真ん中の呪文が違うね。
「そうなのです、上は防御力を高める身体強化魔法で、下は長距離を移動したり、早く移動するときに下半身にかける呪文です。」
いちいち別にかけるんだね。
ああ、でも私も目と耳は別にかけたからそういう事か。
「早く動くのは何となくわかるんだけど、固くするのはどうやって考えてるの?皮膚が厚くなるの?中身が固くなるの?それとも表面が鉄みたいになるの?」
早くなるのは筋肉に働きかけるんだろうけど、硬さってどういうこと?
お父さんを見れば首を傾げられ、ギルマスを見つめれば視線を逸らされ、サブマスを見れば微笑まれた。
「ドゥーア先生?」
「そうだね、私は 強化魔法が非常に苦手なのですよ。早く移動するためには強化魔法でなくとも、風魔法で補助をすれば十分早く移動できますからね。
ここは やはり強化魔法が得意なザックス君に教えてもらいましょう」
微笑ながらドゥーア先生がギルマスに振った。
「ぐっ、アルク?」
だがしかし、ギルマスはお父さんにパスをした!
「儂は感覚じゃからな……。強いて言うなら皮膚が厚くなるように、普段が布の服だとしたら、皮膚が固い鱗で覆われているような想像をしておった……かの?」
「ギルマスさん?」
「俺もそんな感じだ。……多分。
って、そんな事今までは考えた事ねーよ。硬くなれ!剣も魔法も何の攻撃でも貫けないくらい硬くなれって思ってたんじゃねえか?」
ふむふむ、やっぱり感覚が大事って事だね。
多分鱗の鎧と考えたら自分の知っている最強の鱗の強さまでなんだろうね。
余程強い素材を知ってなければ ギルマスの方が効果はありそう。
強化魔法は 分割しながらかける方がやはり良いらしく、目はよく見えるように、耳が良く聞こえるように、匂い……は止めとこう。足が速くなるように、身体が強くなるように。
ひとつずつならできるんだけど、4つを同時にかけるのは無理だった。
「魔力が迷子になって、ふわ~ってどっか行っちゃう」
「何言ってんのか全然わかんねえ」
一度にかけてみる練習を何度かしたけど出来なくて、どんな感じか説明しろと言われたからしたのに、ギルマス酷い。
「では腕と足に防御の強化をかけることは出来ますか?」
サブマスに言われてやってみる。
腕と下半身に魔力を纏わせて……ああ、あれだね、防御だから超合金スーツを着ちゃう感じ?
魔力を脚と腕に纏わりつかせるようにして、超合金の素材のように固く変化させていく。
皮膚が硬くなるわけではなく、硬いスーツを纏っている
「うん、できたっぽい。どうですか?」
「ちょっと叩いてみても?」
ドゥーア先生に聞かれたので頷いたら、軽く足をツンツンされる。全く何ともないことを告げれば強めに掌全体でペチーンとされたけど、全く感じない。
「もし怪我をしたら回復するから、魔法攻撃をしてみてもいいかい?」
「ちょっ!」
「うえっ!?」
「うん、大丈夫だと思う」
ドゥーア先生の台詞に お父さんとギルマスが驚いて止めようとしたけど、多分大丈夫だと思う。
「【ウインドカッター】」 カキーン
風の刃を足に向けて飛ばされたけど、全く何ともなかった。というか魔法が当たって逸れて行った。
お父さんは直ぐに足を持ち上げて確認してくれたけど、切り傷一つついてない。
「ふむ、これは凄いですね。ただ、身体強化とは違いそうですけど」
なんと?
ドゥーア先生曰く、身体強化はあくまでも自分の身体の筋肉や皮膚を強化しているらしく、私が武術訓練で足にかけているアレは身体強化らしい。
「で、今ヴィオ嬢がしているのは、肉体にかけているのではなく、その上に 一枚の膜を被せるように魔力でコーティングしている状態という事ですね」
「ん? 強化ではないんか?」
「そうですね、強化であれば皮膚が硬くなるなどの変化なだけですから、あのような音はしませんし、ヴィオさんの魔力も皮膚の上で固定されたままになっていますしね。」
超合金スーツを想像して着たから間違いではない。
サブマスは魔力感知でずっと魔力の動きを確認してくれていたらしく、身体強化の特徴は 呪文を唱えた時にその部位を魔力が覆うけど、その後は浸透するから馴染むらしい。
今回のは スーツだからずっと身体の上に張り付いた魔力が動かないから別物という事が分かったらしい。
「んじゃあ、この魔法は何なんだ?」
「わかりません」
「わからんな」
ギルマスの質問に、魔法のスペシャリスト二人が匙を投げた。
「ヴィオはどんなことを考えながら使ったんじゃ?」
「ん~、薄くて硬くて強いのを考えてたら、お肌じゃなくて そういう薄い鎧を身に着けたらいいかなって思ったの。そうだな……。
ああ!そう、結界みたいな感じ。結界を身体にまとわりつかせたって感じだと思う」
戦隊ヒーローの特殊スーツなんて言っても通じないだろうし、ラノベあるあるは 結界をどれだけ広げられるか、ってのと同時に、どれだけ小さくできるか、って課題になるよね?
「結界ですか……」
「体に纏わせる結界か……」
魔法マニアの二人が思考の渦に入ったところで 今日の魔法の勉強は終了となった。
お父さんからは、身体強化と結界の鎧は別物だけど、多分ダンジョンとかでは有効だろうから 練習しておけばいいって言われた。
私くらいの小ささでは、武器も防具もそこまで種類がないらしく、銅ランクになっても ある程度大きくなるまでは外に出せないと思ってたけど、結界の鎧が長く使えるようになるなら、お外の討伐も練習に組み込めるようになるって言われた。
よし!これからは全身スーツ状態でどれくらい保つことが出来るか練習あるのみだね!
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