ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

文字の大きさ
88 / 584
夏の訓練

第79話 村の人たちのはなし

しおりを挟む

ケーテさんが卒業したあの日、武術の授業が終わって1階に戻ったら 厳つい父ちゃんと、ゴリマッチョな兄ちゃんが仁王立ちしていて非常に驚いた。

「あっ!父さん、兄さん!」

「ただいま!ケーテ、父さんが帰ったぞ!」

「ケーテ、銅ランクになったんだって?もう少し先だと思ってたのに、帰ってくるのを早めて正解だったよ。おめでとう!」

ケーテさんが現れた途端 厳つい二人の顔が フニャフニャになって、ハグでお迎えしていました。
おおぅ、ケーテさんのパパン&兄さんだったのですね。
ケーテさんは切れ長のシュっとした美人さんだから、ゴリマッチョの厳つい二人とはちょっと家族だとは思えませんでした。ママンに似ているのかな?
よく見ればパパンには尻尾がなく、お兄さんはケーテさんより少し深い青色の尻尾があった。

家族団欒な雰囲気で ギルドを出て行ったケーテさん家族に驚いているのは私だけで、他は知っていたのかいつも通り。

「ヴィオが来た時にはダンジョン踏破の為に出とったからなぁ。あの家族は念願の女児を可愛がり過ぎてな、母親からランクアップするまで帰宅禁止を告げられておったんじゃ」

……え?
さっきいたゴリマッチョの二人、お兄さんとケーテさんは年の差6歳もあるらしく、1~2歳差の兄弟が多いこの村では珍しいんだと思う。
で、既に洗礼間近の兄と、待望の娘が出来たパパンは それはそれは娘(妹)を可愛がり、お姫様のような取り扱いだったらしい。
6歳頃のケーテさんは 第一次成長期というか、学び舎に通うことで自分の家が普通じゃない事に気付き反抗期を迎えたらしい。
ママンの助けもあり、そこから淑女(冒険者)教育が始まって、今のイケメン姐さんなケーテさんになったようだ。
パパンと兄さんだけなら悪役令嬢待ったなしのお嬢さんになってたかもだね。まったく今のケーテさんから想像つかんけど。

娘&妹可愛さに、冒険者としてのお仕事をおさぼりになっていたお二人に喝を入れたのがケーテママ。
ケーテさんが洗礼を迎えたのをきっかけに、お兄さんが銀ランクになるまで帰宅するな!という命令が成されたらしい。
当時のお兄さんは銅ランクにはなってたものの、討伐依頼を全く受けていない状態で、パパンと討伐訓練から頑張ったみたいだね。

ママンから「ケーテが銅ランクになった時に、家族でダンジョンに潜れるくらいまで二人が強くなってたら、ケーテも安心するだろうね」って言われて、この1年半ほど修行に出てたんだって。

「……す、すごいね。でもケーテさん ダンジョン楽しみだって言ってたから、二人が一緒に居てくれるなら安心だね」

「ああ、娘が卒業になったから、本格的にテーアも冒険者業に戻るんじゃろう。
あそこの夫婦は二人とも金の初級ランクじゃからな。
まあ、テーアも子育て期間は村の周りの討伐だけで 多少腕が鈍っとるじゃろうから はじめは周辺の森の常設討伐依頼でも受けるんじゃなかろうかの」

金の初級って、お父さんの2つ上のランクか。
まあ、お父さんは指名依頼が嫌でランク上げしなかったというし、本当の実力はランクだけで分からないとは思うけど、金の初級まで上がれるだけの実力があるって事ではあるもんね。
ケーテさんってば 冒険者のサラブレッドだったんだね。


そんな驚きの情報を聞きながら帰宅。
サブマスとギルマスは金の中級ランクの冒険者で、それ以外にも金の初級ランクの冒険者、元冒険者が結構この村にはいるらしい。
辺境のなかでも更に辺境だからこそなのだろうか。
リスマッチョ先生も冒険者やってたらしいしね。うん、肉屋のおじさんもマッチョだし、皆強いんだろうね。


◆◇◆◇◆◇


そうそう、ケーテさんが卒業する少し前の話。
ランクが銅になれば、今後は村の外での行動範囲を広げていくために、魔獣狩りもするのだと言っていた。

「ヴィオも 冒険者でダンジョンを目指すと言っていたでしょう? 魔獣を解体できるようにしておいた方が良いわ。
時々 マコールさんが依頼を出しているでしょう? 新人冒険者の解体作業の練習というか経験を積ませてもらえるから、出ているときは受けるといいわ」

そんな貴重な情報を教えてもらったら 行くしかないよね?
学び舎が終わった後に、お父さんにもお願いして タキさんに その依頼が出た時には是非受けたいから教えて欲しいとお願いしておいた。
あまり大人数が受領することは出来ないけど、2~3人なら大丈夫だし、中々受ける人はいないから大丈夫だと言ってもらえた。


数日後、学び舎が終わったところでタキさんから依頼が出たことを聞き、速攻で受領してお店に行った。

「こんにちは、ギルドで解体の依頼を受けてきた ヴィオです」

「お~、お?アルクか、どうした?」

「今日は儂じゃなくて 娘じゃ」

「ん?」

お店の入り口で挨拶をしたら 奥からガチムチのおじさんが出てきた。お父さんの言葉に 視線をゆっくり下ろしたところでやっと目が合った。

「こんにちは、ギルドで解体の依頼を受けてきた ヴィオです」

もう一度ご挨拶をしたら「は?」と固まられてしまった。
うん、よくあることです。

「あ~、ヴィオは青銅ランクで 既に半分以上のポイントを稼いどる。火の二月目には銅ランクに上がると思うからな、解体の経験を積みたいんじゃと」

「は?このちっこいのが銅ランク? 
お前、息子だけじゃなくて こんなちっこいのにもスパルタしてんのか?」

ビックリしているおじさん、じゃなくて マコールさんが教えてくれたのは、お父さんの息子さんたちに行われていた冒険者の英才教育の凄さ。
私がしているのと同じように、裏の森にアスレチックコースを作って、楽しませながら 身体能力をガンガン鍛えていたらしい。

マコールさんはガチムチの虎獣人さんで、ご本人も元金ランク中級の冒険者。
このお肉屋さんは、マコールさんが肉を仕入れ……というか狩りに行き、それを解体して 長男のキリトさん夫婦が 屋台で肉串を売っている。ちなみにキリトさんも銀ランク冒険者だ。

息子二人がお父さんの息子たちと年齢が近いこともあって、一緒にアスレチックコースで遊びという名の特訓をよくやっていたと教えてくれた。

ちなみに、お父さんの長男トンガさん、次男ルンガさんと、マコールさんの次男クルトさんは 今パーティーを組んで 大陸を旅しているのだそうだ。
クルトさんには マコールさんから≪美味しいものを食べること、他の町での屋台の勉強をしてくること≫という指令が出されているらしく、冒険者ランクも銀の上級まで上げないと帰宅できないらしい。
ケーテさんのお兄さんと言い、結構厳しい家が多くない?

「あのね、私は この大陸のダンジョン全部行ってみたいの。それから、ドラゴンに会いに行ってみたいの。だから冒険者のランクもしっかり上げていきたいの。
なので、解体もちゃんと出来るようになりたいです。よろしくお願いします!」

「トンガたちよりも 冒険者に憧れが強くないか?」

「これは元々じゃ。儂が教える前から 冒険者の憧れがあったようじゃからな。無茶なことする前に基礎を学びたいと頑張るのは、うちの息子らにはなかったし、吸収力も凄いぞ?」

ちょっと呆れられた感じもあるけど 納得してくれたようで、解体はしっかり教えてもらうことが出来たよ。
ただ、ボアはママチャリくらいの大きさがあるし、ビッグピッグなんて大型二輪車くらいの大きさがあって、皮を剝ぐために よじ登る必要があって、解体作業の日は血みどろになりまくったよね。

出来れば現場で血抜きをしてきた方が 肉の味はあがるから、ダンジョン産の時間経過が遅くなるマジックバッグがあれば、解体をすぐに出来ないならそれに入れておくことを勧められた。
将来の話、として言われたけど 今現在時間停止の鞄を持っているからね。 
ただ、それに入れた肉をギルドに提出するのは 鞄の性能がバレることになるから、ランクが上がって 大人になるまでは駄目だとも思った。


◆◇◆◇◆◇


村の人たちとの交流は子供採集体験を通して 大分出来るようになってきている。
最初は人族の幼女という事で、獣人の子供の体力で振り回してしまうのではないか、という恐怖心があったらしいんだけど、普段からトレーニングをしていることや、ハチ君、レン君がよく話している事を聞いたりして大丈夫そうだと判断されたらしい。

「うちの子達ったら、まだまだ興奮すると獣化しちゃうのよね。子猫や子ウサギなら大したことないんだけど、うちの子は小さくても力が強いから心配だったのよ」

熊獣人や虎獣人のママさんたちはそれで距離を置いていたと言われた。
虎獣人のママさんはマコールさん家の長男のお嫁さんだ。 こないだの解体依頼で仲良くなって、私の体力が人族の5歳児らしくはないと実感したらしく、今日お友達を連れて声をかけてくれたのだという。
遊んでいる途中で急に蜷局を巻きながら寝てしまった蛇さんとかもいたしね。子熊はヌイグルミのようで滅茶苦茶可愛かったことを報告しておきます。

村の大人たちにはカルタ作りや、子供採集体験のように村の出来事を共有できるように、定期的に村内会議が行われているんだって。
そこでは私の両親は他界しており、皇国の貴族に攫われかけていた事、今後もしかしたら髪色を見かけて人攫いが来る可能性があるから、色変えをしている事も通達されているみたい。
(というか、私の設定そうなってるんだね)

なので、何度か会っている大人たちも髪色や目の色が変化した事にも、子供だけど眼鏡をしている事も突っ込まない。ありがたい話である。
しおりを挟む
感想 109

あなたにおすすめの小説

私を裏切った夫が、後悔しているようですが知りません

藤原遊
恋愛
政略結婚として、公爵家に嫁いだ私は 愛のない夫婦関係を「仕事」だと思い、正妻の役目を果たしてきた。 夫が愛人を持つことも、 その子を屋敷に迎え入れることも、黙って受け入れてきた。 けれど―― 跡取りを、正妻の子ではなく愛人の子にする。 その言葉を、人前で軽く口にした瞬間。 私は悟ったのだ。 この家では、息子を守れないと。 元々、実家との間には 「嫡子以外の子は実家の跡取りにする」という取り決めがあった。 ならば話は簡単だ。 役目を終えた私は、離縁を選ぶ。 息子と共に、この家を去るだけ。 後悔しているようですが―― もう、私の知るところではありません。

【書籍化決定】アシュリーの願いごと

ましろ
恋愛
「まあ、本当に?」 もしかして。そう思うことはありました。 でも、まさか本当だっただなんて。 「…それならもう我慢する必要は無いわね?」 嫁いでから6年。まるで修道女が神に使えるが如くこの家に尽くしてきました。 すべては家の為であり、夫の為であり、義母の為でありました。 愛する息子すら後継者として育てるからと産まれてすぐにとりあげられてしまいました。 「でも、もう変わらなくてはね」 この事を知ったからにはもう何も我慢するつもりはありません。 だって。私には願いがあるのだから。 ✻基本ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。 ✻1/19、タグを2つ追加しました ✻1/27、短編から長編に変更しました ✻2/2、タグを変更しました

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~

ふわふわ
恋愛
「お姉様の婚約者、私がいただきますわ。だって“公爵令嬢”ですもの」 義理の妹コンキュはそう言って、王太子との婚約を奪いました。 父はそれを容認し、私は静かに受け入れます。 けれど―― 公爵令嬢とは“地位”ではなく、“責任”の継承者。 王宮で礼儀も実務も拒み、「未来の王太子妃」を名乗った義妹は、わずか三日で婚約破棄。 さらに王家への不敬と統治能力の欠如が問題視され、父の監督責任が問われます。 そして下されたのは――家ごとの褫奪。 一方で私は、領地を守り、帳簿を整え、静かに家を支え続ける。 欲しがったのは肩書。 継いだのは責任。 正統は叫びません。 ただ、残るだけ。 これは、婚約を奪われた公爵令嬢が “本当に継がれるべきもの”を証明する物語。

【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。

みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」 魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。 ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。 あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で一人の騎士と運命的な出会いをする。 【2024年3月16日完結、全58話】

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので

モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。 貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。 ──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。 ……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!? 公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。 (『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)

恋は、母をやめてから始まる――正体を隠したまま、仮の婚約者になりました

あい
恋愛
両親を失ったあの日、 赤子の弟を抱いて家を出た少女がいた。 それが、アリア。 世間からは「若い母」と呼ばれながらも、 彼女は否定しなかった。 十六年間、弟を守るためだけに生きてきたから。 恋も未来も、すべて後回し。 けれど弟は成長し、ついに巣立つ。 「今度は、自分の人生を生きて」 その一言が、 止まっていた時間を動かした。 役目を終えた夜。 アリアは初めて、自分のために扉を開く。 向かった先は、婚姻仲介所。 愛を求めたわけではない。 ただ、このまま立ち止まりたくなかった。 ――けれどその名前は、 結婚を急かされていた若き当主のもとへと届く。 これは、 十六年“母”だった女性が、 もう一度“ひとりの女”として歩き出す物語。

処理中です...