ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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銅ランク冒険者

第89話 はじめての魔獣討伐

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村を出て1時間程歩いたら 目的地に到着した。
西門から他の街に繋がる街道があるアチラ側は平野が続いているみたいだけど、東門のこちら側は 森が結構近くに見えていた。
だけど、それなりに距離はあったらしく、森の入り口までは1時間ほどの距離があった。

「お父さん、ホーンラビット以外の普通の兎もいるの?」

「普通の兎?魔獣ではない動物という事か?」

森の入り口から鬱蒼としている訳ではなく、樹々がまばらに生えている入口は 薬草も生えているし、結構見晴らしがよい。
だけど、結構兎が沢山いる。頭の角はもっと長いと思いきや、角ある?みたいなのもいるから、あれは普通の兎なのかもしれない。
そう思ってお父さんに聞いたんだけど、魔獣ではない動物というのは 特別な飼育状況で飼っている生き物の事で、貴族が飼うペットにはウサギというのがいるらしい。
品種改良したのが動物ってことなのかな?

いつも飲んでる牛乳モドキも、カウカウという魔獣が出すお乳らしく、戦闘馬のホースヴァルルと同じく 飼育環境が気に入れば、繁殖もできる大人しい魔獣なんだそうだ。
ちなみに黄色と緑のチェック柄ではなく、普通に茶色一色の魔獣らしい。

「ホーンラビットの絵だと、結構角が長いでしょう? でもあそこにいるのって、角が無くない?」

「ああ、あれはホーンラビットの子供じゃな。多分あの角の小ささじゃ 産まれて1か月くらいじゃろう。半年もすれば5センチくらいにはなる。
討伐対象になるんは 生後1年以上の奴らで、大体10センチくらいの角を持っとる」

「えっ!?その成長率だと、3年目とか角が邪魔で動けなくなるんじゃない?」

あまりの成長率に驚いて聞けば、大爆笑されました。
角は大体10センチくらいで成長が止まるらしく、その後は角が硬くなるだけなんだって。
ホーンラビットはこの辺りの森では最弱魔獣だから、ウルフたちの餌にもなるみたいで、そんなに長生きする魔獣でもないらしい。

「角が小さい魔獣は 魔石も成長してないから、討伐対象は 10センチくらいの角に成長した相手になる。まあ小さいときは逃げるが、成長するとあっちから向かってくるからな、向かってくるホーンラビットを狩ればええ」

ほうほう、向かってくるのを狙えばいいのであれば 間違えなさそうだね。
森の手前でお父さんから教えてもらい、勉強してきた事に知識をプラスしていく。

二人で森に入り込めば、たちまち見えていた角が小さなウサギたちは 穴に潜ったり、飛び跳ねて逃げていく。正に脱兎のごとくというやつだ。
お父さんの指示で、できるだけ足音を立てないように 静かに歩く。それでもお父さんの強者の気配があるのだろう、ウサギは姿を現さない。

「う~ん、流石にこんな浅瀬に入ることはなかったが、随分少ないな……」

あまりにも魔獣が見当たらないので、一旦森の外に出る。
お父さんは 最近この森に来ることもなく、こんなに少ないことに驚いている。

「ケーテさん達が訓練してるって言ってたし、それはこの森じゃなくて 別の森?」

ケーテさんがランクアップしたのは1月前、私たちとこの1月 ギルドで午後に訓練をするために 森の魔獣討伐で特訓すると言っていた。それは別の森かもしれないけど、1月もあったのであればこの森にも来ていた可能性はある。
そう思って聞いてみれば、お父さんもうっかりしていたらしく、多分この森だという事だった。
テーアさんの活動再開の準備運動も兼ねていると言ってたから、下手したらこの森の魔獣は一掃されているのではないだろうか。
お父さんもその可能性が高いと思ったらしく、場所を移動することになった。

「この森は サマニア村で管理しておってな、駆け出しの冒険者が慣れるように ホーンラビットかウルフくらいしかおらんようになっておるんじゃ。
川むこうは 普通の森じゃから、少し他の魔獣が混ざる危険性もある。十分警戒するようにな」

なんと!管理された森だったのか。どうりでウサギが多いはずだね。
あんな小さなウサギが結構な数いるのに食べられてないって不思議だったんだけど、管理された森なら納得だ。

村から続いている川は、目の前にそびえる山 というか崖の隙間を流れてきている。
どうやらこの山を越えたところが皇国で、私が捨てられた場所に繋がっているようだ。
ドンブラコされてた時に この崖の間も通った筈なのに、全く記憶にない。余程 目覚めた時の衝撃が大きかったのだと思う。

小さな橋を渡れば、先ほどと同じように森が続いているけど、入口周辺にウサギはいない。
入口の見通しの良い場所で 前方半円100メートルほどの距離に 自分の魔力を薄く延ばしていく。所謂【索敵】という魔法だ。
これは サブマスが使う風魔法の索敵から派生したもので、無属性の魔法だ。
サブマス曰く、風は 空気の流れを支配して、その中で空気抵抗がある場所に敵がいることを察知するんだそうで、水魔法の方が より敵の大きさや数などがわかると言われた。
海人族は 水中での水の索敵をさせれば、相手がどのような敵なのかも正確に判断できるほど性能が良いらしい。

それを聞いて、確かに風だとどのあたりに敵がいるかを知るには良いけど、索敵にはならないと思い、水中ではないから 海人が使うのとはまた違うことになるとも思った。
ミスト状の水を空気中に流して 読むのは 風よりも正確に見えたんだけど、距離が稼げなかった。
で、ミスト状で思い出した。
水生成魔法の時には、キャッチしやすいように、自分の魔力を空気中に撒いた。そうすることで自分の魔力が混ざった空気は動かしやすくなった。
それと同じことではない方と思い、ミストのようにするのではなく、魔力を薄く、広く、遠くに延ばしていく練習を始めた。

はじめは近くで作業してたお父さんが 振り返るくらい、魔力の波動が分かったらしい。
徒手空拳を見せてくれた時に、お父さんから拡がった魔力がビリビリしたのと同じ感じだったのだろう。
なので、いきなり距離を稼ぐのではなく、薄く、細くを何度も何度も練習した。

ケーテさん達との訓練の時は、身体強化(手足、視力)、結界鎧(全身)、索敵(全方向 3畳分くらい)という3つを常時展開していたので、夜の魔力訓練などできないくらい、毎晩 夕食とお風呂を済ませたら寝落ちしているという日々だった。

だけど そのおかげで、これだけ広い範囲に魔力を拡げることが出来るようになった。
お父さんは隣にいても 索敵をしている魔力の波動は感じないようになっている。


「あっ!お父さん、左50メートルちょっと先に 小動物発見。大きさと 動きから、ホーンラビットだと思う。この一体の少し先に更に2体いるから、合流するかも」

索敵に引っ掛かった小動物は、楕円のフォルムに、3つのとんがりがあるシルエットが分かる、多分 耳と角だろう。少し跳ねながら 更に左奥に向かっているが、そちらには2体の同じシルエットの小動物が 草を食んでいるのだろうか、ジッとしているのが分かる。

「よし、儂は少し後ろからついて行くことにしよう。 そのまま討伐してみればええ。もし無理じゃと思ったら直ぐに駆けつける」

索敵結果を告げればGoが告げられる。地面を走ると 草や地面の揺れで気付くかもしれない。
ああ、でも魔獣は自分達から襲ってくるんだっけ?
木の上を伝おうかと思ったけど 思い直し、音は立てないようにしながらも 3体の元まで駆け寄っていく。

視力強化もしているので、まだ距離はあるけどホーンラビットの姿は捉えることができた。
あとから合流したホーンラビットは雄だったのか、1体に圧し掛かっており、もう1体からゲシゲシ蹴られ、下敷きにされているホーンラビットからも角で攻撃されている。
中々世知辛い魔物事情のようですが、ココを攻撃するのは漁夫の利という感じになりますか?
なんだか痴情の縺れに飛び込むみたいで足踏みしてしまいますが……。

『ヴィオ どうした? 危険がありそうか?』

少し離れた場所から見守っているお父さんから 心配の声が聞こえる。生活魔法の【サイレント】を使っているので、敵に気付かれることもない。
ハンドサインで 『大丈夫』と『行ってくる』を示して 3体に近付く。

あと5メートルという距離で 流石に痴情の縺れで喧嘩をしていた3体も 私の接近に気付いたようだ。
今までは2対1での戦いだったのに、別種族《敵》の私が現れたことで 標的が変わったようだ。
3体が同時に私の方を睨みつけるように体を低く伏せた。

最初に飛び出してきたのは 既に満身創痍になっている推定(雄)、角も喧嘩で折られたらしく 半分ないが、攻撃方法は変更しないようだ。
体力も万全ではないようで 簡単に避けることが出来る。避けながら右手の短剣で 首を斬る。
それを見た 推定(雌)の2体は同時に 攻撃することを選んだようで、左右から飛んできた。
だけど、この2体も既に雄を排除するための喧嘩の直後だ。体力は随分低下していたようで 軽く飛ぶことで攻撃を避けることが出来た。

「【ウォーターボール】」

1体の顔に向けて水の玉を投げて 顔に張り付かせる。
飛ばすだけの水の玉よりも、窒息させるために使う方が攻撃力はあると思うんだよね。
もう1体には やはり短剣を使って首を切り落とした。

水玉が張り付いたままの魔獣は ジタバタしていたけれど、直ぐに窒息したようで動きが止まり、水玉も消滅した。う~ん、これは結構無慈悲な攻撃だね。
自分より強者が相手であれば 有効手段かもしれないけど、ホーンラビット相手に使うのは止めておこう。首チョンパの方が優しい気がする。

別に私は快楽殺人者ではないし、苦しめて討伐したいという訳ではないからね。
ただ、実戦での魔法攻撃の練習も必要だから、少しだけ酷いことをしてしまうのは目をつぶってほしい。
森の魔獣さん達、素材と食べられるお肉は ちゃんと美味しく頂くから許してね!
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