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銅ランク冒険者
第96話 野営後の討伐
しおりを挟む翌朝、いつもより早く目覚めたのは お父さんと一緒に寝ていたからだろう。
お父さんが起きたことで 自然と目が覚めた。
「起こしてしもうたな」
「お父さんおはよう。早く起きたかったから大丈夫」
コッソリ動こうとしたのかもしれないけど、天然毛皮がなくなれば直ぐに気付きます。
二人で【クリーン】で洗顔をして、テントをあけると、まだ朝というには早いけど 確実に朝が近い空気を感じた。
テントの周りに魔獣がウジャウジャというのを想像していたんだけど、この森が初心者の森だからか、結界の効果なのか、周辺にホーンラビットの姿はなかった。
昨日の夕飯で残ったスープを マジックバックから取り出し、下拵えの状態で保存しておいた魚を焼く。
お父さんは 朝でも沢山食べるんだけど、野営とか冒険者活動中は そんなに食べないらしい。
というか、食溜めという感じなのか ダンジョンに潜る前と戻ってきたら沢山食べるけど、最中は少量。という事なんだって。
まあ、普段のあの量を毎食だったら それこそ食料用の大容量バッグが必要になるもんね。
「今日はこのまま西の森に行って、グレーウルフくらいの討伐をして帰ろうと思っておるが、ヴィオは何か希望はあるか?」
食後にこの後の相談をする。
野営が目的だったけど、それだけで帰るのも勿体ないもんね。昨日は薬草採取しかしてないし。
お父さんが提案してくれた案に乗ることとなり、テントや 土魔法で作り出した調理台、焚火の後始末をしていく。
汚れは大体【クリーン】で綺麗になってるし、魚の内臓とかは 敢えて土に混ぜて養分となるようにしている。
テントを括っていたのは蔦だから、解けば布切れとなる。こちらも【クリーン】で汚れを落としてから、小さくクルクルと丸めていく。持ってきたものを順にリュックに詰めて 忘れ物がないことを確認したら出発だ。
前回とは違い、森からの移動なので 川を挟んだ 西の森に到着するのに時間はそうかからなかった。
完全に朝日が昇り、爽やかな風が樹々を揺らし、ホーンラビットが木の下で戯れている。
「あいつらは年中発情期じゃからな、ああしてる間は一定距離を離れておれば 気付かんからな。今日の目的はグレーウルフじゃし、無視していけばええじゃろう」
お父さんは大人ですので 華麗にスルーですよ。
私はまた痴情の縺れを複数カップルで殺り合っているホーンラビットを呆然と見つめてしまったよね。
視界には捉えながらも 距離を測りながら 兎の楽園を通り過ぎ、ウルフがよくいるエリアも通り過ぎる。
もう少し奥に入ればグレーウルフの生息地だ。
グレーウフルとブラックウルフは生息地が似ているんだけど、ブラックウルフは夕方から夜間の行動が多い。毛皮の色が闇に溶け込みやすいのだろう。
1時間程森を散策していれば、目的のグレーウルフではなく ビッグピッグを見つけてしまった。
「お父さん」
「うむ、まあ ヴィオならいけるじゃろう、やってみるか?」
屋台でも人気のお肉、ビッグピッグは 記憶にある豚よりは大きい。
お巡りさんの白バイと同じくらいの大きさなので、中々の迫力がある。多くの魔獣程の凶暴さはないし、魔法も使えないけど、その巨体を活かして突進してくるのが特徴だ。
お父さんは危険そうなら手伝うと、私に任せてくれるというので頑張っちゃいますよ!
既に色んな魔法の練習は終わっているので、お試しではなく 安全に 素材を第一に考えた討伐を行うよ。
蔦魔法で木の上に上り、ビッグピッグが木の実を食べている 隣の木の枝に陣取る。
お父さんの気配は別の木の辺りに感じるので、多分同じように上から見ているんだろう。
「【アイビーウィップ】」
まずは蔦魔法でビッグピッグの両足を1本ずつの蔦で絡めて吊り上げる。
突然のことに驚いたビッグピッグは ジタバタもがこうとしたけれど、既に逆さ吊り状態だ。
「【エアカッター】、【アースホール】」
あまり苦しめる気はないので、逆さになっている状態で首チョンパである。首が落ちる場所に落とし穴を作り、見事に穴に落ちてくれた。
ビッグピッグはお肉だけの素材販売だからね。魔獣討伐のポイントは無くって、肉1kgが100ラリで買い取ってもらえる。
新鮮な状態なので ドバドバと穴に血が流れていく。
折角なので、このまま解体もしてしまおう。
木から下りて ビッグピッグの腹をナイフで切り裂けば、そのまま穴に内臓が落ちていく。
「ほう、これは便利じゃな。儂も今度からは真似しよう。ヴィオ、マコールにも教えてやってええか?」
「お肉のマコールさん? うん、いいよ。って、マコールさんならやってそうだけど」
木から音もなく下りてきたお父さんが 感心したように吊り下げられたビッグピッグを眺めている。
お肉屋さんのマコールさんは、自分で狩りにきて 解体して 販売までする、ゴリゴリマッチョの元冒険者さんだ。
聞けば 普通の冒険者は 討伐後、横倒しにしたまま解体し、血抜きをするためにロープなんかで吊り下げるという方法をとっているらしい。
蔦魔法で最初から吊り下げるなんて考えたことがなかったと言われて、自分の横着による行動が良い方向に受け取られているようだと微妙な気分になる。
吊り下げられた状態で 首もないから毛皮も剥ぎとりやすかった。高さも蔦魔法なので調整できるし、横着から始まったけど、意外と使いやすいことも分かった。
落とした内臓から、心臓を見つけ出し 魔石を取り出す。
それ以外はそのまま土に埋めるんだけど、流石に量が多いので 【ファイア】で少々燃やしてからだ。
これはお父さんが 強化ファイアボールの練習をしたいというのでお願いした。
お父さんは火も得意属性ではあるから 【ファイアバレット】もできるんだけど、私が最近使っている小さく圧縮した【ファイアボール】と、強力焼却が出来る【ファイア】、この二つの習得をするために練習をしている。
青い炎が出る強力焼却【ファイア】は 魔力がちょっと多くなるけど再現は出来ているので、あとは魔力を少なくするだけだ。
圧縮の方が難しいらしいので、穴に向かって何度か【ファイアボール】を投げている。
納得いくレベルの大きさにはなっていないけど、既に穴の中は黒焦げだからね?土魔法で掘り返して 土を均す。
その後は 目的のグレーウルフも発見できたので、しっかり討伐してきました。
ウルフは毛皮が素材になるので、首チョンパは出来ないからね。
【極小ファイアボール】【極小ウォーターボール】【極小アースボール】で眉間に直撃です。
多少穴は開くんだけど、小指の爪ほどの大きさだからね。 普通に森で生活している彼らについている傷より小さいから問題ないのだ。
私が吊り下げて解体をし、過食部分のないお肉などはお父さんが【ファイアボール】で焼却する。という流れが出来上がっていた。
お陰でギルドに報告に行った時には、グレーウルフが3体、ビッグピッグのお肉1/2体分、薬草数種類の納品をすることが出来、7ポイントと1000ラリ(1ナイル)以上のお金を稼ぐことが出来た。
ビッグピッグを丸ごと1体分売ればもっと稼げたんだけど、自宅で食べる用も確保しておきたいからね。それでもこれだけ稼げたのは嬉しいので、しっかり貯金をしてもらうことにした。
薬草分も 今回は野営の討伐と一緒に採集してきたという事にしているので、纏めてもらったので 貯金箱には足されない。
お父さんへのプレゼントは、風の季節の間 他の町にも行くことになるようだから、その出かけた先の町で見つける予定だ。
大きな町にも行くかな?どんなものが喜ばれるかな。考えるだけでも楽しい!
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