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閑話
〈閑話〉サマニア村
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~ギルマス ザックス視点~
「はぁ~、ヴィオさんはダンジョンで困っていることはないですかね」
「アルクが付いてて、初級ダンジョンだろ?
多少慣れないって事で体調崩してても 魔獣にやられるようなことはねえだろ」
風の季節になると、産卵の為に 遠くの海から遡ってくるトラウトを狙って 商人と冒険者が多く集まる。
ノーマルというかブルートラウトは海や下流の川で釣ることができる。
勿論産卵の為に腹に卵を持っている雌や、脂が乗った雄は旬ともいえるので美味いが、それらは噛みつき攻撃をしてくる 少々凶暴な魚なだけで希少性はない。
ドラゴンが住むと言われる この山から溢れる魔素をふんだんに含んだ川の水は、山に近い上流である程魔素が濃く、レッドトラウトは プレーサマ辺境伯の領地まで来なければ存在しないし、更に希少なゴールデントラウトは このサマニア村周辺まで来ないと存在しない。
それらを得る為に 普段は殆ど来ることのない商人や 冒険者も大量に集まってくるため、商業ギルドのないこの村では 俺たち冒険者ギルドが忙しくなる。
今だって、他所から来た冒険者がやらかした報告書の確認をしている訳だが、書類仕事は俺よりも断然優秀な筈のコイツは、書類を捌いては時折遠くを見つめてため息をついている。
1月以上前に旅に出た冒険者親子を懐かしんでいるのは分かるが、まだこの繁忙期はあと2か月も続くんだぞ?と言いたい。
あぁ、そう考えればこのため息も あと2か月は続くのか……。
そもそも まだたった5歳のヴィオをダンジョンの為とは言え、3か月も村の外での活動をするようにすすめた理由が、このトラウト漁解禁が理由だからな。
髪色、瞳の色は変えたものの、ヴィオは美形だ。
それに少し話せば その子供とは思えない発想力や 能力の高さに直ぐ気付かれるだろう。
この時期の冒険者は 金稼ぎの為に来るだけのやつが多い。毎年この季節だけ3か月間来る奴らは ある程度顔見知りにもなっているから良い。
だが、フラリと 顔見知りと一緒に来たわけでもないような奴は、人が多く集まるのにかけて来る奴で、そういった奴が地元の職人と諍いを起こしたりする。
それだけならまだしも、中々来れないこの村に子供の獣人を攫いに来る誘拐目的の奴もいるからな。
大人たちはいつも以上に気を張って この3か月を過ごすことになる。
ヴィオがこの季節にいたら 獣人じゃねえが攫われるのは間違いない。
ランクが上がってくれたのも丁度良かった。
アルクの教育は 傍から見れば 5歳児相手には大分厳しいもんだったが、ヴィオも嬉々としてついて行ってた。
ドゥーア先生の魔法指導もそうだったが、俺やコイツの教えた魔法も 何回かの失敗はあっても直ぐに修正することもできてた。
今じゃ 【ファイアボール】なんて ヴィオの作る青い火の玉の方が凶悪だしな。
この3か月、初級ダンジョンをいくつか回って、最後はメリテントでゆっくり過ごして帰ってくる予定だって言ってたし、なんかあったら手紙を送ってくるだろう。
そんな事を言ってアスランを宥めながら、またゴールデントラウトの魔法攻撃でズタボロになったやつが運び込まれてきたとの連絡が入る。
はぁ~、回復薬だけで間に合いそうにない時は アスランの回復魔法が使われる。
勿論回復薬と同じくらいの代金を後で徴収しはするが、またこいつの機嫌が悪くなるな。
◆◇◆◇◆◇
風の季節の2月目も半分が過ぎた頃、金稼ぎで来たが 自分のレベルではゴールデントラウトは疎か、レッドトラウトにも敵わないと思った者たちは離脱をはじめ、冒険者の人数は随分減った。
こうなってくると 毎年見る顔が残っており、そこに数名 今年から参加したと思われる新顔がいるのが分かる。
はじめの1か月目は人数が多すぎて 顔の記憶なんかしても無駄だからな。
この新顔が 来年、再来年と来るようになれば、彼らがベテランとなるのだろう。大抵毎年一人か二人の新顔が残るので、まだ4人もいる今年は優良か?
いや、まだあと1月半あるから脱落するかもしれねぇな。
ちなみに子供を攫いに来ていたバカ者どもは ただの村人だと舐めてかかった元金ランク達によってボコボコにされ、この時期定期的に巡回している プレーサマ辺境伯の騎士団に連行されて行った。
この頃に残っている冒険者は 自分たちのできる範囲を理解している者達になるから、アスランの回復魔法を使う機会も大幅に減っている。
今年は 子供たちの薬草採取体験をしていたおかげで、途中で回復薬が品薄になることもなく、未だに 中級回復薬も余裕がある状態だ。
ヴィオが言い始めた あの薬草体験は 思わぬ利点があったのだと村長も喜んでいた。
そんなある朝、受付でタキから手紙を渡された。
「ギルマス宛のお手紙が ケピマルのギルドから届いてますよ」
「ケピマル? 随分珍しいところからだな……」
手紙を受け取り 表裏と確認するが 俺宛としての名前しかなく、送ってきた相手の名前はない。まあ、個人宛の手紙に名前を書かないのは珍しくもないが、ギルマスとして受け取る手紙は ギルド同士のやり取りであることが殆どで、その場合は必ず両方の名前が書かれている。
危険物かどうかの確認は既に行われているので、とりあえずその場で封を切って手紙を取り出す。
“ザックスギルマスさま、アスランサブマスさまへ”
そんな見出しから始まったのは、ヴィオからの手紙だった。
元気でやっているか、美味しい魚はたくさん獲れているか、帰ってから食べたいけどもうないだろうことが残念だなんてことが書いてある。
「くっくっく」
「おや?貴方がいつまでもここにいるなんて珍しいですね。手紙ですか?」
「おお、ヴィオからな」
外から帰って来たばかりのアスランにそう答えれば、一瞬で俺の手の中の手紙は奪い取られた。それを見て受付にいる奴らもあっけにとられた顔をしながらも、笑ってやがる。
まあ、アスランがヴィオに目をかけてるのは 誰が見ても明らかだからな。
ん?もう一枚入ってるな。
“アンナープ、コニベア、ウレアとダンジョン踏破し、これからケピマルに潜る。
来月クラベツィアのダンジョンに入った後は ルエメイ遺跡ダンジョンを体験させてから戻ろうと思っている。
ヴィオの考えた索敵魔法は ダンジョン内では非常に使い勝手が良いことも分かった。詳細は戻ってから伝える”
端的に書いてあるが、まだ村を出てから1か月半だぞ?もう3か所も行ったのか?馬車で移動……?いや、それも野営訓練だと言ってたから違うか?
いや待て、ウレアは中級ダンジョンだったはずだ。出てくる魔獣とドロップアイテムが大したことないから人気もないが、それでも階層数は20階あったと記憶している。
見に行っただけか? いや、踏破したって書いてあるな。
マジか、それで来月クラベツィアって……。
あぁ、オークの体験か。ルエメイ遺跡を目的にしてんだったら オークは洞窟で体験させてやりたいって事か。
アルクのやつ、相変わらずスパルタ過ぎねえか?
「ふふふ、ヴィオさんは 楽しんでいるようですね。元気そうでよかったです」
ニコニコしながら ヴィオの手紙を受付にも回しながら嬉しそうにしているアスラン。学び舎のチビ共の事も心配してるから、タキも嬉しそうにしてやがる。
「アルク曰く、ルエメイ遺跡を回って帰ってくるから、戻りは年明けになるだろうってさ」
そう告げれば、アスランだけがショックを受けたように固まった。
アルクの魔法に関する言葉を告げれば、自分もついて行きたかったとか言ってるし、まああの魔法に対する考え方はすげえと思うが、俺は感覚でしか使わねえから こいつほど感激はないんだよな。
『その方が便利そうだから』なんて理由で 水魔法がお湯になるなんてこと、普通はないからな。
来年の魔導学園に行くこともそうだけど、本気でギルド辞めてついて行くとか言わねえよな?
ヴィオの手紙を片手に ブツブツと呟きながら階段を上っていく アスランの後姿を見ながら、少しの心配が湧いてくる。
え?マジで、大丈夫だよな?
「はぁ~、ヴィオさんはダンジョンで困っていることはないですかね」
「アルクが付いてて、初級ダンジョンだろ?
多少慣れないって事で体調崩してても 魔獣にやられるようなことはねえだろ」
風の季節になると、産卵の為に 遠くの海から遡ってくるトラウトを狙って 商人と冒険者が多く集まる。
ノーマルというかブルートラウトは海や下流の川で釣ることができる。
勿論産卵の為に腹に卵を持っている雌や、脂が乗った雄は旬ともいえるので美味いが、それらは噛みつき攻撃をしてくる 少々凶暴な魚なだけで希少性はない。
ドラゴンが住むと言われる この山から溢れる魔素をふんだんに含んだ川の水は、山に近い上流である程魔素が濃く、レッドトラウトは プレーサマ辺境伯の領地まで来なければ存在しないし、更に希少なゴールデントラウトは このサマニア村周辺まで来ないと存在しない。
それらを得る為に 普段は殆ど来ることのない商人や 冒険者も大量に集まってくるため、商業ギルドのないこの村では 俺たち冒険者ギルドが忙しくなる。
今だって、他所から来た冒険者がやらかした報告書の確認をしている訳だが、書類仕事は俺よりも断然優秀な筈のコイツは、書類を捌いては時折遠くを見つめてため息をついている。
1月以上前に旅に出た冒険者親子を懐かしんでいるのは分かるが、まだこの繁忙期はあと2か月も続くんだぞ?と言いたい。
あぁ、そう考えればこのため息も あと2か月は続くのか……。
そもそも まだたった5歳のヴィオをダンジョンの為とは言え、3か月も村の外での活動をするようにすすめた理由が、このトラウト漁解禁が理由だからな。
髪色、瞳の色は変えたものの、ヴィオは美形だ。
それに少し話せば その子供とは思えない発想力や 能力の高さに直ぐ気付かれるだろう。
この時期の冒険者は 金稼ぎの為に来るだけのやつが多い。毎年この季節だけ3か月間来る奴らは ある程度顔見知りにもなっているから良い。
だが、フラリと 顔見知りと一緒に来たわけでもないような奴は、人が多く集まるのにかけて来る奴で、そういった奴が地元の職人と諍いを起こしたりする。
それだけならまだしも、中々来れないこの村に子供の獣人を攫いに来る誘拐目的の奴もいるからな。
大人たちはいつも以上に気を張って この3か月を過ごすことになる。
ヴィオがこの季節にいたら 獣人じゃねえが攫われるのは間違いない。
ランクが上がってくれたのも丁度良かった。
アルクの教育は 傍から見れば 5歳児相手には大分厳しいもんだったが、ヴィオも嬉々としてついて行ってた。
ドゥーア先生の魔法指導もそうだったが、俺やコイツの教えた魔法も 何回かの失敗はあっても直ぐに修正することもできてた。
今じゃ 【ファイアボール】なんて ヴィオの作る青い火の玉の方が凶悪だしな。
この3か月、初級ダンジョンをいくつか回って、最後はメリテントでゆっくり過ごして帰ってくる予定だって言ってたし、なんかあったら手紙を送ってくるだろう。
そんな事を言ってアスランを宥めながら、またゴールデントラウトの魔法攻撃でズタボロになったやつが運び込まれてきたとの連絡が入る。
はぁ~、回復薬だけで間に合いそうにない時は アスランの回復魔法が使われる。
勿論回復薬と同じくらいの代金を後で徴収しはするが、またこいつの機嫌が悪くなるな。
◆◇◆◇◆◇
風の季節の2月目も半分が過ぎた頃、金稼ぎで来たが 自分のレベルではゴールデントラウトは疎か、レッドトラウトにも敵わないと思った者たちは離脱をはじめ、冒険者の人数は随分減った。
こうなってくると 毎年見る顔が残っており、そこに数名 今年から参加したと思われる新顔がいるのが分かる。
はじめの1か月目は人数が多すぎて 顔の記憶なんかしても無駄だからな。
この新顔が 来年、再来年と来るようになれば、彼らがベテランとなるのだろう。大抵毎年一人か二人の新顔が残るので、まだ4人もいる今年は優良か?
いや、まだあと1月半あるから脱落するかもしれねぇな。
ちなみに子供を攫いに来ていたバカ者どもは ただの村人だと舐めてかかった元金ランク達によってボコボコにされ、この時期定期的に巡回している プレーサマ辺境伯の騎士団に連行されて行った。
この頃に残っている冒険者は 自分たちのできる範囲を理解している者達になるから、アスランの回復魔法を使う機会も大幅に減っている。
今年は 子供たちの薬草採取体験をしていたおかげで、途中で回復薬が品薄になることもなく、未だに 中級回復薬も余裕がある状態だ。
ヴィオが言い始めた あの薬草体験は 思わぬ利点があったのだと村長も喜んでいた。
そんなある朝、受付でタキから手紙を渡された。
「ギルマス宛のお手紙が ケピマルのギルドから届いてますよ」
「ケピマル? 随分珍しいところからだな……」
手紙を受け取り 表裏と確認するが 俺宛としての名前しかなく、送ってきた相手の名前はない。まあ、個人宛の手紙に名前を書かないのは珍しくもないが、ギルマスとして受け取る手紙は ギルド同士のやり取りであることが殆どで、その場合は必ず両方の名前が書かれている。
危険物かどうかの確認は既に行われているので、とりあえずその場で封を切って手紙を取り出す。
“ザックスギルマスさま、アスランサブマスさまへ”
そんな見出しから始まったのは、ヴィオからの手紙だった。
元気でやっているか、美味しい魚はたくさん獲れているか、帰ってから食べたいけどもうないだろうことが残念だなんてことが書いてある。
「くっくっく」
「おや?貴方がいつまでもここにいるなんて珍しいですね。手紙ですか?」
「おお、ヴィオからな」
外から帰って来たばかりのアスランにそう答えれば、一瞬で俺の手の中の手紙は奪い取られた。それを見て受付にいる奴らもあっけにとられた顔をしながらも、笑ってやがる。
まあ、アスランがヴィオに目をかけてるのは 誰が見ても明らかだからな。
ん?もう一枚入ってるな。
“アンナープ、コニベア、ウレアとダンジョン踏破し、これからケピマルに潜る。
来月クラベツィアのダンジョンに入った後は ルエメイ遺跡ダンジョンを体験させてから戻ろうと思っている。
ヴィオの考えた索敵魔法は ダンジョン内では非常に使い勝手が良いことも分かった。詳細は戻ってから伝える”
端的に書いてあるが、まだ村を出てから1か月半だぞ?もう3か所も行ったのか?馬車で移動……?いや、それも野営訓練だと言ってたから違うか?
いや待て、ウレアは中級ダンジョンだったはずだ。出てくる魔獣とドロップアイテムが大したことないから人気もないが、それでも階層数は20階あったと記憶している。
見に行っただけか? いや、踏破したって書いてあるな。
マジか、それで来月クラベツィアって……。
あぁ、オークの体験か。ルエメイ遺跡を目的にしてんだったら オークは洞窟で体験させてやりたいって事か。
アルクのやつ、相変わらずスパルタ過ぎねえか?
「ふふふ、ヴィオさんは 楽しんでいるようですね。元気そうでよかったです」
ニコニコしながら ヴィオの手紙を受付にも回しながら嬉しそうにしているアスラン。学び舎のチビ共の事も心配してるから、タキも嬉しそうにしてやがる。
「アルク曰く、ルエメイ遺跡を回って帰ってくるから、戻りは年明けになるだろうってさ」
そう告げれば、アスランだけがショックを受けたように固まった。
アルクの魔法に関する言葉を告げれば、自分もついて行きたかったとか言ってるし、まああの魔法に対する考え方はすげえと思うが、俺は感覚でしか使わねえから こいつほど感激はないんだよな。
『その方が便利そうだから』なんて理由で 水魔法がお湯になるなんてこと、普通はないからな。
来年の魔導学園に行くこともそうだけど、本気でギルド辞めてついて行くとか言わねえよな?
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