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ヴィオの冒険
第117話 休養日と準備
しおりを挟む〈グギュルアァァァァァァ~〉
フワフワとした微睡が続いていたんだけど、聞いたことがない魔獣の鳴き声が聞こえたかと思って 飛び起きた。
「【ウォーターウォール】」
咄嗟に自分とお父さんを護れるように水の盾を張って あたりを見回す。
ん?
水の壁から見えるのは、見慣れたダンジョンの洞窟独特の土壁でもなく、木の壁、ガラスの窓。
私の足元が安定しないと思ったら、ベッドだった。
ん??
ふと右側を見れば、ベッドに座ったお父さんが水の壁の中にいた。
ん???
「お父さん、魔獣の声が聞こえた気がしたんだけど……」
宿のお部屋だと気付いたので 水の壁は解除する。寝惚けて変な夢見ただけかな?
いや、でもお父さんが 顔を手で覆いながら震えているから、そんなにヤバイ魔獣だった?
「んっ、いや、多分夢を見たんじゃろう。
ダンジョンで過ごしておると魔獣の夢を見る者も多いからな。
それはそうと、ヴィオ お腹が空いておるじゃろう?夕食の時間に目覚めれて良かった。行こうか」
そういえばお腹が空いている気がするね。
パニックルームでファイアバレットを大量に打ち込んだことで魔力切れをしたことを思い出し、そのせいで変な夢を見たんだと思った。
お父さんと一緒に食堂に行けば、女将さんが直ぐに食事を持ってきてくれた。
「ヴィオちゃん 魔力切れだったんだって? ぐったりしたまま抱えられて帰ってきたから驚いちまったよ。小さいときは無理して沢山魔法を使っちまうこともあるからね、しっかりご飯を食べて 今夜はゆっくり寝るんだよ?」
「女将さんありがとう! さっきはそのせいで おっきな魔獣が吠える夢を見ちゃったけど 大丈夫だよ。今度は気を付けていくね」
「ぶほっ!!! ゲホッ、ゲホッ」
「えぇっ!?お父さん大丈夫?」
「すまんすまん、ちょっとお茶が気管に入っただけじゃ」
この村でも 初日はダンジョンに行くことを心配されていた私だけど、3日も元気に戻ってきている事、進度を聞いて 安心してくれていた女将さんや村の人たち。
そんな私が4日目に お父さんの抱っこで戻ってきたから、とってもビックリされてしまったみたい。
だけど怪我ひとつないこと、お父さんから魔力切れとの説明を受けたことで ゆっくり寝かせることにしてくれたみたい。
女将さんに説明してたら、お父さんが思いきり噎せてて驚いちゃったよね。
食後にフルーツも出してもらって大満足の夕食を頂いたら、あんなに寝た筈なのに満腹でちょっと眠い。
「今日は無茶したからな、無理せんと眠ればええ。魔力枯渇による睡眠もまだ足りんのじゃろう。
明日は休養日じゃから、やりたいことは明日すればええ……」
ベッドに寝かされてトントンされると、瞼が落ちてきて、お父さんの優しい声で安心する。たちまち眠りの世界に招かれてしまった。
◆◇◆◇◆◇
翌朝、いつも以上にスッキリ目覚めた私は 元気いっぱいで朝食を頂き、お父さんと日課のストレッチもしっかり行う。
「さて、昨日のダンジョンでの事じゃが、ヴィオの反省点はあるか?」
今はお宿のお部屋でお父さんとテーブルを挟んで向かい合っています。
昨日は疲れ果てて寝ちゃったから反省会は出来なかったけど、毎日ダンジョンの後にはやってることだからね。
「はい、9階までの【索敵】と討伐までは 特に問題なかったと思ってます。
だけど、パニックルームの魔獣があまりにも気持ち悪くって、ちょっと我を失ってたというか、冷静に対処できなかったです」
「そうじゃな、まさか ヴィオが あんなに レッドウッドラースを苦手に思うと思ってなかった儂も悪かった。じゃが、畑にいたウッドラースは平気じゃったじゃろ?」
自宅の畑にいたダンゴ虫はお父さんの親指サイズだったじゃないか。
地球にいたダンゴ虫よりは大きかったけど、言うて5センチくらいのサイズだから全然良かったんですよ。しかも黒っぽい色も 見覚えがあって大丈夫だったんです。
だけど赤い体、40センチほどあるでかさ、特にひっくり返った足が縦横無尽にウゴウゴするのが駄目だった。
今冷静に思い出したら 別に大したことないんだけど、あの量で壁に張り付いた感じが気持ち悪すぎた。
「まあ、ファイアバレットを あれだけ打ち込めたっちゅうことは、ヴィオの魔力量が随分増えていることは分かったから、それを知るのは良かったかもしれん。
じゃが、何が駄目じゃったかは分かっとるな?」
「うん、ダンジョンで魔力切れになるまで使ったら、その後に死ぬ可能性が高かったよね。
もっと別の魔法を使うべきだったと思う。ファイアバレットも 普通のより強力版にしちゃったし、消えて欲しいって魔力を込めすぎたと反省してます」
シュンとしながら反省点を述べれば、お父さんもそれ以上に叱ることはなく、頭を撫でてくれた。
前に村でファイアバレットを使った時は、普通のファイアボールサイズで10個くらいしか出せなかった。そう考えれば 昨日のは 50個を超えていただろうという事なので、随分魔力が増えたんだと分かる。毎晩の訓練が身になっていたようで嬉しい。
「パニックルームの宝箱にはこれが入っておったぞ」
お父さんがマジックバックから取り出したのは、黒っぽい艶々した盾?
「これって盾?」
RPGの先駆けともいえる 竜の探求というゲームでは見た事があるような、まさに鱗の盾みたいな、鱗が張り合わされたような艶々した盾だけど、鱗を持つような敵 居なかったよね?
「ああ、これはレッドウッドラースの外殻で出来た盾じゃな」
え?赤くないんですけど?
そう聞けば、レッドウッドラースを単体で倒して落ちるドロップアイテムでも、黒や赤、青など、色々な外殻が落ちるんだって。
今回は私が魔力切れで倒れた事もあって、宝箱の確認だけして 外殻は拾ってこなかったと言われた。
外殻は宝箱のアイテムのように、複数を貼り付けて防具に使ったり、魔術具の触媒に使ったりするみたいだけど、然程珍しいアイテムでもないし、他のダンジョンにも出るというので そっちで採集できるように頑張ろうと思う。
「さて、明日以降のダンジョンはどうする?」
「んとね、昨日4・5・8・9階を行ったでしょう?明日はソコがリポップしてないけど、また出たら火の日には出てくるから また討伐からってなるとちょっと時間がかかっちゃうかなって。
だから、明日は9階で泊って、火の日にボス部屋に行こうと思うの。
パニックルームのリポップは 結構時間がかかったでしょう?だからあの部屋で大丈夫かなって」
パニックルームはコニベアでもあったけど、あそこでは48時間で通常階の魔獣はリポップしていた。だけどパニックルームだけは空き部屋のままで、リポップしなかったから、きっともっと時間がかかるんだと思う。
もしケピマルダンジョンのパニックルームが再開してたとしても、リベンジだから良いんだけどね。
「その場合は ボス戦をした後、帰り道で4階分の魔獣と戦闘することになると思うが大丈夫か?」
「うん、シカーマンティスとゴブリンの上位種がボスだから、そんなに沢山魔力を使うこともないと思うの」
どんな風に戦うつもりかも相談したうえで 許可が出た。
女将さんには明日のダンジョン泊を伝え、お弁当を多めに作ってもらえることになった。
いよいよ明後日、ケピマルダンジョンを踏破するよ。
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