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ヴィオの冒険
第121話 ルエメイ村
しおりを挟む「それじゃあ、ギルドでダンジョンの事を調べるか」
「うん!」
宿の女将さんに ギルドに行ってくることを告げ、この村にある冒険者ギルドに向かう。
何処の村でも同じ外観の建物だから 直ぐに見つけることができる。
それに ダンジョンがある村では、ダンジョンに近い出入口の近くにギルドがある。サマニア村にはダンジョンがないけど、大きな街との街道がある出入口の近くにギルドがあるのと同じだと思う。
午後の中途半端な時間である今、ギルドに冒険者の姿はなく、受付にも 人は座っていない。
サマニア村でも これくらいの時間は、皆カウンターの裏で 事務作業をしているから同じようなものだと思う。
「こんにちは~、ルエメイ遺跡ダンジョンの資料を見せてもらいに来ました。資料室に行ってもいいですか?」
「は~い、はいはい、あら、こんにちは~、って あら?お嬢ちゃんがダンジョンに入るの?」
私の声に気付いた受付さんのお一人が出てきてくれた。
髪がピョイピョイ跳ねているけど、よく見れば羽だから、多分 鳥獣人の方だろう。村長さんと同じだね。
「はい、こんにちは、サマニア村から来ました。ヴィオです。銅ランクです。
お父さんは銀ランクで 一緒に入ってもらいます」
「まぁ、しっかりしているのね。そう、お父さんは……銀ランクの上級が同伴するなら心配はないわね。だけどダンジョンは何があるか分からない場所だから、気は抜かないようにね。
資料室は2階よ、しっかり調べて行って頂戴」
お父さんがタグを見せれば、お姉さんも安心した様子で2階の資料室への立ち入りを許可してくれた。
話している間に 他の受付さんも出てきて、あらあら、まぁまぁと囲まれた。
資料室に行く前に お菓子をいくつか持たせてもらったけど、皆どこに お菓子を収納してたんですか?
「こんにちは~、ダンジョンの事を調べたくて来ました」
資料室の扉を開き、中にいるだろう司書の方に聞こえるように声をかける。
奥の方から くぐもった声が聞こえ、羊獣人のおじさんが出てきた。
「はいはいはい、おや?初めて見る顔だねぇ」
「こんにちは、サマニア村から来ました ヴィオです。明日から遺跡のダンジョンに入るので、その資料を調べに来ました」
「おお、そうかいそうかい。初級ダンジョンの下調べをするものは年々少なくなっているけれど、感心だねぇ。うちのダンジョンは初級のわりに少し変わっているからね、しっかり調べてから行くと良いよ。
ちょっとそっちで待ってなさい。
え~っと、ダンジョンの資料は……っとこれだな。あとは、これもあった方がいいかな」
勧められた席で待っていれば、羊のおじさんが3冊の本を持ってきてくれた。
「これがダンジョンの資料で、これがダンジョンに出てくる魔獣が書いてある資料、それからこっちがダンジョンで採集できる素材が乗っている資料だよ」
「おじさん、ありがとうございます」
「こんなに……、助かります」
「いえいえ、こんなに小さいときから 下調べの大切さを知ってくれる冒険者が増えてくれるのは、私としても嬉しいことですよ。
何か聞きたいことがあれば、いつでもどうぞ」
ニコニコしながら羊のおじさんは仕事に戻って行った。
3冊も資料を探してくれるなんて、めっちゃいい人。ありがたいね。
「お父さん、採集できる素材って言ってたけど、ダンジョンで採集なんてできるの?」
「洞窟型のダンジョンには殆どないが、多くのダンジョンは採集や採掘が出来るぞ。
採集が出来るダンジョンは 人も集まりやすいから 町も大きい。ヴィオが今まで行った場所は、他の冒険者に会わずに済むようなところを選んでおったからな、採集がない場所ばっかりじゃったが、ここはちょっと5階以降が森じゃからな、採集もできると思うぞ」
森!?
遂にダンジョン内の 不思議体験ができるんだね?
ルエメイ遺跡ダンジョンの詳細が書いてある資料によれば、4階までは洞窟に近い 石でできた通路だそうで、何故か5階に大きな湖があるらしい。
水の中には 水棲魔獣が住んでいるけど、水に入らない限り襲ってはこないらしくて、ある意味セフティーゾーンとして使われているみたい。
で、6階からが森になっているらしくて、樹々の中には果樹もあり、薬草類、香辛料などの素材もあるらしい。
勿論 魔獣も森らしいのが出るらしくて、洞窟とかよりも 危険性は高いとの事。
初級ダンジョンにしては危険性が高いけど、中級ダンジョンにするには 魔獣のレベルが高くない事、階層が10階層だという事で、初級ダンジョンになっているらしい。
「水の魔獣は見た事ないけど、それ以外のは 森で会ったことがある魔獣しか出ないみたい」
「そうじゃな、まあ、普通の町で育った冒険者は、ココみたいなダンジョンで 森にいる魔獣の討伐体験をして 成長するんじゃが、辺境は 先に本物の森で体験するからなぁ」
お父さん曰く、森で討伐をすれば 死骸が残る為、解体が必要になる。
解体に不慣れで 時間がかかれば、血の匂いに魔獣が引き寄せられて 囲まれてしまうこともある。
それなら、最初は討伐したらドロップアイテムが出るだけのダンジョンで、魔獣討伐に慣れるというのも経験を積むのに良い。とのこと。
は~、成程ね、確かに 町に住む人や、森が近くに無い場所で育った人が冒険者になることもあるもんね。そう考えれば、薬草類が育ちやすくて 採集練習し放題で、魔獣も育てている場所が近くにあって、討伐や野営の体験までできちゃうサマニア村って、すっごく良い場所だったんじゃない?
今更ながら、ゴミ捨て場で目覚めた後、川で流されて良かったって思うわ。
魔獣に関しては 既に対戦経験のある相手だったので ドロップアイテムだけ メモに追記し、6階以降で採集できる果物、薬草などの素材を記載していく。
採集方法が特殊なモノも忘れずにしっかりメモるよ。
素材の本に関しては、サマニア村の村長が書いた薬草辞典が凄すぎたんだと 改めて驚くことになった。
あれだけ素材の絵が詳細なのは勿論、採集方法、保管方法、疑似素材との見分け方まで書いているのは 無い。
勿論素材の加工方法は書いてなかったけど、それはまた別の薬師になる人の本とかがあるんだと思う。
ちょっと食材に使える香辛料は種類が多すぎて メモしきれなかったけど、お父さんがそれはメモってた。家に在庫が減ってきている素材があるらしくて、ちょっとウキウキしているのが面白い。
「おじさん、ありがとうございました。とっても勉強になりました」
「そうかい、役に立ったなら良かったよ。くれぐれも気を付けてダンジョンに行くんだよ」
メモが終わったら資料を返し、羊のおじさんにお礼を言って1階におりる。
お父さんが掲示板を見てみようと言うので 一緒に確認すれば、ダンジョンの果物、蜘蛛の糸、ホーンラビットの角、ヘビの皮が 常設買取に出ていた。
「お父さん、これって」
「うむ、マンティスの鎌のように ドロップアイテムや 素材の買取もしておるからな、こうして確認しておけば、それは持って帰ろうと思えるじゃろう?
まあ、ゴブリンの腰布や オークの尻尾が買取になることはないがな……」
そりゃそうだよね。
でも、そっか。お父さんは そういうのも知ってたから マンティスの鎌も拾った方が良いって言ってくれてたんだね。
冒険者たるもの、ギルドの掲示板チェックが大切なんて、ラノベの常識だったじゃない!
私ったら、うっかりスッカリ忘れてたよ。
ダンジョンに入るっていう事で テンションが上がり過ぎてたんだね。
「全然気にしてなかった。勿体ない事してたかもだね」
「ははっ、大丈夫じゃ。そうならんように、最初は ドロップアイテムに価値がない場所から行っておったし、まずは討伐と ダンジョンそのものに慣れるんが目的じゃったからな。
ペースが速いし、ヴィオが順調に成長しておるから、少しずつ覚えることを増やせばええんじゃ。
その為に 儂が一緒におるんじゃからな」
お父さん……。
あまりにも嬉しくて、ギュっとお父さんの脚にしがみ付く。
ちょっと驚いてたお父さんだけど、嬉しそうに抱え上げてくれてたから首にギュッと抱き着く。
「お父さん ありがとう。私もっともっと成長して、銀ランクになって、お父さんと一緒に金ランクになりたい」
「おお、金ランクかぁ。そうじゃな、貴族と関わるのを避けておったが、ヴィオが目指すんじゃったら 一緒に頑張っても ええかもしれんなぁ」
お父さんに抱っこされたまま ギルドを出る。
受付のお姉さんたちが 手を振ってくれたので、お父さんの肩越しに手を振っておいた。
美味しい果物が沢山取れたら、お姉さんたちへのお土産にしても良いかもね。
おやつのお返しとして。
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