ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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ヴィオの冒険

第133話 出発と新しい街

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ギルドでお金をもらう時、現金に半分してもらったのには理由が二つある。
ひとつは、半分を現金にしておくと 買い物が楽だから。
もう一つは、ギルドの人たちに お父さんと私の半々にしていると思ってもらう為。

香辛料系の素材以外は 私が採集しているので お父さん的には 全額私のカードに振り込みたい、だけど そうしてしまうと私の能力がおかしいのがバレるということで、魔獣も半分はお父さんが討伐しているだろうと思ってもらうように誘導している。
私としては、ここまで色々用意してもらって一銭も払ってないんだから、全額お父さんが貰ってくれていいんだけどね。

ああ、あと、昨日何で 会議室でやり取りをしたのかが気になって、帰ってから聞いてみたんだけど、受付であの金額のやり取りがあると、お金を持っていると思って 襲ってくる人が居なくもないからってこと。
特に 私がいるから、何かあって私を人質にするようなことがあってはならないから。という措置だったみたい。

その昔、カウンターで聖魔術の持ち主だと叫んだ受付が居た組織だとは思えない徹底ぶり。
というか、そういう事があったから徹底されているのかもしれないね。
私としては大変 有難い話です。


ギルドのお姉さんやお兄さん、おやつをくれた人以外にも、みんな心配してくれて優しい人達ばっかりだった。
昨日、村を出ることを告げに ギルドに挨拶に行ったら「またいつでも来てね」とラブコールを頂いた。スタッフの皆さん様に採集していた果物4種を籠に入れて差し入れです。って渡したら、全員からハグされたよ。
ギルドに買取してもらった果物は 即座に競売にかけられて、村の食堂や お菓子屋さん、八百屋さんに買い取られたらしく、スタッフさんが買い取ることは出来なかったらしい。
非常に喜んでもらえて良かったです。


「さて、行くか」

「うん、次はメリテントの大きな街だよね?」

そう、次の目的地は 子供たちが洗礼式を受けるために行く、大きな教会がある街、メリテントなのだ。
そこで少しだけ観光をして、いよいよサマニア村に帰るという訳。
村を出て3か月が過ぎた。今月末に戻れば4か月ぶりのサマニア村だ。

ルエメイ村からメリテントまでは、徒歩で4日の予定、街では観光をする予定なのだ。
ルエメイダンジョンでは思ってた以上に稼げたから、お買い物もできそうだ。
女将さんと旦那さんからは、またお弁当と 保存食を持たせてもらい、門番のお兄さん達からも大きく手を振ってもらって ルエメイ村を後にした。

「お父さん、初級ダンジョンだけど 美味しいものがいっぱいだったし、また来たいね」

何でこの村のダンジョンに人が集まってないのかが不思議だったけど、森ダンジョンは結構多く、2階から森がある中級ダンジョンなんかは もっと植物の種類も多いらしい。
残念だけど、誰にも邪魔をされずに美味しいもの探しができたので、ココにはまた来たいと思う。

お父さんと二人で 街道をひたすら歩く。
ルエメイ村から メリテントまでは森がない。というか、山沿いを歩いていたクラベツィアまでとは違い、ところどころに林や 小さな森はあっても、魔獣を警戒するという必要がないという事だ。
ただ、そうなると野草を摘んだり、小さな魔獣を狩っておやつ……いや、晩御飯にしたりという楽しみがない。
馬車道だろう整地された道を歩くだけなので、二人してどんどんスピードが上がっている。

魔法の練習もしたいと思い、攻撃魔法は危険だから【ウインド】を使って追い風を作り、お父さんと私の背中に風を当てて より速く歩いたりしてみる。

「おお!これは面白いな。ちょっとヴィオ来てみろ」

ヒョイと抱きかかえられたまま、お父さんに言われるように 足元と上半身に6:4で風を当てる。するとお父さんが少し浮いた感じになり、飛び跳ねるように凄い速さで走り出す。

「きゃー、はや~い!楽し~!」

「これは凄いな!面白いぞ!サブマスが馬車を早く走らせる時に使うと言っておったが、これは人でも使えるな。わははは~」

……いや、ちょっと二人してテンションがおかしくなってたのかもしれないです。
でも、人とすれ違うこともなかったし、ダイジョブ、ダイジョブ。

お陰様で、4日の野営予定が、たった二日で到着しました。
追い風走法で 2,5日分を走破したお父さんのお陰で、2日目は道の魔物除けにしっかり魔力を補充しながら歩いても、夕方前には街に到着し、お宿も確保が出来ました。
私がはしゃぐのは 別段珍しくもないんだけど、お父さんがあんなにはしゃいだのは初めて見たからちょっと楽しかった。
きっとこれもサブマス案件だよね。絶対真似したいって言うと思うんだ。
いや、もしかしたらギルマスが真似するかもね。うふふ、早く二人に会いたいな。


今日はもう夕方だから、観光はしないで お宿でゆっくりする予定。
今までの村とは違い、大きな街だけあって お宿には人がいっぱいだった。
今までの村でも 水の季節火の季節には、洗礼式を終えて冒険者登録をし、銅ランクに駆けあがった初心者冒険者たちが沢山訪れて、お宿も人が沢山になるらしいけど、私が訪れたこの時期は閑散期だった事もあり、お宿で別のお客さんと会うことがなかったんだよね。

でも、大きな街や 人気の中級ダンジョン、上級ダンジョンを構える街は 常に冒険者や商人が集まり、人が溢れている。
私も街に入ってからは お父さんに抱っこされたまま歩いているくらいだったもの。



「夕食は18時からだけど、遅い時間になれば酒を飲む奴らが増えるからね。あんたみたいなちびっ子は絡まれちまう。早めの時間に下りてきな」

ふくよかな女将さんに 宿帳に名前を書いている時にそう言われ、お父さんと二人で頷いた。
そっか、他の大人が一緒だと、お酒を飲む人もいるってことだね。
今までの村の宿では私たちしかいなかったし、お父さんもお酒を飲まないから そんな危険を考えてなかったね。

部屋は3階の端の部屋を用意してくれて、これも酒盛りしている食堂からの声が遠くなるように配慮してくれたことが夜に分かった。
お部屋に入って 旅装を解き、お風呂をどうしようかと考える。

「お父さん、いつもはお風呂に先に入ってたけど、ごはんの後の方が良いかな?」

「そうじゃな、街に入った時点で4の鐘過ぎておった。そう時間もないじゃろうし、他の客がいるなら 軽装過ぎるより冒険者装備の方がええじゃろう」

今までの環境があまりにも守られた場所だったのだと改めて感じながら、マントと短剣だけ取り外し、鞭のベルトはそのままにしておく。
マジックバッグはリュック型だから、それを付けて食事をしているのは不自然だろうと言われたので部屋に置いていく。
ちょっと心配だったけど、私以外の人がバックを開けても 中身は何も入っていないように見えるので大丈夫だと言われた。
そういえば、魔力登録した人しか使えないんだったね。

用意が出来たので食堂におりる。
お父さんはお部屋の鍵を閉めた後、【ロック】も唱えていた。
二重鍵になるらしくて、普通に鍵開けをしに来た人は【ロック】によって開錠できないし、【アンロック】で開けようとしても、普通の鍵を開ける作業が必要になる。
ちなみに、【ロック】をかけた人と 【アンロック】を唱える人が違う場合、【ロック】をかけた人に知らせが来るらしい。
ベルが鳴るとかそういう物理的なのではなく、虫の知らせ的な 何かピンとくるみたいな感じらしい。
なので、こんな宿の狭さだと 十分取り押さえることができるだろうという事だった。

生活魔法侮れませんね。
そう考えたら、ダンジョンで【アンロック】をする場合、ダンジョン主には 気付かれてるって事なんだろうね。
いや、侵入している時点で気付いているから良いのかな。


そんな心配もあったけど、早すぎる時間だったせいか 同じ時間に食事をする人達に絡まれることもなく、お父さんに虫の知らせが来ることもなく、夕食を頂くことが出来ました。
今までは小さな村だったからか、とても人と人の距離が近かったけど、流石は大きな街だけあって、食堂で隣の席になった人たちとも会話はなかった。
大学とか、就職で首都に出た人が「人が冷たくて寂しい」って言ってたことをふと思い出す。
冷たいんじゃなくて、お互いに他所から来た人だから距離感を掴みかねているってだけだと思うんだよね。
人が多いから 良い人も悪い人もいるし、巻き込まれたくないっていう自衛も働いてるのかも。私も今は狙われる側だから、あまり積極的に知らない大人の人とは関わりたいと思わない。
特に冒険者は 人相が怖い人も多いしね。
自分も冒険者だから、そう思われないように気を付けないとね。
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