ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

文字の大きさ
161 / 584
家族と合流

第139話 ただいま

しおりを挟む

ダンジョン巡りの最後に訪れたメリテントの街で、偶然 トニー君たちに再会した私とお父さん。
トニー君たちは 洗礼式の為にメリテントに来ていたらしく、帰りの馬車に同乗させてもらって 4か月ぶりのサマニア村に帰ってきた。

「久しぶりにお家のベッドで寝たけど、やっぱりお家が一番安心するね!」

帰宅して直ぐは 【クリーン】を家中にかけてお掃除をした。
水玉に包まれるんだけど水浸しになる訳じゃないから、布団が濡れているなんてこともない。とっても便利な魔法である。
裏の庭は4か月も放置していたけど、村長さんがお手入れをしてくれていたようで 然程荒れてはいなかった。
薬草たちが元気に育ちすぎていたけれど、これはさっさと回収してギルドに販売すれば問題ない。

テントなどの野営道具のお手入れは、メリテントに到着して 時間が沢山あったからやってしまっているし、人が多くなりすぎて出かけられなかった最終日で スパイスの処理も終わってしまった。
マジックバッグからキッチンに並べていくけど、多すぎる分は 劣化をしないように私のバッグに入れたままだ。

メリテントから半日ほどで村に到着したけれど、時間も時間だったので そのまま帰宅した私たち。
ギルマスに借りてたマジックバッグも返却しないとだし、両方のバッグに大量に入っている素材も販売したい。
ということで、朝食を食べた後は早速ギルドに出かけることにした。


「おや? ヴィオとアルクさんじゃないか、帰って来たんだね。おかえり」

「お?おお!帰って来たか。遅かったな」

「あら、ヴィオちゃん 少し大きくなったんじゃない?おかえりなさい」

大樹の広場に着いたところで お店のおじさんや、買い物に来ていたおばさん達から おかえりを言ってもらえる。

「ただいま~、沢山ダンジョン巡りしてたから ゆっくりになったの」

「大きくなった?うれしい!ただいま!」

こんな風に迎え入れてもらえるのは、本当にこの村の子供になった気がしてとても嬉しい。
学び舎はもう始まっている時間だから、お店の忙しさもひと段落しているってところかな。ギルドも今なら大丈夫だろうと思って選んだんだけどね。


「こんにちは~」

「はーい……、あっ、ヴィオちゃん アルクさん、おかえり~」

ギルドに入れば中は静かなもので、やっぱり受付も人はいない。中で書類仕事をしているので 声をかければ出てきてくれたのはタキさんだった。
その声に 他の受付さんたちも バタバタと出てきてくれて 同じようにお帰りと迎えてくれる。

「ダンジョン巡りは楽しかったかい? おや?少し出かける前より大きくなったみたいだね」

「とっても楽しかったよ。さっきもね、大きくなったって言ってもらえたの。
お父さん、私おっきくなってるって」

冒険者装備は サイズ調整が自動で行われるから きついと感じることもなく、お父さんは大きすぎるし、成長を実感することはなかったんだけど、こんなに立て続けに言われるという事は相当大きくなったのだろう、いいことだ。

「ははっ、そうじゃな 成長していると思うぞ。
タキ、巡ってきたダンジョンだけじゃなく、途中の森でも討伐をしてきたから素材が沢山あるんじゃ。
ポイント加算はなし、素材の買取だけ頼みたい。
それからギルマスの手が空いてたら話をしたいと伝えてくれるか?」

「わかりました。では2階の第三会議室を使ってください。
えっと、手が空いている人……」

「「「私が!」」」

「いや、俺も行くから一人で良いし……」

お父さんが素材買取のお願いをしたら、タキさんから会議室を指定された。まあ量が多いから会議室を案内してくれるのは有難いね。
手伝いに名乗り上げてくれる人が多いけど、書類仕事から逃げたいとかじゃないですよね?


受付の喧騒を後に、お父さんと久しぶりの2階へ上がる。
他所の町でも図書室を使うのに入ったけど、ここのギルドの図書室の広さと会議室の大きさは段違いだったことに今更気付く。
きっとこれも辺境であることと、魔獣の危険性なんかが関係するんだろうね。
よく考えれば、自宅の裏庭に 大量の薬草が鈴なりになってるっておかしいもんね。

会議室のテーブルに種類別に素材を並べていれば、受付嬢のウミさんが来てくれた。
壮絶な戦いをしてきたのだろうか、少し息が上がっているし 顔が赤い。何があったか気になるけど、聞かない事にしておきます。

「ヴィオちゃん達は初級ダンジョンに行ったんじゃなかった? ほとんどドロップアイテムはなかったでしょう?」

「うん、でも 村の周りの森には 結構沢山いたし、ルエメイ遺跡ダンジョンは 採集できるものも沢山あったし、ドロップアイテムもいっぱいだったよ」

山羊獣人のウミさんは 尻尾も短いし、ショートカットでフワフワしている髪だから 耳も見えなくて、最初は何の獣人さんか分からなかったんだよね。
旦那さんのオルさんもピルピルした小さな耳だけで 聞いたら山羊だって言われて驚いたんだよね。
オルさんには立派な角が生えるらしいんだけど、凄く邪魔だから定期的にカットしているらしくって、一昔前のヤンキーみたいに剃り込みを入れているんじゃなくて、角を削っているからだって知ったんだよね。何かごめんね。

森で採集した魔獣の肉は 既に食べたり 加工肉にしてマジックバッグに入っているので、ここに出しているのは毛皮とか、肉以外の素材だけだ。
お喋りしながらも テキパキ確認してくれるウミさんはシゴデキ妻なのだ。

「お~、帰ったか……「ヴィオさん!おかえりなさい」」

バーンと扉が開いたと思えば、ギルマス……を遮ってサブマスが飛び込んできましたよ。
ヒョイと持ち上げられて スリスリされて、びっくりして固まっていたら お父さんに掬いあげられました。

「あぁぁぁ~」

「いや、アスラン、それは駄目だろ」

「サブマス、5歳とは言え 自分の娘じゃない子にそれは駄目ですよ」

救い出されたまま お父さんの肩の上に乗せられた事で、サブマスが切なげな声を上げていますが、ギルマスとタキさんから冷ややかに攻められています。
まあ、言ってくれてからなら大丈夫だけど、いきなりは驚くのでやめて頂きたい。

まだ素材を出している途中だからね、そう告げれば 並んだ素材の多さにタキさんは驚き、ギルマスは呆れ、サブマスは喜色満面になった。

「ギルマスさんに借りてたマジックバッグも返さないとだから、早く出しちゃうね」

「手伝います!」

ということで、サブマスも張り切って手伝ってくれたので、素材を出すのは直ぐに終わり、タキさんがあと2名の増員を受付から呼んできてくれたので、手分けして素材確認もしてもらいました。



「お前らダンジョンだけなじゃくて どんだけ狩りしてきたんだよ。無茶苦茶だな……」

「ヴィオさん 魔力操作が更に上達したのではありませんか? 
ほらこれ、この素材は出発直後でしょう?
で、これは ここ最近のものでしょう?
傷の大きさが明らかに違っています。極小ボールではなく、カッター系でもこれだけ傷が美しければ、毛皮であっても 縫い合わせても分からないようになるでしょう。高値で売れるようになりますよ」

果物系などの 時間経過が問題になる素材は 即座に別の部屋に持っていかれた。
時間経過がゆっくりになる魔術具に移され、販売されるんだろう。
サブマスが素材を見ながら魔力操作が上手くなっていると褒めてくれる。流石魔法のプロ、こんな素材になってても分かるんだね。


タキさんを含む 受付4人で素材の確認をしてくれている間に サブマスとギルマスに ダンジョンでの色々を報告する。
【索敵】魔法のところでは、サブマスだけじゃなくって ギルマスも大興奮だったけどね。
宝箱の中が見えるというのが驚きだったらしくって、空箱で確認したいってなったのも仕方がないかもしれない。

「しかし パニックルームの入り口をその様に安全に開けることができるなんて、考えたこともありませんでしたね。開けないか、万全の討伐準備をしてから開けるという選択しかありませんでしたから。
やはり、次のダンジョン巡りは私も……」

「いや、だから その間ギルドをどうすんだって言ってんだろ?」

「そんなこと、タキをサブマスにすればいいでしょう? マーレたち羊三姉妹も 来週からギルドに入るのです。人数は随分増えたでしょう?」

「え、ちょっ、いやいや、待って!」

サブマスが一緒に旅をするの?
面白そうだけど ギルドが大変じゃない?
急に名前を上げられたタキさんは メモ帳を落っことすほどに驚いてますけど?
しおりを挟む
感想 109

あなたにおすすめの小説

私を裏切った夫が、後悔しているようですが知りません

藤原遊
恋愛
政略結婚として、公爵家に嫁いだ私は 愛のない夫婦関係を「仕事」だと思い、正妻の役目を果たしてきた。 夫が愛人を持つことも、 その子を屋敷に迎え入れることも、黙って受け入れてきた。 けれど―― 跡取りを、正妻の子ではなく愛人の子にする。 その言葉を、人前で軽く口にした瞬間。 私は悟ったのだ。 この家では、息子を守れないと。 元々、実家との間には 「嫡子以外の子は実家の跡取りにする」という取り決めがあった。 ならば話は簡単だ。 役目を終えた私は、離縁を選ぶ。 息子と共に、この家を去るだけ。 後悔しているようですが―― もう、私の知るところではありません。

【書籍化決定】アシュリーの願いごと

ましろ
恋愛
「まあ、本当に?」 もしかして。そう思うことはありました。 でも、まさか本当だっただなんて。 「…それならもう我慢する必要は無いわね?」 嫁いでから6年。まるで修道女が神に使えるが如くこの家に尽くしてきました。 すべては家の為であり、夫の為であり、義母の為でありました。 愛する息子すら後継者として育てるからと産まれてすぐにとりあげられてしまいました。 「でも、もう変わらなくてはね」 この事を知ったからにはもう何も我慢するつもりはありません。 だって。私には願いがあるのだから。 ✻基本ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。 ✻1/19、タグを2つ追加しました ✻1/27、短編から長編に変更しました ✻2/2、タグを変更しました

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~

ふわふわ
恋愛
「お姉様の婚約者、私がいただきますわ。だって“公爵令嬢”ですもの」 義理の妹コンキュはそう言って、王太子との婚約を奪いました。 父はそれを容認し、私は静かに受け入れます。 けれど―― 公爵令嬢とは“地位”ではなく、“責任”の継承者。 王宮で礼儀も実務も拒み、「未来の王太子妃」を名乗った義妹は、わずか三日で婚約破棄。 さらに王家への不敬と統治能力の欠如が問題視され、父の監督責任が問われます。 そして下されたのは――家ごとの褫奪。 一方で私は、領地を守り、帳簿を整え、静かに家を支え続ける。 欲しがったのは肩書。 継いだのは責任。 正統は叫びません。 ただ、残るだけ。 これは、婚約を奪われた公爵令嬢が “本当に継がれるべきもの”を証明する物語。

【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。

みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」 魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。 ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。 あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で一人の騎士と運命的な出会いをする。 【2024年3月16日完結、全58話】

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので

モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。 貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。 ──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。 ……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!? 公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。 (『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)

恋は、母をやめてから始まる――正体を隠したまま、仮の婚約者になりました

あい
恋愛
両親を失ったあの日、 赤子の弟を抱いて家を出た少女がいた。 それが、アリア。 世間からは「若い母」と呼ばれながらも、 彼女は否定しなかった。 十六年間、弟を守るためだけに生きてきたから。 恋も未来も、すべて後回し。 けれど弟は成長し、ついに巣立つ。 「今度は、自分の人生を生きて」 その一言が、 止まっていた時間を動かした。 役目を終えた夜。 アリアは初めて、自分のために扉を開く。 向かった先は、婚姻仲介所。 愛を求めたわけではない。 ただ、このまま立ち止まりたくなかった。 ――けれどその名前は、 結婚を急かされていた若き当主のもとへと届く。 これは、 十六年“母”だった女性が、 もう一度“ひとりの女”として歩き出す物語。

処理中です...