ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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家族と合流

第142話 討伐と訓練

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ダンジョン旅から戻って2週間、午前に座学、午後に訓練、週末に魔法の練習を行ってる。
そんな時にお兄ちゃんたちからギルドに手紙が届いて、土の季節の3か月目の初めには帰って来れそうだって事だったから、ダンジョンにまた行くことを考えて、魔獣討伐訓練も 再開することになったんだ。

お父さんとしては 私に昼寝をさせたい という事もあって、討伐と言っても日帰りなんだけどね。午前のうちに森に行って、午後に解体作業をマコールさんのお店でやるって感じ。
いや、勿論 最初の血抜きと内臓を抜くとかの解体は森でやってくるんだけど、マコールさんのところで美味しく調理をするための解体を教えてもらう約束をしたんだ。

私の横着から始まった 例の蔦での吊り下げ解体は、お父さんからマコールさんに伝えられて、息子のキリトさんも習得したんだよね。
そのおかげで肉の鮮度が上がって 美味しくなったらしく、お礼をしたいって言われたから、肉の保存食の作り方と、調理するのに良い感じの解体方法を教えて欲しいってお願いしたの。

という事で、土の季節の2月目は 平日1日おきに 討伐&解体の日、座学&訓練の日となり、週末にギルマス&サブマスとの魔法訓練をすることになった。

ああ そうそう、フォレストスパイダーの糸は リリウムさんにお土産で渡したらギューしてチューされるくらい喜んでもらえたよ。
冒険者装備の点検もしてもらったけど、全く解れも汚れもないことにビックリされた。結界鎧を纏っているからなんだけど、それは伝えてないからね。
魔法と鞭を中心に戦っているから近接戦をあまりしていないって事にしておいたよ。

靴屋のミリーナさんには、イエロースネークの皮が喜んでもらえたよ。蛇皮は靴の素材になるらしくって、こっちでも装備が弱ってたら作り直すか、予備で作るって言ってもらったんだけど、結界鎧のお陰ですり減りが無く、靴を履いてない疑惑を一瞬持たれたくらいだった。
こちらはお父さんが抱っこをしていることが多いのだろうという理解をされたけど、まあ洗礼前だし、そういう事にしておいてもらおうかな。


◆◇◆◇◆◇


「ヴィオ、もう少し奥まで入れば ブラックウルフの生息地になるが、そっちも行ってみるか?」

「ん~、ウルフは食べるところないし、ブラックウルフの魔石と毛皮は魅力的だけど、こないだいっぱい稼いだとこだから いいかな。お肉の方がいい。
あっ!お父さん、私 あれ食べたい!」

「あれ? なんじゃ?」

「んっと、コベニア村で食べたホーンラビットのシチュー、3日煮込んだやつ!」

「おお、そう言えば帰ってきたら作ろうと言ったままじゃったな」

「うん、ホーンラビットのお肉と、ビッグピッグのお肉と、ボアのお肉で3種類作りたいの。どれが一番美味しいか試してみない?」

「はっはっは、食いしん坊のヴィオらしいなぁ。
まあそれも面白そうじゃ。やってみるか」

ただ肉を……じゃなかった、魔獣を狩るだけより 目的があった方が良いもんね。
ということでホーンラビットは森の出入り口にいくらでもいるから放置して、ボアかピッグに限定して【索敵】を行う。
ああ、全体に魔力を拡げるけど、その中に対象が居るかを確認するって事ね。

木の上に上って 【エアウォール】で壁を作る。
この時の壁は 風の刃とか、葉っぱの渦巻とかは無く、ただ透明の壁である。
消費魔力も少なくて済むし、見晴らしがよい。敵を通さないためだけの壁である。

そのまま自分を中心に 扇形に魔力を伸ばしていく。
外で【索敵】をするときは このやり方が一番効率的だと思う。
勿論行動しながらの時は 自分を包むように直径数メートルという【索敵】に変更しているけど、こうやって探し物をするときは これがやりやすい。

伸ばした先に2つの目的魔力を発見した。
ただ、距離的には離れているし、ひと月この森に通うのであれば、1度に持ち帰る肉は1つで十分だろう。

「お父さん、東北東200にビッグピッグ1、西北300ちょっとにボアの親子、今日はピッグでいいかな」

「そうじゃな、親子じゃと 親の方がもう1匹居るかもしれんし、それは多すぎるからピッグにしとこうか」

お父さんのいう『多い』は、敵が多くて危険という意味ではない、肉が多くて困るだろう?という意味である。
私の事を食いしん坊というけれど、お父さんも大概だと思います。
だって今だって、索敵しながらシチューに入れるキノコを摘んでるもん。


目標を決めたらそこまで速やかに移動する。
木の上を 蔦を使いながら走るのは、お父さんの森での訓練を思い出すので楽しい。フォレストスパイダーも時々見るけど、ダンジョンじゃないから討伐はしない。
ダンジョンだとドロップアイテムで糸が出るけど、普通に討伐したら 解体するときに糸を取り出す必要があって、結構大変なのだ。
後は、フォレストスパイダーに糸を噴出してもらって クルクル回収する方法もあるらしいけど、そんな大変な思いをするならルエメイ遺跡ダンジョンに潜った方が早い。だからこそリリウムさんが喜んでくれたんだけどね。

ピッグは餌を探しながら歩いているから 少し移動しているけど、【索敵】で追っているから見失うことはない。
ボアは結構親子とかで行動しているけど、ビッグピッグは基本単体行動をしているんだよね。
まあ 狩りやすいから有難いけど。

「【アースホール】、【アイビーウィップ】、【ウインドカッター】」

ビッグピッグの足元に落とし穴を出現させ、バランスを崩した両後ろ足に蔦を絡ませ吊り上げる。
急に逆さ吊りになりパニックを起こしているけど、叫ばれると他の魔獣を呼ぶことになっちゃうので、即座に首チョンパ魔法です。
頭部と血飛沫は 勢いよく落とし穴に流れるので 周囲を汚す心配も無し。
ある程度流れたところで 解体ナイフで腹を割き、内臓を落として 魔石だけを取り出す。ふぅ。

「益々手際が良くなってきたなぁ」

「ほんと? やったぁ! 」

リュックに沢山の素材を詰め込んできたお父さんが 吊り下げられたビッグピッグを見て褒めてくれる。落とし穴と蔦魔法は最強コンボだと思う。
内臓は【ファイア】で焼却処分をし、穴も元に戻してから 蔦を伸ばしてビッグピッグを下ろす。
いつもはここである程度持ち運びやすい大きさに解体していくんだけど、より美味しくなる解体を教えてもらうために このまま持って帰るのだ。
汚れが付かないように【クリーン】で洗って、お父さんのリュックを私が背負い、ビッグピッグをお父さんが背負う。

「あ~、ヴィオが持つんじゃったら もう少し加減して採集したらよかったなぁ、大丈夫か?」

キノコとか 山菜が中心だから然程重くはないんだけど、嵩がね……。
後ろから見たらリュックが歩いている感じに見えるかもしれない。
身体強化をしているから、重さが辛いとかはないけど、歩き辛くはある。

「ん、これも修行だから大丈夫、任せて!」

お父さんだって 内臓と血液が抜けて多少軽くなったとはいえ、ビッグピッグを丸ごと1頭担いでるからね。流石に私だと 引き摺ることになるから運べません。



門番のお兄さんにも、マコールさんのお店に着くまでも、お店でマコールさんにも 「リュックが一人で歩いているかと思った」と爆笑されたけど、そのうち大きくなるんだからね!
いっぱい美味しいもの食べて、いっぱい寝たら、直ぐに大きくなるんだからね!
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