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家族と合流
第149話 お兄ちゃんたちとギルド
しおりを挟む中級ダンジョン計画を練った後、お兄ちゃんたちの動きも確認したい とお父さんが言い出したことで、翌日の午後にギルドの地下訓練場で 手合わせをしてもらうことになったよ。
昨日は森に行くのに早起きさせちゃったから、今日はゆっくり寝てもらってる。
ということで 午前中はお父さんと二人で 森と畑のお手入れです。また数か月居なくなるから ある程度間引いておく必要があるんだよね。
レン君たちと練習するために カイフク草も マリキ草も多めに植えてたからね。
普段は次の新芽の為に 全部の葉を刈り取ることはしないんだけど、間引きの必要もあるから 数本は 根から抜き取って 必要な葉っぱを纏めていく。
「結構な量になったね。これだけでもかなりポイントが稼げちゃいそう」
「まあ ええんじゃないか? このダンジョン巡りでもポイントは貯めんのじゃろう?
じゃったら 今のうちに 依頼ポイントを貯めておいて、来年 7歳になったら 銀ランクの試験を受ければええじゃろう」
そっか、そうだよね。
今回お兄ちゃんたちには まだ伝えてないけど、今年の風の季節も 村から離れる予定だから、その時期には 上級ダンジョンに一緒に行ってもらうつもりなのだ。
まずは今回の中級ダンジョンで一緒に過ごすことで、上級にも連れて行っていいかどうかを確認してもらおうと思ってる。
最初にそこまで言ったら驚かれるだろうし、迷惑だと思われるのも悲しいからね。
なので、今回の中級ダンジョン旅では ちゃんと役に立つことを実感してもらわないとなのだ。色んな魔法は練習して 実際に使うことで上達してきているんだけど、聖魔法だけは使うことがないから上達しないのもどうにかしたい。
お父さんと二人だと怪我をすることが無いんだよね。
お兄ちゃんたちも 早々怪我はしないだろうけど、回復薬はダンジョンに入る度に追加で購入しているって言ってたから、1~2本は使っている筈。
という事は、その分 私が回復魔法を使うことができるって事でしょう?
サブマスさんにそれを相談した時、自分の腕をナイフで切ろうとしたから 軽々な発言は危険だと思ったんだよね。危うく自傷行為をさせるところだった。
私が一緒に行けるような中級ダンジョンで お兄ちゃんたちが怪我をするとは思えないけど、まあ機会があればという感じかな。
お昼ご飯の為に家に戻れば、ボーっとした状態のお兄ちゃんたち二人が 食卓に座ってた。
「おお、起きたんか。寝すぎて 余計にボーっとしとるな。お前たちも昼食は食べるか? 起き抜けには重いかもしれんが」
「食べる……」
「食う、腹減った……」
完全に寝起きの人たちだね。
普段はにこやかなトンガお兄ちゃんも、ニヒルな笑顔を見せてくれるルンガお兄ちゃんも、目がしょぼしょぼしたまま ぼんやりしてる。
昨日の方がまだ シャッキリしてたよね?
「ははっ、寝すぎじゃ。多少寝坊どころの時間じゃないからな」
確かに。昨日起こしたのは7時前、旅の最中は 一般的な冒険者の時間に合わせて5時くらいに行動開始してたことを思えば、村に戻ってからは少しゆっくりしている方だ。
そして今の時間は12時前。もうすぐ3の鐘が鳴るところだ。随分お寝坊さんだね。
だけど そんな状態でも 昼食を食べ始めればシャッキリするんだから冒険者って凄いよね。
「くわぁ~、よく寝た!」
ペロリと昼食を平らげたルンガお兄ちゃんが、グイ~っと伸びをする。
そこは「よく食った」じゃないのかと思うけど、ツッコミはしないでおこう。
お兄ちゃんたちは これからギレンさんのお店に武器のお手入れをお願いしに行くらしいので、私のお昼寝が終わったら ギルドに行く約束をした。
◆◇◆◇◆◇
午後になってギルドに行ったら スチーラーズの3人が居た。
「あ~、ヴィオちゃん来たぁ♡」
お色気担当(担当かは知らんけど)のインランさんが 私を見つけて指をさす。人に向けて指をさしちゃダメなんだよ?
「ピュ~♪」
「ヴィオ、あのお色気姉ちゃん誰だ?」
口笛を鳴らすクルトさん、訝し気なルンガお兄ちゃん、そんなクルトさんに冷酷な視線を投げるトンガお兄ちゃん、三者三様ですね。
「こないだからこの村に住むようになった 銀ランクパーティーの3人組の一人、回復と魔法攻撃のお姉さんだよ。あ、近距離では 短剣も使うね」
「んも~、インランって呼んでって言ってるのに~。
んとぉ、こちらは始めましてですね、スチーラーズのインランです、ヴィオちゃんに特訓してもらっているの、よろしくね♡」
胸元の開いたシャツを着ているから、そんな風に腕を組んでギュってすると、お胸の谷間が強調されますね。まるで『だっ〇ゅ~の』と決め台詞を言っていた漫才師のようですよ。
ああ、クルトさんの視線が おぱーいに固定されていますよ。
ハニートラップとか引っかかっちゃうタイプですか?大丈夫です?
チラリと見れば ルンガお兄ちゃんは 苦虫を嚙み潰したみたいな顔しているし、トンガお兄ちゃんは さっきより更に冷たい視線をクルトさんに投げています。三者三様ですね。
まあ、これが若い男性だけにするなら インランさんのハニトラ説が強くなるんだけど、私や 子供たちに対してもするから キャラだと思うようにしている。
「今日ってなにも約束してないよね?
あ、そうだ。もうすぐまた旅に出るから、お姉さんたちとの練習もおしまいね。まあ 私たちが居なくても、他の冒険者さん達も訓練に来るようになったし、その人たちと一緒に頑張ってね」
とりあえず トンガお兄ちゃんの視線に気付いて 顔色を悪くしているクルトさんも気になるから、何か用があったのかと確認しておく。
ここでの訓練に付き合った日は 帰りに屋台を奢ってもらうことで支払い扱いにしてるから、貸し借りは無いともいえるからね。
最初は1か月の契約をしたいとか言われたけど、お兄ちゃんたちがいつ帰ってくるか分からなかったし、何となく契約とかしたくなかったんだよね。
いや、パーティー名とかに影響されているのは自分でも分かってる。
この人たちが そんな悪い人でもない事も分かっている。もし悪いことをしたとしても、多分 凄くしょうもない悪事くらいしかできないだろうことも分かるけど、まあ仕方ない。
「ええ~、旅にでちゃうの? ヴィオちゃん達居なくなっちゃうの?」
「まじか!? やっと結構やれるようになってきたのに どこに行くんだ?」
お姉さんの声を聞いて 掲示板を眺めていたリーダーがこっちに移動してきた。
「誰?」
「お姉さんのパーティーメンバー、リーダーの人だよ」
やばい、トンガお兄ちゃんの機嫌が凄く悪くなってきてる。
端的にリーダーの説明をしてみるけど、お姉さんのこともあまり好きじゃなさそうだし、リーダーもトンガお兄ちゃんの鋭い視線に たじろいでいる。
「トンガ、こやつらは トラウトの季節にこの村に来て レッドにすら全く歯が立たず、周辺の魔獣にもかなり苦戦したことで、鍛え直したいと ギルドの訓練場に通い始めた奴らじゃ。
ヴィオや儂だけじゃないが、訓練場で鍛えてやっとる」
お父さんの言葉を聞いて トンガお兄ちゃんの圧が少し弱くなったかな?
まあ 第一印象は良くない3人だよね。
「一応3人とも銀ランクだけど、へなちょこすぎて皆に鍛えてもらってるんだよ。だからそんなに心配しなくて大丈夫」
「ヴィオちゃん先生は 相変わらず厳しいなぁ。まあ言い返せないけど」
だって ウルフを倒しに行って バテバテで帰ってくるとか、銀ランクでやばいでしょ?
まあ、走り込みを真面目にするようになって、こないだリベンジしに行ったのは聞いているけどね。
「……へぇ、銀ランクなんだ。俺たちと同じなんですね。
俺たちこれから ヴィオと手合わせの予定だったんですが、同じ銀ランクという事で、お三方とも是非 手合わせしてみたいなぁ」
え? 私相手でも微妙なのに、お兄ちゃんたちと 出来ると思えないんですけど?
そんでもって、トンガお兄ちゃんって “俺” って言ってました?
「ヴィオ」
ビックリしてトンガお兄ちゃんを見つめていたら、ルンガお兄ちゃんに引っ張られる。
「兄貴 結構怒ってるからさ、あーゆーチャラチャラした奴とか嫌いなんだよ。とりあえず一回手合わせしておけば 多少気がすむから ほっとけ」
どうやら 旅の途中に クルトさんが何度かハニトラにかかった事があり、面倒なことがあったそうだ。まあ、酒屋でボッタくられたとか、娼館で身請けさせられそうになったとかだったらしいけど。
クルトさん……。懲りてないんですね。
「ヴィオ、熊獣人は 戦い、拳を交わすことでお互いを知る性質がある。勿論冒険者以外にそんな事はせんが、あいつらは弱くても冒険者、やらせてええじゃろう。
やり合ってみることで相手を知ろうという事でもあるから、心配せんでええ」
獣人さんの特徴って奥が深いね。まあ訓練場でやるなら 何かあっても直ぐ回復薬も使えるし 最悪サブマスにお願いすれば大丈夫かな?
(私の能力を)知らない人の前で回復魔法を使う訳にはいかないから、そこは自重しますよ。
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