174 / 584
家族と合流
第152話 お兄ちゃんたちと手合わせ その2
しおりを挟むクルトさん達が戻ってきたところで、お父さんと トンガお兄ちゃんが訓練場の真ん中で 向かい合うように立つ。
ルンガお兄ちゃんも、まだグッタリしているクルトさんも、真剣な表情で 二人を見つめているから、私まで緊張してきた。
普段のお父さんは 片手剣、トンガお兄ちゃんは 長剣を武器として使うんだけど、さっきのクルトさん達と同じで、格闘で手合わせをするつもりみたい。
お互い睨み合っているだけのように見えるけど、ピリピリした空気がこちらまで来るから、多分さっきの威圧みたいなのをお互いにぶつけあっているんだと思う。
「あ、そうだ! サブマスさん、この威圧っぽいのって 無属性の魔力ですか?」
「あぁ そうですね、属性魔法ではないから無属性でしょう。
身体強化は 体内に循環させるけど、これは体外に放出させているんでしょうね。
まあ 魔力だけではなく、その人の持つ 強者のオーラというか気合も乗せているんだと思いますよ」
おお、オーラと気合ですか。両方目に見えないけど、地球でもあるとされてたよね。お父さんたちの場合は 肉食獣強者としての オーラを纏ってるのかな。
だとしたら私は真似できそうにないね。 最弱の人族だもん。
睨み合っていた二人だったけど、ほぼ同時に動き出した。
右の掌底を打ち込もうとすれば 左の掌で手首の内側から押し出されて逸らされる。
左で殴りかかろうとすれば 左前腕でガードされながら グインと腕を逸らされる。
蹴りも 足の裏全体で受け止めているけど、ボクシングのミット打ちをしている訳じゃないですよね?
それらが 凄いスピードで交わされているから
ドシッ バシッ バン! ダン!
と 音と砂埃が時々舞うだけになっている。
「お父さんからは攻めないんだね」
「あれを全部受け止められる 父さんもヤベエけど、あれだけ連続で打ち込めるのもすげぇ」
「ああ、アルクさん冒険者を随分休んでたはずなのに、現役に戻ってねえか?
……って ヴィオ お前あの動き追えてんのか?」
「6歳なのに身体強化できるんだってよ。さっきのクルトたちの動きもちゃんと理解してたぞ」
「マジか……。アルクさん相変わらずスパルタじゃねぇか」
ずっと トンガお兄ちゃんからの攻撃を受ける一方のお父さんだったけど、何かをお兄ちゃんに告げた後 攻守交替になった。
ああ、両方に回してたら足りないと思って視力だけにしてたから 聞こえなかった!
お父さんからの攻撃も さっきのトンガお兄ちゃんと同じ感じなんだけど、お兄ちゃんは 受け止めるのにかなり大変そうだ。音もズシっていうより、ズゥン!って感じ。重いんだろう。
なのにスピードは落ちないんだから、お父さんって私が思っていた以上にヤバイ冒険者だったんじゃない?
「お父さん すごい、格好良い……」
「あれを見てその感想って、ヴィオも大概だな」
「アルクさんは ヴィオさんと一緒に金ランクを目指すことにしたらしいですよ」
「「マジか……」」
帰ってきて サブマス達に話したら、ギルマスが張り切って 直ぐに試験するか?って言ってたんだよね。
〈最年少と最年長の金ランク冒険者パーティー〉になるんじゃないかって笑ってた。
金ランクになる冒険者は やっぱり若いうちから抜きんでている人が多いらしく、20代の半ばくらいには上がるらしい。
金ランクになる=貴族からの依頼もある(指名依頼がある)という事で、貴族の付き合いを厭わない人や 伝手が欲しい人は 早めにランクを上げているのだ。
金ランクの中でも上級まで行けば 伝説の人扱いになるから 指名依頼なんて 高額過ぎるし、冒険者が気に入らなけば 断ることもできるみたいだけど、白から上級に上がるには相当な実力が必要だからね。
だから銀ランクの上級から ランクを上げなかった人が 年数を置いて 上がろうとするのはまずいないらしい。お父さんは 冒険者としての技量や 戦闘能力としては 金ランクに相応しいと言われていたらしいので、金ランク試験を受けないとなった時は残念がられたらしい。
そのお父さんが 今になって受けようと言うのは、やっぱりギルドの長としては嬉しいんだって。で、私は多分 7歳になれば 銀ランク試験を受けるから、10歳になる頃には十分銀ランクの上級にはなっているだろうと ギルマス予想を頂いた。
そうなれば 十代半ばで金ランク試験を受けられるだろうって事で、期待しているぞ!と応援してもらえたのだ。
お父さんの年齢のこともあるからね、10年は待たせたくないから 出来るだけ早く 金ランク試験を受けられるようになるだけの実力を身につけたいものだ。
金ランクに想いを馳せていたら トンガお兄ちゃんの体力が尽きたらしい。
お父さんの足払いを避けられず そのまま後ろに尻もちをついてしまった。
「はあっ、はあっ、参った……、まだ…、ダメだったかぁ……」
「いや、随分 スピードも速くなったし、重くなった。フェイントも避けられるようになったし、無駄な動きがなくなった。強くなったな」
「はあっ、はあっ、そっかぁ、うれしい……」
息も絶え絶えとは このことだろう。だけどお父さんも 凄い汗だくになってるし、本気でやってたことが分かるね。どんな特訓をしていれば こんなに強くなれるんだろうね。
RPGみたいに モンスターを倒してレベルアップするなら それなりに私も強くなれる気がするけど、ここは そういう世界じゃないから、自分たちで地道に訓練して 筋力と体力をつけて強くなるしかないんだよね。
まあ、努力あるのみ!って事だね。
お父さんに腰を抱えられながら トンガお兄ちゃんが戻ってきた。
お水をあげて 【クリーン】で綺麗にしてあげる。
「ヴィオ ありがとう、スッキリしたよ」
ニッコリ笑ったトンガお兄ちゃんが 頭をなでなでしてくれる。
「えっ、ヴィオ、俺にはさっきそんなサービスしてくれなかったよね?」
完全復活したクルトさんが そんな事言うけど、クルトさんが戻ってきた時には お兄ちゃんたちの手合わせが始まってたんだもん。
「よく分からない女に鼻の下伸ばしてるから 嫌がられたんだよ」
「他所の女に 手を出すのまでは止めないけど、ヴィオにはあんまり近づきすぎんなよ」
私が何かを言う前に、トンガお兄ちゃんと ルンガお兄ちゃんが クルトさんに辛辣なツッコミを入れています。嫌がってはないですよ? あ~、男子なんだなって思っただけで。
585
あなたにおすすめの小説
私を裏切った夫が、後悔しているようですが知りません
藤原遊
恋愛
政略結婚として、公爵家に嫁いだ私は
愛のない夫婦関係を「仕事」だと思い、正妻の役目を果たしてきた。
夫が愛人を持つことも、
その子を屋敷に迎え入れることも、黙って受け入れてきた。
けれど――
跡取りを、正妻の子ではなく愛人の子にする。
その言葉を、人前で軽く口にした瞬間。
私は悟ったのだ。
この家では、息子を守れないと。
元々、実家との間には
「嫡子以外の子は実家の跡取りにする」という取り決めがあった。
ならば話は簡単だ。
役目を終えた私は、離縁を選ぶ。
息子と共に、この家を去るだけ。
後悔しているようですが――
もう、私の知るところではありません。
【書籍化決定】アシュリーの願いごと
ましろ
恋愛
「まあ、本当に?」
もしかして。そう思うことはありました。
でも、まさか本当だっただなんて。
「…それならもう我慢する必要は無いわね?」
嫁いでから6年。まるで修道女が神に使えるが如くこの家に尽くしてきました。
すべては家の為であり、夫の為であり、義母の為でありました。
愛する息子すら後継者として育てるからと産まれてすぐにとりあげられてしまいました。
「でも、もう変わらなくてはね」
この事を知ったからにはもう何も我慢するつもりはありません。
だって。私には願いがあるのだから。
✻基本ゆるふわ設定です。
気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。
✻1/19、タグを2つ追加しました
✻1/27、短編から長編に変更しました
✻2/2、タグを変更しました
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~
ふわふわ
恋愛
「お姉様の婚約者、私がいただきますわ。だって“公爵令嬢”ですもの」
義理の妹コンキュはそう言って、王太子との婚約を奪いました。
父はそれを容認し、私は静かに受け入れます。
けれど――
公爵令嬢とは“地位”ではなく、“責任”の継承者。
王宮で礼儀も実務も拒み、「未来の王太子妃」を名乗った義妹は、わずか三日で婚約破棄。
さらに王家への不敬と統治能力の欠如が問題視され、父の監督責任が問われます。
そして下されたのは――家ごとの褫奪。
一方で私は、領地を守り、帳簿を整え、静かに家を支え続ける。
欲しがったのは肩書。
継いだのは責任。
正統は叫びません。
ただ、残るだけ。
これは、婚約を奪われた公爵令嬢が
“本当に継がれるべきもの”を証明する物語。
【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。
みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」
魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。
ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。
あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で一人の騎士と運命的な出会いをする。
【2024年3月16日完結、全58話】
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので
モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。
貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。
──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。
……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!?
公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。
(『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)
恋は、母をやめてから始まる――正体を隠したまま、仮の婚約者になりました
あい
恋愛
両親を失ったあの日、
赤子の弟を抱いて家を出た少女がいた。
それが、アリア。
世間からは「若い母」と呼ばれながらも、
彼女は否定しなかった。
十六年間、弟を守るためだけに生きてきたから。
恋も未来も、すべて後回し。
けれど弟は成長し、ついに巣立つ。
「今度は、自分の人生を生きて」
その一言が、
止まっていた時間を動かした。
役目を終えた夜。
アリアは初めて、自分のために扉を開く。
向かった先は、婚姻仲介所。
愛を求めたわけではない。
ただ、このまま立ち止まりたくなかった。
――けれどその名前は、
結婚を急かされていた若き当主のもとへと届く。
これは、
十六年“母”だった女性が、
もう一度“ひとりの女”として歩き出す物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる