ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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閑話

〈閑話〉メネクセス王国 17

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~アナリシア王妃視点~


ガシャーン  パリーン

「メイミ、メイミはいないの?」

「お、王妃殿下、恐れながら 申し上げます……。
 メイミ様は居りません、しょ、処刑されました」

ああ、そうだった……。
わたくしの子供の頃からの侍女メイミ、媚薬を陛下に盛った事で毒物投与、暗殺未遂という罪状で処刑されたのでした。

先日 前王太子の遺児が二人 王城へ招かれました。
前王太子の妻だったミュゼット妃も一緒に……。

お父様は わたくしに 遺児の養母となれと仰っていたけれど、母である ミュゼット妃が居るなら わたくしが養母となる可能性などなかったのではないかしら。
どうやら お父様も 勘違いをなさっていたらしく、あの流行病のうちに ミュゼット妃も亡くなっていたと思い込んでいたらしいのです。

陛下とは あの事件以降 お会いすることが出来ていません。
あの日までは 晩餐を必ず共にしてくださっていたのに、それすらなくなりました。
新年の宴ですら わたくしを病気療養中として お一人で出席されましたし、今は国賓を招くようなパーティーもありません。王妃として立つ必要がないので 会う機会がないのです。

二人の王子は フロックス宮を与えられたようです。別名上皇宮と言われる離宮に 二人の王子が入るというのは異例ですが、隣接する 皇太后宮のシネラリア宮に 前国王がお住まいですから、そのようにされたのでしょう。
わたくしの与えられたシラン宮とは 距離がありますので 簡単に立ち寄るなんてこともできません。

その情報を得た時、わたくしが この国の国母となる芽が完全になくなった事が分かり、手元にあったカップやガラス細工を叩きつけてしまいました。
いつもなら直ぐにメイミが駆けつけてくれるのに、そのメイミはもういません。
この離宮に来てから 随分メイドの数も減りました。
時折こうして どうしようもない気持ちをぶつけてしまうから 怖くて逃げてしまったのでしょう。

いえ、違いますね。

陛下に完全に見捨てられたわたくしについていても 良い思いをすることができないと見限ったのでしょう。
わたくしに就いていた貴族の子女であったメイドや侍女は 殆ど居なくなり、陛下の考えを尊重していると見せかけるためだけに付けていた平民のメイドだけが残っている状態です。

ビクビクしながらも 部屋を片付けるメイドを見つめながら わたくしが出来ることは何が残っているのだろうかと考えます。
そういえば 陛下の娘とやらの 行方に関してはどうなったでしょうか。


◆◇◆◇◆◇


『ルシダニア皇国に例の娘と思わしき人物を見つけました』

土の季節も終わりを迎える頃、待ちに待っていた報告が来ました。
随分小さくなった庭で 薔薇の手入れをしている時に 何時か聞いた声が聞こえました。相変わらず姿は見えませんが、この離宮自体 数少ない者しかおりませんから 知らぬ者が出入りしていれば目立つというもの、暗部の者たちのこうした特技は助かります。

「陛下に繋がりのある物を持っていたという事かしら」

『ハッキリとは分かりませんが 王が身に着けている首飾りに酷似した物を 娘が身に着けておりますことを確認しております』

首飾り……。
確かに陛下はいつも身に着けていたわ。時々それを大事そうに撫でていらっしゃった姿を思い出す。

「確実にあの女の娘なの? 人違いではなくて?」

これ以上の失敗は お父様から更に失望されてしまうもの、今度は間違えないわ。

『先日の洗礼式で 子爵令嬢として出席しておりましたので もしかしたら 違うかもしれません。しかしピンクに見える様な髪色、聖属性持ちという母親との共通点は見られました』

あら、娘もピンク髪ではなかったかしら? 
ああ、でも色変えの魔術具を使っているんだったかしら。属性は両親からの遺伝によるものだと言われているし、子爵については調べた時に聖属性が無いことは分かっているわ。
であれば可能性が高いわね。

「まずはその娘が 真実 あの平民の娘であるかの確認を急いで頂戴。
その上で首飾りの確認も行いなさい。もし確実に陛下の娘であるなら 悲しい事故にあってもらうように」

『御意』

その言葉を最後に 人の気配はなくなりました。
あの国では聖属性を持つ者は 神殿に囲われるといいますから それはそれで 二度と陛下に会えませんからそれでいいのかもしれません。
ですが、生きていると期待することで この国から出ようとなさるかもしれませんからね。憂いを無くし、この国にいて頂ければ そのうちわたくしとの関係も改善するかもしれません。
まずは お食事を共にしていただけるように 関係を改善させなくては……。
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