ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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お兄ちゃんたちとの旅

第159話 出発

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「ダンジョン♪ ダンジョン♪ 中級ダンジョン♪
どんな魔獣がでってくっるか~♪
ザックザック ブシュっとやっちゃうぞ~♪」

「くふふ 何その歌。最後はちょっと物騒だし」

現在 街道を 徒歩で移動中の私たち。
メンバーは お父さん、トンガお兄ちゃん、ルンガお兄ちゃん、クルトさん、私の5人。
準備も整い 中級ダンジョンの旅に出たところである。

いつもはお父さんと二人だった移動も、5人もいるから ワクワクしちゃう。
プレーサマ辺境伯の領都を目指すのに 整った馬車道を歩いているからか、強者が4人もいるからか、魔獣が索敵範囲に入ってくることもなく、緊張感は無しである。
馬車移動も候補になってたんだけど、これから ダンジョンでは野営もするし、私とお父さんがどんな風に野営をしているのかも確認したいって事と、お金をできるだけ使わないために 徒歩での移動を選んだんだ。三泊四日の移動予定、楽しくいかないとね。

私のオリジナルソングを聞いて トンガお兄ちゃんが 堪え切れないというように笑いだす。
お父さんは 私がオリジナルソングを歌うのには 慣れているから ニコニコしているだけなんだけどね。

「そうやって見てると 6歳児だな~って思うんだけどな」

クルトさんの言ってる意味が分かりません、だって どうやって見てもピチピチの6歳児じゃない?

「馬車旅が初めての子供なら普通だろうな。でも冒険者やってて、魔獣が出る可能性のある場所で それだけのんびりできるのは 肝が据わってるってことだろ?」

ルンガお兄ちゃん、一応【索敵】はしているんですよ? 範囲に入ってこないけど それはお兄ちゃんたちがいるからだと思うし、強化魔法も 結界鎧もしているから いつでも殺れますよ?

「ははっ、まあヴィオは大体いつも こんな感じじゃ。
じゃが 辺境伯の領地に近付けば 一般の旅人や冒険者とも会うことになる。そこからは気をつけんといかんぞ?」

「うん、悪者ホイホイにならないようにだよね。
魔法は 呪文を使う事、鞭は出来るだけ使わない、人がいっぱいいる時は お父さんの背中に乗って 魔法しか使わない」

「うん、大丈夫じゃな」

お父さんと この旅に出る前に約束したのだ。
人が増える場所に入る前に 街道は避けることになるけれど、それでも街の近くは 街道に出る必要がある。その時に魔獣が出たとしたら 基本はお兄ちゃんたちに任せること、お父さんの背中におんぶされた状態で 魔法だけちょっと使うくらいにする事、その時は呪文の詠唱を(している風に)することを約束した。
ダンジョン内では おんぶまではしないで良いけど、街道では 有象無象が多いから 戦えることをあまり見せない方向で行こうという事になったんだ。


◆◇◆◇◆◇


「うめ~~~~!スープと野菜を乾燥させて持ち歩くとか 考えたことなかったけど、これはすげえな」

「うん、クルトのお陰で 僕たちは 他の冒険者より美味しい物を食べてる自覚があったけど、これは凄いね。ドライフードだっけ? この魔法は絶対覚えるべきだよ」

はじめての夜営の時、私が作ったスープは 非常に喜ばれた。
クルトさんはお料理修行の旅でもあったから パーティーの料理番でもあるんだね。ダンジョンではお水が貴重だから スープはそんなに飲めなかったというし、水生成魔法を覚えた三人だから これからはスープも楽しめるね。
トンガお兄ちゃんも感動してくれているけど、ドライフードではなく フリーズドライ魔法だからね。
ちなみに ルンガお兄ちゃんは 黙々と 食事を続けております。
その手は止まることがないから、美味しいとは思ってくれているようです。

「アルクさんの スパイスも凄いっす。これ 俺も真似していいですか?」

「ええぞ、基本のミックススパイスをいくつか作っておけば、肉の種類や 調理の種類で 少し足す物を変えればええからな」

スープは私が担当することが増えたけど、お肉はお父さんが用意する方が断然美味しいので お任せです。クルトさんは スパイス調合が気になったらしく、スパイス談義が始まりました。

「なあヴィオ、父さんとの野営っていつもこんな感じなのか?」

「うん、街道よりも 森の方が 素材もお肉もいっぱいあるし、人にも会わないでしょう?
沢山移動するときは街道を走って、ご飯食べる前には森に入るようにしてるの。新鮮なお肉の方が美味しいからね」

食事を終えたルンガお兄ちゃんが 【クリーン】で使った食器類を綺麗にしてくれた。
スパイス談義が白熱している様子を眺めながら、普段の野営について話したら ちょっと呆れられてしまった。

「ふふっ、ヴィオと父さんの索敵能力があれば可能だよね。
普通は森に入ったからと言って 簡単に獲物を見つけることは出来ないし、どちらかと言えば危険だから避けるしね。
まあヴィオの場合は 魔獣より 人間の方が危険かもしれないから、その方法を選んだのは分かるけどね」

トンガお兄ちゃんの言葉に ルンガお兄ちゃんが呆れた理由が分かった。
闇雲に獲物を探して森に入れば 体力も減るし、奥に入る事で魔獣の危険性も高くなるもんね。
私たちは 目的に向かって一直線で行き来するだけだから あまり魔獣をホイホイしないんだよね。
まあ 他の冒険者と一緒に何かする機会があれば気をつけよう。


夜の見張り番は お兄ちゃんたちと お父さんの4人で交代して行ってくれたよ。
1日目の夜は ルンガお兄ちゃんが前半、トンガお兄ちゃんが後半、2日目の夜は クルトさんが前半、お父さんが後半って感じだね。
4人で交代するか、2人ずつの見張りだと思ってたんだけど、魔獣除けを焚いてるし 野営中は 皆が直ぐに起きれるから 寝る時間を確保する方が良いんだって。

索敵魔法を覚える前から 気配察知能力は高かったお兄ちゃんたちだから 出来ることだと思う。
だって プレーサマ辺境伯領地は 裏の山ほどではないけど、ダンジョンに出る魔獣よりは やっぱり大きいもん。
お陰様で 私は 三泊四日の移動中 しっかりぐっすり眠らせてもらいました。


◆◇◆◇◆◇


ガラガラ ガラガラ

ザワザワ ザワザワ


3日目の夜には 森が途切れ、街道沿いに歩いていた私たち。
4日目には 街道が交差する場所も増えてきて、その度に ヒトと 馬車が増えてきた。
護衛であろう冒険者が一緒にいる 馬車の歩みはゆっくりで、護衛が居ない馬車はスピードが速い。
とはいえ 自転車くらいの速さだけど。

「お父さん、馬車ってみんなあんなにゆっくりなの? 前に乗った馬車はもっと早かったよね?」

「ああ、前に乗ったのはギルドの馬車じゃったし、護衛が居らんかったからな」

「護衛騎士が走ってたんじゃ、盗賊が来た時に疲れて戦えないだろ?荷物がねえ時は 護衛を中に入れて走るけど、荷物が入った後は 重さを軽減させるためにも ああして歩いて護るのが普通だな」

「大体ギルドの馬車は 戦闘馬だろ? 馬力が違う。3頭引きの馬車はもっと早いけど、そういう馬車が走るのは こっちの道じゃないな、領都とグーダンを繋ぐ大通りは そんな馬車が増えるからな、ヴィオなんか見えなくて 轢かれちまう可能性が高いぞ」

「そうだね、だから馬車が増え始めたら 大人しく父さんに抱っこされてようね。僕が抱っこしてもいいけど」

歩いて移動中の私たちが抜けるくらいの速さで走る馬車を見送って お父さんに聞いてみた。
お兄ちゃんたちの台詞に 確かに馬の種類が違うことに気付く。そう言えば あの馬は戦闘馬だって言ってたね。
街道に馬車が増え始めた時から 私はお父さんに抱っこされている。
子供みたいで恥ずかしいと思ったけど、大人4人のスピードに遅れることなく歩く6歳児は普通居ないと言われて 歩くのはやめた。
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