ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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お兄ちゃんたちとの旅

第163話 プレーサマ辺境伯領都 その4

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プレーサマ辺境伯領都は 中央広場を中心として 東西南北にエリア分けがされている。
北には領主様が住むお城があって、その近くに お城で働く貴族たちのお屋敷があるらしい。ギルマスの生家である お屋敷もあるらしいけど、ギルマスのお父さんが住んでいる訳ではないんだって。
プレーサマ辺境伯領内の 各地、メリテントだと フィルブ伯爵が自治しているように、ギルマスのお父さんは ケピマルダンジョンがあった村を含めた西部数か所の村を自治しているので、あの辺にある大きめの町に居を構えているみたい。
ここの貴族街にも ギルマスパパのグロッグ伯爵邸はあるけど、そこは 所謂タウンハウスの扱いらしい。

「タウンハウスって 王様が住んでる王都にあるもんだと思ってたけど 違うんだね」

「ははっ、貴族の数が多いから 国中の貴族が王都にタウンハウスを置くには土地が足りないからね。領地を任されるような 貴族のタウンハウスがあるくらいで、それ以外の貴族は王都に家を持てないと思うよ」

街の地図を見ながら お兄ちゃんに聞けば そんな答えが返ってきた。
まあよく考えたらそうかもしれないね。一つの屋敷を管理するにも 沢山の人手が必要で、その人たちに払う給料も必要になるんだから、家が沢山あっても仕方がないか。

そういう訳で、ここの北側にある家は 各地を自治する貴族の親族が住んでいたり、代官と呼ばれるような人が 領主からの伝言をもらうために住んでるみたい。
だとしても そんな人たちも貴族だから 平民がふらりと立ち入れば 騎士に止められることにはなるだろう。
北側には 貴族御用達のお店が多く、高級レストランなども沢山あるらしい。
貴族が食べるご飯には興味があるけれど、ここの屋台は種類が多いし ランチで食べた料理は全部美味しかったから そこまで絶対に食べたい!というほどの欲求はない。


北以外は平民街なんだけど、東は商業区、南は工業区になっているから、そこで工房を構えている人達以外は 西の平民街に住まいを構えている。
平民街は 所謂住宅街になっていて お店はない。もしかしたら 小道の奥に隠れ家的なお店はあるかもしれないけど、商業区と中央広場のお店で色々揃うから それで十分なのかもしれないね。

工業区と言っても工場があるわけではなく、鍛治工房などの 騒音が立つような工房が纏められているみたいだ。
まあ 住宅の隣でカンカンされたら 堪らないもんね。
そういう訳で 冒険者ギルドも 南側の工業区にある。というか 南の通常門を入って直ぐのところにあった。ウルサイモノは南に纏めてるってことだね。

初日のランチ後は この南側のお店を見て回ることにした。
冒険者たちに必要とされるものは 殆どこの南側で揃うらしくて、武器屋、防具屋、薬屋、魔道具屋、雑貨屋などが立ち並んでいた。

「武器防具系は見る必要が無いでしょ? 雑貨屋も色々あるから そっちを見てみようか」

「トンガ、俺 ちょっと 買い足しときたいもんあるから別行動でいいか?」

「そうだね、5人でゾロゾロ店に入っても邪魔だろうし、ルンガはどうする?」

「そうだな、父さんと 兄貴はヴィオと一緒にいるだろ? だったら 俺も今日は別行動にしとくわ」

トンガお兄ちゃんと手を繋いで歩いている現在、お店巡りをどこからするか相談してたら クルトさんが別行動を希望したので ルンガお兄ちゃんも 別行動をすることになった。
確かに 結構大柄な 4人だから お店に入ったら圧迫感が凄いかもしれないもんね。
夕飯も 屋台飯になるから そのための待ち合わせ時間だけを決め、二人は其々別の場所に歩いて行った。
大人だから単独行動しても危険はないもんね、何だか格好良くて羨ましいね。

「明日は ルンガが一緒に行きたがるかな? じゃあ まずは雑貨屋から入ろう!」

明日は商業区のお店巡りをする予定だけど、そっちも 人数少な目で行動するのかな?
とりあえず 1軒目のお店から入ってみることにした。

入ったお店に 雑多なものが置いてあるのは 雑貨屋を名乗るだけあるんだろうけど、どちらかと言えば 野営に必要なモノが多く揃っているように見える。
カンテラ、テント、ロープ、毛布などなど……。

「メリテントの雑貨屋さんとは 雰囲気が違うね」

「おお、この街は規模が違うからな、店ごとに 扱っとる物が違うんじゃ。この店は 野営道具を主に取り扱っとる雑貨屋なんじゃろうな」

おお、やっぱりそういう感じなんだね。
メリテントのお店は ファンシーショップという感じだったもんね。リボンとか、ブラシとか 女児が喜ぶようなアイテムが半分を占めていて、カルタやトランプなんかの知育玩具もあった。
この店には ノートも 知育玩具もない。

「魔獣除けのお香はないね」

「野営道具といっても あれは魔道具屋においてるかな。あとは薬屋にもあるけど 雑貨屋には置いてないね」

トンガお兄ちゃんに言われて 回復薬も そんな括りがあった事を思い出した。
使った事のない道具は 二人から説明されて、自分達が代用している道具を教えてもらう。
このお店では 特に欲しい物も見つからなかったので 次のお店へ。

2軒目の雑貨屋さんも 野営道具と呼べるものを取り扱っているけれど、こっちは お鍋とか スパイス入れとか、キャンプ用品店って感じだった。

「おぉっ!お父さん 見てコレ」

「ほぅ、これは軽いし良さそうじゃな」

「ああ、これ 僕たちも使ってるけど 良いよ。このまま火にかけれるし、父さんが言った通り軽いからね。個別に色々買うよりは 重ねられるから 嵩張らないしね」

お父さんと二人で釘付けになってしまった商品は 金属製のお鍋と食器のセットだった。
深鍋の中に もう一つの深鍋、浅いお皿が2枚、蓋は浅い鍋にもなる。それらに取手はないけど、別売りで取手があった。まるでティ〇ァールではないか!
アルミ製という訳ではなさそうだけど、非常に軽い金属で 私でも5点セットの商品を軽々持ち上げられる。
今は 木の器を使っているし、森に行くときはその場で作ってたりするけど それよりも良さそうだよね。
トンガお兄ちゃん曰く、5年くらい前から 販売が始まって、今の冒険者は必須アイテムのひとつになってるんだって。

1セットで30ナイルと 少々お高めだけど サマニア村には売ってなかったし、お父さんと相談して 1セット購入することにした。
トンガお兄ちゃんたちが使っているのは 初期のもので ここまで軽くなかったらしい。
だからちょっと購入するか悩んでるけど、5年間でここまで改良されたから もう少し改良が進むかもしれないし、改良が進まなくても値段が下がる可能性があると考えて、もう少し今のがボロボロになるまで買うのはやめておくと判断した。

冒険者って『宵越しの金は持たねぇぜ』みたいな人が多いと思ってたんだけど、お父さんも お兄ちゃんたちも 無駄遣いはしないんだよね。

「ヴィオの想像している冒険者像は 時々どんな奴を想定しとるんかと心配になるな……」

「まあ あながち間違いでもないけどね。そういう人が多いのは事実だけど、そういう冒険者は 上級になれないかな」

お父さんが ちょっと遠い目をしているけど、それは ギルドでのテンプレを期待してた私のせいですよね?だって、大概の物語では 初心者が絡まれるし、チートだったら ギルドで叫ばれるんですよ。
トンガお兄ちゃんは 心当たりがありそうだけど、そうなの?

「だって 考えてみて。ランクを上げれば それだけ強い相手との戦いが必要になるでしょう?
そうしたら 武器の手入れや 買い替えだって必要になる。
装備だってある程度 ランクに合わせて 良い物に変えていかないと危険だからね。
良い物はそれだけ値段もかかる、その時にお金が無ければ 作れないでしょう?
それに 冒険者は 怪我だって日常茶飯事だ、深いダンジョンに入るなら 回復薬を それなりの本数を持ち歩く必要がある。いつだって懐が寂しい冒険者は それなりのランクの冒険者って事だね」

成程ね。サマニア村の価格破壊は別として、冒険者の消耗品だけでも それなりにお金がかかるのに、素寒貧じゃ動けないって事か。
そう考えると 装備が長持ちする結界鎧って かなり凄い魔法かもしれないね。サブマス達が 内緒魔法にしたのも納得だ。

結局あの後 数か所の雑貨屋を巡ったけど、購入したのは あのお鍋セットだけ。
魔道具屋さんは 回復薬と 魔獣除け、魔法使いの杖、魔法武器が中心で、特に欲しい物は無かったので購入せず。
ギルドで使っている鑑定眼鏡が欲しかったけど、商業区の魔道具屋にあるかもしれないという事なので 明日に期待です。
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