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ノハシム鉱山ダンジョン
第170話 ノハシム鉱山ダンジョン その1
しおりを挟む「よっし、気合入れ直して 行くか」
「そうだね、パーティー名の改名は追々考えよう。
さて、父さんは持ってるだろうけど ヴィオもツルハシは 持ってるかな?」
「うん、サッサさんのお店で買ってきたよ。鉱石用の 丈夫な採集袋も沢山買ってきたから大丈夫!」
背中のリュックをポンポンしながら トンガお兄ちゃんに応えれば 満足そうに頷かれた。
「では これより中級ダンジョンに入る。
低層階は 1日1階分を回る程度で充分だと思うけど、中層階以上は 魔獣のランクも上がる。無理はしないように。
このダンジョンのリポップは48時間だ、低層階は 一般の鉱夫も入るから 多分然程採集は出来ないと思うから 進めるようなら進もう。質問は?」
「ないです」
ルンガお兄ちゃん達は頷くだけ、私だけちゃんと答えたよ。
こうやって見ると トンガお兄ちゃんがリーダーだってよく分かるね。お父さんも嬉しそうに見える。
ダンジョン入口前にも ドワーフの人たちが沢山集まって 背負籠を持ってたけど、彼らは冒険者ではなく 工房で働く人だったり、鉱石を採掘しに来るだけの人だったりするらしい。
ムキマッチョしかいないから 冒険者との違いが分からん。
ちなみに 昨日ギルドに集まってたのも 殆どが 冒険者ではないらしく、鉱石をギルドに販売する人と ギルドに出された鉱石を購入しにきた工房関係者たちなんだって。
5人で一緒にダンジョンに入る。
入口が黒いぽっかり穴なのは同じ、ただ違うのは 中に入って直ぐのところから カンカン コンコンと 採掘している人たちが沢山いること。
「お父さん、ダンジョンの中に人がいるよ」
「「プッ」」
「そっか、ヴィオが今まで行ったダンジョンは 初級ダンジョンだったんだもんね。時季外れだと 人と会わないか」
そうなのだ、村を訪れる冒険者すら 私たち親子しかいないレベルだったので お父さん以外の人が居る違和感。
スライムも若干迷惑そうにしているように見える。
いつもなら 入ったところで 【索敵】を展開するところだけど、続々と 外にいた人たちも入ってくるので とりあえず 人が少ない方へ歩いていく。
カンカン カンカン コンコン コンコン
どこまで歩いても ツルハシで 壁を叩く人達がいる。
「1階は 魔獣が出ないからね。戦闘能力が無い人や 見習いたちは この階と 2階くらいまでしか入れないし、初めての人は この階でツルハシの使い方を練習したりするんだ。
ヴィオも採掘はしたことが無いだろう? 練習しておくかい?」
ダンジョンの資料によって 低層階のマップは完璧に書かれていたから 【索敵】の必要もない。お兄ちゃんたちもダンジョンでの索敵を練習したがっていたけど、別の階で良いだろうとなった。
ツルハシの練習か。
お父さんからも 一度やっておいた方が良いと言われたので 2階へ下りる直ぐ近くの 人がいない場所でお試し採掘をやってみることにした。
「この辺りだったら そんなに深く掘らなくても 当たりがあるはずだよ」
当たり? なんだか不思議なセリフだと思ったけど まずはやってみることにした。
マジックバックから取り出した ツルハシで 壁を叩く。身体強化なしでやってみたけど 流石に ガツンと壁に刺さることはなかったので、身体強化をかけ直してもう一度。
ガンガン ゴンゴン ガラガラ
「ああ、出たね。3階くらいまでは 石英か石灰石しか出ないからね」
叩いた壁の一部が崩れたのは良いんだけど、出てきた石を見てハテナが浮かぶ。崩れた石とは違い 明らかに手を入れられたような 比較的綺麗な石が出てきたら驚くしかない。しかも 崩れ落ちた筈の 瓦礫は消えてしまった。
それを聞いたら「ダンジョンだからね。これはドロップ品のようなものだよ」と返ってきた。
どうりで あれだけ 採掘作業をしている人が多いのに 瓦礫の山が無かったはずだ。
ダンジョンではない鉱山などでは、勿論 削り出した岩そのものの素材らしく、しっかり余分なところを削り、加工する必要があるのだという。
ダンジョン産の鉱石は その手間の殆どを省くことが出来、直ぐに加工できるのが人気なんだとか。
まあ、魔獣の48時間リポップと同様に 削った筈の壁も 48時間で 直っているらしいので 資源も尽きないという事か。ダンジョンすげえな。
ツルハシの使い方は分かったし、3階までは売っても安い鉱石しか採掘できないという事だったので、サッサと2階に下りることにした。
2階もカンコン音は聞こえるけど、上程ではない。
1階は 入って直ぐが かなり広い空間になっており、そこから2階へ下りる通路まで 全体がごつごつした岩でできた洞窟の様だった。
2階は 初めから ゴツゴツした洞窟のような通路になっていて、だけど 初級ダンジョンの通路よりは 横幅が広い通路となっていた。
「さて、では ダンジョンでの索敵魔法をやってみるか? まずは誰がする?」
「あ!じゃあ僕からやっていい?」
「おう、じゃあ 3階は俺がやる」
「じゃあ 俺は4階だな」
お父さんの問いかけに トンガお兄ちゃんが手をあげた。各階で 順番にするって事だね。
私はお兄ちゃんたちの隣で いつものように【索敵】を展開する。
「うん、シカーバット、シカーマンティス、ロックラットの3種だね。思ってたより少ない数しかいないみたい。通路は 全部繋がってるね。1階より人が少ないけど 3人組が 1組採掘しているっぽい」
「えっ? もう終わったの? 早いっ!!」
「気を逸らしたら 魔力を余計に使うぞ。ヴィオは 半年以上同じことをやっとるから早くて当然じゃ、まずは確実に出来るようにせい」
いつもの癖で 索敵結果をお父さんに報告したせいで トンガお兄ちゃんの集中力が切れてしまったみたいだ。申し訳ないです。
しばらく そのままジッと待っていたら 一つ頷いたお兄ちゃんが顔をあげた。
「うん、僕もできた。洞窟だからかな 本当に フロア全体のマッピングが出来るね。シカーバットがうろちょろしているのもわかるのは 便利だね」
「そんなにか、どんな感じで見えんのか 楽しみだな」
クルトさんも 結果を聞いてウキウキしている。
お父さんも はじめて【索敵】をしたときは ちょっと興奮してたもんね、私はこれがスタンダードで始めてしまったから 【索敵】無しでの散策の方が怖くてできそうにない。
魔法が使えない場所とかあったら怖いね。
ここに来て やっと ルンガお兄ちゃんが槍を取り出した。
トンガお兄ちゃん と クルトさんは 長剣を背負ってるから 無手だったのは ルンガお兄ちゃんだけだったんだよね。
「俺はザックを背負ってるからな、槍持ってたら邪魔だろ?
シカーバットが居なけりゃ この階でも 槍は必要ないけど まあ一応な」
確かに お兄ちゃんたちは 全員が格闘術もかなり強いから この階にいる魔獣位なら 武器を使う必要はなさそうだよね。
シカーバットは 空を飛ぶから 槍で突っつくつもりなのかな?
っていうか……。
「お兄ちゃんたちは 歩く順番とか 決めてないの?」
私とお父さんは 私の訓練を兼ねているから 基本私が ソロで動いているかのように ひとりで前を歩いている。お父さんは 不測の事態が起きた時に駆け付けられるくらいの距離を離れて歩いているって感じ。だけど お兄ちゃんたちはパーティーだよね? 武器で考えれば 全員が前衛なんだろうけど……。
「う~ん、魔獣のランクが上がってきたら それなりに 並ぶけど、この辺りだと 適当かな。
全員が前衛ともいえるかも」
やっぱりそうなんですね。うん、なんとなく そうかなって思ってたから納得です。
今日は そんな感じなので お父さんも 近くを歩いているので ダンジョンでなければ ピクニックに来ている気分だ。
「お、マンティスが居るね。どうする?」
「じゃあ 俺行ってくるわ」
トンガお兄ちゃんの質問に 答えようとする前に クルトさんが ヒュっと 輪を抜け出して マンティスに駆け寄った。
ザシュっ
マンティスが こちらを振り返ろうと 首をもたげた時には クルトさんの剣が振り下ろされ キラキラエフェクトと共に マンティスの姿が消え去っていた。
「は、早い……」
「まあ これくらいは当然」
何てことないという感じで 戻ってきたクルトさん、ハニトラに引っ掛かるようなところしか見た事が無かったので ちょっとびっくりした。
「えっ、ちょっと待って、俺 エデル先生との組手もやってただろ? それ以外に 野営でも魔獣狩ってきてただろ? ヴィオの中の俺の印象悪すぎねぇ?」
「はいはい、ダンジョン内で 騒がしくしないで、あぁほら、来ちゃったじゃないか」
別に私は口にしていないよ? ただ 顔に出ていたのか クルトさんが 嘆いている。
そしてそんな声に釣られたのか バサバサという羽音と共に シカーバットが複数匹 飛んできた。
「じゃあ 俺がやる」
クルトさんは放置して ルンガお兄ちゃんが 槍を片手に飛び出せば、シカーバットも お兄ちゃんに向かって威嚇しながら 飛んでいく。
キキッ キキー ギャッギャ
蝙蝠が鳴くとは思ってなかったけど、鳴くんだね。
どうやら 羽を羽ばたかせることで 風魔法のようなものも飛ばしているようだ。
だけど ルンガお兄ちゃんには どこ吹く風、洞窟だから 上に逃げるにも 天井の高さがあるから 然程高く飛び上がれない。
槍を突き出し、薙ぎ払い、的確に 倒していくのは 命中力というか 集中力も凄いね。
落としたドロップアイテムは蝙蝠の羽……。
買取品にも名はなかったし、特に用途はないという事なので そのまま放置することに。
スモールラットは ゴブリンや マンティスに捕食されていたけど、ここでもロックラットが捕食されているところを発見。
まあ皮が岩だったら きっと捕食されないのに、見た目だけだから食べられちゃうんだね。
ちなみに 採掘作業をしていた人たちは 1人が採掘、二人が魔獣対応って感じでした。
カンコンしてるから ほとんどの魔獣がそっちに行ってしまっていたので、私たちは 殆どエンカウントせずに3階まで移動することが出来たのは 有難いかな。
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