ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

文字の大きさ
196 / 584
ノハシム鉱山ダンジョン

第171話 ノハシム鉱山ダンジョン その2

しおりを挟む

さて、私は魔獣と戦う機会がないままに3階まで到着してしまいました。
人通りもないので 一先ず 階段で 軽い休憩時間とし 行動食を食べることになったよ。

「あ~、こんなに簡単に 美味しいスープが食べられるとか、ヴィオは 可愛いだけじゃなくて 天才だね」

皆のコップに フリーズドライのスープを一つずつ入れ 水筒に準備しておいた お湯を注げば 簡単スープの出来上がりである。
ダンジョンの中は 動いていれば 寒いと感じることはないんだけど、温かいスープを飲むとホッとするくらいには 涼しい。
他のメンバーよりも いち早く食べ終わったクルトさんは 階段を下りきったところで 目を閉じて 【索敵】をし始めた。
まだ 無属性の索敵には慣れてないから 集中する必要があるんだよね。

私も食べ終わって カップを【クリーン】で綺麗にしたら 【索敵】を始める。
2階よりは 敵の数も増えているけど 種類は同じ、あとは 行き止まりが増えているかな。

「よし、じゃあ 今日は4階に下りる階段から 一番近い通路の行き止まり部分で 野営をすることにしよう。父さんも それでいいかな」

「そうじゃな、当初の予定じゃ 2階で野営の予定じゃったんが 進み過ぎたとも言えるしな」

そうなの?
でも 1階にアクティブな敵がいないのは 分かってたし、2階は ああ、魔獣ホイホイの人たちが居なければ もう少しエンカウントが多くて って感じの予定だったのかな。
3階で取れる鉱石も 石英と石灰石らしいので、同じ石なら 1階で十分という事なのか この階に 人の気配はない。
ということで、魔獣とのエンカウントもしっかりあります。

「【エアショット】」「【エアショット】」

「俺もそれにしよ、兄貴 俺も魔力切れまで 使っていいか?」

「ああ、そうだね 今のうちに慣れた方が 消費魔力も減るんでしょ? あとは休むだけだし ルンガは 最後の見張り番にしよっか」

「じゃあ 俺らが ラットと マンティスだな、バットは頼むぞ」

他の魔獣と戦っていると どこからともなくシカーバットが 集まってくるのが鬱陶しくて エアショットを連発してたら ルンガお兄ちゃんも やりたいと言い出した。
集団で飛んでくれば エアバレットを使うんだけど、数匹ずつチラ ホラ とくるもんだからエアショットの方が魔力を使わずに済むんだよね。
私は エアショットを撃つときに 人差し指と 親指を立てる、所謂指ピストルの形を作っているんだけど、それをジッと見つめた後に ルンガお兄ちゃんも同じように 指ピストルでエアショットを撃ち始める。

「おお、ヴィオ これいいな! なんか狙いやすいぞ」

ルンガお兄ちゃんって 何気に天才肌だよね。
ちょっと見て 試してみて、調整したら すぐ出来るようになるんだもん。
最初の数回は 1発で倒せるほどではなかったけど、数回やっていれば 狙いも正確になり、魔力の込める量も調整して 一発でキラキラエフェクトを出すようになってしまった。

「凄いね、これ クルトもできるようになったら 対空戦 大分楽になるんじゃない?」

「え!? 俺 ここまで出来るようになるか分からねーぞ? 練習はするけど」

クルトさんは 魔法を使うより 肉体で戦う方が好きって感じだもんね。だけど 風魔法での索敵を見ていたら 風魔法との相性は良さそうだし、多分出来ると思う。
そう言ったら 夜営の見張り番の時にでも 練習しておくだって。

シカーマンティスの腕というか 鎌部分は 回収できるんだけど、ノハシムの町では鉱石の買取が殆どで、特にマンティスの腕の買取はギルドに出ていなかった。
特にサマニア村に持って帰ってまで 必要とされるアイテムでもないので、これも放置していく。

4階への階段から ほど近い広めの通路のつきあたり、そこが今夜の野営地になる。

「よし、じゃあ ここは僕が ヴィオに良いところ見せないとね、【アースウォール】」

そう言って トンガお兄ちゃんが土壁を作り出せば たちまち通路が 塞がれて 個室状態になった。

「あ、トンガ 見張り番の時に 練習したいから シカーバットが入れるくらいの隙間 開けといてくれ」

「あぁ、了解」

トンガお兄ちゃんも お父さんの子だなと思うレベルに豪快な野営準備をしていることに 驚いていたら、クルトさんが壁の高さに注文を付けた。
直ぐに 壁の上部がスルスルと低くなり、シカーバットが余裕で通れるだけの隙間ができる。
トンガお兄ちゃんの時は 壁を天井まで上げれば 魔獣は入って来れないし 安全だね。

その後は いつも通りにテントを立てて 夜営の準備だ。しっかり守られた場所なので火おこしをして スープも鍋でつくるよ。
お肉に下味をつけていた お父さんが ふと思い出したように教えてくれた。

「ヴィオ このダンジョンでは問題ないが、セフティーゾーンではない場所で こんな風に野営をする時には 調理内容に気を付ける必要があるぞ」

「どういうこと?」

「ここは 鼻が利く魔獣が居ないだろ? だけど そうじゃねえ魔獣が多いとこだと 肉を焼く匂いや スープの匂いに釣られて 近づいてくる。
んで 壁をガリガリされ過ぎたら 面倒だって事。
そういう相手がいる場所で こんな感じに野営をするときは 行動食にすっか 作り置きしてたもんを テントの中で食うのが 鉄則だな」

ルンガお兄ちゃんの言葉に なるほどと思う。
お父さんと一緒にダンジョン泊をした場所は セフティーゾーンか ダンジョンの小部屋で 安全な場所だったから、こんな風に ある意味 通路の途中でというのは初めてだ。
ゴブリンでも 流石に肉を焼く匂いには気付きそうだし、それこそ壁を取っ払ったら魔獣が待ち構えていた状態になりそうだよね。

「いや、まあ 普通の冒険者は ダンジョンの中で 調理なんかしねえけどな。ヴィオ、お前の周りは ある意味 非常識な奴しか居ねえって事 覚えといた方が良いぞ?」

手際よく野菜と肉を炒めているクルトさんがそんな事を言うけど、非常に説得力がないんですけど。
でも お父さんも 美味しいものを食べられるように工夫してたから ダンジョン攻略が早かったって言ってたもんね。余程 一般の冒険者は 荷物を減らすという事だけに重きを置いているんだろう。

「大丈夫、辺境北西部出身です!って言うようにするから」

「ははっ、そうだね、だったら 問題ない」

「おいっ!お前らそんなだから 余計に あの村出身者はヤベエってなるんだぞ」

「まあ 間違いじゃねえし いいんじゃねえの?」

「そうじゃな、それが 抑止力になるんじゃったら ええかもしれん」

「アルクさんまで……」

クルトさんがツッコみ疲れしているようですが 大丈夫でしょうか。
まぁ、金ランクになるまでは お父さんという最強の盾と一緒に行動するんだし 問題ないでしょ?
美味しいは 正義です!
しおりを挟む
感想 109

あなたにおすすめの小説

私を裏切った夫が、後悔しているようですが知りません

藤原遊
恋愛
政略結婚として、公爵家に嫁いだ私は 愛のない夫婦関係を「仕事」だと思い、正妻の役目を果たしてきた。 夫が愛人を持つことも、 その子を屋敷に迎え入れることも、黙って受け入れてきた。 けれど―― 跡取りを、正妻の子ではなく愛人の子にする。 その言葉を、人前で軽く口にした瞬間。 私は悟ったのだ。 この家では、息子を守れないと。 元々、実家との間には 「嫡子以外の子は実家の跡取りにする」という取り決めがあった。 ならば話は簡単だ。 役目を終えた私は、離縁を選ぶ。 息子と共に、この家を去るだけ。 後悔しているようですが―― もう、私の知るところではありません。

【書籍化決定】アシュリーの願いごと

ましろ
恋愛
「まあ、本当に?」 もしかして。そう思うことはありました。 でも、まさか本当だっただなんて。 「…それならもう我慢する必要は無いわね?」 嫁いでから6年。まるで修道女が神に使えるが如くこの家に尽くしてきました。 すべては家の為であり、夫の為であり、義母の為でありました。 愛する息子すら後継者として育てるからと産まれてすぐにとりあげられてしまいました。 「でも、もう変わらなくてはね」 この事を知ったからにはもう何も我慢するつもりはありません。 だって。私には願いがあるのだから。 ✻基本ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。 ✻1/19、タグを2つ追加しました ✻1/27、短編から長編に変更しました ✻2/2、タグを変更しました

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~

ふわふわ
恋愛
「お姉様の婚約者、私がいただきますわ。だって“公爵令嬢”ですもの」 義理の妹コンキュはそう言って、王太子との婚約を奪いました。 父はそれを容認し、私は静かに受け入れます。 けれど―― 公爵令嬢とは“地位”ではなく、“責任”の継承者。 王宮で礼儀も実務も拒み、「未来の王太子妃」を名乗った義妹は、わずか三日で婚約破棄。 さらに王家への不敬と統治能力の欠如が問題視され、父の監督責任が問われます。 そして下されたのは――家ごとの褫奪。 一方で私は、領地を守り、帳簿を整え、静かに家を支え続ける。 欲しがったのは肩書。 継いだのは責任。 正統は叫びません。 ただ、残るだけ。 これは、婚約を奪われた公爵令嬢が “本当に継がれるべきもの”を証明する物語。

【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。

みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」 魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。 ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。 あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で一人の騎士と運命的な出会いをする。 【2024年3月16日完結、全58話】

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので

モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。 貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。 ──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。 ……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!? 公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。 (『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)

恋は、母をやめてから始まる――正体を隠したまま、仮の婚約者になりました

あい
恋愛
両親を失ったあの日、 赤子の弟を抱いて家を出た少女がいた。 それが、アリア。 世間からは「若い母」と呼ばれながらも、 彼女は否定しなかった。 十六年間、弟を守るためだけに生きてきたから。 恋も未来も、すべて後回し。 けれど弟は成長し、ついに巣立つ。 「今度は、自分の人生を生きて」 その一言が、 止まっていた時間を動かした。 役目を終えた夜。 アリアは初めて、自分のために扉を開く。 向かった先は、婚姻仲介所。 愛を求めたわけではない。 ただ、このまま立ち止まりたくなかった。 ――けれどその名前は、 結婚を急かされていた若き当主のもとへと届く。 これは、 十六年“母”だった女性が、 もう一度“ひとりの女”として歩き出す物語。

処理中です...