ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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ノハシム鉱山ダンジョン

第185話 ノハシムの町のその後 

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かなり予定外の動きが重なり グーダンの街に到着した 私とお父さん、まさかギルドが馬車を出してくれるなんて 嬉しすぎる想定外だった。

武器の手入れは必要ないし、お兄ちゃんたちが到着するには まだ数日かかるだろう。
という事で 私とお父さんは ダンジョンの野営で減ったスープ作りと 乾燥野菜、お肉の仕込みをして過ごすことにした。



◆◇◆◇◆◇

~サマニアンズSIDE~


「……という訳で 土魔法での索敵を使えば 鉱石の位置がかなり正確に分かります。
13階、14階の魔鋼と 魔銀に関しては かなり深いところまで掘る必要があることが分かると思いますし、魔銀は 一つの鉱石と 鉱石の間がかなりあります。
闇雲に掘っても出てこなくて当然だったかと」

「土魔法の索敵、そんな簡単な事で……。
ドワーフなら ちょっと練習すれば 誰でも習得できそうだな」

「ギルマスは土魔法の索敵は?」

「勿論できる。だが 土中の敵に【索敵】を使用することなどあまりなかったから 使い勝手の悪い魔法だとしか思っておらんかった。
だが これで光明が見える。俺がまず明日低層階で試してみる。それが上手くいけば 俺から町のドワーフたちに伝えよう。
あぁ、この魔法に関しては 皆に伝えていいのか?」

「ええ、俺たちも 父から教わりましたし、父も他の魔法の応用でやっただけだと言っていましたから 問題ないですよ」

「助かる!」

「あんな態度をとったのに 本当にすまなかった。感謝する」

ギルマスと サブマスの二人に頭を下げられてもなぁ、実際この魔法を考え出したのが6歳の妹ですなんて言ったら どんな顔するんだろう。まぁ言わないけどね。
ギルマスとサブマスは 色々な仕事も溜まっているだろうことで ここで解散となった。
明日魔法が上手く使えなかったら 俺たちが一緒に入って 試してみるという約束はしたが、あの魔法は間違えようがないと思うから呼ばれることはないだろう。

「お待たせいたしました。お預かりいたしました鉱石と 魔物素材の一覧となります。お間違えが無いかご確認をお願い致します」

ヴィオたちのギルドカード手続きをしてくれた 受付嬢が 預かり証を持ってきたので確認する。
ふっ、面白いくらいの量だったから あり得ない額になっているけど、あの二人はこれを分かってるのかな?いや、父さんは分かってるか。ヴィオに教えたら どんな顔するかな。

「えぇ~、そんなに!?」ってビックリする?
「ひゃぁ~、大金持ちになっちゃったね」って小躍りする?
「おぉ!いっぱいお肉が買えちゃうね!」うん、これな気がする。

いや、お肉は 自分たちで狩りに行くから 野菜とか果物かな。
6歳児が 森の魔獣を『おいしそうだよね』って表現するなんて、初めて聞いた時は聞き間違いかと思ったよね。
クルトは『これを他所の奴が聞いたら 辺境北部らしいね。って言われるんだろうな』って言ってたけど、僕たちだって 8歳の時ですら ボアは恐ろしかったけどね。

預かり証は 数が数だから 随分多く、軽く目を通して 二人にも確認してもらう。
ざっと目を通して戻された紙は 受付嬢に再び戻す。

「うん、大丈夫だね。コレ 半々で分けてもらえる?」

「半々ですか? 5分割も可能ですが……」

「あぁ、パーティー2つだからね、あっちに負担を随分かけたし半々で良いんだ。
悪いんだけど 1袋分は 4分割にして 俺たち其々の 口座に入金にしてくれると助かるよ。」

「4分割という事は パーティー資金と 皆様個人の口座でよろしいでしょうか?
畏まりました、では手続きをしてまいりますのでお待ちください。タグのお預かりをさせていただきます」

そう言って出ていった受付嬢を見送れば ルンガが呆れたように笑う。

「まさか負担をかけた相手が ヴィオだとは思ってねーだろうけどな」

「そりゃそうだろ、大方 子供の面倒を見ながら 魔獣討伐をしてた父、って感じだろうな」

「ふふっ、父さん 今回 鉱石の索敵しかしてないけどね」

「あと 上手い飯な」

「確かに」

そんなバカ話をしていたら 大きな袋を抱えた 受付スタッフが入ってきた。
父さんたちに渡す分は この袋に入っているから 結構な重さだろうね。

「お待たせいたしました。こちらが 半分の26万130ナイルです。
金板26枚、銀貨13枚となります。ご確認ください」

俺たちまで現金にしてたら このギルドの金庫は空になっただろうなと思う。
金板なんてまず普通にしてたら見ることはないけど、流石ミスリルだとしか言えないな。ミスリル鉱石だけでも1個150ナイル(15万円)の買取金額がついたのに、ボスの宝箱に入ってたのは 純ミスリルの塊だ。
あれは 王都に売り出すことになるんだろうけど いくらで売るんだろうな。
俺たちに入る額を考えれば5倍は確実だろうし、今は俺たちに支払って 大変でも 直ぐに取り返せるだろう。
いや、下にあれだけ買取希望が並んでたんだ。直ぐに取り返せるな。

金の入った袋をマジックバックに収めてから 部屋を出る。
受付の案内で ヴィオたちが使ったらしい裏口に案内されたことで 一先ず下で買取に並んでいる奴らに絡まれることなくギルドを出ることが出来た。

「宿 どうする?」

「あ~、そっか、多分押しかけてくるよね」

「サッサに声かけてみないか?」

ルンガの言葉に 宿に泊れば 希望の石が買えなかった奴……はいないか、だけど 欲しい鉱石がある奴らがついて来てくれと絡んできそうではある。
クルトが言うように サッサさんに匿ってもらえないか聞いてみるか。



「おぉ、期待以上にやってくれたな」

サッサさんの店に行けば 直ぐに裏から 本人が出てきた。
そのまま 裏に引っ張り込まれ 応接室でお茶を飲んでいる現在、俺たちを連れ込んだ本人は 非常に嬉しそうにしているだけだ。

「お前らだったら踏破するとは思ってた。だからミスリルを購入できるように 金の準備もしてたが まさか あの場にいた連中の殆どに行き渡るほどの鉱石を持って帰ってくるとは 驚いたぞ」

ギルマスには伝えたが 土魔法の索敵を使えば 鉱石の位置が分かるから かなり採掘は楽になることを伝えたら 大笑いされた。

「そりゃすげえ、ギルマスに伝えてんだったら 明日、いや 今日中に試して 明日には発表すんだろ、だったら 今日明日は うちの二階で寝泊まりすれば大丈夫だろ」

「いいんですか?」

「ん? そのつもりで来たんじゃねえのか? まあ ヴィオと アルクが居ねえのは 先に逃がしたってことだろ?良い判断だったと思うぞ。
今回の鉱石の件で お前らに同行以来を出してくる奴も多いだろうし、稼ぎまくったことが分かってるから 阿呆な事を考える奴らも居るだろうしな。
うちだったら とりあえず不法侵入は出来ねえようになってるから そこは安心しとけ」

そりゃそうだな、あれだけの鉱石の量だ、全部をギルドが見せる訳じゃないだろうけど 単純計算でも かなりの額だと簡単に分かるだろう。
現金を持ち歩いているとは思ってないだろうけど、マジックバックを奪おうとしてくる奴が居てもおかしくはないか。

「ギルドが 送迎してくれたの それも分かってやってくれたんかな」

「おぉ、ヴィオたちはギルドの馬車で移動したのか?
それは安全だったな、多分ギルドの馬車って事は グーダンのギルドまで直接乗りつけしてんだろ、だったら お前らが行くまで 余程の事が無い限り安全だろ。多分 アルクもそれを考えて 宿を選ぶだろうしな」

そこまで考えが及んでなかったから ホッとする。
これ、魔鋼と魔銀 後一袋ずつ出してなくて良かった。
あの 採掘があり得ないことだって 最初は思ってたのに 段々違和感を覚えなくなってたな。
ヴィオと父さんとの ダンジョンは あまりにも快適過ぎて 一緒じゃない旅が どうだったか忘れるくらいだ。
ヤバイ、これ グーダンの後大丈夫か?

サッサさんは 客室に案内してくれた後 仕事があるからと 階下に戻って行った。
宿はしてないけど、繁忙期なんか 家に帰れない従業員用に 客室を 作っていつでも寝泊まりをできるようにしているらしい。
簡易ベッドがあるだけの部屋だけど 十分だ。
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