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グーダン大山ダンジョン
第192話 グーダン大山ダンジョン その3
しおりを挟む「子供っ!?」
「親子、いや 家族か……。今から下りるのか?」
上がってきた冒険者と 顔を合わせることなく遠回りすることもできたけど、態々そうする理由もないし、って事で 3階の階段を目指して歩いていたら 5人組パーティーと顔を合わせることになった。
私の存在に気付いた一人が 思わずと言った感じで声を出したけど、それは 直ぐに仲間によって遮られた。
お父さんに確認してきたのは 一番年上っぽい虎族の男性だった。
「ああ、これから3階に下りる予定じゃ。そっちは上がりじゃな」
「ああ、昨日下りてきた冒険者から ギルドで凄い魔法が発表されたって聞いてな。このまま潜るより 一旦戻った方がいいって言われたんだ」
水生成魔法の事かな?
だけどその事を教えてくれた人は もう覚えたって事?それは凄くない?
「へぇ~、俺たちも聞いてきたけど その人達は もうあの魔法を使いこなせるようになったのか?凄いなぁ」
「あぁ、いや、彼は グーダンのダンジョンで 捜索を担当するような 上級指導員をしている人達だから 多分 教えに回ってるんだと思う。
俺たちも 今回はちょっと長めに潜るつもりで申請してたから、多分 そういう相手にだと思うけどな」
あ~、途中で水が足りなくなって戻ってくるより 魔法を覚えて 深く潜れるようにしてもらおうって事なのかな?それはなんかすごいね。
「深層階にそれだけ潜ってほしいってことだな」
ルンガお兄ちゃんの言葉に リーダーさんも頷いているから そういう事なんだろう。
こんな現象が リズモーニの各地で起きてそうだね。
「じゃ、そういう事で。戻りがてら 大分狩ってきたから ここから先は歩きやすいと思う。気を付けて」
「ああ、ありがとう。そっちも気を付けて」
お父さんと リーダーさんで拳をゴチンってしあって別れた。
なんか 格好良い~。
「ルンガお兄ちゃん!」
「ん?ほれ」
私もやってみたくて 拳を作って ルンガお兄ちゃんに突き出したんだけど 何故か抱っこと勘違いされ 抱き上げられてしまった。むむぅ。
「お前 なんでむくれてんだ?」
クルトさんが 顔を覗き込んでそんな事を言うけど、抱っこがして欲しかったわけじゃないんだもん。
「お父さんの あれが 格好良かったからやりたかったんだよ」
「「「あれ???」」」
首を傾げて 不思議顔をしているお兄ちゃんたちに、自分の両手を拳にして ゴチンと合わせて見せれば 「あぁ」と納得された。
「ふふっ、まあ あれは “健闘を祈る” とか “頑張れよ” みたいな意味があるからね。あとは 無手でお互いの拳を重ねることで 『そっちを攻撃する意思はない』みたいな意味もあるかな」
トンガお兄ちゃんが ゴッチンコの意味を教えてくれた。
うんうん、そういう意味があるんですね、やっぱりなんか格好良い。
そう思っていたら トンガお兄ちゃんが 拳を出してくれたので 私も拳を作って ゴッチンしたよ。
「ヴィオ、ほれっ」
お父さんも 大きな拳を目の前に出してくれたから ゴッチンコ
クルトさんも 笑いながら 同じようにしてくれたので ゴッチンコ
抱っこしたままの ルンガお兄ちゃんは 右手だけで抱えてくれて 左手をグーにして 差し出してくれたので ゴッチンコした。
「ふふっ、冒険者っぽくって格好良い!」
「単純だなぁ~」
「楽しそうで何よりじゃな」
クルトさんは 単純だっていうけど、だって楽しいもん。
きっと その 指導員をしているレベルの人が 深層階を目指している冒険者たちに生成魔法の言伝をして回っているのであれば、これから戻ってくる冒険者とすれ違う可能性は高いという事になった。
だけど 逆に 私たちと同じように このタイミングで 深層階まで潜る人は 少し減るだろうと予想されるから、意外と安全に野営が出来そうだと 安心材料にもなった。
その後 3階に下りたところで索敵を行い 一番手前のセフティーゾーンを 今日の野営地にすることを決めた。
「思ったよりも早く下りてこれたけど、例の声掛けでどれくらいの人数が戻ってくるのかも知りたいね。
それ次第では ある程度潜ってゆっくりでも良いかも」
「確かに、ヴィオの風魔法があれば 移動も時間がかかんねーしな」
2階までなら 日帰りの採集目的の人たちに会うかもしれないからという事もあって 3階まで下りて来たけど、10階までにいた人がどれだけ戻ってくるかだよね。
多分10階に近い人なら わざわざ戻ってくるよりは 中ボス倒して 転移で戻った方が速いと思うんだよね。もしかしたら指導員の人もそうするかな?
その人と会えれば 戻ってくる冒険者の数とか聞けたのに。
「そうじゃな、指導員をしとる者たちがパーティーで行動しておったら ボス部屋に行くじゃろうな。
じゃが 少人数で 声掛けだけを目的にしておるんじゃったら ボス部屋の挑戦はせんかもしれん。
まぁ、儂らは儂らのペースで潜ればええじゃろ」
まあそうだよね、最初の【2日で1階ペース】を既に超えている訳だし、この後時間があったら 他のダンジョンも、って話だったけど、予定は未定だもん。
夏に王都に行くっていう大きな予定があるだけだから 別にこのダンジョンの移動は急いでない。
セフティーゾーンで野営の準備をはじめれば いつも通り 分担しながら各自の作業を行っていく。
「お父さん 私さっき採集した ワイラッドを使ってお料理したいんだけどいい?」
「おお、勿論ええが 何か他に使うものはあるか?」
「鞄に入ってる材料でいけそうだから大丈夫」
ホーンラビットを途中で数匹狩ったお陰で ドロップアイテムのお肉もゲットしているし、他の野菜とトマトスープはフリーズドライのスープの素を使えばいいしね。
ということで、何故かあのボス部屋で出た謎肉と同じように 大きな葉に包まれていたお肉を一口大にカットしていく。
誰が 肉にして この葉で包んだのかとかは もう考えないようにしておく。
摺り下ろしたリーガと お肉を ちょっと深めのお鍋にいれて炒めていく。リーガの匂いって食欲を刺激するよね~、お兄ちゃんたちも チラチラこっちを見ているくらい。
お肉に火が通ったところで いちょう切りにしたワイラッドと 乾燥キノコを投入!
「「あぁっ!」」
お肉だけでも良い匂いだったから そのまま食べれると思っていたのか、少々残念がるお声が上がりましたけど、今日のこれは お兄ちゃんたちにワイラッドを好きになってもらいたくて作ってるからね。
ワイラッドは 大根よりも火の通りが良いようで 結構直ぐに透明になってきたので 水を加えて煮込んでいく。
「ほぉ~、これは具沢山でええなぁ」
そうでしょ? ここにフリーズドライのトマトスープを5つ分投入して ひと混ぜしてから さらに煮込んでいけば、お兄ちゃんたちがパンを片手に 鍋を囲むように覗き込みに来た。
肉串も パンも スープも出来上がっていて、後は私のトマト煮を待つだけみたい。先に食べててくれてもいいんだけどなぁ。
「それは無理、だって こんなに美味しそうな匂いがしてるんだよ? 」
楽しみにしてもらえるのは嬉しいね。
深めのスープ皿を皆から預かり 其々によそって配れば 頂きますだ。
「うっま!」
「ワイラッドって こんなに柔らかくなんの? すげ~」
「ヴィオは 良いお嫁さんになれるね。うん、僕 ワイラッドが好きになった」
「トマト以外でも楽しめそうじゃが これは旨いな。ヴィオは凄いなぁ」
ワシワシと頭を撫でられ 嬉しくなる。
お試しで作ってみたけど トマトスープにしっかり味付けをしてくれてたからこそ これだけ美味しい料理になったんだよね。お父さんのスープが凄いのですよ。
私はトマト煮と 肉串1本、パン1枚で お腹がいっぱいになってしまったので、残りは4人で食べてもらった。トマト煮は お試しだったので 一人2杯分くらいしかなかったけど、また作ってほしいとリクエストを頂けるくらい好評でした。
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