ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

文字の大きさ
245 / 584
父娘と合同パーティー

第215話 徒歩での移動

しおりを挟む

あの後、昼食休憩で停車したセフティーゾーンで 私たち親子は馬車を下りた。
御者さんは 残念そうな顔をしていたけど、今夜の可能性を考えたら 洗礼前後にしか見えない幼女に 聞かせるのは良くないと思ったんだろう。
気を付けてとの声を頂き 別れることになった。


「え~?こんな中途半端なところまでの馬車利用だったの? 変なのぉ~」

「ちょっと、リリ!」

「なぁ~にぃ~? あたし さっきラウールが激しすぎたから 疲れてんのぉ。お昼ご飯はいらないから 寝てていい?」

お父さんがリュックを背負って 御者さんと挨拶しているところに 冒険者たちが出てきた。
うん、まず君たちが出てきて 周辺の確認とかするんじゃないの? まあ 今回は 『何かあった時に助けてもらう』 というのが前提だから 自由で良いのかもしれないけどさ。

私たちが 馬車を下りることに気付いたらしい猫のお姉さんが何か言ってるけど、その雰囲気を目の当たりにしたくないからですよ、言わんけど。
お父さんは 少し大きめの溜息をついただけで 特に何も言うことはなく 二人でセフティーゾーンを離れた。

とはいえ 直ぐに街道から逸れるのは心配されるだろうから まずは街道を歩き、馬車が全く見えなくなったところで 整備された街道から逸れる。

「大きなダンジョン、稼げる町、人の流入が多い町、そういったところは ああいった輩が増える。
王都に向かうなら その可能性を考えとくべきじゃったな。
儂も 冒険者を随分離れて のんびりしすぎておったみたいじゃ。はぁ~、いかんなぁ」

それは仕方がないのではないでしょうか。
今回はあの一組だったけど、もっと大量に屑っぽいのがいることもあるんでしょう? 
少し開けた場所で 簡単な昼食を頂いている最中、お父さんが溜息を吐いています。

「お父さんが一緒の時に会えて良かったんだよ。ランクアップ試験の時って ソロでダンジョン入るんでしょ? そんな時にあんなのに初めて会ったら 動揺しちゃってたかもしれないもん」

ソロの試験は初級ダンジョンだけど、テント泊中にあんな声を聞いたら 普通に魔獣だと思って攻撃しちゃってたかもしれないし。
そんな事を言えば お父さんも笑いながら それなら丁度良かったんかもしれんなぁと言ってくれた。
うんうん、馬車の体験もできたのはいいけど、自由度が低い事を思えば 二人で歩いて移動する方がいいしね。
ところで あの大剣男、ケモ耳が生えてたけど 何の獣人だったんだろうと思ってお父さんに聞けば 虎だったらしい。
虎の尻尾が無かったけど?と聞けば 尻尾をベルトのように腰に巻いていたとの事。尻尾が長い獣人の場合 弱点にもなり得るから そうやって腰に巻いたりして保護してるんだって。
クルトさんはそのままだったけど、今度尻尾が弱点になるのか聞いてみよう。


リスケットの町から首都までは アビドガの町を挟んで さらに南南西に直進コースなんだけど、私たちの目的地 フルシェの町は アビドガの町から西へ直角に曲がることとなる。
今日の夜営予定だった休憩場が リスケットとアビドガの中心地点だった事を思えば このまま南西に進めば フェルシェに向かうことができる。
ショートカットが出来るんだけど 街道は作られていないので 舗装されていない高原や林の中を突き抜けることになる。
とはいえ サマニア村周辺の森のように樹々が混み合っている訳でもなく、山からも遠いこの地では ダンジョン以外に現れる魔獣は然程強くないらしい。

昼食休憩後 道なき道を二人で進む。
お父さんも 気配を消していないから 小さな魔獣は巣穴に逃げてしまうし 全く魔獣に遭遇しない。

「さて、この辺まで来たら しばらく人に会うことはないじゃろう、ちょっと走ろう」

両手を広げてカモンのポーズをされたので お父さんに飛びつけば 抱っこスタイルです。そのまま【ウインド】を唱えれば お父さんが気持ちよさげに走り出す。
馬車と あの冒険者は お父さんにとって かなりストレスだったようですね。

お父さんが何を目印にして走っているのかは 分からなかったけど、走りながら 【索敵】を続けていれば ここに来るまでの道がマッピングされているのが分かった。
ダンジョンみたいに 行先まで全部が分かる訳ではないけど、今まで通ってきたところは 白地図に塗り絵で埋められていくように 地図が出来上がっているのだ。

「お父さん、【索敵】している場所が マッピングされてる!」

「ん?どういうことじゃ?」

「船の途中からだと思うんだけど、【索敵】をし始めたところから ここまでずっと 通ってきた道が埋まって行ってる感じなの。これ、満遍なく通ったら 大陸の詳細な地図が出来上がるかも」

「は?」

お父さんが急ブレーキ。
ウインドはまだ追い風を当てているので 慌てて魔法を停止する。

「ダンジョンみたいなマッピングが出来とるっちゅうことか?」

「うん、そんな感じ。索敵範囲をもうちょっと広げておけば 直接通ってない場所でも マッピング範囲になってたかもしれないのに、気付くのが遅かったね」

白地図は 自分の中で確認できるものではあるけど、ステータス画面がある訳ではないから 他人に見せることは出来ない。
船の途中から索敵したからだろう、川の途中から ここまでずっと地図が出来上がっていた。
白抜けしている部分の上の方はどうなっているんだろうかと思い 地図を スクロールする想像をしてみたら出来た。

(まじか……)

そうしたらルバインの町から グーダンの町までの 通ってきたであろう場所も 索敵していた場所に色が付いていた。これは、今後ダンジョン外でも索敵必須じゃない?
街中とか 自分の周辺だけに索敵していたけど 町全体のマッピングが出来ていたら 次に訪れた時に迷子にならないで済みそうだ。

「むむっ、儂の索敵はそこまでではなさそうじゃな。見ておる場所のマッピングは出来るから 今この周辺は分かるが 多分 移動すれば 分からんようになると思う」

そうなの?
私のは ゲームのマッピング知識があるからかもしれないね。
この歩いた場所だけマッピングされる。って言うのが ファミコン世代って感じがするけど、まあこれも コンプリート魂が疼くって感じで良いよね。

お父さんからは かなり便利な能力だけど、相当珍しいことだから 人には言わない方がいいだろうと言われた。
まあ これだけ詳細な地図情報が手に入るなんて知られたら 危険そうだもんね。言わないでおこう。

その後 林の中で1泊野営をし、翌日も少しだけ ウインドダッシュを行えば、昼過ぎに街道を発見した。
魔物除けの魔道具には 道路標識の役割もあり 《 ←○○、○○→ 》 というように 町の名前が彫ってある。
左側に 首都リズモーニ、右側にフルシェの名前があったので、このまま進めば目的地に到着するだろう。

街道途中の野営地で もう一泊テント泊をし、翌日の昼前に 目的地であるフェルシェの町に到着した。
まさか、この町であの人との再会をすることになるなんて 想像もしてなかったけどね。
しおりを挟む
感想 109

あなたにおすすめの小説

私を裏切った夫が、後悔しているようですが知りません

藤原遊
恋愛
政略結婚として、公爵家に嫁いだ私は 愛のない夫婦関係を「仕事」だと思い、正妻の役目を果たしてきた。 夫が愛人を持つことも、 その子を屋敷に迎え入れることも、黙って受け入れてきた。 けれど―― 跡取りを、正妻の子ではなく愛人の子にする。 その言葉を、人前で軽く口にした瞬間。 私は悟ったのだ。 この家では、息子を守れないと。 元々、実家との間には 「嫡子以外の子は実家の跡取りにする」という取り決めがあった。 ならば話は簡単だ。 役目を終えた私は、離縁を選ぶ。 息子と共に、この家を去るだけ。 後悔しているようですが―― もう、私の知るところではありません。

【書籍化決定】アシュリーの願いごと

ましろ
恋愛
「まあ、本当に?」 もしかして。そう思うことはありました。 でも、まさか本当だっただなんて。 「…それならもう我慢する必要は無いわね?」 嫁いでから6年。まるで修道女が神に使えるが如くこの家に尽くしてきました。 すべては家の為であり、夫の為であり、義母の為でありました。 愛する息子すら後継者として育てるからと産まれてすぐにとりあげられてしまいました。 「でも、もう変わらなくてはね」 この事を知ったからにはもう何も我慢するつもりはありません。 だって。私には願いがあるのだから。 ✻基本ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。 ✻1/19、タグを2つ追加しました ✻1/27、短編から長編に変更しました ✻2/2、タグを変更しました

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~

ふわふわ
恋愛
「お姉様の婚約者、私がいただきますわ。だって“公爵令嬢”ですもの」 義理の妹コンキュはそう言って、王太子との婚約を奪いました。 父はそれを容認し、私は静かに受け入れます。 けれど―― 公爵令嬢とは“地位”ではなく、“責任”の継承者。 王宮で礼儀も実務も拒み、「未来の王太子妃」を名乗った義妹は、わずか三日で婚約破棄。 さらに王家への不敬と統治能力の欠如が問題視され、父の監督責任が問われます。 そして下されたのは――家ごとの褫奪。 一方で私は、領地を守り、帳簿を整え、静かに家を支え続ける。 欲しがったのは肩書。 継いだのは責任。 正統は叫びません。 ただ、残るだけ。 これは、婚約を奪われた公爵令嬢が “本当に継がれるべきもの”を証明する物語。

【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。

みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」 魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。 ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。 あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で一人の騎士と運命的な出会いをする。 【2024年3月16日完結、全58話】

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので

モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。 貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。 ──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。 ……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!? 公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。 (『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)

恋は、母をやめてから始まる――正体を隠したまま、仮の婚約者になりました

あい
恋愛
両親を失ったあの日、 赤子の弟を抱いて家を出た少女がいた。 それが、アリア。 世間からは「若い母」と呼ばれながらも、 彼女は否定しなかった。 十六年間、弟を守るためだけに生きてきたから。 恋も未来も、すべて後回し。 けれど弟は成長し、ついに巣立つ。 「今度は、自分の人生を生きて」 その一言が、 止まっていた時間を動かした。 役目を終えた夜。 アリアは初めて、自分のために扉を開く。 向かった先は、婚姻仲介所。 愛を求めたわけではない。 ただ、このまま立ち止まりたくなかった。 ――けれどその名前は、 結婚を急かされていた若き当主のもとへと届く。 これは、 十六年“母”だった女性が、 もう一度“ひとりの女”として歩き出す物語。

処理中です...