ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

文字の大きさ
264 / 584
父娘と合同パーティー

第234話 フルシェ遺跡ダンジョン その16

しおりを挟む
小部屋から数人だけが移動してきたのは分かっていたけど、目的は我々だったらしい。
初心者なのだろうか。
魔獣が出るダンジョンで あまりにも無防備な格好の女性と 剣を腰に佩いた男性、槍を構えた男性の三人組だった。

ここでもまた猫の女性が槍の男性にゴロニャンと纏わりついているのだが、冒険者の猫獣人女性に対する好感度がどんどん下がっていくのだが?
リリウムさんをはじめ、素晴らしい人も沢山知っているけど、外で会う冒険者の質が悪すぎる。

「ってか、え~、すっごい可愛い女の子がいるんだけどぉ~、え~、かわいい~~~。おいで~~♡」

私を見つけた女の人が、まさに猫なで声で 両手を広げて近づいて来ようとするんだけど、これ2回目です。私を野良猫かなんかと勘違いしてます?

「下がりなさい」

「ひっ!」

ウンザリしそうになってたら 私の目の前が銀色で埋め尽くされた。
何だろうかと思ったら テーアさんのバスタードソードでしたよ。
剣を突き付けている訳ではないけど 物理的な壁で近付けないのと、テーアさんをはじめとした 私たちパーティーからの鋭い視線に 耳がペタンとなり 尻尾が股の間にキュッとなってます。
阿呆なの? 
冒険者としてダンジョンに来てて 知らない人の子供に近付くとか、二人の男も止めろよ。

「「す、すみませんでした!」」

慌てて男性二人が謝罪してくるけど テーアさん達無言です。 金ランクの無言、超怖いっす。

「所属とランクは何だ?」

「あっ、えっと、俺らは〔紅蓮の剣〕ってパーティーで、パーティーランクは銀ランク白です。
共和国出身で、幼馴染で、銀ランクになったから リズモーニ王国に来てみようってなって、それで……」

この人たちも銀ランクなんだ。白って事は 銅ランクから上がったばっかりなのかもしれないけど、ダンジョンの経験はあるってことだよね?

「共和国にもダンジョンはあるだろう?
そこで基本的なマナーやルールは学ばなかったのか? ギルドの学び舎で卒業前にはダンジョンについて教わるはずだろう?」

「お、教えてもらってます」

男性二人はヒト族なのか 耳や尻尾はないけれど、シューンとなっているのは目に見える。
猫娘はガクブルするだけで 槍男の後ろに隠れたまま謝罪もない。

「共和国には少ないが、わが国にはドワーフも多くいる。ドワーフは成人しても小柄な人が多い。それに対し 先ほどのような態度をすれば 本人に斬りかかられても文句は言えんぞ。
基本的に ダンジョン内での冒険者同士はあまり接触を好まない。もう少し勉強してから入るべきだな」

「「はいっ、申し訳ありませんでした」」

「……なにさ、子連れで入ってる自分達が悪いんじゃん。可愛いって褒めてあげてんのに」

本人は小声で言ったつもりなのだろう。
だけど聞こえてますよ?
ブスッとしながら ボソッと発した言葉に 私以外の人たちが静かにキレてます。
怒りの圧に男性二人は青白い顔になってるけど、本人は槍の男性の後ろに隠れてるつもりだから分かってない。

「水よ【ウォーター】」

一応詠唱っぽくね、呪文を忘れたから言えないって訳じゃないよ?覚えてないけど。
とりあえず水魔法を 猫娘の顔を包み込むように出してみた。

「ゴボッ、ゴボッ、ゴゴゴボボボ」

突然水中に放り込まれた感じになって、顔の水玉を掻きむしるように暴れてますが、息を止めないからゴボゴボしてます。
男性も気付いて介抱しようとしたところで魔法を解除してあげました。

「ゲホッ、ガホッ、オエッ……はぁはぁはぁ。
ちょっ、ちょっと、なんなのよ!殺す気なの?どういうつもりよ!」

ゴボゴボ言ってただけあって ちょっと水を飲んだのかな?けど 水魔法の水だから そのうち消えるのにね。息も絶え絶えに 怒りの表情でこちらを睨みつけてくるんだけど、頭大丈夫?

「力のない子供だと侮られているのかなって思ったので 使える魔法を見せてみました。
本当にただの子供をダンジョンに連れてくるはずがないじゃないですか。
そんな事も分からない(阿呆な)人に お仕置きです。
いきなり知らない人が 両手を広げて襲ってこようとしたので、自己防衛をした。という言い訳もできそうですよね?」

ニッコリ微笑みながら言ってみるの巻。
猫娘さんは口をパクパクさせながら 何かを言いたそうだけど 言葉にならないのかな?
【サイレント】はかけてないよ?
男性二人はもう一度謝罪をして 猫娘を俵抱きにしたまま小部屋に戻って行きました。


「さて、あの人たち 流石にこの後すぐに出てくることはないよね。
だったら この階にいても休憩できる部屋もないし、上に行っちゃいますか」

クルリと振り返って言ってみれば、テーアさんも お父さんも タディさんも 口を押さえながら肩を震わせている。ガルスさんは困った顔しているし、ケーテさんは驚いた顔だ。

「みんなどうしたの?」

「ヴィオ、まさか 貴女が報復するなんて思わなかったわ」

ケーテさん、報復って程の事はしていないですよ? ちょっとしたお仕置きです。余計な事は言うなよっていう意味です。

「前回は仲間が止めてくれておったしな」

「あぁ、二回目なのか。どうりでヴィオが全く動じてない筈だな」

「ええ、あの啖呵は 良いわ。あの子 二度と小さな子供が居ても 近づかなくなるでしょうしね」

大人たちはクツクツ笑いながら よくやったと褒めてくれました。
ガルスさん的には 水魔法での窒息は恐怖だろうなと思ったのだそうです。

「う~ん、他のだと怪我しちゃいそうだしね。
土だと完全に窒息するし 表情見えないからナシだし、風だと 切り傷で済めばいいね、って感じだからナシだし、火だって火傷するでしょう?」

そう言ったら ガルスさんに「そういう奴が近づいてこないように 俺ももう少し周囲を警戒しておくね」と言われてしまった。何故だ?

パニックルームは残念だけど、多分あの人たちが進む人でも 戻る人でも、しばらくは動かないだろうから 無視して13階に上がってきました。
そしてこの階は魔獣が沢山いるので、あの人たちが先行パーティーで間違いなさそうです。

「この階の魔獣を全部倒したら あの人たちが楽に進めちゃうわね」

ケーテさんもちょっと怒ってたのかな?
確かに 全部を一掃してあげれば リポップまでの時間 魔獣ゼロで安全に進めるね。
けど それは非常に虚しいダンジョン攻略になりそうではないかな。
ノハシムの時、採掘の音に釣られて 魔獣が居なかったせいで ほとんどの階層を素通りしたのは 中々つまらなかったもの。

「全くいないのは 確かにそうかもしれないけど、それをつまらないと思う冒険者は少ないと思うわ」

そうですか?
ケーテさんは 他の罠があるのかな?って疑うけど、基本的にはラッキーと思うのだそうです。
まあ人それぞれってことですね。

明日この階で再会するのも嫌なので、ある程度この階の魔獣を討伐して、お昼休憩をしたら 14階で野営をすることにしたよ。
この階にパニックルームが無かったのも 上に行く理由だと思うけどね。
まずは 向かってくる狼と蝙蝠を片付けちゃいますかね。
しおりを挟む
感想 109

あなたにおすすめの小説

私を裏切った夫が、後悔しているようですが知りません

藤原遊
恋愛
政略結婚として、公爵家に嫁いだ私は 愛のない夫婦関係を「仕事」だと思い、正妻の役目を果たしてきた。 夫が愛人を持つことも、 その子を屋敷に迎え入れることも、黙って受け入れてきた。 けれど―― 跡取りを、正妻の子ではなく愛人の子にする。 その言葉を、人前で軽く口にした瞬間。 私は悟ったのだ。 この家では、息子を守れないと。 元々、実家との間には 「嫡子以外の子は実家の跡取りにする」という取り決めがあった。 ならば話は簡単だ。 役目を終えた私は、離縁を選ぶ。 息子と共に、この家を去るだけ。 後悔しているようですが―― もう、私の知るところではありません。

【書籍化決定】アシュリーの願いごと

ましろ
恋愛
「まあ、本当に?」 もしかして。そう思うことはありました。 でも、まさか本当だっただなんて。 「…それならもう我慢する必要は無いわね?」 嫁いでから6年。まるで修道女が神に使えるが如くこの家に尽くしてきました。 すべては家の為であり、夫の為であり、義母の為でありました。 愛する息子すら後継者として育てるからと産まれてすぐにとりあげられてしまいました。 「でも、もう変わらなくてはね」 この事を知ったからにはもう何も我慢するつもりはありません。 だって。私には願いがあるのだから。 ✻基本ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。 ✻1/19、タグを2つ追加しました ✻1/27、短編から長編に変更しました ✻2/2、タグを変更しました

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~

ふわふわ
恋愛
「お姉様の婚約者、私がいただきますわ。だって“公爵令嬢”ですもの」 義理の妹コンキュはそう言って、王太子との婚約を奪いました。 父はそれを容認し、私は静かに受け入れます。 けれど―― 公爵令嬢とは“地位”ではなく、“責任”の継承者。 王宮で礼儀も実務も拒み、「未来の王太子妃」を名乗った義妹は、わずか三日で婚約破棄。 さらに王家への不敬と統治能力の欠如が問題視され、父の監督責任が問われます。 そして下されたのは――家ごとの褫奪。 一方で私は、領地を守り、帳簿を整え、静かに家を支え続ける。 欲しがったのは肩書。 継いだのは責任。 正統は叫びません。 ただ、残るだけ。 これは、婚約を奪われた公爵令嬢が “本当に継がれるべきもの”を証明する物語。

【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。

みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」 魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。 ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。 あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で一人の騎士と運命的な出会いをする。 【2024年3月16日完結、全58話】

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので

モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。 貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。 ──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。 ……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!? 公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。 (『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)

恋は、母をやめてから始まる――正体を隠したまま、仮の婚約者になりました

あい
恋愛
両親を失ったあの日、 赤子の弟を抱いて家を出た少女がいた。 それが、アリア。 世間からは「若い母」と呼ばれながらも、 彼女は否定しなかった。 十六年間、弟を守るためだけに生きてきたから。 恋も未来も、すべて後回し。 けれど弟は成長し、ついに巣立つ。 「今度は、自分の人生を生きて」 その一言が、 止まっていた時間を動かした。 役目を終えた夜。 アリアは初めて、自分のために扉を開く。 向かった先は、婚姻仲介所。 愛を求めたわけではない。 ただ、このまま立ち止まりたくなかった。 ――けれどその名前は、 結婚を急かされていた若き当主のもとへと届く。 これは、 十六年“母”だった女性が、 もう一度“ひとりの女”として歩き出す物語。

処理中です...