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閑話
〈閑話〉メネクセス王国 23
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銀ランク上級〔土竜の盾〕リーダー テリュー視点
「で、あんたがあの時 薬局の美人親子襲撃事件に巻き込まれたって聞いてんだけど、その後の娘の事何か知ってる?」
「…………」
「巻き込まれって聞いてたけど、あなた魔法使いよね? さっきから魔力で何しようとしてるの?闇魔法だよね、それ」
「!?」
「闇魔法ね……。って事は巻き込まれた一般人じゃなく 暗殺者仲間確定って事で良いな?」
巻き込まれでケガを負った男は その後 教会に預けられて 治療を行われたことで回復、今は下働きである修道士として働いていると聞いて教会に来た。
だが 待合の応接室に到着した男を見て こいつは巻き込まれた住民などではなく 襲撃者側の人間だとすぐに分かった。
目つきが常人のそれとは違い過ぎた。
闇の世界に染まり切った奴だ。
俺たちはギルドの依頼で盗賊や山賊を相手にすることもある。そういった奴らは皆コイツと同じような濁った眼をしてた。
「俺は仲間に見捨てられただけだ。裏切者は逃げた」
俺たちが魔力視で確認していることが分かったらしく 大人しくなった。
ランクを聞けば銀の上級だという。俺たちと同じだというが 共和国出身だというし まともな依頼以外でランクを上げて来たんだろうと推察する。
あの国は 小さな国の集まりだから 元の国の方針が緩いと銀ランクまで簡単に上がることができるからな。まあ、結局その後 金ランクの壁に阻まれるわけだけど、俺たちみたいに貴族と関わりたくない組もいるから 銀の上級は有象無象の集まりとも言われてんだよな。
「お前が裏切られたかどうかはどうでもいい。あの母娘の娘の事を聞きたいの。何か知ってるなら言って」
「子爵に連れていかれた、養子にするつもりだって言ってた」
ダン!
「ひっ!」
「それは知ってる。その後の事を聞いてるの。お前はそれを知ってるのでしょう?
そのうち子爵を脅せるネタを持ってるからって 酒の席で漏らしたことがあるんでしょう?」
テーブルの上に出ていた男の手の指と指の間に 短剣が深々と刺さっている。
何の迷いもなくそこに短剣を突き刺したネリアは 真顔のまま 質問を続けている。怪我をしても回復するからって事なんだろうけど、知らない相手からしたら恐怖しかないだろうな。
2本目の短剣を腰のマジックバッグから取り出したところで 男が震えながら話し出す。
「あ、あの日 貴族が連れて行ったあとをつけた。下働きとしてあの屋敷に潜り込めば 魔道具を奪えると思って」
「魔道具?」
「ああ、あの娘が持ってたマジックバッグだ。容量によるがマジックバッグは金になる。
仲間に裏切られて 金も名誉も無くなった。だからせめて金目の物を探しに行ったが店は既に荒らされた後だったからな」
だからマジックバッグを持っているヴィオをつけた。
全部本当のことを言っているとは思えないけど、嘘でもないんだろう。まあそれは良い。
視線で続きを促せばごくりと生唾を飲み込み続ける。
「あの日に何があったのかは流石に分からねえけど、あの娘が殺されて運び出されるのは見た」
「は?」「なに?」
「なんですって!?ヴィオが殺されたっていうの? ちょっと ハッキリ言いなさい。どういうこと、見間違いではないの?」
男の言葉に激高したのはネリアだ。男の襟を掴み上げて ガクガクとしているけど 机に乗り上げているから 短剣が男の手に深く刺さっている。
「あがががががが」
「なに言ってんのか分かんないわよ!ヴィオはどうしたの!」
「ネリア、ネリアちょっと待て、剣が刺さってるから」
ネリアを男から引きはがし とりあえず回復薬をぶっかけてやる。
「な、な、お前ら いかれてるぞ。こんなの尋問じゃねえか。俺が何し……んぐっ」
「うるさい、暗殺者ギルドに関わりがあるやつが何言ってんの?」
シエナが両頬を掴み 男の顔を引き上げる。うまく喋れないのと 指が頬にめり込むくらいになってるから痛いのだろう。
「シエナ、まずは話を聞こう。
それから お前さんが闇ギルドと関わりがあるってのは 既にギルドの照会で分かってる。
ちょっとそれを調べるのに時間がかかったけど この国にいる間はギルドがねえからバレねえと思ったかもしれないけどな、共和国ではお前ら指名手配されてっから。
俺らはお前を捉まえて引き渡せば この聞き取り調査も問題なしって事だな。
だが俺たちはヴィオの事を探している。お前のことは二の次だ、だから分かってることを話した方がいいと思うぞ」
元々アイリスが襲撃された事に対して調べは入っていた。
まあ貴族が直接かかわっていないかどうかという 自分たちの身の潔白を知らせるためのものだったのは腹立たしいが、その中で隣町の破落戸以外に 共和国出身の冒険者が関わっていたことが分かった。
メネクセス王国のギルド所属の冒険者もいたが 素行が悪く 国内のいたるところで問題を起こしていた奴らだとすぐに分かった。
国内で依頼が受けれないから国外へと思ったのか それは分からない。
で、もう一組が共和国出身のこいつらだ。
国を跨いでいるから調べるのに時間がかかったが 獣人の子供、貴族の子供、聖属性もちの誘拐事件に関わっていた可能性が高く 引っ張る予定が国外に逃げられて探していた。という情報がヘイジョーから来たって訳だ。
そのパーティーの主要人物だったのか、置いて行かれたくらいだから下っ端だったのか、だけど実際に会った感じだと 多分こいつは主要人物の方だと思う。
闇属性をこれだけスムーズに使える奴が 下っ端でいる筈がないしな。
という事は それでも置いて行かれたという事は 余程人望が無かったか、逃げたやつらが下っ端で 嫌気がさしたかだな。
ちなみに指名手配されている奴は4人、クズ、ゲドゥ、ジミン、ディス。クズとジミンはギルドタグがあった事で死亡した破落戸の中にいたことは判明している。
「という事で お前はディスかゲドゥのどっちだ?この町で名乗ってるのは偽名なんだろ?」
まあそういう訳で こいつは皇国から出たら いつでもギルドに引っ張れる状況な訳だ。
それが分かったらしく 大人しく座り込んだ。
「馬車に乗ってたのは あの屋敷の執事だ。ブチブチ文句を言いながら『ごみ処理は自分の仕事じゃない、この町だと顔がバレるから ロッサ村にいく』って言いながら荷台に子供を放り込んでたんだ」
「で?お前はロッサ村に行ったんだろ?」
ビクッとするけど 気付かない筈がないだろう 舐めてるのか?
マジックバッグを狙っているなら死体からの方が奪い取りやすいんだからな。
アイリスのマジックバッグは一見するとただのズタ袋だ。敢えてそうした方が狙われないと言っていた。それを持ってたなら 貴族は気付きもしなかっだろうし そのまま捨てた筈だ。
「いなかったんだ」
「は?」
「馬車の後を追って 隣町に行ったけど、俺が付いた時には 子供はいなかった。
捨てなかったとは思わない。戻ってくる馬車にすれ違った時 子供が入ってなかったのを確認したしな。
だけど、多分捨てられたはずのゴミ場には いなかった。ただ……」
言い淀む男は 両サイドからの冷たい視線に 視線を落としたままぼそりと呟く
「多分死んでなかったんだと思う。まだ村人も起き出す前だったのに ゴミ場から川まで点々とゴミが落ちてたんだ。
だから 川に向かったんだろうと思ってる。この国は魔魚もいないけどあの水量だ。深さも結構あるしな、結構探したけど結局見つからなかった。多分溺れて死んだんだろう、勿体ないことをした」
子爵には 娘は生きていて お前たちに復讐しようとしているとでも脅すつもりだったらしい。
話を聞き終えたことで (推定)ゲドゥに回復魔法をかけ クリーンで服についた血液も綺麗にしてやる。これで無茶な尋問をされたなどと誰も信じないだろう。
とりあえず男との話が済んだことで 教会から出る。
ここからでもよく見えるレミスドーレ山脈を見つめてしまう。
「ロッサ村は私の実家のあった町。あの川は山脈から流れてきていると思われてるけど違う。
皇国にある山が水源で リズモーニに流れてる。他の町の皆は気付いてないけど 川の流れている幅だけ山に穴があるの」
「それって、じゃあ」
「シエナ、山を越えたら結界は無くなる。川には魔魚もいるんだ。溺れてなくても魔魚にやられる可能性が高いだろう」
ネリアの情報に シエナの表情が明るくなるが それは期待できないだろう。
あの山近くにあるプレーサマ領地は 凶悪な魔魚が多い。特に風の季節は稼ぎ時とばかりに冒険者が集まるレベルの 魔法を使う魔魚までいる魔境だ。
俺だって 生きてプレーサマに流れ着いてくれてたらと思うけど……。
「ううん、可能性はなくないと思う。こないだ話したでしょう、アイリスの魔道具の事。
あの時 ネックレスだけじゃなくて 色変えの魔道具のことも話してたの。
自分の珍しい髪色が目印になる可能性があるから 国外に出るまでは 敢えてそのままにしておくけど、出た後は色を変えるつもりだって。
ヴィオの場合は目もフィルとお揃いでしょ?だから両方変えれるようにって。
見せてもらった魔法陣は複雑すぎて意味わかんなかったけど、ヴィオの護りにもなるようにとっておきを込めたって言ってたの」
「ネックレスは目立つから 奪われる可能性を考えてたのかもね」
「うん、そう思う。イヤーカフ型にしておけば 髪を下ろしてたら分からないだろうって言ってた」
「とっておきってどんな?」
「うん、ヴィオの身に危険が迫った時、特にネックレスの時みたいに自分で発動できないような状況に陥った時に聖結界をヴィオに纏わせるってものだったわ。
発動したら一定時間結界に護られる分 色変えは解けちゃうけど生死にかかわるならしょうがないよねって。だから」
「ああ、もしそれが発動してたら 無事リズモーニに到着してるかもしれないな」
アイリスのとんでも魔道具だから十分にあり得そうだ。
もしそうであれば リズモーニに行けば分かる。可能性が高いなら 魔境村サマニアにいるかもしれねえ。
「とりあえず あいつらにも教えてやらねえとな。
ネンシーに戻って、エクロヤに行ってから リズモーニ入り、そっからだと 早くても火の季節か」
それこそ山越えできれば手っ取り早いが 命がいくつあっても足りねえからな。
伝令係をしてくれた皆にも早く伝えてやりたいし、よし、メネクセスに一旦帰ろう!
ヴィオ、お前が生きてると信じてる。待ってろよ!
「で、あんたがあの時 薬局の美人親子襲撃事件に巻き込まれたって聞いてんだけど、その後の娘の事何か知ってる?」
「…………」
「巻き込まれって聞いてたけど、あなた魔法使いよね? さっきから魔力で何しようとしてるの?闇魔法だよね、それ」
「!?」
「闇魔法ね……。って事は巻き込まれた一般人じゃなく 暗殺者仲間確定って事で良いな?」
巻き込まれでケガを負った男は その後 教会に預けられて 治療を行われたことで回復、今は下働きである修道士として働いていると聞いて教会に来た。
だが 待合の応接室に到着した男を見て こいつは巻き込まれた住民などではなく 襲撃者側の人間だとすぐに分かった。
目つきが常人のそれとは違い過ぎた。
闇の世界に染まり切った奴だ。
俺たちはギルドの依頼で盗賊や山賊を相手にすることもある。そういった奴らは皆コイツと同じような濁った眼をしてた。
「俺は仲間に見捨てられただけだ。裏切者は逃げた」
俺たちが魔力視で確認していることが分かったらしく 大人しくなった。
ランクを聞けば銀の上級だという。俺たちと同じだというが 共和国出身だというし まともな依頼以外でランクを上げて来たんだろうと推察する。
あの国は 小さな国の集まりだから 元の国の方針が緩いと銀ランクまで簡単に上がることができるからな。まあ、結局その後 金ランクの壁に阻まれるわけだけど、俺たちみたいに貴族と関わりたくない組もいるから 銀の上級は有象無象の集まりとも言われてんだよな。
「お前が裏切られたかどうかはどうでもいい。あの母娘の娘の事を聞きたいの。何か知ってるなら言って」
「子爵に連れていかれた、養子にするつもりだって言ってた」
ダン!
「ひっ!」
「それは知ってる。その後の事を聞いてるの。お前はそれを知ってるのでしょう?
そのうち子爵を脅せるネタを持ってるからって 酒の席で漏らしたことがあるんでしょう?」
テーブルの上に出ていた男の手の指と指の間に 短剣が深々と刺さっている。
何の迷いもなくそこに短剣を突き刺したネリアは 真顔のまま 質問を続けている。怪我をしても回復するからって事なんだろうけど、知らない相手からしたら恐怖しかないだろうな。
2本目の短剣を腰のマジックバッグから取り出したところで 男が震えながら話し出す。
「あ、あの日 貴族が連れて行ったあとをつけた。下働きとしてあの屋敷に潜り込めば 魔道具を奪えると思って」
「魔道具?」
「ああ、あの娘が持ってたマジックバッグだ。容量によるがマジックバッグは金になる。
仲間に裏切られて 金も名誉も無くなった。だからせめて金目の物を探しに行ったが店は既に荒らされた後だったからな」
だからマジックバッグを持っているヴィオをつけた。
全部本当のことを言っているとは思えないけど、嘘でもないんだろう。まあそれは良い。
視線で続きを促せばごくりと生唾を飲み込み続ける。
「あの日に何があったのかは流石に分からねえけど、あの娘が殺されて運び出されるのは見た」
「は?」「なに?」
「なんですって!?ヴィオが殺されたっていうの? ちょっと ハッキリ言いなさい。どういうこと、見間違いではないの?」
男の言葉に激高したのはネリアだ。男の襟を掴み上げて ガクガクとしているけど 机に乗り上げているから 短剣が男の手に深く刺さっている。
「あがががががが」
「なに言ってんのか分かんないわよ!ヴィオはどうしたの!」
「ネリア、ネリアちょっと待て、剣が刺さってるから」
ネリアを男から引きはがし とりあえず回復薬をぶっかけてやる。
「な、な、お前ら いかれてるぞ。こんなの尋問じゃねえか。俺が何し……んぐっ」
「うるさい、暗殺者ギルドに関わりがあるやつが何言ってんの?」
シエナが両頬を掴み 男の顔を引き上げる。うまく喋れないのと 指が頬にめり込むくらいになってるから痛いのだろう。
「シエナ、まずは話を聞こう。
それから お前さんが闇ギルドと関わりがあるってのは 既にギルドの照会で分かってる。
ちょっとそれを調べるのに時間がかかったけど この国にいる間はギルドがねえからバレねえと思ったかもしれないけどな、共和国ではお前ら指名手配されてっから。
俺らはお前を捉まえて引き渡せば この聞き取り調査も問題なしって事だな。
だが俺たちはヴィオの事を探している。お前のことは二の次だ、だから分かってることを話した方がいいと思うぞ」
元々アイリスが襲撃された事に対して調べは入っていた。
まあ貴族が直接かかわっていないかどうかという 自分たちの身の潔白を知らせるためのものだったのは腹立たしいが、その中で隣町の破落戸以外に 共和国出身の冒険者が関わっていたことが分かった。
メネクセス王国のギルド所属の冒険者もいたが 素行が悪く 国内のいたるところで問題を起こしていた奴らだとすぐに分かった。
国内で依頼が受けれないから国外へと思ったのか それは分からない。
で、もう一組が共和国出身のこいつらだ。
国を跨いでいるから調べるのに時間がかかったが 獣人の子供、貴族の子供、聖属性もちの誘拐事件に関わっていた可能性が高く 引っ張る予定が国外に逃げられて探していた。という情報がヘイジョーから来たって訳だ。
そのパーティーの主要人物だったのか、置いて行かれたくらいだから下っ端だったのか、だけど実際に会った感じだと 多分こいつは主要人物の方だと思う。
闇属性をこれだけスムーズに使える奴が 下っ端でいる筈がないしな。
という事は それでも置いて行かれたという事は 余程人望が無かったか、逃げたやつらが下っ端で 嫌気がさしたかだな。
ちなみに指名手配されている奴は4人、クズ、ゲドゥ、ジミン、ディス。クズとジミンはギルドタグがあった事で死亡した破落戸の中にいたことは判明している。
「という事で お前はディスかゲドゥのどっちだ?この町で名乗ってるのは偽名なんだろ?」
まあそういう訳で こいつは皇国から出たら いつでもギルドに引っ張れる状況な訳だ。
それが分かったらしく 大人しく座り込んだ。
「馬車に乗ってたのは あの屋敷の執事だ。ブチブチ文句を言いながら『ごみ処理は自分の仕事じゃない、この町だと顔がバレるから ロッサ村にいく』って言いながら荷台に子供を放り込んでたんだ」
「で?お前はロッサ村に行ったんだろ?」
ビクッとするけど 気付かない筈がないだろう 舐めてるのか?
マジックバッグを狙っているなら死体からの方が奪い取りやすいんだからな。
アイリスのマジックバッグは一見するとただのズタ袋だ。敢えてそうした方が狙われないと言っていた。それを持ってたなら 貴族は気付きもしなかっだろうし そのまま捨てた筈だ。
「いなかったんだ」
「は?」
「馬車の後を追って 隣町に行ったけど、俺が付いた時には 子供はいなかった。
捨てなかったとは思わない。戻ってくる馬車にすれ違った時 子供が入ってなかったのを確認したしな。
だけど、多分捨てられたはずのゴミ場には いなかった。ただ……」
言い淀む男は 両サイドからの冷たい視線に 視線を落としたままぼそりと呟く
「多分死んでなかったんだと思う。まだ村人も起き出す前だったのに ゴミ場から川まで点々とゴミが落ちてたんだ。
だから 川に向かったんだろうと思ってる。この国は魔魚もいないけどあの水量だ。深さも結構あるしな、結構探したけど結局見つからなかった。多分溺れて死んだんだろう、勿体ないことをした」
子爵には 娘は生きていて お前たちに復讐しようとしているとでも脅すつもりだったらしい。
話を聞き終えたことで (推定)ゲドゥに回復魔法をかけ クリーンで服についた血液も綺麗にしてやる。これで無茶な尋問をされたなどと誰も信じないだろう。
とりあえず男との話が済んだことで 教会から出る。
ここからでもよく見えるレミスドーレ山脈を見つめてしまう。
「ロッサ村は私の実家のあった町。あの川は山脈から流れてきていると思われてるけど違う。
皇国にある山が水源で リズモーニに流れてる。他の町の皆は気付いてないけど 川の流れている幅だけ山に穴があるの」
「それって、じゃあ」
「シエナ、山を越えたら結界は無くなる。川には魔魚もいるんだ。溺れてなくても魔魚にやられる可能性が高いだろう」
ネリアの情報に シエナの表情が明るくなるが それは期待できないだろう。
あの山近くにあるプレーサマ領地は 凶悪な魔魚が多い。特に風の季節は稼ぎ時とばかりに冒険者が集まるレベルの 魔法を使う魔魚までいる魔境だ。
俺だって 生きてプレーサマに流れ着いてくれてたらと思うけど……。
「ううん、可能性はなくないと思う。こないだ話したでしょう、アイリスの魔道具の事。
あの時 ネックレスだけじゃなくて 色変えの魔道具のことも話してたの。
自分の珍しい髪色が目印になる可能性があるから 国外に出るまでは 敢えてそのままにしておくけど、出た後は色を変えるつもりだって。
ヴィオの場合は目もフィルとお揃いでしょ?だから両方変えれるようにって。
見せてもらった魔法陣は複雑すぎて意味わかんなかったけど、ヴィオの護りにもなるようにとっておきを込めたって言ってたの」
「ネックレスは目立つから 奪われる可能性を考えてたのかもね」
「うん、そう思う。イヤーカフ型にしておけば 髪を下ろしてたら分からないだろうって言ってた」
「とっておきってどんな?」
「うん、ヴィオの身に危険が迫った時、特にネックレスの時みたいに自分で発動できないような状況に陥った時に聖結界をヴィオに纏わせるってものだったわ。
発動したら一定時間結界に護られる分 色変えは解けちゃうけど生死にかかわるならしょうがないよねって。だから」
「ああ、もしそれが発動してたら 無事リズモーニに到着してるかもしれないな」
アイリスのとんでも魔道具だから十分にあり得そうだ。
もしそうであれば リズモーニに行けば分かる。可能性が高いなら 魔境村サマニアにいるかもしれねえ。
「とりあえず あいつらにも教えてやらねえとな。
ネンシーに戻って、エクロヤに行ってから リズモーニ入り、そっからだと 早くても火の季節か」
それこそ山越えできれば手っ取り早いが 命がいくつあっても足りねえからな。
伝令係をしてくれた皆にも早く伝えてやりたいし、よし、メネクセスに一旦帰ろう!
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