ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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魔導学園へ

第247話 お屋敷での日々 その2

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翌日から ブン先生によるお勉強会が始まった。
とはいえ 魔法を実際に使うというよりは理論の勉強といった方がいいだろう。
図書館で本を読み、分からない内容をブン先生が補足してくれるという感じだね。

ダンジョン生活をしていた私たち親子の朝は早い。
ダンジョン時間程の早さではないものの、朝の6時前には目覚めてしまう。お父さんはもっと早いと思うけど。
明日からは図書館で借りた本を読む時間にするつもりだけど、1日目はすることが無かったので お着替えしてストレッチ、地下訓練場でランニングを二人でやってたら エミリンさんが朝食のお迎えに来たって感じだった。

ドゥーア先生が学園に行くのを玄関で見送って、2階の図書館で2時間ほど座学。
お父さんは屋敷の騎士さん達(兵士じゃなくて騎士だった)とお庭にある訓練場で一緒に訓練をするらしい。
現役の冒険者と一緒に訓練してみたいという人たちの希望を叶えつつ、お父さんも対人戦の訓練になると笑ってた。

2時間の座学が終われば 私も訓練場へ、体力作りも必須だからね。
既に死屍累々という感じの騎士さん達だけど ブン先生からは 昼食休憩前に回復するだけで良いと言われているので まだそのまま訓練は続くようだ。

「嬢ちゃんの父さんは凄いね、私たちの誰もが全く歯が立たなかったよ。
冒険者だからと 少し舐めていた若い奴らも 反省したようだ」

ブン先生と一緒に訓練場へ入ったら 騎士さん達のまとめ役だというロイドさんから声をかけられた。
ロイドさんはサマニア村を含めたプレーサマの辺境北部を治めるフィルブ伯爵の親戚らしい。
小さい頃には アンナープのダンジョンにもダンジョン体験で訪れていたらしい。
それもあって サマニア村出身のお父さんに 騎士達との手合わせをお願いしたらしい。

辺境をただの田舎と思っていた騎士たちは お父さんを舐めてかかっていたらしく、コテンパンにされてあそこに転がっているんだって。
銀ランクの上級ってだけで舐めてかからない方がいいのに……、と思ってから ダンジョンで会った変な3人も、馬車で偉そうにしてた人たちも、スチーラーズ達も銀の上級だったと思い出して仕方がないのか?と思いなおす。
いや、でもお父さんってば 強者感あるじゃない?騎士ならそれを見抜かないと。

「アルク様は ヴィオ嬢と一緒にいらっしゃるときは お優しいお父さんという感じが前面に出ていますからね。失礼ですが 冒険者によく感じる様な恐怖感は全く感じませんでしたよ」

ブン先生に言われて 確かに一緒にいる時のお父さんは 優しい森のくまさんである。
ふむ、それなら舐めてかかったのも仕方ない?

「種族特性か あまり油断を誘えたことはなかったんじゃがな、ヴィオのお陰で新しい技を身に付けれたようじゃな」

嬉しそうにお父さんがそんな事言うから、まあ 舐めてかかったのも仕方がなかったのだと納得した。

「それで、嬢ちゃんも訓練するのかい? 木剣とかも用意はあるが、その小ささじゃちょっと持てそうにないと思うんだが……」

「隊長さん、私はいつもギルドの訓練場でも 武器は使わないので大丈夫です」

ギルド地下にある武器も私は使えないからね、いつでも武術訓練だけなのだ。

「ははっ、流石冒険者親子なんだね。
では 嬢ちゃんがどれくらいできるのか 確認させてもらってもいいかい? もし我々の騎士隊の訓練について来れそうだと判断したら 嬢ちゃんも一緒に 手合わせのメンバーに入ってもらおう」

なんと! ガキが来る場所じゃないと言われるかと思いきや、まさかの内容次第では参加許可をもらえるんですか?
流石ドゥーア先生のお屋敷の皆さん、かなり柔軟な性格をなさっているようです。

「お父さんも一緒にするの?」

「そうじゃな、皆の体力が戻ったらというところじゃろうか。まずはヴィオの手合わせを見てからじゃな」

確かに、お父さんとやり合った人たちは 水分補給で復活している人もいるけど、まだ大の字になったままの人もいる。まだ当分復活できないだろう。

「じゃあ 嬢ちゃんは 誰とやるか……」

「そんな小さな子供とやるのは無理ですよ」
「どこまで手加減していいのか調整が難しすぎます」
「うちの娘と変わらない子に手をあげるなんて無理です」

起きている騎士達からザワザワと声が上がる。まあ冒険者装備を着ているとはいえ 6歳女児の私だ。
しかも色変えを外しているから お団子に纏めてもらっているけど ピンクの髪は可愛らしさを際立たせる。戦えるとは思えないのだろう。

「確かに 俺でもちょっと 相手をするのは怖いと思うな……」

隊長さんまでそんな事を言うけど、ブン先生はちょっと笑ってる。

「確かにヴィオの見た目は戦えそうに見えんからなぁ。
そうじゃな、そしたら儂と娘で手合わせをしよう。それを見た上で 決めてもらえばええ。
そういえば隊長さん、この場所は 覗き見ようとしたら出来るっちゅうことじゃったか?」

「ああ……そうだな。ではここからは地下訓練場に移動する。
まだ伸びている奴らはそのままでいい。今後 嬢ちゃん達との手合わせをする可能性がある、もしくはアルク殿との手合わせを希望するものは地階へ移動だ」

地上の訓練場は 別のお屋敷の屋上とかから見ようと思えば見えるという。隠している訳じゃないしね。
という事で 私の訓練風景は見せないようにするために 地階に移動することになりました。
思った以上についてくる騎士さんが多いのは、それだけお父さんとの訓練を希望する人たちが多いという事だろう。

「ヴィオと手合わせするのは久しぶりじゃな」

「そうだね、ギルドでも お姉さんたちが参加するからできなかったもんね」

実際お父さんとの対戦はかなり久しぶりだ。一緒に訓練場には行くけど 人が多いとくじ引きで相手を決めたりしてたからね。
お父さんは素手で、私は魔力無しの鞭の使用が許可された。魔法は身体強化と結界のみ。攻撃魔法は殺傷能力が増し増しになってるから禁止です。

「あのベルトは武器だったのか」
「冒険者の娘って言っても まだ6歳でしょう? 銅ランクでしたっけ。
学園の生徒は大体銅ランクでしたよね?」
「いや、そう考えたら あの年齢の生徒たちと6歳の少女が同じランクって 相当って事じゃないか?」

ザワザワしている声が環境音のように遠くなっていく。
隊長さんが 「はじめ!」と合図をしてくれたらスタートだ。

まずは鞭で左足を狙い 振り抜きながら後ろに回りこむ。
足に鞭が絡む前に 膝を軽く曲げられて 巻き付くことを防がれる。
だけど後ろに回り込んだところで お父さんは軽くしゃがんでいる状態なので 右足の膝裏に掌底を中てる。

「おぉ」

ちょっとよろついたと思ったけど 直ぐに立て直すお父さん。なんで~~~~!?
鞭があるのは邪魔になるからベルトに戻して 武術だけで行くことにする。
お互いに見合った状態で お父さんがニヤリと笑う。

「さっきのは効いたぞ。強くなったな」

よろけただけじゃん。
でも前はよろけることすらなかったから うん強くなったんだろう。
お父さんが完全に受けてくれるつもりになったようで、四股を踏むように 腰を落として両手を構えてくれたのでそこに飛び込んでいく。
右パンチ、左パンチ、裏拳も打ち込み、左キック、右キックを連続で繰り出しても バシンバシンとお父さんの掌で受け止められる。

ボクシングの練習で コーチがやってるみたいなあれ、ミット打ちっていうんだっけ?
お父さんは素手だけど そんな感じです。
時々入れる回し飛び蹴りの時は 二の腕で受け止める感じ。
続けていると段々楽しくなってきて お父さんからも「右、左、右、右、左、右、左」なんて指示も出るから 言われたように殴って蹴ってを続ける。

どれくらい続けたか分からないけど 「終わり、終わりでーす!」という声が聞こえてきたので 終了した。
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