ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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魔導学園へ

第270話 あの二人との再会

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サブマスからのお手紙が届いて5日後、ついにギルマスとサブマスが首都に到着した。
お手紙ではなく 本人が直接お屋敷に訪ねてくるとは思わなかったけど、4か月ぶりの再会は嬉しいものです。

「おう 久しぶりだな。元気そうで何よりだ」

午後の授業の最中に お客様が来たとメイドさんに呼ばれ ブン先生たちと一緒に応接室に入ったら ギルマスとサブマス、お父さんが揃ってた。

「ギルマスさん、サブマスさん、久しぶりです。って到着は 明日じゃなかったんでしたっけ?」

「ヴィオさん久しぶりですね。活躍していると聞いてますよ。
明日から会議ですからね、もう少し早く来たかったのですが、王都までの道は人通りが多すぎて あまりスピードが出せませんでした」

一応ここは貴族の屋敷なんだけど 二人ともリラックスしている様子、流石元貴族って事なんだろうか。
いや、そういえば二人ともドゥーア先生の教え子だって言ってたね。学生時代から来たことがあったのかもだね。
エミリンさんとメイドさんは お茶とお茶菓子を提供した後お部屋から出て行き ブン先生だけが残った。

「タディ達から手紙があってな、ハズレ素材の使い道が見つかったんだって?
あいつから プレーサマ辺境伯に連絡してくれって事だったけど 流石に自分が知らねえもんを紹介できねえからな、出来れば帰る途中の野営ででも その素材を使った料理を食わせてくれ」

ああ、醤油と味噌にごま油だね。
確かにあれは味わってもらわないと 信用が出来そうにないよね。

「ああ、その事なんだが、旦那様からも 是非あの食事と素材の活用方法を広げて欲しいと言われていてね、今回君たちがサマニア村に帰る時、うちの料理人を3名連れて行って欲しいんだ。
既にプレーサマ辺境伯には連絡をしているから あちらでも素材を集めてくれているはずだ。
まあ、大分半信半疑ではあったけどね」

おぉ、既に動き始めてくれてたのですね、流石です。
という事は調理方法を手紙で云々ではなく 直接領主にプレゼンしてくれるって事ですね?
お屋敷の料理人さん達も教えたレシピは覚えたし、今は新しいメニューを開発し始めているし 良いんじゃないでしょうか。

「既に関係が良好な領主には話をつけていてね、今回のギルド会議から戻る際に 数か所の領地へ出張させるつもりなんですよ。
しかし アルク殿、本当にあの料理のすべて、レシピ登録をなさらないでよろしいのでしょうか」

「ああ、あのレシピは全部ヴィオが考えたもんじゃしな、あれだけのレシピを登録してしまえば 必ず調べようとする奴らが出てくるじゃろう?
そんな面倒は本人も儂も願っておらんし、本人がそれでええと言うしな」

「うん、色んな人が美味しい料理を作って、どこに行ってもそれが食べれるようになるのが嬉しい。
料理は嫌いじゃないし ダンジョンでは自分で作りたいけど、お外では人が作った料理が食べたいもん」

一人二人分を作るのは楽しいし お父さんたちは必ず感想を言ってくれるから作り甲斐もある。
だけどこれが当り前になるのは嫌だし、家事だと思えば一気に楽しさが半減する。
日本人な訳ではないから 毎日味噌汁が飲みたい!とか思わないけど 選べるなら嬉しいよね。

「くっくっく、相変わらずですねぇ。流石ヴィオさんです。
さて、ドゥーア先生のお屋敷では1月程お過ごしになったのですよね?
どうでしたか、随分魔法は上達したのではないでしょうか」

ギルマスはちょっと呆れた顔で笑ってるし、サブマスはご機嫌です。
錬金術はやっと自分が書いた魔法陣で魔道具の作成をするところまで出来るようになったけど、まだまだ練習が必要だ。

初めて自分で作った魔道具は お父さんのために作った〈長寿のチャーム〉だ。

ダンジョンの壁画にあった林檎を持った 象のような動物が背中に人を乗せてる絵には 《不老の実、食べると心身が健康になる》みたいな意味のことが書いてあったんだよね。
象が神様なのか、その上の人がそうなのか、全く関係ないのかは分からないけど、アポの実が長寿の象徴だという事は分かったので、チャームのデザインは林檎にした。
渡した時は泣きながら抱きしめられたけど、今はギルドタグにつけてくれている。

「魔法は回復魔法を毎日皆にかけて練習させてもらったおかげで 大分早くできるようになりました。
後半はずっと魔道具作りの勉強だったから 進んだけど まだまだかな。
お父さんのつけてくれているのが はじめて作ったお守りです」

よく考えたら 他の魔法は初日に見せたっきりで練習はしていない。
魔力操作訓練で 水、風、土は使うけどそれくらい。
後はずっと魔法陣の勉強だったしね。お父さんの胸元を指させば お父さんも嬉しそうにギルドタグを引っ張り出して チャリっと揺れる林檎のチャームを見せてくれる。林檎と言えば赤だよね。って事でちょっとかわいいかもしれないけど 赤いリンゴです。

「愛娘が作ってくれた長寿のお守りじゃ」

「え?おま、は? 魔法の練習じゃねえの? 魔道具?」

「回復魔法が毎日使えたという事は 騎士の皆さんが協力してくれたのでしょうか。
それにしても 魔道具ですか……。あれは魔法陣が必要でしたよね? かなり難しいですし 覚えることも多かったのではないですか?」

「ああ、それについては私から説明しよう」

ギルマスは 「は?」のまま固まってるし、珍しくサブマスも驚いている。
で、ブン先生がなぜそうなったのかを説明してくれた。

「攻撃魔法では教えることはない……ですか。
確かに 私たちも沢山お伝えしましたが、そうですか 実践でも使ってくれていたのですね。
大抵の人は自分と相性の良い魔法が決まれば そればかりになってしまうものですが、素晴らしいですね」

いや、結構偏ってます。
風:水:土が殆どです。他も使うようにしよう、そうしよう。

「回復を屋敷のやつらが使えるようになった!? 聖属性持ちじゃなくってもってことですか?」

「ヴィオ嬢のお使いになっている回復魔法が通常の回復魔法とは違うと アスランから連絡があったと聞いています。君も見たのではないですか?」

「確かに見ましたけど、それでも俺は出来るとも思わなかったし 多分今だって出来ないですよ」

屋敷の皆が出来るようになったのは ドゥーア先生が丁寧に教えたからです。
そして切り傷以外もできるようになったのは お肉の解体をしたからだと思います。
なのでギルマスもできる筈ですよ。

「この度 我々が使えるようになった事で 来年以降には この回復魔法の使い方を発表する予定になっています。これはヴィオ嬢からも許可をもらっていますし、水生成魔法と同じ扱いとなるでしょう」

「スティーブン先生、それは 教会との確執が深まるのでは……?」

ブン先生の発言に 開いた口が塞がらなくなったギルマスと、ちょっと顔色が悪いサブマス、そしてちょっと悪い顔したブン先生。

「ふふっ、良いではないですか。
寄付を多くした貴族だけが優先して回復魔法を受けることができるなんておかしな状況をやっと打破することができるのです。
もしそれで文句を言ってくるのであれば 神国か皇国にお帰り頂けばいいのです。
洗礼式だって 属性を調べるだけなら冒険者ギルドで出来ますしね」

あ~、ギルドでってのは私が言ったことがある内容ですね。
ギルマスがジトっとした目で見てくるけど、だって聖属性持ちだと神殿に囲われちゃうかもなんだよ?だったら自己防衛できるように先に知っておくのも手じゃない?

「あの儀式がしたいのであれば 教会が無くとも 真似事くらい出来る者はいるでしょう。
金を無心し 多くの寄付金を納めることが神への信心だなどという奴らのせいで神学の研究も進みませんしね。
確執が出来たら 少しは態度が軟化するかもしれませんよ」

あ~、そっちが本音ですね。
壁画の文字のせいで 古代文字が2種類ある?ってなったもんね。
神を記している(魔法陣に刻む)文字は神代文字と呼ぶ方がいいか?って文字の呼称も考えてたもんね。
神殿が持っているという聖典は 神国の聖典の写しの写しの……。まあ写本である。
だけど 古き本をそのまま踏襲しているらしいので、先生たちはそれを調べたくてたまらないそうだ。見せてくれないらしいけど。

先生たちの望みとしては 回復魔法の収益が減った事で彼らが反省して 聖典を見せてくれるようになることが最良。
神殿への冒涜だ!と怒り散らして来たら 国外退去でも良いと結構過激な事を言ってたけど、その場合は夜逃げ的に 聖典などを置いたまま退去してくれることを願っている?
けど敬虔な信者が そんな大切なものを置いていくかな?
いや、守銭奴司祭だったら 放置していくかもしれないね。
そうなったとき 真面目な司祭や修道士たちが残ってくれるなら その人たちだけでまともな経営をしてくれるようになればいいね。

まあ 回復魔法の発表が来年だ、きっと文句が出てくるなら再来年以降だろう。
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