ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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魔導学園へ

第271話 二人との訓練

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ギルマスたちが到着した日の夕方、連絡を受けて早めに帰ってきたドゥーア先生と再会。
料理人の話、回復魔法の話、魔道具作成を教えるに至った経緯などを話してから ギルマスたちはお宿に行ってしまった。

「宿では会議前の顔合わせとかもあるんだよ。そん時に打ち合わせっつーか、顔見知りとは話しとくと会議ん時に話が通りやすいって事だ」

そう言ってたので 宿に泊まるのも必要な事なんだと分かった。
会議は2日間で終わり、明日 土の日にドゥーア先生のお屋敷を出ることになった。
会議はよほどのことがない限り1日半もあれば終わるらしい。どこかでスタンピードの予兆があるとか、近隣国からヤバイ盗賊団が流れてきているらしいとか、そういう時には 近隣ギルドの対応策や 連絡方法の周知なども行われるから長くなるみたい。

「今年は水生成魔法が発表になったでしょう?
ダンジョンの攻略が進みそうだとか何とかで長くなると思ってました」

「あ~、あれな……」

「それに関しては リズモーニ王国発信ですからね、ギルドは各所属冒険者に それを伝えるだけです。
今回大変だったのはドゥーア先生で、我々は気楽なものでしたよ」

そうなんだ。
豊作ダンジョンでは講習会とか開いてたみたいだけど、そういうことをするだけで済んでるから会議で云々はなかったんだね。

「ってそっちより、あれだよ。ノハシムのあれ、あれもヴィオだろ?」

ギルマスがジトっとした目で見てくるけど そんなカクカクシカジカで通じるほど 私たち熟年夫婦な付き合いはないですよね?

「ノハシムっちゅうたら 土の索敵魔法か?」

「そうです、ノハシムで画期的な鉱石採集の方法が見つかったということで、各鉱山ダンジョン持ちのギルマスたちは 明日近場のダンジョンで試してみるようですよ。
私たちダンジョン持ちではないギルドはさっさと帰れて良かったです」

ああ、索敵で鉱石が見えるってやつですね?
近くのダンジョンってフルシェ? あそこは鉱石なんてないと思うけど見えるのかな?

「まあダンジョンの壁や床に 土の索敵魔法が通るのかって実験だと思うぞ。
実際鉱石の発掘量が急激に伸びたノハシムに冒険者が集まり始めてるって噂になってたからな。
会議の前の日、ノハシムの二人から直接礼を言われてビビったぞ」

顔合わせの夕食会の後、自室を訪ねてきたギルマスとサブマスからお礼と謝罪をされたらしい。
あまりに驚きすぎて私たちに迷惑をかけてしまったと。是非またダンジョンだけでなく町に来て欲しいと伝言までお願いされたらしいです。
非常に気を使わせてしまったようですね。

明日サマニア村に帰るという事で、今日の夜はお別れ会を開いてくれるらしい。
昨日の時点で錬成陣は完成しており、ブン先生が受け取りに行ってくれて私の鞄の中に入っている。
会議が終わった事で 近場の町に住むギルマスたちは直ぐに帰領したし、鉱山ダンジョン持ちの人たちはフルシェの町に移動したようだ。
なのでうちのギルマスたちも宿を出て 今夜はドゥーア先生のお屋敷にお泊りするみたい。

私の授業については 後は繰り返し魔法陣を書いて慣れるしかない。という事だったので 今日はもう授業がない。
というか、お別れ会の為にエミリンさんもブン先生も忙しそうなので、私たちは お腹を空かせるために騎士団の人たちと手合わせです。

「つーか、ヴィオ お前随分体力がついたな。俺たちからすれば ゆっくりではあるけど 遅れることなくついてこれんだからな。頑張ってんだな」

そう、ここまでの会話はずっとランニングしながら行われてました。
私は 走るペースを落とさないように頑張っていたので 喋れるだけの余裕はなかったけど、5周終わったところで ギルマスにワシワシと頭を撫で繰り回された。

「ええ、村に来たばかりの時は 家からギルドまでも歩くことがままならなかったのに……。
あれから1年と少しの間に 本当に頑張りましたね。
アルク 随分スパルタだったのではないですか?」

「どうじゃろうか、ヴィオに無理がないようには考えとったが なんぼでも吸収するからなぁ。
確かに息子らにも言われたなぁ」

普段は事務作業が多いから 運動不足かと思っていたサブマスですら涼しい顔で走ってるんだもん。
騎士さんだって 若い人たちはちょっと疲れてますよ?
これぞ辺境北西部クオリティーなんだね。

お水を飲みながら クリーンで汗を流せば ちょっと落ち着いてきた。ふう。

「さて、訓練はどうするんだ?」

「いつもは 適当に相手を決めて手合わせしとるくらいかのぅ」

「そういえばヴィオさんは ここに来てから魔法の練習はなさっていないのでしたよね?
折角です、私と魔法使い同士の戦い方を練習してみましょうか」

ギルマスの質問にお父さんが答えれば、サブマスが素敵な提案をしてくれる。
魔法使い同士の戦い方?
魔獣で魔法を使ってくる相手はそれなりにいるけど、魔法使いっぽい使い方をしてくるのはゴブリンとコボルトくらいしかまだ会ってない。
だけど今後更にダンジョンのランクが上がれば 今の壁だけでは立ち向かえない相手も出てくるだろう。
魔法使い相手の戦い方、興味しかない!

「サブマスさん、お願いします!」

「あ、あの!うちの騎士団員にも見学の許可をお願いできませんでしょうか?」

意気揚々と地下訓練場に移動しようと思えば ロイド隊長から声をかけられる。サブマスはちょっと困った顔をした後 少し待ってくださいと言って魔法を使った。

「〈我が声をオットマールへ届けよ〉【コレスポンデンス】
騎士隊長より 私とヴィオさんの魔法訓練を見学したいとの希望を出されましたが、誓約魔法の範囲を確認させてもらいたいです」

サブマスが呪文を唱えれば サブマスの目の前に半透明の便箋が浮き上がり、その後に告げた言葉が便せんにサラサラと文字となり現れる。
えぇ!ドゥーア先生に教えてもらった魔法で 私も使えるようになったけど 全然違うよ!
サブマスが手を振れば 便箋はクルクル纏まり、そのまま飛んで行った。オットマールさんの元に届くんだろう。

「サブマスさん、あれって風の伝言魔法でしょう?私も教えてもらったけど お手紙のは初めて見たの。
あれは色んな形があるの?
お手紙は相手に届いた時にどうなるの?
遠くまで勝手に飛んでる紙を見て 誰かが捉まえたりしない?そうなったらどうなっちゃうの?」

書いてる時から気になったけど、声が入るといけないから我慢してた。だけどもういいよね? 

「ふはっ、ヴィオ お前そうしてると 洗礼前の普通の子供に見えて安心したわ」

後ろから吹き出す声が聞こえて 振り返れば ギルマスが爆笑しているし、ロイド隊長も顔を逸らして肩を震わせている。
確かにちょっと興味津々になり過ぎた気はするけど、そんなに笑わないでください。

「ドゥーア先生たちの遺跡ダンジョンへの興奮は、ヴィオの新しい魔法へのそれと同じくらいなんじゃな」

冷静なお父さんの言葉に あの時の先生たちを思い出してしまう。
スッと 握りしめてしまっていたサブマスのお洋服の裾を離し、ちょっと皺になってしまったところを手アイロンで直しておきましょう。
うん、直ぐに冷静になれるもん、大丈夫。

ちなみに伝達魔法は実態がある訳ではないから 途中で捕まえることはできないとの事。私が使っている蝶々のように届いたら手元で手紙の形になるのであれば 最初からそれでいいじゃないかと思ってそうしているらしい。

「その方が 言い間違いをしたときに文字で気付けるでしょう?
鳥や蝶などのほうが森などでは違和感がないという事で使われがちですが、私は使う場面が限られてますからね。鳥や蝶などでは途中の間違いに気付けないですし、便せん型も多いみたいですよ」

マジか。
先生に教えてもらった時が蝶々だったから 何の疑いもなく蝶々でやってたよ。
随分ファンシーな魔法だなって思いながら使ってます。でも今更別のに変えたいとも思わないから良いかな。

しばらくそうしていると 小鳥が飛んできてサブマスの掌に乗ったところで便せんに変わった。
勿論この便せんも半透明です。
小鳥の便せんは 読み終わったところで消えてなくなるので他者に漏れ聞こえてしまった、見られてしまったなんて心配もいらない。


「ああ、回復魔法に関わらず ここでヴィオさんが行ったすべてに対して他言無用の誓約を行っているようです。では安心ですね。
隊長、見学する希望者が居ればどうぞ。的になって頂ける方がいるなら大歓迎ですよ」

ニッコリ微笑むサブマスだけど、言葉がちょっと不穏ですよ?
というか回復魔法の事以外もだったんですね。ちょっと驚きですよ。
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