ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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はじめての上級ダンジョン

第300話 ゲルシイの森ダンジョン その6

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~クマ獣人アルク視点~


冒険者モドキの処分をした後 起きてくるヴィオの為に 夕食の準備を始める。
前にウッドラースに恐怖してバレットを打ち込んだ時とは違うから 然程長時間寝ることはないじゃろう。

「そうじゃ、ヴィオが起きる前に お前たちに話しておくことがある」

儂の言葉に 夕食の仕込みを始めたクルトと 机の設置を始めたトンガが振り返る。

「それってルンガも聞いた方がいいやつ?」

「まあそうなんじゃが 今ルンガを動かすとヴィオが起きるから 後でお前たちから伝えて欲しい」

真剣な表情で頷く二人。勘が良くて助かるな。
ここで二人にヴィオの父親についての事を伝えた。
王都から戻った後 ギルドへ納品をしに行った時にギルマスたちから聞いた話を伝えた。

「え……、じゃあヴィオの父親って メネクセス王国の王様ってこと?」

「それ冗談じゃなくってっすよね?
え、ヴィオって じゃあ 姫なんすか?
え、あんな好戦的で 誰よりも殺る気満々なのが姫???」

クルトとは ちいっと話し合いが必要か?
ヴィオはどう見ても可愛い姫じゃろうが。

「いや クルト とりあえず冗談は置いといてさ、というかそいつらはどうしたいの?
本物の父親のところに連れて行きたいって事?
父さんはそれでいいの?」

トンガも焦っとるのか?冗談ではないんじゃがな。

「そいつらが考えとることは分からん。ただ ヴィオの事を本気で心配しておるのは そいつらの所属しとるヘイジョーというギルドのギルマスからも言われとる。
メネクセスの辺境にある町でな、ヴィオが産まれた町なんじゃと。
父親は ヴィオが産まれて直ぐの時に 国の立て直しの為に国王になることになったらしくてな。
亡くなった王太子の子供らが成人するまでの間の約束で 国王になることにしたらしい」

そりゃ ヴィオの記憶に残っとるはずがないし、母親としても軽々に父親の事を伝えられんかったんじゃろうな。
あともう少し大きくなったら、もしかしたら洗礼したら伝えるつもりじゃったんかもしれんな。

「え?じゃあ何でヴィオって……。確か皇国から川で流れて来たんじゃなかった?」

「ああ、どうやら母親とヴィオの存在を面白くないと思う奴らが居ったみたいでな、国に居ったら危険じゃという事で 国外に逃げたらしい。
ヴィオの母ちゃんは冒険者の聖女っちゅうて有名じゃった人でな、リズモーニに来てたら 冒険者としての関係者からバレるかもしれんと思ったんじゃろう」

「あ~、だからギルドもない皇国に逃げたのか」

「多分な」

じゃが ヴィオの事を思えば 洗礼前にはあの国を出たのは間違いないじゃろう。
ああ、じゃからこそ3歳という早い時期から魔力操作を教えておったんじゃな。いつでも魔法を使えるように、じゃが皇国では属性魔法を使っておったら野蛮じゃと言われるから 操作だけ。

「その面白くないと思ってる奴らって ヴィオの事は狙わないの?」

「それは分からん。それもあってヴィオの事を探しとったんじゃと思う。
無事じゃと分かれば父親に伝えて 保護をする気かもしれんし、ただヴィオ本人は会う気はないと言うておった」

「「えっ!?」」

「ヴィオはその事知ってるの?」

「ああ、いや、トニーとルンがな、冒険者から質問されたのが二人じゃったらしくて 気になっとったんじゃろうな。
それとなく もし父ちゃんが居たら会いたいか と質問してな」

「それで?」

「会っても気付けなかったら ショックじゃし、今更知らん人から父さんだと言われても困るんじゃと」

父親である王様には悪いと思うが ホッとしたんが正直な気持ちじゃ。
ヴィオの中で本当に父親じゃと認めてもらえたようで 嬉しかったなぁ。

「そっか、父さん良かったね」

「そっか……。けど それだけじゃないんすよね?俺たちに話したい事って」

おお、クルトは冷静じゃな。
今はその冷静さが助かるぞ。

「おお、そうじゃった。丁度行き違いになって その冒険者らは 今王都に居るはずなんじゃと。
為人を見るのに ドゥーア先生のところへ行っとるはずじゃ。
先生が良しとするなら 学園が長期休みに入った時、初めの1週間を使って その冒険者に護衛依頼を出してウミユ遺跡に行くらしいんじゃ」

「学園の先生がダンジョンに?
ああ、ヴィオが言ってた壁画とかの調査ってこと?」

先生の事じゃから どっちが本気か分からんが ウミユに行く時期を書いてきたという事は,先生から見て会わせても問題がない冒険者じゃったという事じゃろう。

「まあそうじゃな。その時期に儂らもウミユに行こうと思うんじゃ」

「ああ、って事は僕らにも確認してほしいって事?」

「もしかしたら合同もありって感じっすか?」

「その通りじゃ。ダンジョンは非日常じゃし あそこは上級じゃからな。取り繕い続けては居れんじゃろう?そいつらと合同にするなら お前たちにも迷惑をかけるかもしれん」

「なに言ってんの、もちろん良いに決まってるでしょう。僕たちもちゃんと見極めさせてもらいたいしね」

迷いもせずそう答えてくれる息子と クルトの姿に、本当に二人ともがヴィオの事を大事に思ってくれていることが分かって嬉しくなる。

「まあ ヴィオは 姫って感じで畏まって大人しくしてるよりも、多少わけわかんねえことしてても 楽しそうにダンジョンで魔獣狩ってる方がらしいな」

否定は出来ん何かがあるな。
それでも儂にとっては可愛い娘で 可愛い姫なんじゃ。




「ん~、おなか空いた……」

話し合いが終わり 料理の続きを始めたところでガサガサと音がしたと思えば 可愛い声が聞こえてきた。
帽子を脱いで眼鏡も外したヴィオは 目をこすりながら まだ寝惚けた状態じゃな。ルンガはどうしたんじゃ?

「ヴィオ こっちに座りな~」

そう言いながら 抱き上げて自分の足の間に座らせるトンガ、こいつも大概ヴィオに甘いな。
テントを覗き込めば ヴィオにしがみ付かれておったはずのルンガは ひき剥がずことが出来ずに そのまま一緒に眠ってしまっておったようじゃ。
何故かヴィオの抱き枕を腕に抱いておるが。

「ルンガ、飯にするが食べるか?」

「ん?うわっ、あれ、ヴィオ? って父さん?
あ~、終わったんだな。ヴィオの隣 めちゃくちゃよく寝れたわ……。
飯食う、腹減った」

そうなんじゃよな、ヴィオの隣で寝るとよく眠れる。多分気持ちよさそうに眠る顔を見ておるだけで癒されるからじゃろうが、本当に得難い娘じゃ。



~~~~~~~~~~~~~
本編300話となりました°˖☆◝(⁰▿⁰)◜☆˖°
応援、コメント、レビュー、非常にありがたく受け取っております。
順調に規格外冒険者に育ってきておりますwww 
これからも成長を見守って頂けると嬉しいです
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