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はじめての上級ダンジョン
第312話 ゲルシイの森ダンジョン その18
しおりを挟む21階に下りて【索敵】を行えば 森は広いけど高原ほどではないことが分かる。
それでも左右交互にセフティーゾーンがあるあたり ダンジョン様の気遣いが分かるというもの。
「あれ〔草原の牙爪〕の人たち 3つ目まで進んだんだね」
一つ目で休憩しているかもと思っていた人たちが3つ目に進んでいることを確認。2つ目と4つ目にも人がいる様なので いない場所を選んだのかな?
「そうみたいだね、二つ目のは6人だから 朝いたパーティーではないね。女性だけのも 男女混合のも5人だったし。下から戻ってきた人かな?」
ああ、そういう事もあるのか。
けど 2番目で休憩するなら上まで行った方が 20階のボス再チャレンジ待ちに並びやすいのにね。
「俺らの時はちょっと特別だったと思うけど、朝が少ないってのは常識だから 多分ここで休んで 明日19階のセフティーゾーンに行くんだと思うぞ。
あのうるせえ奴らを迎えに行った時に 2組いたからな」
あ、そっか。上から来る人達も夜は休むペースで来てたら 昼過ぎというか この時間はまた人が多い場所で休むことになるんだね。
それは気が張った状態になるし であれば こっちでゆっくりして 明日人が少ない時間に上がった方が良いって事なんだね。
「あ、ほらヴィオ、ハズレあったぞ」
1つ目のセフティーゾーンを目指して歩いている現在。
流石に 直近3組が通っただけあって魔獣は殆ど居ない。木の上に蜘蛛が居るくらい。
歩きながら ルンガお兄ちゃんが醤油の木を教えてくれる。
早速全部を採集していこうとして 後から来る人達の為に残しておいた方がいいのかもと考え直す。
「いや、買取が始まったとはいえ まだ周知されてるわけでもねえしな、ここ24時間だし 気にしねえで良いと思うぞ」
そっか、ここに来る人は魔道具を目的に来ているから 本当に採集は最低限って感じなので 手つかずなことが多い。私としては有難いけど ちょぴり切ないよね。
セフティーゾーンに到着後、テントの準備まで終えてから 周辺を散策する。
ボス戦以外は何もしてない時間が長すぎたし ちょっと体を動かしたいよね。
ピョ~~~~ ヒョロヒョロ
ダンジョンでは珍しい 鳥の声が聞こえてふと見上げれば 空を優雅に飛んでいる鳥が居た。
「へぇ、鳥がいるのって珍しいね」
「え?ココッコとかいるじゃん」
「いや、ココッコは飛ばないし 魔鳥じゃん」
「え?あれも魔鳥だぞ? つーか、ダンジョン内に普通の生き物なんか居ねえぞ? 魔素が満ちてる場所に普通のがいても 直ぐ染まるだろ」
……そういえばそうでした。
ということは あの鳥もヒトを見つけたら攻撃してくる系って事か。
優雅に鳴いてるなあとか思ってる場合じゃないって事ですね。
私たちの森散策中に鳥が襲ってくることはなく 木の根元に生えている薬草やスパイスなどを採集してテントに戻る。
1時間ほどしても パリピな人たちは現れることがないので やはりあのままクルクル回ることにしたんだろう。
「お父さん、ボスの変異種って 結構出るの?
ここだったら 常に連続で人が待ってるから 変異種にも種類があったりするのかな」
「いや、変異種っちゅうのは珍しいからこその呼び名であって そうじゃなければ上位種と呼ばれるじゃろう。ダンジョンのボス部屋で 本来いる筈のボスではなく上位種が出たっちゅうのはそれなりに聞くが、変異種っちゅうのは珍しいな」
「そうだね、例えば入るパーティーの人数が多い時なんかは上位種がいることが多いって言われてるよ。
今回みたいに1匹だけじゃないボスの時は 人数によって数が違うっていうのは言ったことがあるでしょう?
それは2~5人のパーティーでは数が増えていくんだけど、多分10人とかになってくると その人数に合わせた魔獣がボス部屋に入らないんじゃないかな。
だから上位種がいることで 辻褄合わせしてるんじゃないかって言われてるよ」
確かに倍々で増えてたら 扉開けたら満員でしたってなりそうだもんね。
10人のパーティーとかって大変そうだね。テントもそうだし移動も専用馬車とか持ってるのかな。
というか それを聞いて やっぱりフルシェの中ボスはダンジョンのバグだった事が判明したね。
私とお父さんだけで入ったのに 数も多かったし、ケーテさん達の方にハイゴブが増えてたのは きっとナイトとかは減らすけど さっきの人たちがそれなりの数でやったんで よろしくね!って感じだったんだろう。
このボス部屋前に関して同じことが起きないのかとお父さんに聞いたんだけど、パーティー順に移動してくるから別の団体だと認識されてるだろうとの事。
そういえば ケーテさん達とは一緒に上まで上がってから 分かれて入ったんでしたね。
「うん、僕らも 結構色んなダンジョンに入ったけど、ボスの変異種は初めてかな。
パニックルームとか、ダンジョンの通路でってのは時々見かけるけど、ボスは通常よりも強いのが多いから 桁違いだったね。びっくりした」
なんと!?
お父さんを見たら 笑いながら頷いている。やっぱり珍しいって事!?
「ヴィオは今日で3体目じゃな。引きが強いんかもしれんな」
「ええっ!? そうなの?」
ケピマルとフルシェの2か所で出会った変異種、偶然なのか2体ともハイシカーマンティスの変異種だった。あれは目の色が違ってただけで パッと見は気付かない可能性もある。
今回みたいに事前情報と全く違うという方が優しいのかも?
「てことは マジックバックはヴィオのお陰だな。あ、時間停止どうなってる?」
「ああ、そうだね、ちょっと待って」
1時間は経過しているから 結果は出ているだろう。
トンガお兄ちゃんが鞄に手を突っ込んでコップを取り出せば、両方から湯気が出ている。時間停止だったようですね。おめでとうございます!
「おお!時間停止アリ。容量は 訓練場は越えると思う。今の鞄よりは確実に大容量だよ。
さて、これはあの変異種を引き当ててくれたヴィオに一つは渡さないとね、クルトもルンガもそれでいいよね?」
「ああ」
「そりゃそうだろ」
えぇっ!?
そんな当たり前のように高級鞄を幼女に渡そうとするとか本気ですか?
皆に伝えてなかったけど 私の鞄も時間停止なんだよね。しかもかなり容量も大きい。
お父さんに目で訴えたら頷かれたので 暴露することにした。
「あのね、お兄ちゃんたちには内緒にしてたんだけど、私の鞄 時間停止機能が付いてるの。だから その鞄はお兄ちゃんたちが使って?
もし今までの鞄を使わなくするなら 一つだけお父さんに欲しいの。
お父さんが今使ってるの アランさんに借りてるやつだから 返さないと駄目なんだ」
お兄ちゃんたちは驚いてたけど それなら遠慮なくといってポーチを自分たちのベルトに通した。
内緒にしてた事を怒られると思ったんだけど、そんな事はなく 冒険者として当たり前のことだと言われた。
多分知ってたら 何気なく口にしてた可能性もあるし、それを思って 黙っていたのは正解だと褒められたくらい。ありがたいですねぇ。
「けど まさかの20階で目的達成しちまったけど どうする?踏破する?」
「ん?あと一つ足りなくない? ルンガお兄ちゃんもマジックバックいるよね?」
「俺のは前回のラスボスで出たやつがこれだ」
背負っているリュックは前回より小さいと思ったんだけど まさかのコレが前回の戦利品で一番いいやつだったらしい。元々お父さんから借りてたマジックバックはウエストポーチの中容量のやつで、前まで背負ってたリュックは普通の鞄だったんだよね。
クルトさんとトンガお兄ちゃんは 肩掛け鞄が マジックバックだったけど 時間停止なしの 大容量。
今回ウエストポーチはベルトに付けられるサイズの小さいものだけど 容量は肩掛け鞄よりも多いというから驚きだよね。
今回は二人もリュックを背負っていたけど、このリュックは前回の戦利品 時間遅延の容量少な目という鞄。
なので 前回手に入れたリュックを 販売するつもりだとの事。
確かにそれなら もう20階に戻って帰っても良いけど、私はこのあと10階フロアにあるであろうハズレ袋達を確認したい。
ボスの宝箱も勿論楽しみだけど、なにより未知なる食材に出会いたい。
それを伝えたら 嫌な顔一つせず だったら踏破しちゃおう!という事になった。
生き死にがかかってるのに 何と気軽に受けてくれるのか、ありがたいねぇ。
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