ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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上級ダンジョンの旅

第321話 踏破報告

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ボス戦を終えた翌日、朝食後に部屋を出たら少しだけ魔獣がリポップしてました。
いうて2階はネズミと兎だけだからね、チャチャッと倒してスライム君にお任せですよ。


1階の広さは フルシェの半分にもいかない程度だったけど 石像がとても素晴らしかった。
洞窟エリアとは違って 1階層は 壁が全部真っ白だからか 非常に明るい。
その上スライムしかいないから 皆は安心してこの階を抜けるんだけど、こうして石像を眺めるにしても明るくて見やすいのは助かる。

石像は台の上にあり、その台には神代文字と古代文字で石像について説明されているようだった。

「おお、ヴィオ、これはお守りの時の絵にあったのと同じじゃないか?」

お父さんに呼ばれて行けば、確かに見覚えのある象とその上に林檎を持った人が座っている。
文字を読めば『〈長寿〉の神イビティマヌルと友のエレファント』と書いてある。
エレファントがもしかしたら人っぽい方かもしれないけど、友が神の上に座るとも思えないので きっとこの下にいる象がエレファントで良いのだろう。

「上に座ってる人が 長寿の神様みたい。この動物はエレファントって言うんだって。神様のお友達だって書いてるよ」

「ほぉ、これが長寿の神様なんか……。女神様なんじゃな」

お父さんはその場に跪いて 真剣に祈り始めたよ。私もお父さんの長寿をイビティマヌル様にお願いしておこうね。
その後は お兄ちゃんたちからも これは これはと質問され、石像と文字を通訳していった。
どうやら8体ほどあった石像は全て神様だったらしく、授業でも習えなかったはじめての神様ばっかりだった。
思ってたよりも神様の数が多いっぽいです。


お兄ちゃんたちからは お父さんと同じように 私お手製のお守りを作ってほしいと可愛いお願いをされたので サマニア村に戻ったら 作るとお約束しましたよ。
クルトさんは遠慮してましたけど、2つ作るのも3つ作るのも一緒だからと言って 希望するお守りを聞きだしました。
果たして効果があるかは不明ですけど お父さんみたく タグに着けておきたいと言ってもらえたので 祈念お守りとして作りたいと思います。
あれです、甲子園とかに行く球児に マネージャーがお守りを作るみたいな。

ちなみにトンガお兄ちゃんは『大樹のように人々を護る〈守護〉の神マニアンドゥア』
ルンガお兄ちゃんは『優れた視覚と聴覚を持ち仲間を危険から護る〈遠見〉の神ヘイムダル』
クルトさんは『生きる者は全て食を必要とする、医食同源〈調理〉の神チバスティスト』
それぞれの神様のお印を入れて作ることになりました。

3人とも 仲間を護る神様を選んだのが “らしい” なって思う。
まあ選択肢が8体分しかなかったってのもあるけど〈恋愛の神様〉〈武勇の神様〉〈退魔の神様〉〈魔法の神様〉もいたんだよ?
武勇とか魔法があれば無双できそうだし、退魔があれば 安全な旅が出来そうなのにね。
そして誰も恋愛には興味がなかったらしく 翻訳したら 「へぇ~」「ふ~ん」だけでさっさと通り過ぎるレベル。
豊穣の女神でもあるから 恋だけじゃないけど、食材はダンジョンで手に入れるからいらないとの事。
ダンジョンの神様はいないのかな?いたらお守り作るのにな。そしたら宝箱ガチャ運がよくなりそうじゃない?



ゆっくり1階を見て回ったので ダンジョンを出たのはお昼過ぎだった。
昼食もダンジョンで食べてきたので 急ぐことなくアンヤの町へ。
今日は町で一泊だけして 王都方面に向かう予定。
どうやら王都の南部に上級ダンジョンがあるらしく、そこは遺跡型なのに豊作ダンジョンらしいのだ。
今まで遺跡型は洞窟タイプばっかりだったから 1階の遺跡部分がどうなっているのかも楽しみだ。

前回のゲルシイの件があるから上級は難しいと思ってたんだけど、どうやら既にギルマスたちには連絡済みで、その街のギルドに手紙が届いている筈との事。
なんて用意周到なのでしょう!
遺跡と豊作、既に楽しみでならないんだけど まずは踏破報告ですよ。


「すみませ~ん、ダンジョンの踏破報告お願いします」

「はいは~い、って あら?あなたは……。
ああ、大丈夫よ。生きていれば何度だって挑戦できるんだからね。その小ささで初級ダンジョンにチャレンジするだけでも凄いことよ?」

昼過ぎという事もあって ギルドに誰もいないのは 閑散期だからというのもあるんだろうね。
奥から出てきたのは 10日に延長した方がいいと言ってくれたお姉さんで、私の顔を見て 聖母の微笑を浮かべながら何故か慰めの言葉をかけてくる。
踏破報告って言ったの聞こえてないのかな?
お兄ちゃんたちは 離れたテーブル席で待ってるんだけど クツクツ笑ってるの聞こえてるんだからね。

「お姉さん、手続きしてもらえますか? 
失敗じゃないです、踏破してきたので。ついでにホーンラビットの角も売れますか?」

「え? トウハ? ホーンラビットの角は買取するわ。
え? あなた踏破って言ったのかしら? あのダンジョンは10階層あるのよ?
入ってまだ3日しか経ってないんだけど……?」

「まあとりあえず 手続きをしてくれたら分かるじゃろう? ヴィオ 冒険者カードを出せばええ。角はこっちでそのまま出してええんか?」

「ああ お父様が一緒だったのならおかしくないのかしら。
あ、すみません。角もどうぞこのまま受け取りますわ」

大丈夫か、この人。
なんか遠くを見ている感じになってるけど 自分の中で何か結論を出したらしく カードを受け取ってくれた。
角は採集袋に纏めて入れているので 袋のままカウンターへ。
お姉さんは受け取ってからもブツブツいいながら奥へ引っ込んだ。

「大丈夫かね」

「くっくっく、まあ このダンジョンは 学生が多いからな。12歳以上、3年生じゃと14歳か?
そのくらいの年齢の奴らを相手にしてばかりじゃと、ヴィオの年齢で この速さの踏破とは思わんのじゃろう」

あ~、それであの態度なんだね。
確かに14歳だと まだまだ華奢ではあっても身長はそれなりに大きいだろうし、ましてや ダンジョンに来る人達であれば 武術専門科の生徒って事だ。
だったら 鍛えている人たちしかいないだろうし 私みたいなちびっ子は見慣れてないだろう。
なんか奥の方で「ええっ!?」とかって叫び声が聞こえるけど、まあしょうがないのかもしれない。

お姉さんは色々聞きたいことがありそうだけど、ギルドの規定もあるからね。
ムズムズしながら カードを返却してくれた。
ホーンラビットの角も カードに入金してくれているので明細書を確認してサインをしたら終了だ。

カードの裏には≪アンヤ遺跡 単独踏破≫と記載されている。
ふっふっふ、これであとは村に戻れば 銀ランク昇格だね。
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