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上級ダンジョンの旅
第325話 先生と再会
しおりを挟む昼食を市場で購入し、宿に戻ってお部屋で食べるようにしているのは 視線が鬱陶しいから。
外にいると 四方八方から ジロジロと見られるのは お兄ちゃんたちにとってもかなりのストレスで、買いに行くのもお兄ちゃんたちにお任せした位。
三人だけだと 宿を出る時以外に視線は感じないというので、完全にホイホイに釣られてきた変態だと確定した。
昼食後は魔法の練習。
クルトさんのフリーズドライは、散々スープを小分けにして練習しただけあって かなり消費魔力が少なくなった。
やっぱり魔法は慣れることが一番大切って事だね。
お兄ちゃんたちは 怪我をしないから中々難しい。
お陰で 料理中の包丁で切ったくらいの傷も 凄く丁寧に 回復魔法を使っていただきましたよ。
「あ、お兄ちゃんたちの魔法も ドゥーア先生に見てもらって 合ってるか確認してもらえるかな」
「おお、確かにそうじゃな。もしそうしてもらえるならありがたい」
「ほんと? 高名な学園の先生にそんなことお願いしても良いのかな?」
トンガお兄ちゃんはちょっと遠慮というか 緊張しているけど、ドゥーア先生って魔法に関しては普通じゃないから 大丈夫な気がする。
聖魔法がない冒険者が 解剖生理と回復の理論を聞いただけで使えるようになったなんて 研究材料としてバッチリだと思うもん。
コンコンコン
「は~い」
「〔ヨザルの絆〕様にお客様がお見えでございますが ご案内してもよろしいでしょうか?」
ノックの後に扉を開けたのは 宿の従業員さんだ。
王都の宿のようにメイドスタイルではないけど、エプロンをして 揃いの服を着ているので従業員だとすぐに分かるようになっている。
「先生かな?」
「思ったより早すぎるがその可能性はあるな。 下で待っとるんじゃろうか?」
「はい、お客様がよろしければ お部屋にご案内も可能ですが……」
お父さんが振り返ったところで お兄ちゃんたちも頷いたので 先生達は お部屋に来てくれるようだ。
ブン先生は確実に同伴してるだろうけど、後は誰が一緒なのかな?
コンコンコン
「やあ、久しぶりだね!
半年もたっていない筈だけど とても長かった気がするよ。
おお、君たちがヴィオ嬢の兄上たちなのだね。はじめまして ダンブーリ・ドゥーアだ、魔導学園で教師をしているよ。
君たちの妹さんに教わることが多すぎて ここで教師というのは少し憚られるんだけどね」
従業員さんに案内されて入ってきたのは 久しぶりのドゥーア先生、半年ぶりのはずだけど 濃すぎる日々だったからか 久しぶりの気がしないね。
先生は お兄ちゃんたちとも順に握手をして、先生のあまりのフレンドリーさに お兄ちゃんたちはちょっとびっくりしています。
「旦那様、ご家族の皆様も驚いていらっしゃいますよ。まずはお茶になさいませんか?」
スッとその場を収めてくれたのは オットマールさん。
先生も それもそうだと 興奮を抑えて 部屋にあるテーブル席に移動してくれた。
うんうん、扉を開けたままだったしね、流石オットマールさんですよ。
「オットマールさん、エミリンさん、ブン先生も久しぶりです」
「ええ、ヴィオお嬢様もお元気そうで何よりです」
「アルク殿とご兄弟がいらっしゃって 危険はないと思っていましたが、こうしてお顔を拝見できると ほっと安心いたしました」
「ヴィオお嬢様に、わたくしとスティーブンから 贈り物がございますのよ。あとで受け取ってくださいませね」
先生と一緒に入ってきたのは 見慣れた3人、エミリンさんとブン先生は遺跡調査のお手伝いで オットマールさんが 監督役なんだろう。
二人を止めるだけなら エミリンさんだけでもいけそうだけど 女性だからね。ダンジョンに夢中の二人じゃ エミリンさんが危険すぎる。
でも そう考えたら オットマールさんに武力はあまりないし 危険に変わりないのでは?
「ブン先生、ロイド隊長も一緒に来ているんですか?」
「ロイドですか?いいえ、今回は我々だけですね」
ええっ!?それは危険が過ぎないか?
どう見ても貴族な人に喧嘩を売る人はそう多くないけど、壁画に夢中になっている無防備な人たちだったら 襲えると思う人が居てもおかしくないよ?
「そうですか、アルク殿とお二人も ヴィオさんの回復魔法を練習中なのですね。それは是非 見せて頂きたい」
「まだ練習し始めたばかりなので そんなに出来てはいないんですよ」
「いえいえ、その状態で今どれくらいできるのかというのも確認できればありがたいですね。
うちの者達は それに気付いた時には随分練習を繰り返していましたから 初期の情報が足りないのですよ」
エミリンさん達とお喋りしてたら お父さんたちとドゥーア先生が盛り上がっていた。
どうやら回復魔法の練習成果を確認してもらえるみたいだ。
それは良いことなんだけど、それよりもダンジョンですよ。
「ドゥーア先生、ダンジョンの遺跡に行くとき エミリンさん達だけなんですか? 先生たちってば 遺跡に夢中になり過ぎたら ご飯も忘れちゃうくらい集中しちゃうでしょ?
ダンジョンの中は いい人ばっかりじゃないから危ないですよ?
この町で護衛を探すんですか?」
それこそ声をかけないと寝食すら忘れる二人をエミリンさん達二人で護るなんて危険すぎる。
「ああ!そういう事だね。
大丈夫、今回は 護衛の冒険者と一緒に来ているんだよ。銀ランクの上級パーティーでね、ちょっと縁があってこの数か月 時々遺跡巡りに付き合ってもらっていたんだ。
今回も一緒に来てもらっていてね、彼らは明日からのダンジョン視察の手続きをしてくれている最中だよ」
そっか、それなら安心だね。
銀ランク上級というだけでは安心材料になり得なかったけど、数か月一緒に動いていて大丈夫と判断できる相手なのであれば まともな上級パーティーなんだろう。
「そういえば先生たちは ウミユも1階の遺跡を見て回るちゅう予定でしたかの?
もしよければ ヴィオも一緒に見て回っても良いですか?」
「おぉ‼それは勿論だが……。
しかし お兄さん達は良いのかい? 普通の冒険者は遺跡に興味を持たないと聞いているが……」
おお!お父さん ナイスなアプローチですよ。
護衛の冒険者が居るなら無理かもって思ったのに聞いてくれるなんて ありがとう!
「あ~、俺らもアンヤで 石像見て来たばっかりで ちょっと興味あるっ…んです」
「アンヤは遺跡があったかね……。スティーブン覚えているかい?」
「ええ、確かあそこは石柱が数本残るだけの遺跡だったと記憶しております。
そしてそれがダンジョン化したとは記録にありますが、まさかあの石柱群のダンジョンの中に石像があったのですか?
それはどのような、なにか意味のある言葉などはありましたか?」
「お、おぉ、何かすげえな」
ブン先生のスイッチが入り ルンガお兄ちゃんにズイッズイと迫っていく。何か見覚えがある絵だね。
クルトさんはスッと席を立ちあがり避難、危機回避能力が高いですね。
その後ダンジョンにあった神像と思われる石像と その台に書いてあった言葉を伝え、先生たちは ウミユが終われば必ずアンヤにも行くと決定したみたい。
とりあえず明日から一緒に潜れるように、お父さんとお兄ちゃんだけが 先生たちと一緒にギルドに手続きに行くことになった。
私も一緒に行きたかったけど、ここ最近の変態の視線の問題もあるので クルトさんとルンガお兄ちゃんとお留守番だ。
明日から数日間、先生たちと一緒にダンジョンの遺跡に残されているだろう壁画か石像の確認作業だ。
地味だと思われがちな作業だけど 結構楽しいんだよね。
とっても楽しみです。
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