369 / 584
上級ダンジョンの旅
第328話 土竜の盾との顔合わせ
しおりを挟む「旦那様、アルク殿と皆様をお連れ致しました」
「ああ、ヴィオ嬢に皆も、わざわざ来てもらって悪かったね。この階は貴族が泊まれるように従者や家族のための部屋も沢山あるんだ。折角だからこちらに来てもらった方が、遺跡から戻っても意見を交わしやすいと思ってね」
ドゥーア先生の言葉に、お父さんの予想が大当たりしていた事が分かり、お兄ちゃんたちもちょっと笑ってる。
寝室とは別になっているらしい客室は、先生のお屋敷の客室と似ているかもしれない。先生はローテーブルのソファーにゆったりと座っていて、ブン先生とエミリンさんがすぐ後ろに立っている。
私たちは何故か正面の長いソファーと、両サイドにある一人掛けの椅子に案内されたんだけど、銀ランクの冒険者さん達は先生たちの後方、壁際に並んで立っている。さっき挨拶したテリューさんも今は仲間と一緒に並んでる。私たちも冒険者だからそっちで良いんじゃないの?
女性3人はお母さんと同じくらいの年齢なのかな? もう少し上かもしれないね。生きてて私が成長したら一緒に冒険できたのかな。
お母さんはどんな冒険者スタイルだったんだろう。回復が得意だったというから、あの左端のお姉さんみたいにローブっぽい装備だったのかな。いや、あの杖を使っていたのだとしたらあんな清楚な感じじゃないかもしれないね。うん、お母さんの冒険者スタイルを想像するのは止めておこう。
お姉さんたちはこっちをガン見してきているけど、子供冒険者ってそんなに多くないもんね。だけどちょっと視線が強すぎて怖いですよ。思わず隣に座るお父さんに半分隠れるように、腕の後ろにグイグイと身体を忍び込ませる。
「ああ、ヴィオ嬢にも紹介しておこう、昨日アルク殿とトンガ君は顔合わせをしたと思うが、彼らは銀ランク上級冒険者の〔土竜の盾〕というメンバーだ。メネクセス王国所属の冒険者なんだけどね、今は探しものとダンジョンの為にリズモーニに来ているそうだ。
ああ、ちなみにあそこの2人は私の生徒だったんだよ。
さあ、君たちも挨拶をした方がいいんじゃないか? ヴィオ嬢が可愛らしいのは確かだが、見つめすぎて怖がられているようだしね」
ドゥーア先生が私の様子に気付き、冒険者たちを紹介してくれた。
なんと、聖魔法使いっポイお姉さんは先生の生徒だったんだって。ということは元貴族なのかな? であれば全員が元貴族か学園出身者だったりする? お兄ちゃんが言ってた付き合うのには注意がいる系冒険者!?
「あ~、ヴィオ多分違うから大丈夫だと思うよ」
私の左側に座ってくれているトンガお兄ちゃんを見つめれば、頭をポンポンしてくれて違うだろうと言ってくれた。まあテリューさんは貴族には見えないけど、お姉さんたちが学園出身というのは事実ですよ?
「あ~、あれか、貴族出身の冒険者にやばい奴がいるってやつか?
まあ俺らもそれなりに長くやってるから、あながちその情報は間違いではないけど、貴族が嫌で抜け出した奴とかもいるからな。ちなみにこの2人は家出組だから貴族のしがらみはねえし、そこは安心してくれていいぞ」
テリューさんがそう言って安心させてくれるけど、家出組というのがあるのですね。ああ、サブマスもそうだったかもしれません。
「んじゃ、まずはメンバーを紹介した方がいいな。
俺はさっきも言ったけどリーダーのテリューだ。サブリーダーはレス、レスは魔法使いだな」
細身で優し気な顔立ちの男性がペコリとお辞儀をしてくれる。
魔法使いと言われて納得の細さだけど、でもしっかり鍛えているのが分かるし、ローブではないから斥候だと思った。
「次は俺の嫁のアン、アンは剣士をしてる」
「よろしくね、会えて嬉しいよ」
赤茶の髪をポニーテールにしている溌剌とした女性がニカっと笑いながら手を振ってくれる。何だろう大剣をブンブン振り回してそうなイメージです。それにしても『嫁』って紹介は良いね。紹介するなら『妻』の方が正しいんだろけど『嫁』の方が気安い感じがする。
「レスの嫁で、槍と魔法を使うのがシエナ」
「シエナよ。よろしくね」
この人が槍を振り回せるのかって感じの美女なんですけど? ルンガお兄ちゃんも同じ得意武器という事で驚いているけど、そりゃそうだろう。服で見えない部分はもしかしたらムキムキなのかもしれないね。
「で、さっき先生が言ってた元生徒のオトマン、斥候役だな」
「黒豹獣人のオトマンだ。まさかこんな小さな妹弟子というか後輩が出来るとは思ってなかったよ」
黒髪に金目のオトマンさんは腰に尻尾クルンをしています。クルトさんも練習をはじめたそうなので教えてもらうと良いかもね。
「もう1人の生徒、オトマンの嫁で回復と弓担当のネリアだ」
「んぐっ、ネリアでじゅ。よろじぐね」
なんで泣いてるの!? 美人で清楚っぽい見た目なのに残念属性の持ち主なのだろうか。
なんだろう、先生宅でお着替えをした後に、何人かこんな感じになるメイドさんが居たな……と少し懐かしい気持ちになるけど、初対面の人だとちょっと怖いです。
「あ~~~~、すまん。ネリアは小さくて可愛いものに目がないというか……」
「わ、私の姪っ子がちょうど6歳くらいでね、ネリアに懐いてたもんだから懐かしくなったんだと思うわ。ごめんね、気持ち悪いと思うけど悪い子じゃないの」
テリューさんとアンさんがネリアさんを隠すように立ってくれたことで、ちょっとだけホッとする。
そうか、私を見てホームシックになっちゃったなら仕方ないよね。
「じゃあ僕らも自己紹介しようか。
僕は〔サマニアンズ〕のリーダーでトンガ、こっちは弟のルンガ、あっちに座ってるのがサブリーダーのクルト、僕たちは全員前衛だったけど、今は魔法も使いながら適宜対応しているって感じかな」
トンガお兄ちゃんの紹介でルンガお兄ちゃんとクルトさんが頭を下げる。
「儂は熊獣人のアルクじゃ。トンガとルンガは息子でな、今は娘のヴィオと2人で〔ヨザルの絆〕っちゅうパーティーを組んどる。こっちは娘のヴィオじゃ」
「はじめまして、銅ランク冒険者のヴィオ6歳です。えっと得意武器は短剣と鞭です。よろしくお願いします」
お父さんに紹介されたので私も自分で自己紹介するよ。どこまで喋っていいか分からないから、とりあえず前衛っぽくしとけばいい?
「ああ、ちなみにヴィオ嬢は、うちの騎士団の訓練にも参加していたし、近接戦だけじゃなく魔法も中々だぞ。アスランの愛弟子だけあって二度目に会った時には私から教える攻撃魔法はなかった程だ」
「ええっ!? アスラン様の愛弟子?」
(((流石あの2人の子なのかしら……)))
前衛のふりをしようと思ってたら、ドゥーア先生から魔法が使えることを暴露されてしまった。どうやら兄姉弟子のお2人はサブマスの事も知ってたらしい。学園では伝説みたいな扱いだって言ってたもんね。
でもそのおかげで何となく分かり合えたというか『ただの子供』じゃないと思ってもらえたのか、打ち解けることが出来た。
最初にあった可愛い人形を愛でるような視線ではなく、面白い冒険者を見るような感じになったと言えばいいかな。うん、こっちの方が過ごしやすいね。
600
あなたにおすすめの小説
私を裏切った夫が、後悔しているようですが知りません
藤原遊
恋愛
政略結婚として、公爵家に嫁いだ私は
愛のない夫婦関係を「仕事」だと思い、正妻の役目を果たしてきた。
夫が愛人を持つことも、
その子を屋敷に迎え入れることも、黙って受け入れてきた。
けれど――
跡取りを、正妻の子ではなく愛人の子にする。
その言葉を、人前で軽く口にした瞬間。
私は悟ったのだ。
この家では、息子を守れないと。
元々、実家との間には
「嫡子以外の子は実家の跡取りにする」という取り決めがあった。
ならば話は簡単だ。
役目を終えた私は、離縁を選ぶ。
息子と共に、この家を去るだけ。
後悔しているようですが――
もう、私の知るところではありません。
【書籍化決定】アシュリーの願いごと
ましろ
恋愛
「まあ、本当に?」
もしかして。そう思うことはありました。
でも、まさか本当だっただなんて。
「…それならもう我慢する必要は無いわね?」
嫁いでから6年。まるで修道女が神に使えるが如くこの家に尽くしてきました。
すべては家の為であり、夫の為であり、義母の為でありました。
愛する息子すら後継者として育てるからと産まれてすぐにとりあげられてしまいました。
「でも、もう変わらなくてはね」
この事を知ったからにはもう何も我慢するつもりはありません。
だって。私には願いがあるのだから。
✻基本ゆるふわ設定です。
気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。
✻1/19、タグを2つ追加しました
✻1/27、短編から長編に変更しました
✻2/2、タグを変更しました
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~
ふわふわ
恋愛
「お姉様の婚約者、私がいただきますわ。だって“公爵令嬢”ですもの」
義理の妹コンキュはそう言って、王太子との婚約を奪いました。
父はそれを容認し、私は静かに受け入れます。
けれど――
公爵令嬢とは“地位”ではなく、“責任”の継承者。
王宮で礼儀も実務も拒み、「未来の王太子妃」を名乗った義妹は、わずか三日で婚約破棄。
さらに王家への不敬と統治能力の欠如が問題視され、父の監督責任が問われます。
そして下されたのは――家ごとの褫奪。
一方で私は、領地を守り、帳簿を整え、静かに家を支え続ける。
欲しがったのは肩書。
継いだのは責任。
正統は叫びません。
ただ、残るだけ。
これは、婚約を奪われた公爵令嬢が
“本当に継がれるべきもの”を証明する物語。
【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。
みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」
魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。
ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。
あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で一人の騎士と運命的な出会いをする。
【2024年3月16日完結、全58話】
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので
モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。
貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。
──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。
……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!?
公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。
(『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)
恋は、母をやめてから始まる――正体を隠したまま、仮の婚約者になりました
あい
恋愛
両親を失ったあの日、
赤子の弟を抱いて家を出た少女がいた。
それが、アリア。
世間からは「若い母」と呼ばれながらも、
彼女は否定しなかった。
十六年間、弟を守るためだけに生きてきたから。
恋も未来も、すべて後回し。
けれど弟は成長し、ついに巣立つ。
「今度は、自分の人生を生きて」
その一言が、
止まっていた時間を動かした。
役目を終えた夜。
アリアは初めて、自分のために扉を開く。
向かった先は、婚姻仲介所。
愛を求めたわけではない。
ただ、このまま立ち止まりたくなかった。
――けれどその名前は、
結婚を急かされていた若き当主のもとへと届く。
これは、
十六年“母”だった女性が、
もう一度“ひとりの女”として歩き出す物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる