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上級ダンジョンの旅
第329話 遺跡の視察 前半
しおりを挟む「さて、では顔合わせも終わったところでダンジョンに行こうか」
ドゥーア先生の一言で、そういえばそのための顔合わせだったと思い出す。メンバー分けは既に行われていたらしく、うちからはルンガお兄ちゃんとクルトさんがお留守番、〔土竜の盾〕からはレスさんとシエナさんのご夫婦がお留守番のようだ。
ホームシックになっているネリアさんが留守番の方がいいのではないかと思ったけど、他所のパーティーの事だからツッコみません。
オットマールさんは留守番との事で、エミリンさんとブン先生が同行するようだけど、ブン先生は馬車の準備のため不在である。
宿を出れば馬車が停まっており、ブン先生が御者をしている。以前の小さな箱馬車とは違い、途中下車した乗合馬車のような大きな馬車だった。
「ブン先生、ここからは僕が操ります」
「ああ、では頼む」
オトマンさんは御者も出来るようで、ひらりと御者台に飛び乗った。
あの乗合馬車とは違い、窓が大きく取られているので圧迫感はない。屋根の上に荷物を置く場所があるのは同じだけど、それ以外に後部の乗り込み口に広い足台がある。
「護衛の冒険者が此処に立って後方を確認できる。屋根には前方、周囲を確認するメンバーが居れば、馬車の速度を出しても大丈夫だろう? こんな馬車を持つ人には初めて会ったが、流石リズモーニ王国と思ったな」
テリューさんが足台について説明してくれた。
確かに手摺もあるし、これなら護衛の冒険者に合わせてゆっくり走るという事をしなくても良いね。皆この馬車にすればいいのに。
「ははっ、これだけの大きな馬車を引くには馬の負担もあるからね。人が多く乗ればそれだけ重量がかかるだろう?」
「そっか、ドゥーア先生は風魔法で重さを無くすから行けるんですね」
「そういう事だね」
満足そうに頷く先生を見て納得した。テリューさんと お父さんが後方の確認の為に立つらしく、私もやりたかったけど全員から却下されたので諦めて先生たちの近くに座ってます。
「先生お願いします」
オトマンさんの声で先生が風魔法を発動させる。
本当に静かな動きだから、全く乗っているこちらに揺れなどは感じない。窓の外の景色が流れ始めたことで動き出したことは分かるけど、浮いているからガタゴトも言わないしスムーズだ。
「お~、乗ってるとこんな感じなんだ」
トンガお兄ちゃんは窓から外を眺めながらテンションが上がっている。
街からダンジョンまでは徒歩で1時間くらいだけど、馬車なら20分もかからないだろう。今日は追い風のドーピングはしないけど必要ないと思います。
「えっと、ヴィオちゃんは驚かないの?」
変態……じゃなくて、ホームシックのネリアさんが、お兄ちゃんとは違って冷静なままの私を見て不思議そうに問いかけてくる。
流石に慣れてくれたのか今は泣いてない。
「うん…じゃなくってはい。ドゥーア先生のもだけど、サブマスがかけてくれた時は、王都からサマニア村まで6日で帰れるくらいだったし何度か体験してます」
「そうなの……、あの、さっきは取り乱しちゃってごめんなさい。それで、出来れば普通に喋ってくれると嬉しいなって」
さっき聞いたら土竜のメンバーの平均年齢は28歳で、冒険者歴もテリューさん達は20年弱と大御所だった。
ネリアさん達は学園卒業後の参加だから、パーティー歴は10年くらいというけどベテランだよね。
ということで今更だけど敬語を使おうとしたら断られてしまった。もじもじしながらお願いされたら、お母さんと同年代のはずだけど可愛いと思ってしまう。
「いいの?」
「うん、だってテリューとは普通だし、先生相手よりも畏まられるなんて困るわ」
テリューさんは最初のあれがあったからだけど、なんとなくスルっと懐に入れてくれる感じがお父さんと同じ感じだったんだよね。
「だったら私たちも同じように喋ってほしいわ。勿論トンガ君たちもね」
「あ、僕たちもですか? まあありがたいですけど。戻ったら弟たちにも伝えておくよ」
コツンと拳をぶつけ合う大人たちを見て、なんか格好良いなって思う。
モドキみたいなのもいるけど、ちゃんとまともな冒険者も居て、そういう人たちと仲良くなれるのは嬉しいね。
私はまだまだ守ってもらってばかりの立場だからどうしようもないけど、大人になったらちゃんと見極めて、こんな風に仲良くなれる人を見つけられたらいいな。
馬車の中で先生たちが静かだねって思った?
先生たちはアンヤで見つけた石像の台に記されていた文字の写しを見せているからね、移動中の車内で読むのは酔わないかと心配だけど、浮遊してるし問題ないんだと思います。
外の景色が止まった事で馬車が到着したことを知る。
「旦那様、遺跡に到着したようですわよ」
「ん? おお、もう到着したのかい? ありがとう、早かったね」
オトマンさんが声をかけても気付かないので、エミリンさんがノートを強制的に閉じることで気付かせる。うん、それが出来るのはエミリンさんだけだと思います。
浮いてた風魔法も解除してもらい、私たちも下りればダンジョン受付の建物の裏にオトマンさんが馬車を移動させてくれる。
ここも人気のダンジョンだけあってお昼過ぎでも人はちらほらいる。もちろん朝が一番混むんだろうけど、戻ってくる人もいるしね。
だけど、どう見ても貴族な3人とそれを護る冒険者が居るから、皆遠巻きでチラチラ見るくらいだ。見られている先生は慣れているからなのか、それとも既に心はダンジョンにあるからか全く無関心だけどね。
私はリュックの上にある持ち手に木札をぶら下げているので、後ろから見てもよく分かるだろう。
ブン先生が受付に書類を提出すれば、既に連絡があったらしき職員が直ぐに手続きをしてくれた。
「さあ、では行きましょうね」
オトマンさんがまだ戻ってきてないけどいいのだろうか?
チラリとテリューさんを見れば問題ないと言われたので大丈夫なんだろう。まあ大人だし止められることはないんだろう。
先生はもう遺跡しか見えていないので、先頭をテリューさんとアンさんが進み、先生たち3人、私、お父さん、トンガお兄ちゃん、ネリアさんの並びで進むことになった。
先生が入る頃にはオトマンさんが追い付いたので安心して中に入る。
ウミユ遺跡はルエメイ遺跡に少し似ていて、古い神殿がダンジョン化した遺跡らしい。どうやらファンスラー公爵領とスターン侯爵領が無かった時代は、王城からも近く港に直結している川の近くだという事で 海の平穏を祈る為の神殿があったんだって。
100年ほど前に2つの領地ができ、ファンスラー公爵領地の港に神殿が新たに作られたことで、ウミユの神殿は廃れてしまったみたい。
ウミユの遺跡がダンジョン化したのは30年くらい前だというから、結構最近と言えるのかもしれないね。人が住まない家屋は朽ちるのが早いというけど、異世界の場合はダンジョン化してしまうって事なのかもね。
ダンジョンが欲しければ、あえてそうした建物を作るのもひとつかもしれないけどね。
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