ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

文字の大きさ
387 / 584
ウミユ遺跡ダンジョン 前半

第346話 ウミユ その13

しおりを挟む

3階のセフティーゾーンを出て 皆がばらけて直ぐ異変を感じた。

「ん? トンガお兄ちゃんと シエナさんと オトマンさんが 薄くなった……?」

「ヴィオ、そんな事も分かるのか?
それはやっぱりサマニア村で鍛えられたってのが大きいのか? 俺の索敵では 殆ど感知できなくなるんだけどな」

「ふふっ ヴィオ、これは内緒だけどね、オトマンは闇属性の魔法が使えるの。
多分三人に気配隠蔽の魔法を使ったのね。
森とか 夜なら効果抜群だけど、まああの程度の雑魚相手なら 高原でも問題ないと思うわ」


なるほど 気配隠蔽か。私が魔法を使った時には 隠蔽したお兄ちゃんたちの魔力もしっかり感知してたから 無属性の索敵は無敵だと思ったけど、他人が使った気配隠蔽だとかなり薄くなるのが分かった。
消えるという事はないけど よく見てないと分からないくらいに薄い印になる。

なんだろうね、普段の私たちの 印が 黒い人型だとしたら 隠蔽された人のは 楕円形の染みのように見える。人の形すら分からないのだから そこにいる筈と思ってなければ 気付かないと思う。
これは結構危険だね。
でも今のうちに気付いておいて良かった。
【索敵】に引っ掛からないなら大丈夫って思いこんでしまうのが一番危険だもん。

お兄ちゃんたちはどうやらこのまま3階に残り 奴らの後ろから偵察をすることにしたみたいだね。
尾行している相手に尾行されるって どんな気分なんだろうね。
破落戸冒険者たちは 野営とか見張りとかをどう回しているのか分からないけど まだ動いている気配はない。ゆっくり寝てから行動するのかな?
今日はスピードアップするんだけど 追いつけるのかな?

そんな事を考えながら 4階へ下りる。
ここも上級ダンジョンだけあって広い。グーダンの倍までは行かないけど 1,5倍くらいはありそうだ。

魔獣の種類は3階と同じ、新しい魔獣が居る訳ではなさそうだけど、フライングラビットが少し多いかな?
私たちが入ってから追い抜かれたのは2組だけ。
2階と3階をあれだけゆっくり歩いてたから まあ抜かされてもおかしくない。
彼らの目的地がどこなのかは分からないけど 採集もせずに 速足で進んでいたから10階以降を目指していたのかもしれないね。

そんな2組の冒険者が通ったのはいつ頃だったのか分からないけど、24時間でこの広さの魔獣や素材がリポップするから 数は減ってないと思って行動した方がいいだろう。

「シエナ達から聞いてるけど、ヴィオは魔法をメインで使うんだよな?」

「そうだね、テリューさん達も近接攻撃だよね? じゃあ魔法でいくね」

「その年で 同行者に合わせられるなんて 本当に凄いわね、無理して魔力切れにならない様にだけ気を付けるのよ」

「は~い」

今は【索敵】【身体強化】【結界鎧】の3つを常時展開している。
お父さんが 破落戸たち後方を気にしてくれるという事だったので 4階に来てからは 左右前方だけを気にしているし、盗聴はしていないので 大分魔力には余裕がある。

お肉が欲しいラビット系、ヘビ、ココッコは 魔法で倒してしまうと ドロップアイテムを取りに行くまでに ゴブリン共に奪われることもあるため テリューさん達にお任せし、私は アイテム不要のウルフ、コボルト、ゴブリン、スライムを索敵範囲に見つけ次第 殲滅しております。
ヘビも 草むらから出てくるグラススネークはお二人にお任せしているけど、ちょこちょこある林などでは 木の上からイエロースネークも出てくるので、そちらは私が魔法で殺ってます。

ズシャ! ザンッ! ズバッ!

もうね、二人とも格好良いのよ。
テリューさんは テーアさんの使うバスタードソードよりも大きな剣をぶん回し、1メートルを超えるフライングラビットも ズバンと一発。
大きな剣は盾の役割も果たすらしく、テリューさんは パーティーの盾役でもあるらしい。

そしてアンさんは 片手剣を軽々と扱う。女性が持つには結構大きいと思うけど、重さを感じさせない剣速は 急に飛び出してくるグラススネークや ホーンラビットを即座に斬り捨てる。

「お父さん、二人とも凄いね! 銀ランクの上級ってこんな人たちもいるんだね!」

「そうじゃな、多分土竜のメンバーは 貴族との付き合いが嫌でランク上げをしておらんタイプの上級じゃろうな。
リズモーニよりも メネクセスの方が 国が大きい分 貴族も多い。
金ランクになれば指名依頼も増えるじゃろうから 仕方がないんかもしれんな」

そうか、リズモーニは貴族もいるけど 冒険者も多い。指名をしなくても十分依頼が出来そうな人が多いって事なのかな。

「テリュー 聞いた? 格好良いだって」

「おお、 あんな魔法をバンバン使うヴィオに 凄いと言われるのは 嬉しいもんだな」

そりゃ思いますよ。
二人が使っているような武器は私には使えないし、大人になっても選択しないと思う。だけど 使っているところを見るのは格好良いと憧れるし、二人の足捌きや動きは凄く勉強になる。
それに こうやって破落戸とか野盗に狙われやすい私としては 対人戦をすることも想定していないとだから 剣を使う人の戦い方はできるだけ沢山見ておきたい。

破落戸でお父さんみたいな格闘をしてくる人ってあんまりいないと思うんだよね。
こないだ捕まえた20人以上の盗賊も 全員形は違っても剣だったしね。一番使いやすいんだと思う。
脅すために見せつけるのも目的だから、ルンガお兄ちゃんの棒みたいに「それ何?なにに使うの?」と思わせる様な武器では駄目なんだろうね。
チャクラムなんて 絶対に意味不明だもんね。

わざわざ遠くの魔獣を狩りに行くことはしないけど、通り道に出てくる相手は積極的に狩っていく。
お父さんは 素材採集をしつつ 後方を確認って感じだね。

「おお、やっと下りてきたようじゃな」

そう言われたのは 3つ目のセフティーゾーンを過ぎたあたりだ。
随分ゆっくりしてきたものだね、寝坊でもしたのだろうか。

「ちょっと聞いてみるね」

ここからはテリューさん達が周囲の警戒をしてくれるというので 私は盗聴魔法で奴らの声を確認する。索敵も確認すれば 8人だけなので、体力無しチームはまだ3階にいるようである。

『おいっ!見失ったぞ』
そりゃそうだ、これだけ遅けりゃ 見失いもするでしょうよ。

『けど 昨日までゆっくりしてたんだし、多分今日だってちょっと早く出ただけで まだ料理とかしながら休憩長く取るだろ?だったら追いつけるって』
それは確かにそうだと思う。よく分かってるんじゃない?

『だからといって 対象の見張りをしなかった言い訳にはならないがな。成功報酬の減額はさせてもらうぞ』
見張りの順番が決まってたのかな? 偉そうなことを言っても こいつらに索敵能力がないのがバレちゃったね。

『っつーか、また王都の奴らはヘたってんのか?体力なさ過ぎだろ』
それはホントそう。冒険者に向いてないんじゃない?

『あいつらは 人数稼ぎだろ、対象とやり合って 殺されたって事にして捨てて行けばいいんだし 相手の攪乱をするには人数がある程度いた方が良いんだから 丁度良いだろ』
ふむふむ、なかなかの屑っぷりですね、使い捨てる気満々じゃないですか。


実況中継よろしく 声真似をしながらお届けしているので 臨場感は伝わるはず。
なんだけど、何故か3人ともが肩を震わせながら笑っております。ちょっと緊張感が無さすぎませんか?

「いや、だって、くっくっく、声真似もだけど、いちいちヴィオが、感想入れっから……ぶふ~~!」

「緊張感、無くしてるの、ヴィオのせいだから、あはは!もう無理!」

なんと、心の声まで一緒にお届けしてしまっていましたか。
副音声は選択制にしないと駄目だよね。これは失敬、申し訳ない。
まあ 後ろの連中は大慌てだけど 私たちには関係ないのでね、予定通り 4つ目のセフティーゾーンを目指します。

トンガお兄ちゃんチームがいない事で、一番歩きやすい中央付近は手付かずの状態なので 奴らも魔獣とエンカウントしているみたいだし、盗聴はいったん終了でいいかな。

「仲間割れ状態のあの感じだと 魔獣の討伐も息が合わなくて大変そうだね。
まだフライングラビットも残ってるし、何人かは死んじゃうかもね」

「まあこの階だと それくらいしか危険な魔獣はいねえしな。流石にフライングラビットと対峙した時には それなりに協力すんだろ。つーか、どっちかと言えば それで減ってくれた方が良いけどな」

そりゃそうか。
ヤバイ魔獣の前に囮役を残して逃げるなんて展開は ラノベの主人公が物語の冒頭でやられるくらいで 実際はないのかもしれないね。
しおりを挟む
感想 109

あなたにおすすめの小説

私を裏切った夫が、後悔しているようですが知りません

藤原遊
恋愛
政略結婚として、公爵家に嫁いだ私は 愛のない夫婦関係を「仕事」だと思い、正妻の役目を果たしてきた。 夫が愛人を持つことも、 その子を屋敷に迎え入れることも、黙って受け入れてきた。 けれど―― 跡取りを、正妻の子ではなく愛人の子にする。 その言葉を、人前で軽く口にした瞬間。 私は悟ったのだ。 この家では、息子を守れないと。 元々、実家との間には 「嫡子以外の子は実家の跡取りにする」という取り決めがあった。 ならば話は簡単だ。 役目を終えた私は、離縁を選ぶ。 息子と共に、この家を去るだけ。 後悔しているようですが―― もう、私の知るところではありません。

【書籍化決定】アシュリーの願いごと

ましろ
恋愛
「まあ、本当に?」 もしかして。そう思うことはありました。 でも、まさか本当だっただなんて。 「…それならもう我慢する必要は無いわね?」 嫁いでから6年。まるで修道女が神に使えるが如くこの家に尽くしてきました。 すべては家の為であり、夫の為であり、義母の為でありました。 愛する息子すら後継者として育てるからと産まれてすぐにとりあげられてしまいました。 「でも、もう変わらなくてはね」 この事を知ったからにはもう何も我慢するつもりはありません。 だって。私には願いがあるのだから。 ✻基本ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。 ✻1/19、タグを2つ追加しました ✻1/27、短編から長編に変更しました ✻2/2、タグを変更しました

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~

ふわふわ
恋愛
「お姉様の婚約者、私がいただきますわ。だって“公爵令嬢”ですもの」 義理の妹コンキュはそう言って、王太子との婚約を奪いました。 父はそれを容認し、私は静かに受け入れます。 けれど―― 公爵令嬢とは“地位”ではなく、“責任”の継承者。 王宮で礼儀も実務も拒み、「未来の王太子妃」を名乗った義妹は、わずか三日で婚約破棄。 さらに王家への不敬と統治能力の欠如が問題視され、父の監督責任が問われます。 そして下されたのは――家ごとの褫奪。 一方で私は、領地を守り、帳簿を整え、静かに家を支え続ける。 欲しがったのは肩書。 継いだのは責任。 正統は叫びません。 ただ、残るだけ。 これは、婚約を奪われた公爵令嬢が “本当に継がれるべきもの”を証明する物語。

【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。

みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」 魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。 ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。 あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で一人の騎士と運命的な出会いをする。 【2024年3月16日完結、全58話】

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので

モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。 貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。 ──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。 ……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!? 公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。 (『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)

恋は、母をやめてから始まる――正体を隠したまま、仮の婚約者になりました

あい
恋愛
両親を失ったあの日、 赤子の弟を抱いて家を出た少女がいた。 それが、アリア。 世間からは「若い母」と呼ばれながらも、 彼女は否定しなかった。 十六年間、弟を守るためだけに生きてきたから。 恋も未来も、すべて後回し。 けれど弟は成長し、ついに巣立つ。 「今度は、自分の人生を生きて」 その一言が、 止まっていた時間を動かした。 役目を終えた夜。 アリアは初めて、自分のために扉を開く。 向かった先は、婚姻仲介所。 愛を求めたわけではない。 ただ、このまま立ち止まりたくなかった。 ――けれどその名前は、 結婚を急かされていた若き当主のもとへと届く。 これは、 十六年“母”だった女性が、 もう一度“ひとりの女”として歩き出す物語。

処理中です...