ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

文字の大きさ
389 / 584
ウミユ遺跡ダンジョン 前半

第348話 ウミユ その15

しおりを挟む

昼食中に オトマンさんからネリアさんに伝達魔法が届いた。

「ん~、何かね 依頼者と直接やり取りしてた奴が 合流したみたい。
逃げようとしてたトロい奴らのリーダーを殺して 依頼続行って命令してたんだって。
で、私たちがどれくらい戦えるのかってのを依頼主に報告しに行ってたらしいから、オトマンたちはそっちに聞き取りするつもりみたい」

あまりにも軽く報告されたので 一瞬聞き逃しそうになったけど 一人消えたんですね。
そしてやっぱり初日に感じてた3人は お仲間だったという事か。
居なくなったのは 依頼主に報告に行くため、流石にここまで潜ってきたら1日で往復するのは無理だから 2階層までの能力を伝えたようだとの事。
2階までって 何もしてないと思うけど 足が速かったですとか報告してたんだろうか。

「それでね、その3人組は 他の三組の監視役でもあるらしくって、ちょっと離れて行動しているから そっちの監視をするのに 今夜は合流できないんだって」

「え~~~!お兄ちゃんたちお昼のサンドイッチくらいしか持ってないのに、夕食も?大丈夫なのかな、お持たせ作って持っていく?」

「ぶふっ!ヴィオ、心配すんのはそこなのか?」

え、だってそれ以外に心配する事ってある?

「ヴィオ、尾行の尾行は結構気を使うし 報告の内容から見ても 手前の3組よりは強そうだぞ?」

「まあそうだね、けどお兄ちゃんたちと同じ人数だし、倍以上いたら流石に心配するけど 大丈夫だよ。あ、けど 寝る時もテント無しだよね。
シエナさん女性なのに 剥き出しで寝るなんて不安だよね。大丈夫かな」

「「ぶふぅっっ‼」」

「あ~、心配してくれてありがとな。
けど 冒険者なんて 若い時はテント泊が出来ない事の方が多いからな、最近はそうでもなかったけど シエナも慣れてるから大丈夫だ」

旦那のレスさんがそういうなら大丈夫なのかな。
トンガお兄ちゃんは 仲間になったヒトには優しいけど、別に女性に優しいフェミニストではないから 気を遣うって事はしないと思うんだよね。
まあ オトマンさんがその辺はフォローするのだろう。
食事に関してもそこまで心配することはないだろうという事で、明日の夜には必ず合流してほしい、好物を準備しておくと ネリアさんに伝達魔法に入れてもらった。


食べられない3人に遠慮したのか 昼食はスープと肉串、パンを少しだけという粗食だったんだけど、私はこれでお腹がいっぱいである。

「前はスープなしの肉串とパンだけが夕食で、昼は行動食だけだったのに……」

「たった3日目なのに あの豪華な食事に慣れてしまっていたんだって気付いたわ……」

「これ、料理真面目に覚えないと、今後の冒険者人生に影響が大きいわね」

「というかこの肉串も 俺たちが作ってた “ただ肉を焼いただけ” とは違うぞ。アルクさんがスパイスを塗してから焼いてくれてたから 美味い」

「肉串ですら……」

土竜の人たちは肉串を食べながら orzとなっているんですけど 大丈夫でしょうかね。
お父さんはスパイスの魔術師だからね、色んな料理に合うミックススパイスも自作しているし、私にも真似できませんよ。

昼食を終えたら 散策の再会。
5階に下りたら フロア面積がさらに広がっていたので 全部を索敵するのはやめておいた。

「相当広いから セフティーゾーンの3つ目までにしておいたよ。2つ目を過ぎたくらいに冒険者が居るくらいかな」

「そこまで見れたら十分だ。ここからは低層階の後半だし、魔獣も上位種がチラホラ混ざってくるからな、十分気を付けるように」

素材の場所は分かるけど、何が埋まっているのかは抜くまで分からないのが 豊作ダンジョンの素材である。宝箱なら中身が瓶とか 剣とか何となく形は見えるのに、土の中は見えないんだよね。鉱石と同じで “ココに素材がある” というのだけが分かるという感じだ。

「ポ・ア・レ・ス♪ ポ・ア・レ・ス♪ あっりまっすか~?」

ズシャッ 

「まっしろな ポッアレッス あっりまっすか~♪」

ザシュッ

魔法も飽きたし しばらくは先頭を歩いても良いと二人から許可をもらったので 出てくる相手は鞭で討伐しながら歩いております。
イエロースネークは 木の上から下りてくるようなら 二人が討伐、フォレストスパイダーは お父さんが糸の為に討伐してくれてるので、私は地面に接している相手だけを狙ってます。

「鞭って あんなに攻撃力があるのか?」

「そもそも冒険者で鞭を使っている人を見るのが初めてだわ」

「ああ、ヴィオのあれは 特性の魔法武器じゃ。鞭の先端は ヴィオの魔力で作られておるからな。あそこまで器用に使えるのは早々おらんと思うぞ」

お父さんたちは 後ろでお喋りしながらのんびりと散策中。
5階からは植生が変化するというか 増えたんだよね。
4階まではなかった白菜、キャベツも出てきてるから、また新しい素材が見つかる予感。

「あ~~~~!あった!」

ダンジョン内では大きな声を出してはいけません。
分かってるけど 見つけたら興奮しちゃうよね。

「「ヴィオ!」」 ズシャッ‼

私の声に反応してピョーンと飛んできたフライングラビットが 大きな手を振り下ろそうとしてきたところで 砂の鞭を振り払う。

「あ、あの巨体も一撃!?」

「お肉、やっぱり大きいね」

「ヴィオ、今のはいかんぞ」

ほくほくと大きな葉に包まれた肉をリュックに入れてたら、お父さんから叱られました。
確かに ダンジョンで大きな声を出したら魔獣が寄ってくるのは当たり前。一人の時なら全て自己責任だけど、こうしてパーティーを組んでるときは 仲間を危険にさらす行為だったと。
反論の余地も全くございません。
規格外な人しかいないし 自分も倒せると思っていたからといって やっていいことじゃないし、そういった甘えはいつか自分の首を絞める行為だからね。

「テリューさん、アンさん、お父さんも、ごめんなさい」

私、ダメなことはちゃんと謝れます。
二人は驚いているし、気にするなと言ってくれるけど 謝罪は大切です。二人もお父さんの教育方針を理解したようで 謝罪を受け取ってくれました。

「で、何を見つけた?」

「あれ、ほら、ポアレスだと思うの」

お父さんも叱った後に ちゃんと謝罪をすれば 直ぐに切り替えてくれるしね。
思わず大きな声を出してしまった原因を指させば そこには茶色い草むらが。ポアレスは何故か茶色い葉っぱだったんだよね。

「へぇ、他とは明らかに違うんだな」

「普通なら 色が違うし駄目なのかしらと思うところだけど、これがそうなの?」

「前のダンジョンではそうだったの。だから可能性は高いかなって」

二人にも教えながら早速引っこ抜いていくよ。
モッサリ生えた草は 2メートル四方だから 畳2畳分くらいかな。
他の草むらも大体同じくらいだけど、他の素材は この2畳分の中に4~5種類の素材が混合で埋まっている。
だけど ポアレスは纏まって生えてくれているから 2畳分全部が茶色い草むらだ。
一束抜けば やはり目的の米で 全部を引っこ抜いたのは当然である。

「へぇ、見た目は麦みたいだな」

「言われないと違いに気付かなかったわね」

うんうん、二人も米の美味さを覚えているから 真剣に抜いてくれてますよ。
勿論米が見つかった事は ネリアさん宛に伝達魔法を飛ばしたので、あちらでもしっかり探してくれている筈。
ここから9階までしっかり米を回収できたら お米料理も楽しんでもらえそうだね。
1か所で採集出来たお米は 籾だけ採った状態で採集袋に入れても2袋分。
1袋が大体10キロの米袋と同じくらいだから 20キロくらいかな。まあこれだけあっても健啖家揃いだから 直ぐになくなっちゃうよね。
せめて一回の料理には10キロまでにしておきたい。この階でどれだけ採集できるか、ちょっと満遍なく回っても良いかな?
しおりを挟む
感想 109

あなたにおすすめの小説

私を裏切った夫が、後悔しているようですが知りません

藤原遊
恋愛
政略結婚として、公爵家に嫁いだ私は 愛のない夫婦関係を「仕事」だと思い、正妻の役目を果たしてきた。 夫が愛人を持つことも、 その子を屋敷に迎え入れることも、黙って受け入れてきた。 けれど―― 跡取りを、正妻の子ではなく愛人の子にする。 その言葉を、人前で軽く口にした瞬間。 私は悟ったのだ。 この家では、息子を守れないと。 元々、実家との間には 「嫡子以外の子は実家の跡取りにする」という取り決めがあった。 ならば話は簡単だ。 役目を終えた私は、離縁を選ぶ。 息子と共に、この家を去るだけ。 後悔しているようですが―― もう、私の知るところではありません。

【書籍化決定】アシュリーの願いごと

ましろ
恋愛
「まあ、本当に?」 もしかして。そう思うことはありました。 でも、まさか本当だっただなんて。 「…それならもう我慢する必要は無いわね?」 嫁いでから6年。まるで修道女が神に使えるが如くこの家に尽くしてきました。 すべては家の為であり、夫の為であり、義母の為でありました。 愛する息子すら後継者として育てるからと産まれてすぐにとりあげられてしまいました。 「でも、もう変わらなくてはね」 この事を知ったからにはもう何も我慢するつもりはありません。 だって。私には願いがあるのだから。 ✻基本ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。 ✻1/19、タグを2つ追加しました ✻1/27、短編から長編に変更しました ✻2/2、タグを変更しました

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~

ふわふわ
恋愛
「お姉様の婚約者、私がいただきますわ。だって“公爵令嬢”ですもの」 義理の妹コンキュはそう言って、王太子との婚約を奪いました。 父はそれを容認し、私は静かに受け入れます。 けれど―― 公爵令嬢とは“地位”ではなく、“責任”の継承者。 王宮で礼儀も実務も拒み、「未来の王太子妃」を名乗った義妹は、わずか三日で婚約破棄。 さらに王家への不敬と統治能力の欠如が問題視され、父の監督責任が問われます。 そして下されたのは――家ごとの褫奪。 一方で私は、領地を守り、帳簿を整え、静かに家を支え続ける。 欲しがったのは肩書。 継いだのは責任。 正統は叫びません。 ただ、残るだけ。 これは、婚約を奪われた公爵令嬢が “本当に継がれるべきもの”を証明する物語。

【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。

みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」 魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。 ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。 あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で一人の騎士と運命的な出会いをする。 【2024年3月16日完結、全58話】

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので

モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。 貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。 ──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。 ……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!? 公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。 (『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)

恋は、母をやめてから始まる――正体を隠したまま、仮の婚約者になりました

あい
恋愛
両親を失ったあの日、 赤子の弟を抱いて家を出た少女がいた。 それが、アリア。 世間からは「若い母」と呼ばれながらも、 彼女は否定しなかった。 十六年間、弟を守るためだけに生きてきたから。 恋も未来も、すべて後回し。 けれど弟は成長し、ついに巣立つ。 「今度は、自分の人生を生きて」 その一言が、 止まっていた時間を動かした。 役目を終えた夜。 アリアは初めて、自分のために扉を開く。 向かった先は、婚姻仲介所。 愛を求めたわけではない。 ただ、このまま立ち止まりたくなかった。 ――けれどその名前は、 結婚を急かされていた若き当主のもとへと届く。 これは、 十六年“母”だった女性が、 もう一度“ひとりの女”として歩き出す物語。

処理中です...