ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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ウミユ遺跡ダンジョン 前半

第350話 ウミユ その17

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5階の後半は 茶色い草むら米群生地の採集だけを行い 6階へ下りた。
6階には 私たちの先を進んでいた冒険者が一つ目のセフティーゾーンで休憩しているようだったので、そこは避けて 2つ目のセフティーゾーンまで行くことにした。

予定よりも遠い場所まで移動することになったので ちょっと遅めの昼食になったけど、その分 しっかり採集してから移動することが出来た。

「あ、オトマンたち合流するって」

昼食の準備をはじめようとしたところで ネリアさんから報告があった。
マップの確認をしたら 確かにトンガお兄ちゃんの魔力が6階に到着したのが分かった。
だけどまだ 破落戸たちは到着してないんだけど 追い抜いたのかな?

「お父さん、今日の夜は作りたいお料理があるの、だからお昼はお兄ちゃんの好きなから揚げを作っても良い?」

「ん? ああ、カウカウを使った料理か? そうじゃな、じゃあから揚げにするか」

「まじか‼ から揚げは俺たちも気に入ったし 覚えたいぞ」

お米と牛丼は夕食のお楽しみにしてもらうとして、お昼はから揚げをたっぷり準備することにした。
カウカウのお肉は牛丼で楽しむけど、折角だからミルクはお昼のスープでも良いかもしれない。
から揚げとクリームシチューは 合わないかもしれないけど、トンガお兄ちゃんが好きなスープでもあるからそうしよう。

「ヴィオ、俺の時は トマトスープが良いぞ。肉がゴロゴロ入ってるやつな」

「んじゃ俺は ホーンラビットの煮込みスープガ良い」

トンガお兄ちゃんに対して甘すぎると言われながら クリームシチューを作っていたら 二人からもリクエストされた。ルンガお兄ちゃんはトマト煮込みが好きだもんね。
クルトさんの言ってるスープは 私よりも お父さんが上手に作れるので お父さんにお願いしてください。

たっぷりのから揚げがお皿に山盛りにされ、シチューの野菜も煮崩れてきたころ トンガお兄ちゃんたちがセフティーゾーンに到着した。

「ヴィオ!」

「お兄ちゃん!おかえりなさい!」

両手を広げてくれたので ダッシュで飛びつけば そのまま抱き上げてくれる。
ココアちゃんよりも大きな私なのに 全くふらつくこともなく ギュっと抱きしめてくれるお兄ちゃんは安心感抜群です。

「シエナさんも、オトマンさんも お帰りなさい。お腹空いたでしょう? トンガお兄ちゃんの好物だけど 皆も気に入ってもらえると嬉しい。ごはん食べよ」

「うわぁヴィオ! クリームシチューだぁ!しかもから揚げ!僕の好物ばっかり!」

久しぶりに 頭でお腹をグリグリされたけど、喜んでもらえて良かったですよ。
シエナさん達も テーブルのから揚げ盛に 驚きながらも 喜んでくれているようです。

「ん~!このスープすっごく美味しい!」

「昨日の夜と今朝に この食事が食べられなかったのが 一番きつかった……。
これ ホントに俺たち前の冒険行動には戻れないね」

「俺たちも昨日 同じ事を思ったところだ」

美味しいと喜びながらも 難しい顔をしている土竜の人たち。
うんうん、まだまだ先は長いんだし 料理を覚える時間はたっぷりあるから大丈夫だよ。失敗しても素材も沢山あるしね、どんどん練習すればいいと思うよ。





昼食後、遮音結界を張ってから オトマンさんからの報告を受けた。
奴らの素性は、5人組が オランジェ侯爵領でスカウトしてきた 盗賊崩れの銀ランク上級、ヘタレの3人組(一人消えたけど)は王都を中心に活動してた銀ランク初級、残りの3人はウミユが地元で このダンジョンなら10階までを行き来するレベルの銀ランク中級だったんだって。

5人組以外は 町で一般人に恐喝というか カツアゲまがいの事をした後でスカウトされたらしい。
偵察隊の3人組は スカウト役でもあったようだけど、彼らはメネクセス王国出身なんだって。

「どうやら以前 今回の依頼主と仕事をした事があったらしくてね、その時に直接の面識はなかったみたいなんだけど 弱みを握られたようでね、断れなかったんだって」

闇バイトと同じで 一度手を出すと逃げ出せなくなるってやつなのかな?
ギルドカードは魔力で登録するから 偽造することもできないし、割れたりした時に作り直すことは出来ても 情報は引継ぎされちゃうもんね。

「奴らの情報では 依頼主は3人組、男二人、女一人だったらしい。
依頼内容は ヴィオを攫う事、俺たちを殺害するなり 行動不能にするなり、それはどうでもいいらしくて、攫ってくるってのが第一条件だったみたいだ」

それはやっぱり収集家に販売される説が濃厚じゃない?
私の髪色を知ってる? 
もしそうじゃなければ 美幼女誘拐が目的?
いや、けど 私くらいの美幼女だったら 探せば他にもいるよね。
こんなに健康的にダンジョンで走り回れる美幼女となれば少ないだろうけど、変態の人形役だったら 大人しい方がいいはずだしね。


「んふっ、コホン、えっと、何だっけ。
そうそう、奴らはやっぱり11階を実行場所に選んでるみたい。
夜闇、森で視界が悪い、攫った後にすぐボス部屋に再挑戦して 地上に戻れる。この条件が揃ってるからでしょうね。
ただ、ここまでの間に 私たちが毎食豪華な食事をしているのを知っているから かなりストレスが溜まってるみたい。早めに下に行ってあげてもいいかもしれないわね」

真剣に依頼主の事を考えていたら話が進んでいた。
やっぱり実行は11階の予定だったんだね。米の採集は魅力的だし、カウカウももっと欲しいけど、11階以降も まだ出てくれるだろう。
それよりも 鬱陶しい相手が早くいなくなってくれた方がお風呂にも入れるし、変に気を遣わないで済む。

依頼主に関しては 「とにかくやばい奴ら」という非常によく分からない情報しかなく 素性は不明。
踏破してからでは確実に逃げられるだろうという事で、10階のボス部屋を終えた時点で テリューさん、アンさん、オトマンさん、ネリアさんの4人が転移で地上に戻ることになった。

「ヴィオが戻れば目立つからな、俺たちだけだったら普通の冒険者に紛れることができる。それにオトマンの気配隠蔽で夜の間に動くから大丈夫だ」

「それに 10階層までの魔獣は私たち4人だけでも十分対処できるのは分かってるでしょ?すぐに追いつくから、出来るだけゆっくり動いてくれると嬉しいわ」

依頼主の確認が出来次第戻ってくるという事だったので、私たちは11階以降をゆっくり散策、採集しながら待つことになった。
森に変わったばかりの階だと 多少狭くはなるだろうけど、ここは1階層から広かったからね。
24時間リポップだし、右半分、左半分を1日交代で採集してれば 十分楽し……待つことは大丈夫な筈。

「ただ、戻るのにちょっとお願いしたいことがあって……」

ネリアさんが なにやら言いにくそうにモジモジしている。
他の人がやるとあざといとしか思えないしぐさも、ネリアさんだと可愛く見えるんだから 小さいフワフワした人ってズルいよね。
他の3人も 同じように言い淀んでいるから お願いしたいことはあれかな?

「4人が別行動する間のお弁当は10階のボス部屋に行く前の日に 沢山作っておこうね。テリューさんのは時間停止だよね? 食べたいレシピの希望も聞くからね」

戻ってきたばかりのオトマンさんは勿論、他の3人もパァっと輝くような顔になる。そんなに行動食だけの日々は無理になったんですね。胃袋を掴めたようで なんだか嬉しいです。
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