ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

文字の大きさ
397 / 584
ウミユ遺跡ダンジョン 後半

第354話 ウミユ その21

しおりを挟む

「ん~~~!よく寝たぁ」

「おはよう、よく眠れたようで良かった。食事にするか?」

久しぶりのお昼寝は ダンジョンという場所にもかかわらず 非常によく眠れました。
これもお父さんたちが側にいてくれるという安心感があるからでしょう。
今日は野営もここでするから テーブルや火台もセット済み。テントも3つ並んでいる。
お腹は空いていると言えば空いているけど、今しっかり食べると確実に夕飯が食べられないだろう。

「量が心配じゃったらパンケーキにするか? ココッコの卵に カウカウのミルクもあるから作れるぞ」

ウ~ンと悩んでいたら お父さんから素敵な提案が。
お父さんのパンケーキは 粉をミルクで溶くんだよね。フワフワで美味しくて 家に帰ってから食べるのが楽しみなデザートパンケーキ。
大喜びしてたら嬉しそうに準備をしてくれる。

「うわぁ、良い匂い~」

『駄目よシエナ、このダンジョンに来てから明らかに食べ過ぎだもの。美味しそうだけど さっきだってお昼にあんなにしっかり食べたもの、我慢よシエナ』

1枚だけなので フライパンを使って焼いてくれているけど ふんわり優しい良い匂いがしてくる。バターとミルク、お砂糖はそんなに入れてないけど ふんわり甘い香り。
トンガお兄ちゃんは お父さんの周りをクルクルしはじめて 邪魔だと怒られているし、シエナさんは テーブルから離れてセフティーゾーンギリギリのところで外を向いて何やらブツブツ唱えいる。

「父さん 俺も食いたい」

「え、ルンガずるい!父さんそれなら僕も食べたい!」

「お前らはさっき昼飯を食っておるじゃろうが。食いたいならクルトに作ってもらえ。クルト、そのタネは使ってしもうてええぞ」

クルトさんはお父さんの隣でレシピをメモしてたからね。
ワクワクさんのお兄ちゃんたち二人をあしらいながら パンケーキを焼いている。なんだかんだ面倒見が良いんだよね。

「ほれ、1枚だけにした分 フルーツをたっぷりにしておいたぞ」

お父さんが持ってきてくれたお皿には フワフワのパンケーキに溶けたバター、パンケーキを囲むように 賽の目切りにされた色とりどりのフルーツ。
この短時間に作ったとは思えないクオリティー、凄く美味しそうだ。

「わぁ、フルーツも沢山ある! お父さんありがとう、いただきます」

ナイフで切って一口大にしたパンケーキだけをまずは一口。
ふわっとした柔らかさ、口の中に広がる ミルクとバターの香り、幸せの味がブワッと広がってくる。
次はフルーツを乗せて一緒にパクリ。
フルーツの甘さがミックスされて これまた美味しい。
酸味のあるフルーツ、甘みが強いフルーツ、色んな種類を混ぜてくれてるから 飽きることなく1枚をペロリと完食してしまった。

「美味しかったぁ~、お家に帰るまでは食べれないと思ってたのに 幸せ。
お父さん美味しかったです、ごちそうさまでした」

「うん、喜んでもらえて良かった」

お父さんもニコニコ、私もニコニコ、お兄ちゃんたちもニコニコ、シエナさんだけは ウグウグしているけど 食べないのかな?

「乙女の究極の選択だそうだから まあ放置しておいてやってくれ。
アルクさん、もしまたパンケーキを作ることがあれば 俺も教えてもらっていいですか?」

乙女の選択なら仕方ないよね。
まああれだけ動いている人たちなんだから そんなに気にしないでも消費できると思うんだけど、そういう問題ではないんだろう。
でもレスさんが作れるようになれば、いつでもお家で食べれるようになるし良いね。

お腹がいっぱいになったところで 森の雰囲気が少し変わった事に気付く。
到着したばかりの時は サンサンと降り注ぐ太陽って感じだったのに 今は少日が傾いている感じ?真昼って感じの明るさではない。

「そういえば今何時くらいなんだろう。このお空の色は 外と同じなのかな」

「ダンジョン内の昼夜が外と同じかは分からんが、大体今の時間は15時頃じゃな。
ヴィオが昼寝をしてから2時間っちゅうところじゃろ。
年末じゃし 大分日が落ちる時間が早くなっておることを考えたら 後2時間もすれば日が落ちる筈じゃ」

季節によって日照時間が違うのは日本と似ているけど、まさかダンジョンも季節によって違うのか。
いや、昼夜がないダンジョンも多いし、偶々かもしれないね。
それよりも2時間も寝てたのか。そりゃスッキリしている筈だ。
流石に2時間も経過していれば 襲撃者たちも11階に到着しているだろうと思い マップを確認してみる。

「ん?いない……?」

階段付近から 二つ目のセフティーゾーンまでを満遍なく見ても 気配隠蔽をしているような薄っすらした印すら見つからない。

「お父さん、破落戸ってもう来た?」

「いや、まだ来ておらんし 多分まだ下りてきておらん」

私が寝ている間に終わらせたという事ではなかったようで安心したけど、まだボス戦中って事?
このセフティーゾーンに来るまでの移動時間を含めたら それなりに良い時間だけど、奴らは9階でそんなにゆっくりしていたのだろうか。
まあ、夜闇に乗じてって事なら 急ぐ必要もないし あえてゆっくりしているのかもね。

「とりあえ明日の朝までは様子見かな。あの人数だから 僕たちと同じだけのボスと対戦している可能性を考えれば もしかしたら来ないかもしれないけどね」

トンガお兄ちゃんの言葉に そういえば私も同じことを寝る前に考えていた事を思い出した。
どう考えても 5人組くらいしかナイトに立ち向かえそうになかったよね。
いや、弱く見えても魔法使いが良い感じに盾を使って隔離している可能性もあるか? あの集団に魔法使いがいたかどうかは不明だけど。

とりあえず まだ来ていないのだから このまま待っているだけでも仕方がない。
お父さんは 待ち時間の間にお願いしていた大皿や深いスープ皿などを作ってくれていたらしく、それらは既にレスさんに販売 引き渡し済みとの事。
だったら 小麦の製粉を、と思ったのに これもお兄ちゃん二人によって 既にされていた。

仕方がないので 製粉された粉でパン作り。
これはレスさんとシエナさんも一緒になってやってくれたから 大量に出来た。
数日分の料理の下拵えもしておく。野菜の皮むき、切りかたや大きさを変えて種類ごとに木のボウルに入れておく。
こうしておけば料理の時に使いやすい。時間停止のマジックバックがあるからこそできることだね。

大量の油袋もゲットしたので から揚げ、ボアカツ、ラビカツなど 揚げものも作っていく。
お皿が足りなくなりそうだったけど、ルンガお兄ちゃんとトンガお兄ちゃんの二人で 大きなボウルというか トレイに近いものを作ってくれたので、私とお父さん、クルトさんの三人は どんどん作っていくだけだ。

揚げ物はお父さんとクルトさん、それ以外を私が作ってる現在。
災害時の炊き出しですか?のレベルで作っているけど、何日分になるのだろうか。しばらく作らないで良いかもしれないね。

休憩を挟みながらも 肉の殆どを消費したところで 調理は終了。
熱々の状態でマジックバックに入れているから いつでも出来立ての熱々で食べられる。

パンケーキを食べてから4時間。
すっかり日は落ち、野営地も火台の火が煌々と輝いているだけで 辺りは真っ暗だ。
ホウホウと 鳥の鳴き声も聞こえるし、夜の森って感じで ちょっとウキウキしてしまう。

夕食の時間は過ぎているけど、皆 調理をしながらつまみ食いをしていたので空腹の人はいないと思う。
一応夜食としてピタパンサンドは作って 各自2つずつ渡しているけど いつ食べるかな?

そんな時間であるにもかかわらず まだ彼らの魔力は11階に到着していない。
もしかしたらボス戦で疲弊しすぎて1階に戻っているのかもしれないけど、依頼主がそれで納得するのかは微妙なところだよね。

お昼寝をしたのに 22時頃には段々眠くなってくる子供の身体。
お兄ちゃんたちも 交代で仮眠をとっているんだけど、お父さんが仮眠中の今 私はトンガお兄ちゃんの胡坐の間に座ってます。
前もこの状態で寝たことがあるから 一人で座ってた方が良いんだけど、さっき小さなお父さん達3人にコサックダンスを躍らせていたら ウトウトしてて 後ろに倒れそうになったんだよね。
魔力切れじゃなくて ただ眠いだけなのが分かるのは お父さん達がブレてないから。
魔力切れになってくると 形が保てなくなるからね。

お父さんが仮眠から出てきた時には とりあえず来たら起こすからと言われ 渋々テントに戻り眠ることになってしまった。
徹夜が出来ない身体が悔しいね。
でも 来たら絶対に起こしてね!
しおりを挟む
感想 109

あなたにおすすめの小説

私を裏切った夫が、後悔しているようですが知りません

藤原遊
恋愛
政略結婚として、公爵家に嫁いだ私は 愛のない夫婦関係を「仕事」だと思い、正妻の役目を果たしてきた。 夫が愛人を持つことも、 その子を屋敷に迎え入れることも、黙って受け入れてきた。 けれど―― 跡取りを、正妻の子ではなく愛人の子にする。 その言葉を、人前で軽く口にした瞬間。 私は悟ったのだ。 この家では、息子を守れないと。 元々、実家との間には 「嫡子以外の子は実家の跡取りにする」という取り決めがあった。 ならば話は簡単だ。 役目を終えた私は、離縁を選ぶ。 息子と共に、この家を去るだけ。 後悔しているようですが―― もう、私の知るところではありません。

【書籍化決定】アシュリーの願いごと

ましろ
恋愛
「まあ、本当に?」 もしかして。そう思うことはありました。 でも、まさか本当だっただなんて。 「…それならもう我慢する必要は無いわね?」 嫁いでから6年。まるで修道女が神に使えるが如くこの家に尽くしてきました。 すべては家の為であり、夫の為であり、義母の為でありました。 愛する息子すら後継者として育てるからと産まれてすぐにとりあげられてしまいました。 「でも、もう変わらなくてはね」 この事を知ったからにはもう何も我慢するつもりはありません。 だって。私には願いがあるのだから。 ✻基本ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。 ✻1/19、タグを2つ追加しました ✻1/27、短編から長編に変更しました ✻2/2、タグを変更しました

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~

ふわふわ
恋愛
「お姉様の婚約者、私がいただきますわ。だって“公爵令嬢”ですもの」 義理の妹コンキュはそう言って、王太子との婚約を奪いました。 父はそれを容認し、私は静かに受け入れます。 けれど―― 公爵令嬢とは“地位”ではなく、“責任”の継承者。 王宮で礼儀も実務も拒み、「未来の王太子妃」を名乗った義妹は、わずか三日で婚約破棄。 さらに王家への不敬と統治能力の欠如が問題視され、父の監督責任が問われます。 そして下されたのは――家ごとの褫奪。 一方で私は、領地を守り、帳簿を整え、静かに家を支え続ける。 欲しがったのは肩書。 継いだのは責任。 正統は叫びません。 ただ、残るだけ。 これは、婚約を奪われた公爵令嬢が “本当に継がれるべきもの”を証明する物語。

【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。

みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」 魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。 ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。 あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で一人の騎士と運命的な出会いをする。 【2024年3月16日完結、全58話】

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので

モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。 貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。 ──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。 ……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!? 公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。 (『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)

恋は、母をやめてから始まる――正体を隠したまま、仮の婚約者になりました

あい
恋愛
両親を失ったあの日、 赤子の弟を抱いて家を出た少女がいた。 それが、アリア。 世間からは「若い母」と呼ばれながらも、 彼女は否定しなかった。 十六年間、弟を守るためだけに生きてきたから。 恋も未来も、すべて後回し。 けれど弟は成長し、ついに巣立つ。 「今度は、自分の人生を生きて」 その一言が、 止まっていた時間を動かした。 役目を終えた夜。 アリアは初めて、自分のために扉を開く。 向かった先は、婚姻仲介所。 愛を求めたわけではない。 ただ、このまま立ち止まりたくなかった。 ――けれどその名前は、 結婚を急かされていた若き当主のもとへと届く。 これは、 十六年“母”だった女性が、 もう一度“ひとりの女”として歩き出す物語。

処理中です...